コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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第二部4話

 走る、走る、走る! 

 突然の襲撃に驚く贅沢を味わえたのは一瞬だけだった

 襲撃されたと同時に敵わないと逃げたが逃げ切れない

 敵は私を追いかけて来る

 すぐには殺す気がないのだろう、当たらないようにわざと足元を狙って撃ってくる

 電撃を避け衝撃を避け火炎を避け続けたが、それも敵が当てる気がないからだ

 甚振るつもりかもしれない、なんて邪悪な奴らだ

 しかし捕まるのも時間の問題だろう

 逃げる先を誘導されているのがはっきりと分かるのだ

 それが分かっていても誘導されざるを得ない

 何せ敵はどれも私では敵わないほどの霊格を持っているのだから! 

 そんな敵が私を殺すのではなく捕まえようとする、捕まったらいったい何があるというのだ

 敵は私を緩く包み込むように追いかけ、逃げる先を制限してくる

 一目散に逃げ出した自分の判断は何も間違っていなかった、間違っていなかったのに! 

 ああ、しかし!とうとうお終いの様だ

 今こうして目の前にいる凶悪な敵を見て絶望で足が止まる

 もう逃げられない、背後からも気配を感じる

 

「降伏しろ、【タンガタ・マヌ】!」

「肝置いてけ! 肝置いてけ! なあ!!」

 人間めぇ!! 

 

 

 事の始まりは数日前、【クシナダヒメ】様の祠の掃除をした後のちょっとした雑談の時である

「そういやお茶会の時に呪詛対策に服を燃やしたりしましたけど

 あれってやる意味あったんですか?」

 根が貧乏性のせいかもったいなく感じた

 一回しか着ていない服や靴を燃やす経験なんてそうそうないだろう

 いや、そもそも服を燃やす事なんてあまりないか

「えっ、今更?」

 とはちょっと気が抜けた【クシナダヒメ】様からの返答だ

 今更も何もそういう話今までしてなかったじゃないか

「あったわよ、あの場には魔術や呪いに詳しい方もいたんだもの」

 無警戒でいたらどんな目に遭ったかわかったもんじゃない、と【クシナダヒメ】様

「一応、即死対策で【ミガワリナス】持ち込んでいたんですけど」

 だから即死はしないから大丈夫だと思う

「殺すだけが呪いじゃないのよ?」

 あっ

「直接死なない程度の呪いなんていくらもあるわ

 それに何も危害を加える事だけが呪いじゃない

 だから可能な限り呪い除けはしておいた方が良いの」

 

 というような会話があった

 考えてみれば女神転生でも「呪殺=即死」じゃないもんな

 俺の中では「呪殺=ムド=即死」のイメージが強いけど必ずしもそうじゃない

 ダメージを与えるタイプの呪殺属性の攻撃もあるし、ある種の状態異常攻撃も呪殺属性だ

 そして今の装備では全然意識してなかっただけあってザル状態と言って良い

 一度気になったら何とかしたくなった

 もちろん切っ掛けになった「魔術や呪いに詳しい女神の呪い」なんてものにどうにかなるか分からないが、状態異常には何とかしたい

 回復手段こそあれどそもそもこういうのは食らわない方が良いだろう

 これは何とかするべきだ、と思って売りに出されている装備品をチェックしてみたのだが

 中々良い物がない

 この場合の良い物、とは当たり前だが俺にとって良い物だ(<ライコー>は素で呪殺無効だ)

 まず前提として俺は着るタイプの装備は今使っている服から動かすつもりはない

「物理耐性+銃撃耐性」を持つ今の装備を動かすならそれ以上の耐性を持つものではないと困る

 俺は物理系の攻撃にはあまり強くないからだ

 そして所謂「籠手」タイプの腕装備、これはちょっと品物を選ばなければならない

 俺はアイテム係も兼ねている、いざという時に物を掴みやすい装備ではないと不安だ

 となると出来れば、頭装備、靴装備、アクセサリー類になる

 その中で売りに出ている物、購入出来る価格の物、

 更に俺のレベル帯で通用する物となるとこれが難しい

【ミガワリナス】に頼る前の装備はもうこのレベル帯で使うのは不安だし

 出来れば新調したいのだが……

 そう思って調べていると気になる情報を見かけた

 

【魔晶変化】というシステムが女神転生シリーズの一部の作品で存在する

 忠誠度が最大に達した仲魔の、その身をアイテムに変化させるシステムだ

 変化するアイテムは有用な物もそうじゃない物もあり、悪魔やレベル毎によって変わったりする

 この【魔晶変化】、どうもこの世界にも存在するらしい

 始まりは【悪魔召喚プログラム】の研究が進んだ事だった

 メシア教産の【悪魔召喚プログラム】は複数のプログラムを内包している、

 全て合わせて【悪魔召喚プログラム】だった

 その内包している物の中に【悪魔交渉プログラム】が入っていた

 とりあえず切り取り、少し弄るだけで単独で動作したらしく「会話出来るだけなら無害だろ」という事で

 雑に実装、【デモニカ】に導入された

 ただこの時点では【悪魔交渉プログラム】はそれほど期待はされていなかったらしい

 まず、このプログラムがなくても交渉できる悪魔は前々からいた

 会話等をした逸話があったり、友好的であったり言葉が通じるような悪魔だ

 また神を名乗るような高位の悪魔なら普通に会話が出来た

 逆に言えば普通に会話が出来ないのはどういう悪魔が多いのか

 言葉が通じなかったり、そもそも友好的じゃないような悪魔だ

 そんな悪魔と交渉して得るものあるの? という反応が多かった

 とは言っても【交渉】が出来る、というのは可能性が増える事なのは確かである

 このプログラムを期に、契約をして【仲魔】を増やすぜ! と燃えた【俺たち】が増えたらしい

 凄いコミュ力だ、俺には真似できない

 そしてそんな【俺たち】の中でも失敗する者もいれば成功する者もいた

 成功した【俺たち】は良かったね、だけで済めば【魔晶変化】の話には繋がらない

 こんな話があった

 とある【俺たち】と契約した【仲魔】、それには【シキガミ】にはなかったある問題があった

【才能】である、もっと言えば成長速度が追い付かなくなったらしい

 特にスキルが成長しなかったのを気にしていたとか

 契約をしたその【仲魔】は才能豊かな【俺たち】のサマナーについて行けなかった

 とは言えそのサマナーの方はあまり気にしていなかったらしい

【悪魔】であれば【成長限界】は高いと聞く、MAGが馴染めば自分の影響を受けてスキルも生えるだろう、と

 時間を掛ければ解決する事だと思っていたようだ

 そしてある異界探索中に【仲魔】が死んで蘇生を行い、気にする【仲魔】を慰め

 その翌日【仲魔】は一本の【ピクシーナイフ】になっていた、一枚の書置きを残して

 

 この出来事、「最初の魔晶変化」や「ピクシーナイフ事件」と呼ばれたそれは

 そのサマナーが【星霊神社】で【ピクシーナイフ】からの【蘇生】を願い出た事から発覚

 各種調査が入り上記の話と共に【魔晶変化】の実在が知れ渡った、【蘇生】は出来なかった

 ちょっと前の事だ

 さて、そんな【魔晶変化】であるが存在が確認されれば【俺たち】の新しい力にするべく

 検証等が急激に進められる事になる

 そして当然であるが強い装備を生む悪魔の【魔晶変化】の確認、それが優先された

 その確認された悪魔の中に【タンガタ・マヌ】がある

 変化して生み出す装備は「鳥人の腕輪」、呪殺無効装備だった

 

 

「という事で【タンガタ・マヌ】、こちらの契約書にサインを」

「ふざけるな人間! いきなり襲って言う事がそれか!」

「私もそう思うなー源氏くん、という事で【タンガタ・マヌの肝】を……」

「ひっ!」

 しかし【悪魔交渉プログラム】凄いよなぁ、普通に会話できるんだもんなぁ

 新しく購入した【ガイア連合製スマホ】を見ながら思う

 このプログラム、容量が重いし電力を食うから今まで【デモニカ】ぐらいにしか使われてなかったが

【マグバッテリー】内蔵の【ガイア連合製スマホ】が普及した事からスマホにも入れられるようになった

 こうしていると【悪魔召喚プログラム】が使えるようになる日も近いかもしれない、そんな気になる

 そんな感心をしつつ悪魔交渉を進める

「しかしだな【タンガタ・マヌ】よ

 このままだとお前はただ死ぬだけだし肝を取られるぞ

 この聖女ちゃんは珍味と知られる【タンガタ・マヌの肝】がご所望なのだ」

「ご所望なのだー!」

【タンガタ・マヌの肝】

 俺は詳しくは知らないがそんなアイテムが作中で食われる作品があったらしい

「ドロップしないかな」と聖女ちゃんが楽しみにしていたのだが

 残念ながら交渉決裂してから討った【タンガタ・マヌ】からはまだ一回もドロップしていない

 そして徐々にこうして脅すようになってしまった

【タンガタ・マヌの肝】は人を狂わせるのだな、食べた事ないらしいけど

 まあネタだと思うが

「悪魔の肝を欲しがる聖女なんかいるか! 私は不当な契約には頷かないぞ!」

「その意気や良し! さぁ! 肝ガチャの時間だ!」

「やめて!」

 

 結局その後、脅しと対価のマッカに屈して【タンガタ・マヌ】は契約を結んだ

 この異界の【タンガタ・マヌ】はレベル20程度だからしょうがない

 むしろレベルが上の異種族に囲まれてこいつはよく粘った方だ、大した奴だ

 そして今この【タンガタ・マヌ】は、酒飲んで、鶏食って、宝玉食ってる

 

【魔晶変化】に対する研究はそこそこ進んでいた

 作中に出たシステムをある程度参考にすればいいのだ

 そして忠誠度を上げるアイテムが複数確認された

 その中にあった【ニワトリの死体】と【宝玉】が比較的用意しやすかったので揃えた

【ニワトリの死体】は俺が契約した養鶏場から直接買った普通の鶏である

【タンガタ・マヌ】に飲ませている酒は【俺たち】向けの【覚醒者】でも酔える酒だ

【魔晶変化】が登場する作品で酒の類は忠誠度を上げる効果はないのだが

【魔晶変化】の為に色々試した人の報告で「酒を飲ませたら効いた気がする」というのがあった

 何となく「一緒に酒飲んで仲良くなっただけでは?」と思わなくもないが

 先達の言う事はなるべく聞いておくべきである、という事で俺も酒を飲ませている

 あとはこの酔っ払って眠りこけてる【タンガタ・マヌ】を【星霊神社】の技術部に放り込んで

 魔晶化してもらうだけだ

 この契約は対価を与える代わりに魔晶変化してアイテムを提供してもらう内容のものだった

 

 

「お疲れさまー」

 聖女ちゃんといつもの居酒屋で飲む

「意外と時間かかりましたね」

 魔晶化はまだ安定していない技術で微妙に成功率が悪い

 ちゃんと「忠誠度を上げるアイテム」を食べさせても失敗したり

 何故か【魔晶変化】したアイテムではなくドロップアイテムやフォルマ、マッカになったりする

「真心が足らないのでは?」なんて掲示板で大真面目に語られていた

【魔晶変化】発見に繋がった事件にあった「朝起きたら変化」していた、という話もまだ聞かない

 結局数日がかりで何体も【タンガタ・マヌ】を魔晶化してようやく二人分揃った

「でもまーやった甲斐がある装備だったと思うよ?」

 とチューハイを飲みながら聖女ちゃんが言ってくれた

 頷く、鳥人の腕輪は単純な霊装としての性能も中々良かった

 呪殺無効でもあるしこの装備ならしばらくは使えるはずだ

「なら良かったです」

 使う装備を得る為、とは言っても思い付きで確実とは言えない事に何日も付き合わせた事になる

 これで腕輪が全然使い物にならない物だったりもっと時間が掛かったらどうしようかと思った

「いやーそれにしても【魔晶変化】、本当にあったんだね

 今更だけど驚きだわ」

 頷く

「俺としては普通に交渉で【魔晶変化】を呑むのも驚きでしたよ」

 その悪魔にとって死を要求されているに近い【魔晶変化】

 それを要求されて、マッカや宝玉の数次第で「まあこれなら」と判断する悪魔

 死生観の違いを感じる

「あれはなんなんだろうねー

 よく言われてるように「魔界の本霊」の意向って事なんかね」

 ある種の悪魔はどうにも「自分の命」にすら絶対の価値を置かないようだ

 価値はある、しかしそれは何らかの交換材料になる物、そういう扱いらしい

 そうでない悪魔もまた多いらしいが……

 そして彼らが要求するマッカやMAGは最終的に「魔界の本霊」に渡るらしい

「「ピクシーナイフ事件」の件がありましたんで、

【魔晶変化】はもうちょっとこう……」

 なんだろ、上手く言語化出来ない

 言葉に出来ないそれを飲み込むように烏龍茶を飲む

「気持ちの篭った物だと思った?」

 そう、それだ

 言いたいことがカチッと嵌ったような感覚になる

 サマナーと仲魔の絆や思い、そういうのが強く篭められた特別な物だと思っていた

 そう言った気持ちの結晶が【魔晶変化】になったんだと思ってた

 しかし自分たちがやった【魔晶変化】にそんな気持ちなんかない

 条件を擦り合わせ、契約を行い、履行し、「じゃあそういう事で」と行われるものだった

【魔晶変化】を嫌がる者も「人間なんかに!」という意思こそあれ

 マッカ等を積み上げれば「まあ考えても良いかな」程度になった

 別にその事に不満があるわけではない

 だからあまり気にせず【魔晶変化】をさせる事が出来たという面もある

「地上の異界に顕現するような悪魔なんて出稼ぎの為の末端で

 だから稼げれば【魔晶変化】でも何でも、という理屈も分かるんですが……」

「源氏くんはロマンチストだよねー」

 ロマンチスト? 

「引っ掛かってるのは「ピクシーナイフ事件」でしょ? 

 もっと言えばピクシー側の気持ち」

 そうかもしれない、なんとなく「ピクシーナイフ事件」のピクシーは思い詰めた結果だと思っていた

 力不足で付いて行けない事に気を病み、自分を責め、それでもサマナーの為に

 そう思った末の行動だと思っていた

 しかし悪魔にとっての命が軽く【魔晶変化】にもそれほどの意味がない行動だとしたら、

 自分のこの想像は単なる妄想に過ぎない事になる

 ピクシーがサマナーに見切りを付けて置き土産を置いて魔界に帰っただけという可能性すらある

 しかしそうなると仲魔を失ったサマナーの気持ちは……

「現状、「ピクシーナイフ事件」の類例はないし

 事件のピクシーナイフは妙に高性能って聞いたよ」

 知らない、そんな話あったのか

「性能が普通のピクシーナイフよりちょっと良いんだって

 サマナーを思う気持ちかもねーって」

 そうなのか、なら……

 それから少し飲む

 

「それにしても最近の進歩は凄いよねー

【悪魔召喚プログラム】の研究に、【魔晶変化】、メガテンしてる気になるわ!」

 と、日本酒の冷をグイっと飲む聖女ちゃん

「この分だと私たちが【悪魔召喚プログラム】を手にする日も近いかも」

「ですねー」

 最近の著しい進歩は技術部や物作り班等の【俺たち】も刺激される所が大きいらしい

【魔晶変化】から生まれる装備品のコピーや改造をできないか何かの原料に出来ないか等色々やっているそうだ

【悪魔召喚プログラム】の方も何かやっているようだが、そちらはあまり話が出てこない

「そして嬉しいのはスキルカードの供給量が増えるらしいって事! 

【外様】がこんな風に役に立つなんて思ってなかったわ」

【外様】の神々(悪魔)が【ガイア連合】でスキルカード製造のバイトをしているらしい

 それでマッカやMAGを貯め、【ICBM】迎撃の元手等に使うのだとか

【外様】の神々(悪魔)がそこまでする程の飴を【ガイア連合】が用意しチラつかせた

【ICBM】迎撃には【MVP】報酬等があり、働きが良かった神々(悪魔)が特に良い報酬を受け取れる

 地上に顕現し自らの領地を握れている程度に強い【多神連合】

【ガイア連合】から回される仕事のおかげで余裕が生まれた【外様】

 この二つの集団を競わせる算段だろう

 飴が魅力的であり競争相手が強ければその分競争は過熱化するはずだ

【ガイア連合】は【ガイア連合】にとって都合が良い流れを作り出した

「技術が進歩して更に強くなれてそれのおかげでマッカやフォルマを集めてまた技術を進歩させられる! 

 最近じゃ【アポリオンキラー】の研究とかも始めたって聞くしね!」

 良い流れだわー! とぐびぐび焼酎を飲む聖女ちゃん

 うーん、いつもよりお酒の勢いが強い気がする

 

「何かありました?」

 少し考え込むようになった聖女ちゃんに声を掛ける

 そうするとお酒を飲んでちょっと下を見ながら

「私のPTが正式に解散するってさ……」

 ああ、正直そうなるなって思っていた

 さすがに一月近く固定PTが活動休止してたらなぁ

「解散は良いのよ、いや良くないんだけど

 まあ覚悟はしてたしさ」

「では何が?」

「解散の理由がねー」

 要約するとPTメンバーの一人が「レベル上げをする意欲」を失ったという

【半終末】を迎えても【終末】にはならなかった、日本は無事だった

 今後も【ガイア連合】は力を増し続けるし覚醒する【俺たち】も増え続ける

 警戒していた【メシア教】も分裂した事で日本国内にいる奴らはとりあえず敵対関係ではなくなった

 もう無理してレベル上げしなくて良いんじゃないの? これ以上頑張らなくても良くない? 

 そうなったという

 それはなんとも……

「痛い思いなんてしたくないし、レベル上げの終わりが見えないし

【魔人】や【大天使】に勝てるほどってのは現実的じゃないし

 だからもうほどほどで良いじゃない? そういう事らしいのよね……」

 まあわからないでもないのよねー、とチューハイを飲む聖女ちゃん

 この世界の戦闘は、圧勝できるほどのレベル差と通用する攻撃があれば十把一絡に無双できる

 そして自分が出来るように自分より遥かに強い敵は自分側に対して同じように無双できる

 そう思ったら「自分」が頑張る意味を感じられなくなったと言う

 そして「本当に強い人たち」が【ガイア連合】にいるんだから大丈夫だと

「でもそれって結局は自分の命を自分より強い何かに預けてるのと同じなのよ」

 だからさーと聖女ちゃん

「例え結果的に力及ばず何かに頼る事があっても、なるべくなら自分の力で。

 そして可能な限りその力を高めて生きるべき、って思ってたんだけどねー」

 もう自分は頑張らなくて良い、疲れた時にそう思ったら足が進まなくなった、そういう事か

「で、そうじゃなかったのがPTリーダーで、積極的レベル上げを止める提案と自分の考えを表明したら

 PTメンバーと喧嘩になっちゃったのよ、ちなみに私には喧嘩してからその話が来た」

 えぇ……

「まあ私と話すのが最後なのは正解だったと思うわ、私レベル上げやめる気ないし」

 聖女ちゃんはまあそうだろうなぁ

「根本的な話、【メシア教】に負けたら族滅食らうか

 死んだ方が良いような目に遭うと思うのよねー

 天使の子供孕まされたりとかさー」

 うん、まあそうだろう

【俺たち】の身体は「霊的な素材」になる、そして霊的な才能はある程度遺伝する

 ならば【メシア教】に負けたら産業動物のような扱いになるだろう、という予想は前々からされていた

【悪魔召喚プログラム】の存在が判明する前は

「過去に転生した【俺たち】の誰かががそういう目に遭わされたから

 今の【メシア教】はこれほど強いのではないか?」

 なんて話もそこそこされていた程だ

 そういう考察をしていた人たちは【悪魔召喚プログラム】の存在を知りホッとしたらしい

 強さの理由が別口で見つかった、と

「自分より強い誰かが戦ってくれるから、でどうにかなる戦いじゃないと思うんだけどなぁ」

 しんみりしている聖女ちゃん

 

「ところでそれなら割とすんなり解散しますよね? 

 なんで一月近くも経ってから解散なんです?」

 喧嘩もしているし話し合う余地等がまったくなさそうだ、自分ならさっと解散すると思った

「PTメンバーの装備はPT収入で整えてたのよ、特に前衛のメンバーを優先して

 PT解散する段階になってそれが原因で揉めて……」

 うわっ、なんか物凄くドロドロしてそう

「まあ全部済んだ話だけどさー、なんかもう疲れた感じよー」

 そしてため息を吐いて続ける

「良いPTだったんだけどねー、リーダーの方は最後に餞別までくれたし」

 餞別? 

「私が使えるような装備よ、あれはもう楽な異界にしか行く気なさそうねー」

 その後、かぱかぱ飲んでるうちにいつの間にか聖女ちゃんとしばらく組む事になった

 今の関係の継続である

 

 

 

 <シロ>と<ユキ>にブラシを掛けながら思う

 悪魔と人間にはどこか奥深くに価値観の相違がある、そう感じた

 命乞いをしマッカを差し出す悪魔

 サマナーの為に我が身を捧げアイテムと化した悪魔

 取引の結果でその身をアイテムと化した悪魔

 そして、いつも自分を気遣ってくれてる悪魔(神々)

 どれも悪魔で、どれも一緒に捉えて良いのかわからない

 おそらく【悪魔召喚プログラム】を使えるようになる日はそう遠くない

 その時自分は彼らと今まで以上に会話をして、その価値観に触れるようになるはずだ

 俺は人間だ、その価値観を受け入れたりする必要はない

 しかしそういう物があると知る必要はある、そう思う

【悪魔召喚プログラム】を手に入れたら、まずは手頃な悪魔を【仲魔】にしてそういう話をして見ても良いかもしれない

【クシナダヒメ】様や【源頼光】様にいきなりこういう突っ込んだ話はしたくないしな

 衝撃的な事言われたら困るし心の準備をしておきたい

 

【半終末】になって悪魔と人間の距離は近くなった気がする

 人間は人間同士ですらお互いに理解は出来ないし、ずれたり仲違いをする生き物だ

 きっと悪魔とはそれ以上のものがあるだろう

 しかし今後はより距離が近くなり、人間の隣人と呼んで良い存在になるだろうそれの内心に

 もう無視する事も無関心でもいられない、そう思った

 

 





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