コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
二回目の【各代表会議】が開かれ、そして終わった
対メシア教戦線に関わるいくつかの情報が周知され
各勢力の代表からいくつかの要望が出され
各勢力が互いに足りない物資のやり取り等をし、また【ガイア連合】から物資を購入し
そして現在の世界情勢に関する情報が纏められる
【各代表会議】が求められた役割をきちんと果たす事が出来た、誇るべき成果だ。
ただし情勢に関しては結論が「いつも通り」という何とも締まらないものとなった
「いつも通り」敵との終わりの見えない戦いが続くということだ
また、特定の勢力が滅ぶ等の戦線が極端に悪化する兆しもまだないという事でもある
ある意味では順調と表現していい。
細々とした、とは言えないような問題点や変化を各勢力は抱えていると思われるが
【対メシア教戦線】全体に影響を及ぼさない程度の
各勢力の「個別の案件」とされるような要望等はそれほど持ち込まれない
各勢力はまず自助努力で以ってあたるべし、それが基本であり
各勢力を尊重しその独立性を守るからこそそういう事になっている
必要以上に自勢力の弱味を見せたがる者もそうはいないという面もある
そして逆に言えば【各代表会議】において強く出された要望は
その勢力単独では解決しにくく、なおかつ他の勢力からも同意や共感を得られる
そう見込まれて出された要望が多いという事だ。
西欧においてその名を轟かせる有力神話勢力【ギリシャ神話勢力】、その主神【ゼウス】
彼が【ガイア連合】に公式の場で【悪魔召喚プログラム】の供与を要求した
【ガイア連合】は前向きに検討をする事になる。
「ずいぶん頑張ったんだなぁ」
二回目の【各代表会議】のまとめを読んでの俺の感想がこれである、
もちろん頑張ったのは各勢力たちだ、かなり見直した。
今回は俺もリアルタイムで掲示板に張り付けていた。
前回と違い【クシナダヒメ】様は会議後のお茶会には出ないらしく
お供する必要がなかったからだ、
【クシナダヒメ】様も特に出席したいわけではなかったらしく、
「ああいう付き合いは向いてる方ややりたい方がやればいいのよ」とおっしゃっていた
客人招いての接待とか大変だもんなぁ、やりたい人がいるなら任せたい気持ちもわかるな。
そんな人居るのか知らんけど。
掲示板を見ながら、二回目の【各代表会議】の既に公開されている議事録にも目を通す。
最初の【各代表会議】の時と比べてその支援を望む声や要求は大人しく、しかも現実的だ
自分の勢力が【保護】した人間の数を引き合いに出しての駆け引きまである
これは情に訴えての駆け引きなどではない
今の自勢力の強さ、将来性、そういった物をひっくるめてのアピールだ
囲い込んだ人間、それも覚醒者の数はその勢力の地力に直結する、MAGを産むからだ
前回の時のなりふり構わずの必死さ、それを覆い隠せるだけの何かを得られたようだ
彼らが望む物の多くが「戦うための武器」という所にそれを強く感じる
大変良い事だ
声の大きさではなく自らの行った行動での成果を前面に出す姿勢は好感が持てる
その中でも特に目を引く勢力が二つあった
【ギリシャ神話勢力】と【北欧神話勢力】だ
なんとこの二勢力、とんでもない数の【天使】を狩りまくったようで
天使由来のフォルマを大量に持ち込んで見せたのだ
主に【天使の羽】であるが中にはそこそこ霊格が高い天使のフォルマもあったらしい
「獲物の数には不自由はしていない」とまで言い、今後もフォルマを持ち込めるという
欧州の地はそれだけ天使が多く存在し日々戦いに明け暮れているらしい。
これには普段は他の勢力に厳しい視線を向ける事が多い【俺たち】もにっこり、
「やるじゃん!」「もっとやれ!」「天使を殺して食う飯は美味いか?美味いな」等々
感動の声が掲示板に多数書き込まれた、特に獲物が天使という所が喜ばれた。
天使は減れば減るほど喜ばれる不思議な生物だからな、誰も絶滅を危惧しない。
これらのフォルマはさっそく品質が十分な事が確認され
【ガイア連合】が全てお買い上げ、査定された額をマッカで纏めて支払ったそうな
各勢力の主神たちの頭に【天使の羽】=マッカが刻み込まれた瞬間である。
その天使を大量に狩った力強い【ギリシャ神話勢力】の主神【ゼウス】が
【悪魔召喚プログラム】の導入に前向き、というレベルを通り越して積極的な姿勢なのだ
前のめりと言っても良いかもしれない、強く声を荒げて要求するほどだという
はて、これはいったいどういう事なんだろう
悪魔が人間(覚醒者)に力を付けさせたいと思うほどの事情とは。
彼らの信仰の都合的にも「強い天使と戦えるのは強い神(悪魔)だけ!」というのは
それほど悪くない話だと思うんだが……
ましてやこれで使えるようになるのはただの武器ではない、人間が悪魔を使えるようになる
それを呑み込むほどの事情とはなんだろうか。
自分にはこの【ギリシャ神話勢力】は勢力拡大が特に順調な勢力に見えたのだが……
カットされた柿を一切れ食べる
この柿は俺が【クシナダヒメ】様から加護をいただいてから
とりあえず甘味が欲しくて庭に植えた柿の木から採れたものだ
ある程度育ってる柿の木を植えたのに加護的に樹木はちょっと違うのか中々効かず
最近ようやく柿の実が成るようになった、普通に甘くておいしい。
多分今後は定期的に実るはずだ、食いたくなった時に食えるのは良い事だ。
甘い物を食べて気分を入れ替え、スマホに表示されてる世界地図を見ながら考える
もしかしてアフリカがいよいよやばいのか。
アフリカと西欧の一部には【終末の4騎士】がいる、いるというかうろついている
そして今、アフリカ大陸には有力な神話勢力が存在しない
アフリカ大陸で最有力だった【エジプト神話勢力】は【半終末】前の
「エジプト決戦」で敗北して以降、日本に避難し【外様】と呼ばれる存在となってしまった
彼らがエジプトに帰還し、勢力としての地盤を作った等の話を聞いた覚えはない
そして【終末の4騎士】がアフリカを平らげ、次に向かうとしたら西欧だと言われている
態々シナイ半島に渡り、中東を平らげるには【終末の4騎士】にとっての旨味が弱いからだ
【終末の4騎士】は今のところその聖書上の役割である「世界の四分の一の人を殺す」為に
動いていると予想されている、それにはアフリカだけでは足りない。
より多くの人々を殺せる方向へ進むだろう、なら西欧の方が人口が多い
事実、既に西欧には足を踏み入れておりその先に進むだけだ
一方、中東方面の多くは今は【アバドン】が……そこまで考えて気づいた
なるほど、【メシア教過激派】は【終末の4騎士】を西欧に向かわせたいのか
中東からインドにかけての人口の大部分を消すことで
【終末の4騎士】にとって中東方面がさほど魅力的でない進路になってしまった。
あえてそうしたと解釈するべきだ
【ギリシャ神話勢力】や西欧に根を張る【メシア教穏健派】その他かの地に顕現した悪魔
それらを【終末の4騎士】をぶつけ纏めて潰す気なのだ、そこにいる
天使ってのは他人が苦しむ事にばかり頭が回るなぁ
【ギリシャ神話勢力】は【終末の4騎士】の侵攻に耐えられる地盤
それをアフリカの人間が死に絶える前に西欧の地に築かねば将来的な滅亡を迎える事になる
元々高かったその可能性が【アバドン】によってほぼ確定してしまった
【ギリシャ神話勢力】は必死だ、必死に自分たちの居場所を作り守ろうとしている
そのための戦力を求めている
そしてその彼らの希望の一つがこれなんだろうな
どうも【ガイア連合】はそう遠くないうちに【悪魔召喚プログラム】も輸出品目に
入れるつもりらしい、そういう流れを感じる
掲示板にあったスレ「★悪魔召喚プログラム(メ)について語るスレ その35」を
見ながらそう思った
そのスレで投下された情報だけで日が暮れる程物思いに耽る事もできる
例えば「【悪魔召喚プログラム】自体が四文字の加護を受け霊装化してる事について」
例えば「生贄召喚された天使によって都市部の多くが壊滅している可能性について」
例えば「外様や野良霊能者が増え、それを監視せざるを得ないようになった事について」
例えば「概念による機械保護が簡易化される事で現代文明がある程度残る可能性について」
例えば「これ等によって人間主体の勢力が自然発生する可能性について」等々
しかし今はその事はばっさり切り捨てたい
俺にとって大事なのは「近々一般にも【悪魔召喚プログラム】を配布される」
「関わっている技術部の人間が今の【悪魔召喚プログラム】を「安定版」と評している」
この二つだ
俺知ってる!【ガイア連合】がこういう事やってる時は
「公式配布はまだ」とか言ってても希望者はほぼ完成形の何かを貰えたり買えるんだって!
ショタオジの性格で「ほぼ安全」じゃないと【俺たち】向けの正式採用はされないから!
【アガシオン】や【デモニカ】の時もそうだった!試験運用してた奴らがどや顔してた!
「という訳で事務の人に聞いてくる!帰りが遅くなるなら連絡するからっ!」
「はい、行ってらっしゃいませ」
そんな訳で事務所に駆け込み口早に【悪魔召喚プログラム】の事を聞き出そうとして
事務の人に苦笑いに近いものをされた。
同じように【悪魔召喚プログラム】実質解禁、と解釈した【俺たち】は結構いたようだ
そしてその解釈は間違っているわけでもなかった。
一定以上のレベル、モニターに協力する事、ある程度以上の性能の情報機器の持参等の
条件とも言えぬ条件をクリアすれば【悪魔召喚プログラム】を貰えるようだった
当然受け取る、だって【悪魔召喚プログラム】だ
いくら葡萄を酸っぱいと言っても葡萄が気になってしょうがない狐のような気持ちだった。
また注意事項の印刷された用紙と簡素なマニュアルも渡された、
その後、各資料をいくらかコピーし家に帰る
俺のスマホは今この時【COMP】になった、その事で胸がいっぱいだった
家に帰り、自室でゴロゴロ転がり喜びを宥め
意味もなく通りすがりの<シロ>や<ユキ>の肉球を揉み、わしゃわしゃと撫でる。
思っていたよりも【悪魔召喚プログラム】を手に入れる日は早かった
そうしていたら徐々に落ち着きを取り戻してそんな事を思った
もう少し時間がかかると思っていたのだ、だってメシア製で危険しか感じない出所だし
でもまあ【ガイア連合】がこういう風に扱う段階ならもう大丈夫だろう、安心していい。
とりあえず冷静になったので迷惑そうな顔をしている<シロ>や<ユキ>を解放してやる
そしてまずは注意事項を読み、それからマニュアルに目を通した
仕様の確認は大切である、その間に<シロ>たちはどこかに去って行った
「うーん……うん、なんと言うか【俺たち】の【メシア教】に対する不信感が見えるな」
この【悪魔召喚プログラム】、元になった【天使召喚プログラム】と比較すると
大幅にその機能が削られている。
まず儀式を演算にする事によって【信仰魔法】を発動させる代行機能、
これがほぼ削除されている、残っているのは【悪魔召喚】に関わる部分だけだ。
【メシア教】の使っていた【天使召喚プログラム】ならばMAGを突っ込めば
プログラム上で儀式を演算、代行し機械的に魔法が発動、ディアやハマが放たれた。
敵からすればチートとしか言いようがないそんな機能を持っていたのだ、これがない
次に【魔界】からの直接的な【召喚】機能、これもない。
召喚出来るのは契約した悪魔、そして今はまだ実装していないが【デビルオークション】で
落札された悪魔だけという事になる(誰が仲魔をオークションに売りに出すんだ?)
無節操に高位の悪魔を魔界から呼び出すなんて事は出来ない仕様だ、危険だからな
そして【魔界】からの【召喚】機能がないならば当然だが
「別側面に解釈して召喚する」という主に天使の耐性を埋めるのに使われていた機能
これもない
概ね某邪神が関わっていたとされるパッチと安全性に悪い影響を与える箇所
これを丸っと消したのが【ガイア連合製悪魔召喚プログラム】という事になる
安全性と安定性は武器としての信頼性そのものに影響する
全体的に素晴らしい「改良」だと思う。
その中で魔法を代行する機能、これを削除した事に意味を感じるのだ
【メシア教】の使う魔法の根源は信仰を基盤にする【
これは信仰と、奇跡を願う心とMAGから発生する奇跡という事になる
メシア教徒が使う場合は四文字への信仰心からの発露、という事だ。
俺含む異能者が雑に使っている【魔界魔法】とは少々違う
【魔界魔法】は魔界に存在する根源的なパワー(=MAG)を消費して行う奇跡とか、
悪魔が使っている魔法を人が真似した物等の説もあるが真相はわからない。
ただはっきりしているのは良くも悪くも術者で完結している魔法という事だ。
大きな違いは前者は信仰心を失ったら使えなくなる事
後者はあくまで個人の力量によって起きる現象という事、この二点だ
但し起こる現象は同じだったりする事もあるのがややこしい所だ。
【信仰魔法】から生まれたディアも【魔界魔法】から生まれたディアも同じディアだ。
しかし違いもある
【信仰魔法】にはその歴史や文化を土壌にした技術系統があり(符術、魔道等)、
【魔界魔法】とは少々趣が違う。
またほぼあり得ない想定だが、まったく同じ力量、才能、知識、思いを持つ両者が戦えば
前者の【信仰魔法】の使い手が絶対に勝つとも言われている。
【信仰魔法】はその信仰の持つ霊的な地盤からのバックアップを受けるからだ
悪魔がその地元で知名度による補正等で多少強くなるのと同じ理屈と言っていい
信仰の中に生きる信者はその霊的なバックアップを受け強化される。
【天使召喚プログラム】をその信者が動かし信仰とMAGを捧げることで
低いハードルで強力な天使の召喚を行い、またその信者も簡易に魔法を使い戦闘に加わる
これが【メシア教】の持つ力の一つだった
その【メシア教】の【天使召喚プログラム】で儀式が代行されたものは
四文字に対する信仰によって生まれる【信仰魔法】として発動される
【俺たち】が形だけでも四文字へ信仰とMAGを捧げ、奇跡を願う事を忌避した
そういう意図での削除ではないか?まあ考えすぎかもしれないが……
まあ、あんまり考えてもしょうがない事は考えなくてもいいや
今はそれよりも大事なことがある
「<ライコー>、うちのPTに足りない戦力って何だと思う?」
自分のスマホを弄ってた<ライコー>に話しかける
<ライコー>は少し考えてからこちらを見て
「そうですね、私以外の前衛か、
あるいは氷結属性の魔法を使えるものが居ればいいのではないでしょうか」
そう言って<ライコー>は視線をスマホに戻した
前衛か氷結魔法の使い手かぁ、ちょっと難しいな、特に前衛は。
氷結魔法が欲しいのは今のPTには使える者がいないからか、攻撃の幅は大事だ。
いくつかの低レベル異界の情報が載っている資料を見ながら少し考える。
これは事務所で貰った異界の資料だ、狩場異界で出てくる悪魔の情報がある
今の【COMP】で出来る事はこの五つだ
1.レベル10までの悪魔三体までの契約と召喚(同じ悪魔の被りは出来ない)
2.悪魔全書機能(現状ただの辞典、この全書に載っていない悪魔とは契約できない)
3.アナライズ機能(お試し版が正式版になった、ほぼ変わらず)
4.エネミーソナーを代表するアプリの使用(実用できる完成度の物はまだ少ない)
5.霊装化して頑丈になって異界でも使える。
つまり召喚後、多少レベルを上げるにしても
レベル10までの悪魔で前衛が務まる悪魔を探さねばならない
邪教の館や悪魔合体プログラムが存在しないからだ、「まだ」ないと思うべきか
多分いつかは作られる、だって【悪魔召喚プログラム】がこの世界にはあるんだから。
話を戻すが、とりあえずそのままではレベルを上げても戦力化は厳しいだろう
レベルが上がってもスキルや耐性が弱い悪魔のままでは通用しないからだ
そうすると【スキル変化】か、将来的な【悪魔変化】を見越して……。
いやいや、と頭を振る
【悪魔変化】なんて何になるかわからないものなんだ
そんなのに期待して、違うのになった!と勝手に失望するのも失礼な話だと思う
そんな風に思わなければ良い話だが期待してしまえばきっとそう思ってしまう
そういう不誠実な事をして仲魔を傷つけるのは良くない
【悪魔変化】は、なったら良いな程度に留めておくべきだ。
さてではどうするか、おそらくそう遠くないうちにレベル上限も上がりそうな空気がある
それまで待つのも手ではある。
何せ既に掲示板には「上限上げろ」の声が続々と上がっている。
その声を無視はしないだろう、なるべく早くある程度の上限解放がされるはずだ。
ふと、掲示板の書き込みにあった「産廃」等の【俺たち】の微妙な反応が頭をよぎった
そういう【俺たち】もそれなりの数がいて、それは決して理由のない事ではないのだ。
この【悪魔召喚プログラム】を貰える条件であった「一定以上のレベル」というのが
「バグで戦場でレベル10の仲魔三体が突然裏切った時、十分対処できるレベル」
が目安になったと事務の人が言っていた。
もちろんそれは今が試験運用段階であり、正規版では違うものになるという。
そしてそうであるから現状での【悪魔召喚プログラム】の評価も少々辛い物になっている
そこまでレベル差がついている悪魔では果たせる役割が限定的な物になるからだ
補助や雑用であって、前線での積極的に運用出来る戦力ではない
そういう風に評価されてしまっていた。
でもまあ逆に言えば補助等であれば十分使えるわけで、大事なのは仲魔選びだよな
「低レベルでも役に立ちそうな悪魔と言えば」で盛り上がってるスレを軽く見てから
再び資料に目を通した。
そんな悩ましく、ある意味楽しい時間は予想外の形で終了する事となった、来客だ
それも猫の客が来た、しかも二匹もだ
不思議な事もあるものだ
第一声から話が長くなりそうな気配を感じたので家に入ってもらい居間で話す事にした
露悪的に言えば、自分が戦うのに有利な疑似異界である我が家に引き込んだとも言う
まあそんな事をしなきゃいけないレベルには見えないからそんなつもりはない、戯言だ
「では改めてもう一度言ってくれ」
「はい、私どもは<シロ>様と契約をした者です、これからは貴家でお世話になります」
何を言ってるのかわからない……
その客人(客猫?)は魔獣【ケットシー】だ
それも、あの「猫の将軍が死んだ」と不思議な伝言を頼んできた【ケットシー】だと言う
あの時は<シロ>に殿と付けていたはずだが、今は様付けだ
これが契約と何か関係があるのだろうか
「それでその【ケットシー】と、そっちの……」
【ケットシー】には見えないもう一匹の猫に視線を向ける
尻尾が太く少し身体が小さい猫で、笠を被っている、所謂キジ白模様をしている
その猫は面倒くさそうに後ろ足で首元を掻いてから
「にゃーは【カブソ】にゃ」と言った
魔獣【カブソ】、女神転生ではたまに登場する雑魚悪魔である
レベルは大体一桁前半から半ば、電撃弱点だったと思う
石川県に伝わる水に棲む妖怪で、人によくいたずらをすると言われる
馬を驚かせたり美女に化けたりする、人を化かし岩や木と相撲を取らせたりするとも言う
猫の妖怪とも、カワウソの事とも、正体は河童とも言われる
まあ他愛もない可愛い悪魔だ
「そして二匹とも<シロ>と契約を?」
「はい」
とは【ケットシー】の返事である、【カブソ】の方は横になって丸まってしまった
聞けばあの不思議な出来事は<シロ>主導で起こった【猫の王様】の民話の再現だという
飼い主が帰宅途中、「猫の王が死んだ」という猫の噂話を聞くあるいは伝言を頼まれる
そしてその話を家族にしたら猫が「なら僕が次の猫の王だ!」と飛び出して帰ってこない
【猫の王様】とはそんな話だ
要素としてはこの話の猫に「ケットシーとしての名」があったり
噂話等ではなく「猫の葬式」を見かけたり、飛び出した猫が巨大になったり
煙突を登る等もあるが、まあ誤差の範囲だろう
<シロ>はこの【ケットシー】の伝承を部分的に再現する事で悪魔としての力を強め、
万全の態勢で【悪魔変化】に臨み、見事【ネコショウグン】へと変化したのだという。
とりあえず話しを聞く為に<ライコー>が連れてきた<シロ>を褒めてやる事にする
よしよし、良い子だ。
それで、その再現のための手伝いを【ケットシー】と【カブソ】がした
友達の猫系悪魔を集め、日時を選び、台本に沿った会話をして俺に聞かせたという
その手伝いの対価が<シロ>の手下となる事
……おかしくないか?なんで手下になる事が対価に?と疑問に思ってる俺に対して
「弱小悪魔にとっては強い悪魔と契約出来るのは強くなるチャンスですからね
良い話なんですよ」
と、【ケットシー】が言う
はぁ
強い悪魔ねぇ、思わず俺の膝の上で澄まし顔をしている<シロ>を見つめてしまった。
「うん、まあそういう事ならしょうがない」
勝手に<シロ>がした契約とはいえ飼い主の俺が責任を取らないといけないだろう
<シロ>も否定しないから多分言ってることは本当だ
とはいえそうなるとやらなきゃいけないことがある、まずは<シロ>に対する説教だ
「<シロ>、勝手に契約するのはもうやめなさい。
こっちもいきなりだと困るし、変な奴と契約して何かあったら嫌だしさ」
そう言ったらゴロゴロ言いながら膝の上の<シロ>が頭を擦り付けてこちらを見上げた、
分かったようだ
<シロ>がこういう「可愛いでしょ」アピールをする時は叱られてる時だからな
あとは、うちに住むなら安全の為にちゃんと二匹とも契約をしてもらわんと
それと今は【星霊神社】で保護されてる立場の悪魔らしいから正式に引き取る手続きか
「あっ、ご飯はどうする?<シロ>と一緒で良いのか?」
「契約通りちゅー〇を所望するニャ!それとかまぼこニャ!これはゆずr」ベシッ
ご飯の話になった途端元気になった【カブソ】を<シロ>がすかさず叩いた、厳しい……
多分、契約にはそんな項目なかったんだな。
「私どもは悪魔ですので、食事の方はお気になさらずに。
<シロ>様より十分なMAGをいただきます」
叩かれた【カブソ】を無視して話を進める【ケットシー】
「遠慮するなよ、<シロ>だってご飯食べているんだし、ついでだよ」
「それは<シロ>様は生きていますからね、
私どものような純粋な悪魔は本質的にはMAGだけで過ごせますので……」
??
違いが分からない、そういうと【ケットシー】は俺の方を見て首を傾げ目を見合わせる
はて?
なんてことだ、<シロ>は猫の【覚醒者】だったのか
俺はてっきり悪魔として【ケットシー】に生まれ変わったのかと……
考えてみれば俺の【リカーム】はちゃんと発動してたじゃないか
そうか、<シロ>は「黄泉がえり」と俺のMAGを切っ掛けに覚醒していたのか。
身近で大事な事に気づいてなかった事にショックを受ける
今まで通りだったからこそ気づかなかった。
そういえばそんな説明を<シロ>との契約前に聞いたような気がする、薄っすらだけど
あの時はなんかもうそういう事に気を回せる精神状態じゃなかったから多分聞き流してた
なんて失態だ。
生きているので<シロ>は生き物として飯を食べ、排泄する、寝る
そして自力でMAGを産む事が出来るというのが純粋な悪魔との違いらしい
意識すれば確かに<シロ>からのMAGを感じる、これが普通だと思っていた
霊的に考えれば未だ<シロ>は肉体に縛られている身、という事である
これは人の【覚醒者】である俺と同じだ。
<シロ>は悪魔の力を宿した猫という事になる、分類はなんだろ
【アウトサイダー】か【デビルシフター】か、単に「悪魔変化を覚えた猫」かもしれない
それはまあいい、それにしても今までそんな事にも気づかなかったなんて……
俺は今まで<シロ>の事をちゃんと見ていなかったのか
「ですので我々の立場は<シロ>様の仲魔という事になります。
<シロ>様と契約し、<シロ>様のMAGが供給される身ですので」
項垂れる俺に説明を続ける【ケットシー】、違いがよくわからないが
直接俺の仲魔になるというのではなく<シロ>を挟んだ関係なのだという
だけど俺の家に住む以上俺との契約はしてもらわないと困るぞ、俺の身の安全の為にだ
そう言うと【ケットシー】は尻尾を愉快そうに揺らし、目を細めて言った
「もちろんですとも、主の主様」
「つまりにゃーたち二匹はおみゃーから見て猫の又者ってことニャ!
猫又じゃないけど、にゃはっは!」
「にゃはは」笑ってる【カブソ】が【ケットシー】に理不尽に叩かれた
良い音がした
まあこれも縁だろう
なんとなく仲良くやっていけそうな気がした
★魔獣<ケットシー> Lv4
魔法型 ステタイプ力魔 電撃耐性 衝撃弱点
スキル ジオ グラムカット 妖精の抜け穴
【妖精の抜け穴】 異界内や異界化した地上にある空間の歪みを知覚、
利用して近道等に使える
★魔獣<<祟る>カブソ> Lv2
魔法型 ステタイプ平たくて少し魔が高い 火炎耐性 魔力耐性 電撃弱点
スキル アギ 冥土の道連れ
【冥土の道連れ】死亡時高確率で周囲の敵に万能ダメージ
主人公は他愛もない可愛い悪魔扱いしているが
こんなんでも村の一つ二つは余裕で潰せて、非覚醒者を美味しく頂くくらいは出来る