コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
家に帰った、が今は特にやる事はない。
適当に時間を潰そうかと思ったが班長の製作している姿を見て
俺も何かそういう事をやりたい気分になった。
俺、普段はデビルバスターな日々を送っているせいで
霊能者っぽい事あんまりしてない気がする、作物も実際に作ってるのは一反木綿たちだし。
一番それっぽい事をしたのが【ミズチ】の召還かなぁ。
という事で前に「面倒だからいいや」と思って
作れそうだけど作らなかったアイテムの制作をする事にした。
「何となく何かを作りたい欲」を満たすために。
そういう事になった。
さっさっと筆を走らせ、寝転がって腹を見せている黒猫の絵を描く。
ちょっと目付きが悪くて尻尾が長い、そんな猫の絵だ、なかなか上手く描けたと思う。
これが本当の自画自賛だな……くだらない事を考えた。
墨が乾いたらそれを折りたたみ、表紙に「鼠除之札」と書き<シロ>に渡す、
<シロ>は右前足を硯に浸してから、その紙に力を込めて肉球を押し付けた。
<シロ>の力、つまりMAGがその紙から漏れていないようなら完成だ。
「鼠除けのお札」である。
「鼠除けのお札」はこの世界でも、そして俺たちの前世でも普通に存在したお札だ
最近はそれほどでもないが昔なら有名な神社や絵師も探せばいるくらいにはありふれていた
特にお蚕様を守るために鼠除けを願って、という事で求められる事が多かったらしい
「かつて養蚕が盛んだった」と伝わる地方の神社等では今も売られているのではないか。
この手のお札は少し罰当たりな事ではあるが中身を開けば猫の絵が描かれている事が多い
版画、もしくは筆で描かれた絵だ。
なぜお札にそんな絵を描いたか、それは猫が鼠を捕るからだ。
洋の東西を問わず、猫という生き物は「鼠を捕る生き物」というイメージが強かった。
今では否定されてるが「日本の猫は平安時代に書物を守る為に輸入された猫から始まった」
とする説もそこそこ広まっていたくらいだ。
そして西洋でも猫は鼠を退治する。
猫はその一点で船に乗り戦艦に乗り、首相官邸で飯を食い、ウィスキーの守り手となった。
エジプトにおいて、人を病や悪霊から守る女神バステトが、
その昔は雌ライオンの頭部を持った姿だったのがいつの間にか猫の姿になってしまったのも
それと無縁ではないはずだ。
鼠は病を持ってくる生き物でもあるのだから。
その代わり猫は負の幻想も少し背負わされる事となるのだから人というのは勝手なものだ。
尻尾が別れて猫又になる、魔女の使い魔、月の精を取り込んで化ける、種類は豊富だ。
それだけ猫に夢を見ているという事でもある。
実際の所、うちの<シロ>は鼠なんて狩って来た事はないので本当に狩るかは知らない
現代で猫が鼠を狩っている姿を見たことがある人なんてあまりいないと思う。
しかし昔から猫はそう思われ、そしてあやかられ、祈りと共に絵を描かれた。
「鼠除けのお札」に猫が描かれるのはそういう事である。
そして日本で「猫」を祀っている神社は意外な事にそれほど多くはない。
「鼠除けのお札」で有名な神社もその祭神が必ずしも猫に関係する神という訳でもないのだ
養蚕や稲作に関係する神様、つまり豊穣神の類である事が多い。
豊穣を齎す神々に「恵みを鼠に奪われないようにしてくれ」と縋ったのかもしれない。
という事で俺が猫の神を奉らなくても「鼠除けのお札」は描けるのだ。
<シロ>の肉球印はこの手のお札に付き物の押印の代わりである、しかも可愛い。
【星霊神社】で売っている霊的な墨を俺のMAGを込めた水で磨る、
霊的な紙に猫を描き、覚醒している猫の<シロ>が力を込めた。
理屈を言えばこれでもう完成したはず、力も籠っている。
出来たお札を見ながら軽くため息を吐く
問題はこれ、作ったは良いけどちゃんと効くのかわからないんだよな。
鼠の立ち入りなんて異界の主の俺が許可をするわけもなく、我が家に鼠はいない。
効くのかどうかすら確かめようがない、なんか無駄な事をしたような気がしてきた。
どうすんだよ、何枚も作っちゃったぞ
思い付きで行動するのは良くないな、そのうち誰かに押し付けて効いたか聞いてみよう。
効くお札なら誰か使ってくれるだろ。
迷走してしまった。
墨で汚れた<シロ>の肉球を濡れ布巾で拭う。
「お疲れ、ありがとな」
頭を撫でると<シロ>はフンと鼻を鳴らしてどこかに行った。
今日は色々あったなぁ、こういう普段と違った日は普段と違う所が疲れる気がする。
風呂で頭を洗いながらそんな事を思った。
まだ日は沈んでいないような時間だが、今日は寝る前にまだする事がある。
その為にいつもより少し早く風呂に入って汗を流している。
休日なんだからもう少しゆっくりして良かったか。
「お背中を流しに来ました」
浴室に流れる風と聞き覚えのない女性の声に瞬間、意識が戦闘的になり思考速度が上がる。
家に知らぬ女性の声、ありえない。
今の家には<シロ><ユキ>等の鼻が利く仲魔がいる、<ライコー>もいるはず
【探知】持ちの<シオン>も気づけば【テレパス】で即座に俺に伝えるはず
それを潜り抜けて風呂場までくる、何者だ。
考える。
異界に湧いた悪魔、ない、そこまで高レベルの悪魔はまだ湧かないはず
異界の主である俺がそれを許していないしそんな悪魔が顕現したら俺が分かる。
低レベルだが尖った能力を持った悪魔なら?
ない、それなら無防備な姿の俺に声なんて掛けない
俺からの反射的な攻撃を受けて死ぬ事を考えるはず、そんな事しない
異界の外から入ってきた敵?外だと?ここは第一支部、【星霊神社】のお膝元だぞ?ない
外から侵入してきた敵ではない存在?それならこんなタイミングで声は掛けない。
状態異常?どこからだ?そしてなぜこの幻覚を?
全てを疑うのは切りがないし意味がない、これだけじゃ何もわからない。
今はこの敵から情報を取るべきだ、いきなり攻撃じゃないなら会話の余地がある
単独犯かそうじゃないかだけでも情報を抜かねばならない。
瞬間的に思考し慌てないように振り返る、突然の奇襲でも弱味は見せるべきではない
落ち着き払って見えるように行動するべきだ、精神的に優位に立たれないように
そして振り返った先には
「にゃはっ!」
笑顔の<カブソ>がいた。
一気に力が抜ける、声まで変えやがってこの野郎……
いや幻覚か?確か<カブソ>も化ける話がある妖怪だったはず
「一番風呂貰いにゃ!にゃはははっ」
ざぶんっと浴槽に飛び込む<カブソ>、こいつは猫なのに風呂が好きな変な奴だ
多分、川辺にいる猫妖怪【カブソ】だから水が平気なんだと思う。
妙に満足そうな顔をしているこいつに文句の一つも言わないと気が済まなかった。
今日の最後の用事までの時間、軽く掲示板を見てから読書をする
主に悪魔の逸話、伝承絡みの話をひたすら読み込むのだ。
最近はちょっとした空き時間は掲示板と読書で埋められることが増えてきた。
悪魔を仲魔にする事が出来るようになった今、これらの情報の重みをより強く感じる。
どこに悪魔にとっての地雷があり、どこに自分の利益が転がっているか分からないからだ。
今までもこれらの知識は重要な物であったがそれが一層重くなった。
元々この手の知識は「オカルト知識」と雑に括られて詰め込まれていたものだ
ある程度の下地はある為、読むのはそれほど苦にはならない。
とはいえ悪魔に関連する話は膨大過ぎて広く浅く覚えていても抜けが多い。
仲魔や身近な悪魔についての話を詰め込むだけでも結構大変だ。
そういう点で【悪魔召喚プログラム】に付属している【悪魔全書機能】は素晴らしい
最初は「ただの辞典」と思ったが、悪魔について分かりやすく纏めてある辞典なのだ
出身、来歴、簡単な逸話程度だったらこれだけで十分事足りる
戦闘をするだけならこれでも十分だろう、これ以上を求めるなら個別に調べれば良い。
便利な世の中になったもんだなぁ、とたまに感心している。
「ヒーホー!お兄さん、時間だホー!」
もうそんな時間か、読むのを切り上げて座っていた体を起こした。
<カーシー>の荷車に<ライコー>が準備してくれた物を詰め込み、乗り込む
フロストが乗って来て横に座る、更にするっと<シロ>が膝の上に乗って来た
着いてくるつもりのようだ、それが当たり前のような顔をしている、まあいいや。
「<カーシー>、出してくれ」
「進軍開始ー!」
日が落ちかけている、もう夕方だ。
その中を<カーシー>に牽かれた荷車に乗り妖精の丘を目指して進む。
涼しい風が吹く。
重い荷車を牛ほどのサイズの<カーシー>の力で牽いているからか意外と揺れない
だけど道が傷む気がするな
妖精たちの収入が思わしくない時は道の整備をさせてもいいかも知れない。
デコボコしている道に土を埋めて踏み固める感じかな。
ちょっとした公共事業だ、まあ実態は家の手伝いをさせて小遣いやるだけなんだが。
そんな事を考えていたら道中で同じように丘に向かう<ピクシー>たちと遭遇した。
<ピクシー>たちは荷車から一定の間隔を開けて飛んでいる、一緒に行くつもりのようだ
「
と、ちょっとどや顔をした<ピクシー>が言った。
そういうつもりなのか
でもお前ら「ディーナシー」っぽくないし馬なんて一頭もいないじゃないか。
妖精の騎馬行列は英雄妖精と呼ばれるディーナシーがやるからかっこいいんだぞ。
妖精の丘、その中心部にある藪、西洋ニワトコの木の所まで着いた。
今日は宴会をするためにこの丘まで来た。
他の者が地べたに座っている中、自分とその周りだけ絨毯に腰を落ち着かせてるというのは
少々の気まずさを感じる。
しかしそれも我慢しなければならない、今回の宴は半分仕事みたいなものだ。
<ピクシー>たちはこの異界に湧いた悪魔たちに「主への服従か死か」を突きつけ
服従以外を選んだ者たちを一時的に狩り尽くした。
それは良い、狩られた悪魔たちはマッカと経験値とフォルマになり有効活用された。
それで終わる話だ
しかしそれだけで終わらないのが「服従」を選んだ者たちだ
彼らは俺の仲魔になり、俺の異界の住民という事になる。
そうであるなら多少の配慮と、そして集団としての実感を得る通過儀礼が必要ではないか。
そうだ宴会しよう、そんな事を思いついた<ピクシー>がいた。
受け入れる姿勢の為に、そして仲魔になったという自覚を生む儀式としてぜひ宴会を。
そんな説明をしてきた。
「宴会をする口実を見つけただけだな」とその話を聞いた時思った。
とは言えその主張はそこそこ筋が通ったものだ。
何せ俺もあまり新しい仲魔を見ないから実感もないし、微妙にピンとこない。
顔見せも兼ねてそういう事をする必要があるだろう
そういう事になった。
その為に傍目から「なんかあいつ偉そう」と見えるように俺にだけ絨毯があり、
隣に給仕をするフロスト君がいる。
俺たちはこの丘の中心であるニワトコの木を背にして、座っている。
俺の周りに焚火が多いのも挨拶を受ける為と、姿を良く見せるためだ。
宴会を提案してきたリーダーの<ピクシー>に「じゃあ任せた」と言ったら
こんな事になってしまった、先ほどは半分仕事と思ったが全部仕事な気がする。
そして宴会に付き物の食べ物の多くは俺が出す事になった。
<カーシー>に積んでいた荷物の正体がそれである、<ライコー>に用意してもらった。
殆ど居酒屋の定番メニューだ、唐揚げだの魚の塩焼きだの各種定番のおつまみ系だの
ある程度宴会が進めば温かい汁物も出される
もちろん一回では運びきれない、今も<カーシー>は往復して荷物を運んで来ているはずだ
大変な事になってしまった。
日が完全に沈み月が出てきた、今日は満月だ。
<ピクシー>の案内であまり見慣れない悪魔たちが続々と集まって来る
来た順から真ん中の焚火を囲うように座り輪を作る、それが妖精の行う宴会らしく見えた。
本来、人間は妖精の宴には参加するべきではない、衰弱するまで踊らされたり
人間の世界とは違った時間が流れていたり、足の指をすり減らして失ったりする
帰ってこれるならまだ良い方でどこかに連れて行かれるという話もある。
とは言えこれは俺が主催する宴会だ、連れて行かれるならこの異界でしかない。
ある意味妖精の宴とは言えないものかもしれないな。
集まって来た悪魔たちを見る、どれも低レベルの悪魔で妖精っぽいのが多い。
低レベルなのは異界の管理がしっかり出来ている証拠だ
妖精が多いのは……多分、<ピクシー>たちの影響だろうなぁ
異界に妖精がちょっと出やすくなっているんだと思う、これは意図しない事だ。
まあ異界管理の技術はまだ発展途上だ、完璧な管理とは行かないのは分かっているから良い
別に【天使】が湧いて来たって話じゃない
手に負える範囲なら変化でも安定でも何でもいいのだ。
「お兄さん、揃ったホ」
なら、仕事の時間か。
宴の開始を告げる乾杯と、その後の挨拶を受けるのが今日の役目だ。
俺、こういう事しなくて良い自由業なガイアーズしてたはずなんだけどなぁ。
どうしてこうなったのか。
そんな余計な考えを捨て、気を取り直してグラスを手に取り立ち上がる。
緊張しないように周りからの視線を意識しないようにする。
「今夜は満月が綺麗な夜だ、この夜に新しく迎えた友たちと過ごせる事を嬉しく思う」
乾杯、と続けようとした、本来はそのつもりだった。
しかし気づいてしまった、「このグラスは違う」
俺が手に取ったグラスは普通の、どこにでもあるガラス製のグラスのはずだった、
それがいったいどうしてこんな
適当に言葉を考え続け、時間を稼ぐ。
「今夜、用意させて貰った酒のうちの二つ、林檎酒に使った林檎の世話をしたピクシーに
そしてニワトコの花の酒を仕込んでくれたホレのおばさんに、まずは感謝を捧げたい
彼女たちのおかげで今、こうしてこの酒を楽しむ事が出来るのだから」
ああ畜生、考えても仕方ない、それにこれ以上引き延ばすのはちょっと難しいぞ。
俺はこういう場にあまり出た事がないんだ、すぐには言葉が思いつかない。
この場は俺のお披露目でもある、流れを乱すわけにはいかない。
ここは<ピクシー>たちを信じて飲むべきだ!
「新しき友に、乾杯!」
かんぱーい!後に続く声を背景に黄金の杯に入っていた酒を飲み込んだ。
霊基に力が注がれたのを感じる、だが悪い物ではない。
こうして
ふう、と何事もなかった事に安堵の息を吐く俺にフロスト君が心配して
「どうしたホ?」と聞いてきた。
「気づかなかったか?」
「ホ?」
「いや、良い」
手の中にあった黄金の杯はいつの間にかなくなっていた。
欧州に数多存在する民話において一つの宝物が登場する類の話がある。
その宝物は「
この妖精の杯と出会う経緯自体は複数のパターンが存在していて語っても切りがない
今回の俺のように宴で出てきた物、丘の上で「喉が渇いた」と叫べば持って来られた物
同じ所をぐるぐる周回する馬車を眺める妖精に出会い、飲めと出された物、様々ある。
その妖精の杯が登場する民話において典型的な展開がある。
妖精の杯をどうにかして盗む不届き者が出てくる展開だ。
俺は不届き者と思ったが民話の中ではその不届き者たちが主役であり、幸運に与る事が多い
彼らはふとした拍子に出会った妖精の杯に心奪われ、時には飲まずに中身を捨てて
時には馬に飛び乗りて、追いかけられながらも辛くも逃げ切り妖精の杯を盗む事に成功する
その妖精の杯は黄金製であったり銀製であったり、角杯であったりする
大体は「高価なものを盗んでやったぜ!良かった良かった」エンドになるが
「この杯があるうちは〇〇家は幸運に与れるだろう」という預言をされたり
「素晴らしい物を手に入れたから主君に献上しました」という落ちになったりもする。
妖精に返してくれ、と言われて返す展開もあるが、そうはならなかったものもある。
そういう品物だ。
俺が一言分の時間を稼いで悩んでいたのは何も彼らに肖って盗もうと思ったからではない。
「妖精の杯」が出てくる話の「中身を捨てるパターン」において
捨てた事が正解だった、とする表現として出された飲み物が毒薬というパターンがあるのだ
その描写においては「零れた液体が掛かった馬の毛がたちまち抜け落ちた」とする
一瞬その事が頭によぎり、咄嗟に飲む事が出来なかった
身体に異常はない、大丈夫だ、考えすぎだったな。
知る事でかえって悩む事もある、それを変な所で思い知らされた感じだ。
「それともあれはプーカの黄金の杯だったのか」
【プーカ】は【ピクシー】の原型とも言える悪魔だ、その可能性は十分ある。
この杯の場合は奪ったのではなくプーカからの贈り物だ。
その杯で飲んだ農夫はその後、幸運に恵まれた人生を送ったという。
だとしたらやはり何も考えずに信じて飲むべきだったか、いやそれはちょっと難しいか
それに何事もなかったんだから、良いだろ。
宴を眺める、<ピクシー>含む妖精たちが小さな輪を作って踊っている
その中には精霊【シルフ】に悪魔変化した<シオン>の姿があった。
疑似異界を異界に変えた日、中々帰ってこないなぁと心配していたら
精霊シルフになって帰って来たのだ、シルフになった理由は分からない。
ただシルフになって以降、<ピクシー>たちと遊んでいる姿を見かけるようになったので
本人的には良い変化だったんじゃないかと思っている。
<ピクシー>と同じく羽が生えている小人の少女だから親近感を持たれたのかもしれない。
緑色をした少し際どい服装をした羽が生えている小人の少女、それが【シルフ】だ。
見た目が大きく変わる変化は初めてだったから少し戸惑った、
【アガシオン】の指輪に入って来た事でようやく<シオン>だという実感が湧いたくらいだ
【アガシオン】の時と変わらず指輪に宿るつもりらしい。
スキル的には、耐性面が衝撃耐性と破魔無効を獲得、スキル【トラポート】を覚えた。
戦闘力的にも中々良い変化だったと思う、破魔無効は嬉しい。
悪魔変化して弱くなる事の方がレアケースらしいので順当に強くなったと思っていい。
その<シオン>が<ピクシー>たちの輪に加わり手を繋いでくるくる踊っている。
こういう平和的な姿を見ると少し安心する、戦いばかりが人生じゃない。
この宴の参加者は別に踊っているだけと言う訳ではない。
酒がある席なのだ、当然のように酒を飲み、つまみを食べている。
食べ物で特に人気があるのが持ち込んだチーズ類のようだ、
妖精の好物として伝わる物にバターとチーズがある、
だからチーズを少し多めに持ち込んだのだが人気があるようで良かった。
考えてみればこの異界では酪農関係はやっていないからこの手の物は中々手に入らない
外から購入するしかないのだ。
こういうのでやる気を出して<ピクシー>たちは頑張って働いたのかもしれない。
踊っている姿を眺めながらグラスに入っているお酒を飲む、林檎から作った酒シードルだ
グラスに注ぐ前に瓶ごとフロスト君が冷やしてくれたおかげで冷たくて飲みやすい。
弱い発泡性の酒で少し甘かった。
これは覚醒者にとっては【酔える酒】ではないため普通の飲み物と大して変わらない。
人間離れしてしまった覚醒者は酔うのもそこそこ大変なのだ。
とは言えこの酒自体それほど強くない為、覚醒者じゃなくても酔う事はなかっただろう。
一応【酔える酒】も持って来たが俺が飲む予定はない、酔って失敗したくない。
この林檎酒は<ピクシー>が作った林檎を使って作ったものだ。
その林檎を潰して絞り、濾した果汁を樽に詰めて
【造酒】関係のスキルを持っている【俺たち】に頼んだ、いきなり目の前で酒になった。
酒造りは人の営みに長く関わって来た文化であるからそういう権能を持った神や悪魔は多い
そういう悪魔から加護を貰い、あるいは式神が貰った【俺たち】
これが結構いる。
結構いるため複数の酒蔵が建ち、客の奪い合いをしているレベルだそうな。
長年、終末を見据え動いて来た【ガイア連合】の余裕はこういう所で現れている
今のこの世界で覚醒者を酒造りに回せる勢力がいったいいくつあるだろうか
こうやって酒の味を楽しめる余裕が平和の味なのかもしれない
「お兄さん、そろそろホー」
宴の開始の音頭は取った、その次の仕事が控えている。
「最初に来るのは【エルフ】ホ。
すんなり降伏したし、鏃を作るのを手伝った協力的な悪魔ホー
お手柔らかに迎えて欲しいホ」
フロスト君の役割はこうして俺に直前に説明するのも含まれている
あらかじめ聞いていてもちゃんと覚えられるか怪しいからありがたい。
この宴会で俺に挨拶する悪魔はこの異界にいるその種族を代表して、という形になる。
全員から挨拶を受けるわけではない。
アナライズでの解析結果を見る、レベル13の【エルフ】か。
リーダーをしている<ピクシー>が連れてきたようだ、
この<ピクシー>は他のピクシーよりちょっと賢そうな顔をしているからわかりやすい。
特に協力的な悪魔だからリーダーの<ピクシー>が案内してきた、そう解釈するべきかな
なんだか緩く序列が生まれている気がする。
<ピクシー>が<エルフ>を俺に紹介する。
「この者、主様の徳を慕い
この機会にぜひ主様にお目通りを願いたく
勝手ながらお酌をさせていただきに参りました」
「で、あるか」
こういう時、なんて言ったら良いの?俺知らないんだけど?誰か教えて?
困って、つい<ピクシー>の顔を見る、ニコリと微笑まれてから顔を伏せられた、ダメか。
よく見るとちょっと<エルフ>は震えている、さっさと酌してもらって帰してやろう。
<エルフ>は耳がちょっと長いだけの顔立ちが整った女性だ、白い服を着ている。
見た目の人外度が低い為、こんな風に怯えられるとなんとも言えない気持ちになる。
早く終えたい、居心地が悪い。
「では頼めるかな?」
「はっはい、お注ぎさせていっいただきます」
そこまで緊張しなくても……
注いでくれたお酒を一口飲んでから言う。
「ありがとう、ピクシーたちから話は聞いている、鏃の製作を手伝ってくれたらしいな?
その気持ちを嬉しく思っている、今後とも頼む
何か困った事があればそこの<ピクシー>に相談してくれ」
コクコク頷く<エルフ>、最後に彼女が楽になれる言葉を掛けてやった
「下がって良い、宴を楽しんでくれ
<ピクシー>は少し残れ」
うん、ちゃんと背中があるタイプの【エルフ】のようだ。
背中が腐った木の洞のようになっているエルフ像からの【エルフ】ではなかった、安心した
ふらつく足で下がる<エルフ>の様子を見ながら<ピクシー>に聞く。
「なあ、なんであんなに怯えてたんだ?お前が何かやったのか?」
「知らないわよ、レベル差でビビっただけじゃないかしら?」
あー、俺、<シロ>、フロストがいる場は辛いか。
土の上は嫌なのか宴会が始まってから絨毯の範囲から出ない<シロ>を見る。
「……せめて<シロ>は下がらせた方が良いかな?」
「舐められるよりは怯えられる方がずっと良いわよ?」
じゃあこのままで良いか
その後、ピクシーたちから「私が捕まえたの!」と【ケットシー】を自慢されたり
「友達が出来た」と【チョウケシン】を紹介されたり
「変な犬居た!」と尻尾を掴まれた【マメダヌキ】が引っ張り出されたり
「畑のカボチャがこいつになった、迷惑!」と【ジャックランタン】を紹介されたりした。
そして改めて【ピクシー】も紹介された、この異界から湧いた【ピクシー】だ。
上手く馴染めているようで良かった。
しかし微妙に統一感がない連中だな、今後何が湧くのか読めない。
従わずに狩られた悪魔たちの事も考えればなおさらだ。
紹介の列が途切れた、あとは最後の一名を残すのみだ。
それはもう少し先になるはず、一息入れよう。
「フロスト君、そこの林檎を取ってくれ」
「ホー」
ありがと、林檎の切り身を一切れ食べる、瑞々しくて甘くて美味しい。
林檎はこういうシャクシャクしてるのが良いよな。
そんな事を思いながら食べていたら少し思い出した話が有った。
現在、日本で売られている「海外産」の果物類はその多くが、
具体的には八割近くが悪魔が日本国内の異界を借りて生産した「悪魔産」だ。
「異界産」とも言われている、この辺りはまだ用語が統一されていない。
異界を借りている悪魔、これは所謂【外様】の事だけを指すわけではない。
海外に領地を持つ悪魔勢力も日本の異界を借りて様々な用途に使っているのだ。
その用途の一つが食料等を生産しての納品だ、良い稼ぎになるらしく人気があるらしい。
そして残った二割のうちそこそこの割合が【半終末】前に大量に購入し保管していた物で
これはそろそろ無くなる見込みだ。
残りは混じりっけなしの「海外貿易」でやって来た果物である。
ただし生産者は悪魔だ、まあ当たり前ともいえる。
徐々に判明しつつある海外の情勢はおおよそ地獄と言って構わない。
都市部では呪術プログラムと化した【天使召喚プログラム】が周囲の命を無理やり奪って
過激派天使を顕現させ、過激派天使が都市部の「浄化」を図る。
人々の不安と恐怖と苦痛を苗床にして野良の悪魔が顔を出し、災害のように人を襲う。
そして社会インフラの多くは多少の地域差を生みつつ崩壊を迎え、それに伴う死者を出す。
核兵器による被害を受けつつも生き残っていた国々は一部の例外を除いて
メシア教のシェルター内の人間が存在すると言い張る臨時政府を名残とするのみとなった。
そんな有様になっている、これが程度の差こそあれ世界中で起こっている現象だ。
人々が真っ当な労働と自然の恵みによって果実を得られる世界は、既に終わっていた。
<ピクシー>たちが趣味で育てている林檎等の果物類、
これはマッカに換算すれば大した金額になる物ではない
霊的な作物では無い為どこまで行っても「普通の果物」でしかないからだ。
しかしその「大した金額ではない」という状況がいつまで続くかなんて誰にも分からない。
金額的に高価でないからと言って価値がないと言う訳でもない。
終末後の豊かな食生活の為にこういうのは維持しておくべきだろう。
マッカ収入にならなくても、褒め、感謝し、労い、報酬を出すべきだ、推奨してもいい。
リーダーピクシーにそれとなく妖精たちの取り分をどういう分配にしているのか聞くべきか
いや、まずは俺が直接報酬を与えるか、名目は「林檎が美味しかった」あたりにして……
まあそういう事は後で考えよう、今はする事がある。
力ある物と見做された物の多くは正の側面と負の側面、その両方を見出されることが多い
エルフの矢が呪術に使われる一方、呪い除けに使われたように
猫が鼠除けとしてありがたがれる一方、魔女の使い魔や魂を吸う生き物と見られたように
これは素晴らしい物だ!と褒め称える一方でそこに暗い所を探し出すのか
邪悪な物だ!と忌み嫌う一方でその力に憧れるのか、それは分からない。
人というのはとにかくひねくれ者が多い、その程度の話なのかもしれない。
西洋ニワトコ、という木は欧州においてそこそこ以上に文化的な重みがある木であるらしい
最大に育っても高さが10メートル行かない程度の、実際はその半分程度に育てば良い位で
枝はさほど太くなく、実は大きくもなく甘くもない、そんな灌木だ。
欧州の、特に北欧からドイツ、イギリスに掛けての国々はそんな木を特別視した。
葉も花も幹も根も全ての部位が薬になり「庶民の薬箱」としてありがたがれた。
白く咲く花は夏の始まりを告げ、実りは秋を告げ、その実りの味は冬の味となった。
花を摘んでハーブドリンクを作り子供たちの風邪薬となり、更に酒にもなった。
悪霊や病を遠ざける魔除けの力があると言われ花を揚げ物にして食べた。
そうした理由で西洋ニワトコはよく庭先に植えられたという。
このありがたい西洋ニワトコに人は魔を見出した。
それはイスカリオテのユダが首を吊った木だと言われた
それは救世主を処した時に使った十字架の材料だと言われた
その茂みには魔女が集まると言われ、その枝は魔女の杖に使う物だと言われた。
その木を傷つけた者は復讐されると言われた。
その木が萎れた時は家族の誰かが死ぬと言われた。
その木には妖精の王とその取り巻きたちが集まると言われた。
そしてその木を使った揺り籠に置かれた子供たちは妖精に抓られて痣だらけになると言われ
ドイツでは「ホレのおばさん」に連れて行かれると言われる。
西洋ニワトコのドイツにおいての名は「ホルンダー」
「ホレのおばさんの木」と呼ばれる。
ドイツではニワトコの木にはホレのおばさんが宿っていると言われていたのだ。
グリム童話にも一つ、このおばさんが登場する話が収録されている。
働き者の少女に黄金を与え、怠け者の少女にコールタールをぶっかける話だ。
嫌な婆さんだな、と率直に思う。
そしてホレのおばさんは俺の異界にある妖精の丘、その中央に生えているニワトコの木
そこに宿った「ニワトコの木の精」の名前でもある。
木の精、つまり悪魔だ。
なんとまあ、ビッグネームが勝手に宿ったものだ。
そんなぼやきを飲み込む。
だってグリム童話のキャラだぞ、まあ民話とグリム童話だと違うし
このおばさんがどっちの面が強いのかもわからないが。
うちの異界にはコウノトリはいないんだがな……
コウノトリが赤ちゃんを運んでくる、という伝説はホレのおばさんに由来する。
それにしても向こうの人たちは西洋ニワトコに思い入れがありすぎる、設定過多も良い所だ
最初は身近な事から日本における「桜」と同じような扱いの木なのかな?と思ったのだが
どうにも違う雰囲気がある。
日本における桜、これはもうありがたがる一方なのだ
「桜の木の下には死体が~」なんて物語もあるがあれは桜の美しさを謳う物でしかない
日本人にとって桜とは良い面が強調される木だった。
桜はとにかくその美しさを謳われる。
その土壌になったのが桜が「農家にとって特別な物」であった事だ。
桜の開花は田植えの時期を告げる、それだけで桜は日本の文化に深く根を下ろした
桜の女神であり【クシナダヒメ】様の叔母であらせられる「コノハナノサクヤビメ」に
というエピソードがあるのはそういう繋がりからだと思う。
桜と稲は関連性を持たれ、その米から生まれた酒に桜の神が結びつけられた。
田と稲を通じて桜の木は特別な物となったのだ。
日本人の、とりわけ近代まで人口の大多数を占めていた農家の人たちは
桜の花を見て春を感じ、これからの仕事を思い、その年の実りに思いを馳せたのだろう。
俺はそう思う。
このような農作業の目安となる木の事を「
そして田植えの時期を告げる桜はヤマザクラで、今日一般的なソメイヨシノではない
違う植物なのだから今はもう田植えの時期を告げる花としてはずれてる
しかしそれは大きな影響は与えなかったようだ。
日本の文化に深く根を下ろした桜は実用性を失っても、その美しさから今も生きている。
では、西洋ニワトコはなぜ欧州でそうはならなかったのか
長く寒い冬を耐え忍び、まだ寒さが残る春を乗り越え、待ち望んだ夏を迎える花
また小麦を食べる所では初夏は収穫の季節、実りの季節でもあるはずである
冬小麦は初夏から夏が終わるまでに収穫をするものだからだ。
収穫の時期に咲く花は田植えの時期を報せる花と比べてそう劣る物ではないはずだ
なのに何故、西洋ニワトコには負の側面が強く浮かび上がるのか。
その答えは西洋ニワトコの葉が11月、つまり冬の到来と同じ時期に落ちる事
毒性があるため完全に熟さないと食べられない実が、同じく11月頃に熟す事
この二つが関係するように思える。
この二つがあるから「冬を告げる木」というイメージを持たれたのではないか?
ニワトコの木から葉が落ち、実が熟す頃には冬がやってくるのだ。
そして寒く厳しい冬の訪れは心地良い物ではない。
彼らはニワトコの木をありがたがると同時に冬を思わせる厭わしい物として捉えたのでは?
そう思った。
俺は彼らと違う文化圏に住む人間だ、あまり詳しくない、全て妄想でしかないが……。
ドイツの民話において「ホレのおばさん」の話のいくつかは冬を背景にして語られる。
「ホレのおばさんは働き者が好きなんだホ」
そう俺に語ってくれているフロスト君の話を聞く
「働き者が好きで怠け者を叱って、
ホレのおばさんが冬に布団を叩くと雪が降るって言うホ
おいらたちの仲間みたいなものだホ!」
布団叩かないで欲しいなぁ、雪は見る分には良いけど寒いのは好きじゃない、滑るのもだ。
しかし改めて聞くと妖精みたいな悪魔だな、怠け者が好きなんて伝わる妖精は聞かない
ヒーホーが仲間みたいなものって言うのも納得だ。
「だから、クリスマスから12日間くらい各家庭を覗き見て、
ちゃんと働いていた女の人や子供にはお小遣いをあげて」
うん
「怠け者には腹を切り裂いて内臓を引っこ抜いて
代わりに石と藁を詰めて井戸に沈めるって言うホ!」
悪魔だわ。
ホレのおばさんとの挨拶は和やかに進んだ。
ホレのおばさんの見た目はローブを被った老婆だった、杖を持っていて
笑うと突き出た大きな歯が見える。
<シロ>を撫でる手付きに迷いがない、猫を撫でるのに慣れている手付きだった、やるな。
この、いかにも魔女らしい見た目の悪魔はそれを肯定するかのように
アナライズの結果がレベル15の鬼女【ハッグ】だった、それ以外は文字化けで読めない。
多分、文字化けの原因は【悪魔全書】に登録されていない悪魔だからだ。
登録されていない悪魔をアナライズすると、無理やり近い物を表示するか文字化けする
もしくはその両方だと言われている。
【ハッグ】という悪魔、これは特定の逸話がある悪魔ではなく、
例えば、小さくて羽が生えている妖精を指してフェアリーと呼ぶのに近い。
怪しい老婆で魔女なら【ハッグ】だ、その程度の属性である。
英語圏ではこれが転じて「魅力的でない年上の女性」をハッグと呼ぶようになったらしい。
日本語にすると「鬼婆」くらいのニュアンスになると思う、多分だけど。
鬼女【ハッグ】ではホレのおばさんという存在の説明にはならない気がするが、
まあいいや、そこは拘る所ではないだろ、俺は拘らない。
「<ピクシー>たちが世話になっていると聞いた。
感謝している、ありがとう」
このホレのおばさんが木に宿ってから割とすぐ<ピクシー>たちの話題に上がっていた
その中に俺もお裾分けで貰っているドリンクの素の話もあったし
それ以外にもお洒落に目覚めたとある<ピクシー>が自分用に(人形用の)服を買い、
微妙に合わないのをこのホレのおばさんにお直ししてもらった、というのがあった。
<ピクシー>の衣類に関しては俺ではどうにもできない
妖精には「服を贈ったら去って行った」という伝承が複数あるからだ。
もし、それをきっかけに去って行ったら、と思うと気軽に触れられない品だった。
だから感謝しているというのは世辞ではない。
「良いんだよ、ここの娘っ子たちは洗礼を受けていない子だからね、私の管轄さね」
そう言ってくれると気が楽になる。
そしてホレのおばさんはこちらを覗き込むように言った
「だけどもし私に感謝をしているというのなら
私のささやかな願いを聞いてくれるかい?」
ホレのおばさんの声は嗄れていて、声まで魔女らしい。
「内容によるな」
「そうかい、なに難しい話じゃないんだよ。
この異界に畑を一つ作らせて欲しいだけさ」
畑?
少し予想外な話の流れに戸惑う、ホレのおばさんで何か農作物と関係する話があったか?
「あの娘っ子たちに糸紡ぎと機織りを仕込むのさ、その為の繊維が欲しくてねぇ
全く信じられないよ、女の子なのに糸一つ紡いだことが無いってのはさ!」
なんという時代錯誤
糸紡ぎが女性の象徴だったのは大昔の話なんだが……
産業革命の結果、糸紡ぎの地位は暴落し身近な手仕事としての地位は針仕事や刺繍に奪われ
今ではその針仕事も刺繍もそれほど重い地位にはない。
糸紡ぎをしている女性の姿はかつては女性や家庭の象徴として扱われる題材ですらあった
それはもう昔の話だ。
「そういう訳で畑が欲しいのさ。
なに、畑の世話も娘っ子たちにやらせるから心配しなくて良いさね」
「畑を作るのが構わないが、仕込むのは希望者だけにしてくれよ」
糸紡ぎは女性の象徴だったが同時にそれは日常的な労働の代表みたいな物でもあった。
人の生活には結構な量の布を必要として、それを織るのには大量の糸が必要になる。
その糸を紡ぐ事に大変な根気が必要とされた。
紡績技術の発展の歴史はそこから多くの女性を解放した歴史という側面を持つ。
あまり楽な仕事とも<ピクシー>に向いてる仕事とも思えない。
「それは大丈夫さ、実はその希望者はもう確保しているんだよ」
そして俺の方を見てニヤっと歯を剥き出しにして笑い
「私もあんたに税を納めようじゃないか。
織物と、そうさね、そのうちあんたの着る物を何か仕立ててやろう
霊装の邪魔にならないのが良いね」
喜んでいいんだよ!ひひひと笑うホレのおばさん。
実に魔女っぽい笑い方だった。
「それで畑には何を植えるんだ?」
「この【ホレのおばさん】が紡ぎ、織るなら「亜麻」と相場が決まっているのさ」
その後、少ししてこの宴会はお開きになった
宴が終わり丘の上のごみを片付け、カーシーの荷車に詰め込みながら少し周りを窺う
もう妖精が踊った跡にはキノコがにょきにょき生えていた。
これは食べれるキノコかどうかわからないので手が出せない。
「どうしたホ?」
一緒に掃除をしていたヒーホー君が聞いて来た。
「いや、ちょっと思い出した話があってな」
デンマークだかイギリスだかの話でこんな話があった
ニワトコの木の下では妖精の王とその取り巻きを見かけるというのだ。
その事を思い出した。
時期が最初の冬の日だったり真夏の日だったりしてはっきりしないが
まあ異界の中で日付はあんまり気にしなくていいだろ。
「今回集まった妖精たちの中にひょっこり妖精の王が紛れていたりしないかなと思ってな」
妖精の王って言ったらオベロンかな、それっぽいのはいなかったよなぁ
こんな感じの宴会を度々やってたらそのうち生えて来ないだろうか
そんな事を言ったらヒーホーに
「この異界では絶対に生えて来ないと思うホー」
と言われた、残念だ。
「とまあ、ここしばらくはこんな感じで過ごしてました」
「納得いかない!私が仲魔候補と仁義なき戦いをしている間に
そんなほのぼの生活していたなんて!私なんてトウビョウしか仲魔増えてないのに!」
そんな事を一息で言って日本酒をがーっと一気飲みする聖女ちゃん。
この人のこの姿を見るのも久しぶりな気がする。
仁義ないのか。
今日は近況報告を兼ねた飲み会だがどうも聖女ちゃんの方は思わしくなかったらしい。
「いやほのぼのしてるのは休日くらいで、普段は異界でレベリングですよ?」
最近はフロスト君も連携に慣れてきたしずいぶんレベルも上がって来た
やっぱ身近に成果や目標があるとやる気が上がるな。
聖女ちゃんは目が座った状態でハイペースに酒を飲んでる。
よっぽどストレス的な物を溜め込んでいたようだ、人の話を聞いていない。
「源氏くんは上手くやってていいなー
もうこうなったら【デビオク】に頼ろうかなー
あれは気軽に契約破棄からの戦闘出来そうにないから外れ引いた時が怖いのよねー」
本当に仁義なさそうな事言ってる……
大丈夫かな?色々と
聖女ちゃんはもうちょっと仲魔探しするようだ。
主人公、【妖精の祝福】を習得 MAG回復速度が上がる
※効果は当作品オリジナル 原作のは強すぎて困る
主人公、租庸調を納められる