コミュ障ぼっち、ガイアを行く 作:犬西向尾
聖女ちゃんに近況報告をしてから数日後、聖女ちゃんは野良の悪魔交渉を諦めてしまった。
とにかく見た目で悪魔に舐められるのが気に食わないし、
契約を結んでも性格的に合わなくて解除する事が多いんだそうだ。
かと言って【デビオク】は運用したばかりでまだまだ不安、出来れば暫くは避けたい。
そして俺に「源氏くんの異界の悪魔、紹介して」と泣きついて来た。
紹介、紹介かぁと少し悩み、いくらかの寂しさと微妙な不安を覚えつつも
最近はほぼ同じPTとして活動する聖女ちゃんだし、まあそんなに変な事にはならないか
と思い、条件を付けさせて貰ってから我が家に招いてうちの子たちを紹介した。
志願する者がいれば契約を結び聖女ちゃんの仲魔になる、そのつもりだった。
そのつもりだったが、ダメだった。
聖女ちゃんの話を聞いてる途中で<ピクシー>たちは遊びだし、
<ケットシー>たちは毛繕いをしてそっぽを向き、
<エルフ>たちは困った顔をしてこちらを見てきた。
それ以外の子たちはそもそも話を聞きに集まりもしなかった。
条件的には【デビオク】の物と大差はない。
基本的な契約はそのままで違いは【デビオク】の相場から手数料分を割り引いた契約金と
契約解除する場合はうちの異界に帰してもらう事、それくらいだ。
それほど悪くはないはずなんだが……。
むむむ、と少し考えたがわからなかった。
しょうがない、悪魔の事は悪魔に聞くのが早い。
<シロ>の仲魔である<ケットシー>に聞いてみた
「せっかく居心地の良い場所にいるんですしね。
そこからわざわざ動きたいと思う者はそうはいなかったという事です」
とある<ピクシー>が言う。
「甘いのも遊ぶ場所も宴もないんじゃ、ろーどーかんきょうの悪化よ!
強くなれても楽しくないんじゃ意味ないじゃない!」
なるほど、高給に釣られて転職したら給与以外の待遇や職場環境が悪かった、みたいな
そんなのはごめんって事か、理解できる。
そしてそれを聞いた聖女ちゃんが言う
「あの、流石に自分の異界持ってるような源氏くんと比較されても困るんだけど……」
じゃあどうするよ、聖女ちゃんと顔を見合わせてしまった。
そんなこんなで、聖女ちゃんにうちの子たちを貸し出し
何日かしたら契約は終了、その子たちは我が家に帰ってくる、そんな契約内容となった
聖女ちゃんがまた借りたくなって、そして行きたい子がいれば再度契約される事になる
出張しているだけで所属はあくまで<源氏邸>という訳だ。
ちょっと働きに出るだけなら我慢できる、そういう意見が出たからだ。
こんな超短期間の契約であるから契約金はなし、扱いもある程度決まった
強くなりたい子が聖女ちゃんを手伝う、聖女ちゃんは借りてる間の維持費を持つ
そして手伝った子たちは戦闘によって経験値とMAGを得る、そういう事になる。
仲魔が維持費向こう持ちで手間いらずで強くなる俺ばかり得している気がする
多分、聖女ちゃんが【デビオク】を利用するようになったら自然解消されて
これはその間の繋ぎという事になると思う。
片方ばかり得するようなやり方は長続きしないものだ。
聖女ちゃんは【ドルミナー】持ちの<エルフ>一人と<マメダヌキ>一匹を借りて行った。
<マメダヌキ>はいつか【フリフリウォール】を覚える事を期待しての事らしい。
このやり方は「寄騎」と呼ばれるようになる。
歴史用語的に微妙に間違ってる気がする、ちなみに命名者は聖女ちゃんだ。
聖女ちゃんにうちの子を貸すようになって
そしてまた一緒にレベル上げするようになって少しした程度の頃の話である
その日もいつものように異界を攻略し、家でごろごろしていた。
やはり【半終末】になってから異界が湧くのがはっきりと増えた気がする
レベルが上がる速度が目に見えて早くなった、異界ボスの討伐は経験値効率が良いからだ。
最近ではフロスト君が悪魔変化してより強い悪魔になり
<カブソ>もなんでそんなのを覚えたのか分からないが良いスキルも覚えた。
順調と言って良いだろう。
最近のPT編成では【悪魔召喚プログラム】の枠は
フロスト+カブソ+αと言った感じになっていて
このαが荷物持ちだったり希望者だったり行く予定の異界次第で変わったりする
変わるがだんだん安定して来た。
枠内で火力として頼りになるのはフロスト君だけであるが、それで十分だ。
そのフロスト君の成長に従い、少し思うところが出来た。
戦い方が安定、しすぎている事に対する漠然とした不安である。
今の俺のPT編成と戦い方は基本的にはこうなっている。
俺 回復役 アイテム係 指揮官
ライコー 俺の護衛、強個体or魔法に強い敵が出た時はメインアタッカー
シロ、シオン、ユキ、フロスト 魔法による遠距離アタッカー バフデバフ等
それ以外 その他
<シオン>が偵察し【アナライズアプリ】によって敵の情報を得て、
その情報から攻撃方法を選び、一斉攻撃による殲滅
生き残った敵の数に応じて<ライコー>がチャージ済みの【利剣乱舞】か
【ブレイブザッパー】でぶん殴る。
事前準備としてバフ等、色々する事もあるがこんな感じだ。
【ブレイブザッパー】はスキルカードでの習得で久々のガチャの大当たり景品だった
単体高威力物理スキルで中々強くて満足している。
異界ボスですらこのやり方で順当に撃破している
このやり方、と言っても普通に魔法攻撃出来る仲魔が攻撃して、それで勝てるなら勝ち。
<ライコー>が出る必要があれば出るだけだからそんな大層な話ではない。
単なる平押しだ。
そしてフロストのレベルが上がり火力面で頼りになるようになったことで
もう俺自身のレベル上げに使えるような異界でも十分な戦力になるようにもなった。
PTの遠距離魔法攻撃の属性が衝撃、電撃、神経、火炎、呪殺、氷結と多種になった事で
大体の敵に刺さるようになった事も大きい。
特定の属性が刺さらなくても<シロ>なら【マカジャマオン】による敵のスキルの封印
<シオン>なら各種バフデバフ、<ユキ>なら【マリンカリン】や【エナジードレイン】等
他にやれる事もある為、まったくの遊兵化する事も無力化する事もまずない。
戦力が安定した良い編成になって来たと思う。
これに聖女ちゃんとそのシキガミ、アガシオン、新顔の【トウビョウ】等も加われば
更に攻撃属性の幅もそして手数が増えることを思えばなおさらだ
しかし前述したように自分には少しの不安があった。
戦い方が安定して来たのではなくワンパターンなだけではないか?
それで勝てる相手に勝ってるだけで、何か予想外の事があったり強敵と遭遇したら、
そうなった時でも落ち着いて態勢を立て直し勝ち切ることが出来るのか?
メッキが剥がれ落ちて弱い地金が露わになるのではないか?
そんな事を思ったのだ。
別に今まで楽な敵ばかりと戦って来た訳ではないのだが
しかし勝つ見込みが十分以上にある相手を選んで戦って来たのもまた事実で……。
贅沢な悩み、もしくは臆病風の一言で終わる話かもしれない。
「って思うんだけどどうかな」
<ライコー>の部屋で膝枕されながらそんな会話をする。
頭を撫でる手の温もりが心地良い、何となく今日は甘えたい気分だった。
「そうですね……」
<ライコー>は俺の頭を撫でる手を一旦止めて少し考えてから続ける。
「戦力に不足を感じている、もしくは増えている実感がない。
そういう話ではありませんよね?」
頷く
そう言った事ではない、前者は上を見上げ過ぎれば今更な世界でそれこそ今更だ。
後者はその逆に今まで一度も感じた事がない感覚だった。
【俺たち】、そして【ガイア連合】の人たちは支部に置かれているアナライズ付きの式神で
そして今ではもっと楽に【COMP】のアプリで常にスペックの確認ができる。
レベルが1でも上がればそれは確実な成長だ
自らのスペックが上がったのかどうかわからないというような事は絶対にない
これは自分の戦力把握の為に必要な事でもあったが、それと同時に、
レベル上げをしている【俺たち】のモチベーションにも大きく関わる物でもあった
痛みや怪我を伴う戦闘を乗り越えて得られた、誰にも否定できない確かな成果の一つ
レベルとはそういう物でもあるのだ。
これがあるかないかではずいぶん違ったと思う。
それまでの努力の結果が容易に可視化出来る
思えばこれだけでもある種のアスリートからは垂涎物の環境かもしれない。
俺が欲しいのは、きちんと自分の戦力を有効に扱えているという自信
あるいはその真逆の、扱えていないという事実の確認だ。
再び俺の頭を撫でながら<ライコー>は言う。
「そうであればやはり経験を積むしかないのではないでしょうか
足りない何かを見つめ直す為にも、自信を持って戦えるようになるにも
自身の経験に勝る物はないでしょう?」
やっぱりそういう事になるかぁ
そういう事になった。
「鍛練場」
【ガイア連合】のある程度以上の規模の支部には大体置かれている施設だ。
主な用途は模擬戦である。
外から見れば小中学校の体育館を大きくした建物程度にしか見えないが
中は空間が歪められていて異常に広く、覚醒者や悪魔の攻撃にも耐えられる強度を持つ。
広いのは範囲攻撃等も模擬戦で使用できるようにするため、
強度は当然それらから耐えられるように作られた。
時にはショタオジや戦闘に向いた【幹部】たちもそこを利用しているというだけで
その強度等は察せられようというものだ。
内部は複数のコートで区切られていて複数のPTが一度に利用することが出来る。
俺はあまり利用してなかった施設だ、人によって利用頻度が極端に変わる施設でもある
今日は【ガイア連合山梨第二支部】の鍛錬場に足を運んだ。
鍛錬場内はざわざわとした声こそ聞こえるが戦闘音は聞こえない
遠目にも爆発してる姿や刀剣をぶつけ合っている姿が見えるのに
それによって発生する音が一切聞こえて来ないというのは多少の違和感を覚えさせられた。
他の利用者の邪魔にならないように区画ごとで一定以上の大きさの音を消していると聞く。
遠くに見える音のない戦闘に奇妙な物を感じながら、鍛錬場の区画の一つで人を待った。
【俺たち】はぼっちに優しい、そういう人多いのかな
人を待ちながらそんな大変失礼な事を思う。
鍛錬場のシステムの説明は事前に読んでから来たが実際に使う段階になると少し感心する。
鍛錬場の用途は模擬戦であるが、その模擬戦もどういう目的で行うのかで求める物が変わる
ただ戦えれば良い、という話ではない。
例えばPTの連携を高めたいという目的で利用する人たちの場合では
当然だがそのPTに相応しい敵、頑丈な敵かもしくは複数人PTの模擬戦相手が欲しいし
逆に個として強い敵を想定しての訓練をしたい、という目的で利用する人たちにとっては
前者のPTと模擬戦してもあまり目的に沿った模擬戦とは言えない。
そして自分が模擬戦の敵に対して求めるような能力を持った知り合い、
そんな都合が良い者がいる人ばかりではない
そのままでは鍛錬場という立派な箱が出来てもそれを利用する人は多くはなかっただろう
模擬戦相手の条件や質に困るからだ。
しかしそれを部分的に解決する方法があった。
鍛錬場に備え付けられているタブレット型式神、「マッチングくん」と呼ばれているそれに
諸条件を入力すればその場にいる条件に合った相手をマッチングしてくれる。
この「マッチングくん」は利用前に行うアナライズしたデータを読み取り、
そのデータを元に呼び名通りにマッチングするものだ。
式神なのは機密保持のためだという。
条件は「厄介な奴」程度の曖昧な物から、相手が使う属性の指定まで出来る。
ちなみにあまりに細かい条件を付けると「そんな奴はいねーよバーカ!」と表示される
妙な所で煽りが入るが中々使える式神だ。
もちろんこれを利用しない事も出来るが、その場合は模擬戦相手を自分で見つけるか、
模擬戦用のレンタル式神を借りる事になる。
レンタル式神はただの的から、戦闘が出来る式神までそれなりに種類があった
これをレンタルする場合は有料である、その代わり式神を戦闘で壊してもいい。
そういう事になっている。
また、MAGとマッカをいくらか払えば模擬戦用に悪魔を召喚してくれるサービスもあるが
こちらは少々お高い、多分俺が利用する事はないと思う。
これらによって人付き合いがあまりない人でも十分に鍛錬場の利用が出来た。
俺は今回、「マッチングくん」を利用した
対戦相手は【俺たち】の誰かになる
条件は「同じくらいから少し上のレベル」「意外性のある」にした
今日は強敵との戦闘経験を積みに鍛練場に来たのだ。
「フェアを期すために開始前に伝えておくでござるよ」
全身を忍者のような黒い服装をして目元だけ出した覆面姿の怪しい男、「自称剣豪」が言う
自称までが登録名の怪しい人だ、まあ良くいるタイプの人ではある。
「拙者の装備には仲魔である【憑依】持ちのクダやイヌガミを憑依させてるでござる
そして」
背中に背負うように差している少し短い刀をするりと抜き、斜めに構え
「この小太刀は武器型の式神でござる、拙者は一人で戦うのではござらん
一人だと思って戦うと痛い目を見るでござるよ。
拙者は普段からこのスタイルで異界攻略もしてる身でござる、ニンニン」
事前に決めたルールではPTメンバーの申告はしなくて良い事になっている
実戦では思わぬ増援がある場合もあるのだ、そういう想定もするべきという話しもあるし
隠し玉として使いたい戦力の一つや二つはあるだろう、という事だ。
しかしなるほど、こちらが勘違いをしないように配慮をしてくれたのか、ではこちらも
「俺のPTは俺、人型シキガミ、クダ、猫、元アガシオンのシルフの5人です」
今回は相手である自称剣豪が【悪魔召喚プログラム】を使わないつもりらしく
とりあえずはそれはなし、というルールでやる事になっている
そのためこの5人PTで当たるという事になる。
元々今日はフロストに予定があった為、それで特別困るというわけでもない。
しかし彼はああ言ったが、やはり5対1では手数の差からこちらが圧倒的に有利だ
彼にはそれを覆す自信があるのだろうか。
見た限りでは、自称剣豪の武装は小太刀、拳銃、服とブーツに憑依している仲魔たち
個人としては十分な物ではあるが……。
「では今日はよろしくお願いするでござる」
そう言ってコートの反対側に下がった彼の後姿を見送る、少し引っかかる所があった
彼が使っている革製の黒い手袋が気になる、正確にはその中身が。
疑いすぎかな?
あと数分で模擬戦が始まる、それまでの間は軽い作戦会議の時間だ
相手から見えないように<ライコー>の手の甲に指を二本置きながら小声で話す。
「今回はいつも通り俺の【大冷界】で仕留める
見た所、彼は物理アタッカーだ、【物理耐性】までしか持たない<ライコー>には悪いが
三……いや四合は耐えてくれ、そうすればこちらの勝ちだ」
そして指を離し懐の<ユキ>の入っている管を撫でながら
「<ユキ>は顔を狙って【炎の乱舞】だ、耐性持ちでも構わない
顔に火をぶつけてビビらせてくれ、それで十分だ
<シオン>は<ライコー>にバフをしたら待機、周囲を警戒してくれ」
<ライコー>が頷き、<ユキ>と<シオン>からも了承の気配を感じる。
「他はいつも通りで良い、何かあればその時に指示を出す、以上」
<ライコー>の手の甲に指を二本置く動作は鍛錬場に入る前に決めておいた動作である。
この動作の意味は「その間喋っていることは全部嘘」
俺、【大冷界】なんて使えないしな。
模擬戦開始のゴングが鳴る。
<シロ>、<シオン>からのバフを受けながらコート中央に<ライコー>が足を進めた
コートは一辺100メートルほどの正方形、足を止めたままでは近接戦は起こらない。
自称剣豪をその名前の通り刀剣を主に使う近距離アタッカーと想定し
それに対して<ライコー>が前に出て食い止め、壁の役割をする、そういう意図だ。
そして俺の前にクダギツネ状態の<ユキ>と<シロ>が陣取り、宙に<シオン>が浮く
遠距離攻撃で仕留める事が基本になる前のスタイルに戻った感じだ
これらの配置の意味の多くは俺を庇う為のもの、という所に思う所がないわけではない
だが俺の感傷は今はどうでも良い事だ、自分がやれる事に意識を向ける。
おそらく初撃で流れが決まる、いつでも【サマリカーム】が出来るように身構えた。
お互いに接近し、そして<ライコー>の刀の間合いにはまだならない所、自称剣豪は動いた
「では行かせてもらうでござるよ!アガシオン!」
その言葉と共に、自称剣豪が突如宙を蹴って勢いを作り<ライコー>に迫る
<ライコー>は刀を振って迎え撃とうとするが
「遅いでござる!」
自称剣豪は速かった、【スクカジャ】を多重に掛けているのだろう。
自分への斬撃を宙を前転するように避けながら鞘から抜かれた自称剣豪の小太刀が
反応が数瞬遅れた<ライコー>の首を狙って斜めに振り下ろされて
「【渾身の一撃】!」
弾かれる、<ライコー>は【物理反射】持ちである。
「はぁ?!」
そこまで驚かなくていいだろ、騙し合いはお互い様だ
ついでに言えばアナライズアプリでの解析が終わるまでに動いたお前が悪い。
そんな余計な事を考えながら指示を出す。
「撃て」
反射ダメージを浴びて血を流す自称剣豪、その足を狙って<シロ>の【マハザンマ】が、
そして顔を狙って<ユキ>の【炎の乱舞】が撃たれる。
咄嗟にそれらを避け、炎を切り払う自称剣豪の様子を見て気づく。
あの野郎、得物の長さまで騙しに掛かってやがった。
炎を払う為に振り回している刀の長さがどう見ても小太刀ではない
見たところ刀身が30㎝近く長くなっているのではないか
小太刀は刃渡り60㎝未満の刀、そこから30㎝長くなればそれはもう大太刀に近い長さだ
敵の得物の目測が狂う事は当然であるが不利になる、それをどうやってか狙ってやった
すり替えか、伸びる刀なのか最初に見せた小太刀が幻覚だったのか。
大した奴だ。
その後、集中を乱した自称剣豪は魔法攻撃の連打を受けて姿勢を崩した所に
<ライコー>の【チャージ】した【ブレイブザッパー】が決まり
首が落とされた、勝った。
落とされた首を体の方に合わせ、しばし待つ。
この鍛錬場で死んでも魂はその場に留まり、低コストで必ず蘇生が成功する
だから安心して死ぬ事が出来るのだ。
「オレノ仕事ノヨウダナ!【リカーム】!」
やって来たのは鍛錬場で働いている神獣【マカミ】だ、これを待っていた。
純粋な悪魔ではなく犬の霊からの変異なのだろう、普通の犬っぽい見た目をしている
【マカミ】は狼の悪魔なのだが、これはどう見てもちょっと太った赤柴だ。
おそらくは犬の霊から【イヌガミ】になり、そこから更に変化した【マカミ】だな。
その、あまり賢そうに見えない顔をした【マカミ】の首まわりや頬を揉むように撫でてから
「ご苦労さん」
そう言い、【マカミ】の首に下げている袋に10マッカを入れる、蘇生代だ。
ここの【マカミ】は模擬戦で死んだ人に対する【リカーム】から給料を得ている
どういう理由かは知らないが神獣【マカミ】は【リカーム】を習得する事が多い悪魔だ
そのため、こういう所に雇用の場がある。
俺が農業やる前だったら手強い商売敵だったわけだな、こいつめ、こいつめと撫でる。
……こいつ、撫で慣れてるな、撫でて欲しい所をそれとなく押し付けてきた、撫でてやる。
「ウム、タシカニウケトッタゾ!モット死ンデイイカラナ!アオーン!」
そう言って【マカミ】は去っていった。
うーん、命が軽い。
とりあえず蘇って目が覚めた様子の自称剣豪に一言言いたい
「フェアって何です?」
「拙者、見ての通り純和風な者にて、横文字には少々疎いでござる
確か野球用語だったと思うでござるが……ニンニン」
野球用語かー野球用語ならしょうがないなー
「こちらからも一言良いでござるか?」
「どうぞ」
「あのシキガミ、【物理反射】持ちでござるよ?」
「今思い出しました」
ははは、とお互い笑った。
二戦目は騙し合いはなし、という事で決まった。
対人向けの騙し合い技術を磨いてもなぁ、という今更な事に気づいたのだ
悪魔向けならこういうのとはちょっと違うやり方になる、直接的な嘘は付けないからだ。
悪魔は嘘に敏感だ。
そして正しい情報のやり取りをする
<ライコー>は【物理反射】持ちで俺は【大冷界】なんて使えない
【大冷界】は自称剣豪を速戦に誘導する為にしたブラフでしかなかった
聞き耳くらい立てているだろうと思い適当な話を吹き込んだのだ。
そして俺も情報を得る。
疑いを覚えた切っ掛けだった革手袋の中の指にはしっかり「アガシオンの指輪」があった
おかしいと思ったのだ
一人で異界攻略までやっているというのに【アガシオン】を使わないというのは。
【アガシオン】はコストが軽くて手軽に手数が増やせる良い仲魔だからな。
宙を蹴ったのは「足場になる」タイプだったのだろう、このタイプは物理型から評判が良い
しばらく前に「その使い手は宙を駆ける!」とか広告に書いてあったのを覚えている。
小太刀は小太刀(刃渡り60㎝)の形態を基本に60㎝ほどの伸縮が自在だという
すり替えが本命だったのだがこちらは外した、まあそこは別にどうでもいいか。
そして二戦目になっているのだが、少々意外な様相を呈している。
<ライコー>が押されているのだ
シキガミで、近接戦の経験を積んでいて、そのためのスキルも得ている<ライコー>が
それが正面から押されている。
読み合いで流れを奪った初戦の正しさがある意味証明された形になっている。
二戦目は奇襲等はない順当な始まり方をした戦闘になった
自称剣豪は刀のサイズを常に大太刀サイズにして振り回し、切り合っている
一戦目で弾いた事からもわかるように自称剣豪は反射を貫く【貫通】を持ってはいない
それを武器型式神が【火龍撃】【氷龍撃】【雷龍撃】【風龍撃】と言った
属性付きのスキルを使う事で補っている。
足場になるアガシオンを上手く使い、トリッキーに動き回る本人の体術も見事なものだ。
前後だけでなく上下左右、あらゆる場面で足場を作り読みにくい動きを常に続けている。
また装備に【憑依】している仲魔たちも時折、低位であるが攻撃魔法を牽制に使ってくる
出鼻を挫くあるいは目眩ましに使う程度の物だが
その程度の物だと見做して気を抜けば手痛い攻撃をしてくるかもしれない、
こちらも油断して良い物ではない。
スキル、体術、牽制、これらの組み合わせで<ライコー>に対して優位に立ちまわっている
俺が<ライコー>に回復魔法を掛ける頻度も高い。
こちらの仲魔たちも負けじと<ライコー>の為に攻撃魔法で援護しているのだが
殆どが防がれ、躱され、切られている、無意味ではないが効果は薄い。
そしてその動きの中から時折、物理系の範囲攻撃スキルを俺にぶつけようとしてくるのだ
直撃こそないがこれは<ライコー>の隙を突く実力がある事を示す。
こりゃやばいな。
<ライコー>はPTの最強戦力だ、それが抜ければこちらは楽に切り伏せられるだろう
同レベル帯の悪魔と比較してもステータスに勝り、スキルの取捨選択が出来て
それによって優秀な耐性を獲得し更に強力な霊装を身に纏う。
人と悪魔の良い所取り、それが【ガイア連合】の人型シキガミだ。
それを正面から近接戦で押せる相手に<ライコー>抜きでは勝てない
つまり<ライコー>が抜かれるもしくはやられれば負け、そうじゃないなら勝ちだ。
わかりやすい勝負だな、しかしまあ実質5対1なのに何でこんな事になってるんだ?
<ライコー>に頼りすぎって事か?
【俺たち】の才能と経験によって磨かれた戦闘技術、それを少し甘く見ていたか。
一瞬、<ライコー>の【魔力開眼】の使用を検討するが退ける。
【魔力開眼】を使用すれば戦局は間違いなく有利になるはずだ、
だがこれは1日に一度しか使えない切り札、実戦ならともかく模擬戦で使うのはないだろ
これに頼る変な癖が付いたら困るのは俺だ。
であれば俺が出来る事は……
隠し玉があった時の為に待機していた<シオン>に【フォッグブレス】の使用を指示する。
それと同時に<シロ>には攻撃は控え【雄叫び】と【タルカジャ】を適宜使うように指示。
相手を手数で押す多対少戦用の戦い方ではなく、
バフとデバフを積み重ねて戦う対ボス戦を意識した戦い方に切り替える。
バフとデバフの積み重ねは女神転生の基本だ。
形勢はゆるゆると逆転した。
「これは厳しいで、ござるな!ニンニン!」
自称剣豪が致命傷には至らずとも浅くはない傷を負った身体を押して右へ左へ飛び跳ねる
だが、度重なる【フォッグブレス】によって回避率と命中率が、
つまり動きのキレが落ちた今では恐ろしい動きとは言えない
事実その【火龍撃】を纏った斬撃は余裕を持って<ライコー>に弾かれた。
憑依している彼の仲魔たちも先ほどから回復魔法しか使えていない
ダメージレースで負けてるせいだ、それのせいで<ライコー>への牽制が出来ていないのだ
血を流し体力を削りながら戦う者への回復は敵への攻撃よりも優先される。
しかしその為に<ライコー>へ有意なダメージを与える事が出来なくなっている。
一方こちらはその逆である。
前衛である<ライコー>へのバフと敵へのデバフが有効に働いたおかげで余裕ができた
自称剣豪のPTには【デクンダ】【デカジャ】等のバフデバフを打ち消す魔法はないようだ
何度かデカジャストーンを使い【デカジャ】してきたが、やがてそれも尽きた。
時折こちらに飛んできていた【デスバウンド】も間を縫うように撃って来た拳銃の連射も
今となってはそれほど怖くない、苦し紛れに放たれるだけの攻撃でしかなく
直撃を食らっても回復魔法と【サマリカーム】で立て直すことが出来るからだ。
後はもう余裕を持って押し切れるだろう。
……という状況になったからこそ注意が必要だ
【俺たち】ならば切り札の一つや二つは持っているはず、それが何かはわからないが。
<ライコー>は大技での一撃必殺よりも持久戦に持ち込む事にしたらしい
スキル等はさほど使わず、隙を与えないようにじわじわと通常攻撃で切り刻む。
急所もあわよくばで狙う事もあるが、切り刻めるならどこでもいいようだ
これによって出血と、そして回復のためのMAG消費による消耗を強いる
MAGが尽きて回復も覚束なくなった辺りで仕留めるつもりだ
後方、つまり俺のMAGが潤沢であり削り合いであれば勝てると踏んだのだろう
その期待には応えなければならない。
「ウグッ、アガシオン!」
首筋を狙った<ライコー>の斬撃を左腕を犠牲にして逸らした自称剣豪が痛みを堪えて叫ぶ
そして前方への踏み込みと見せかけた動きでアガシオンを蹴り、反動で距離を開けた。
同時にその蹴りでアガシオンを<ライコー>の前に上手く突き飛ばして
「【自爆】!」
辺り一面を火と煙が包む、<ライコー>と自称剣豪の姿が見えなくなった
通常であれば自爆は強い衝撃が走る、それが衝撃はそれほど強くなく煙が多い
これは煙が多くなるように調整をしているのだ。
目眩ましのための自爆か、あるいは仕切り直しか
<ライコー>と自分の霊的な繋がりに意識を向ける、特に何かされてはいない大丈夫だ
いつでも回復魔法を掛けられるように準備をし、煙が晴れるのを待つ
普通なら腕の一本も落とせば出血で判断力が落ちるし動きが鈍くなる事も期待できる
だが相手は【覚醒者】で【俺たち】だ、そんな期待はするべきではない
手足の一つや二つ落とされる事など割と良くある事なのだ。
であれば痛みによって咄嗟にしてしまった行動、とは考えづらい
仲魔の【自爆】という手札を切ったからには意味があるはず
嫌な予感がする。
瞬間、背筋に氷のように冷たいものが走った。
その霊感を信じ、右手で腰に括り付けてある【テトラコーン】に触れながら
前方に飛び込むように倒れる!
「【暗夜剣】!」
遅かった、首と背中に熱い物を感じながら意識が消えた。
「負けたか」
PTリーダーである俺か自称剣豪のどちらかが死ねば勝敗が決まる、そういうルールだった
蘇生手段が複数あるPTではそうでもしないと延々と続くからだ、負けた。
有利に進んでいた戦いだけに悔しさを強く感じる。
模擬戦とはいえ戦闘での死亡はこれが初めてだった
今まで回復要員が死ぬような過酷な戦闘はしてこなかったからだ。
すっと意識が消えて、浮かび上がるように目が覚めた。
そのまま鍛錬場の天井を見上げながら思う。
なるほど死ぬとは、そして蘇生されるとはこんな感じなのか
修行時の死とあまり差はないな、そこまで思ったところで頭を振る。
いやこの思考は危険だ、修行でも模擬戦でも蘇生の保証はあるが実戦では無いのだ
死を侮るような思考はするべきではない。
生も死もどちらも重い物だ。
「とりあえず一矢報いたでござるな!ニンニン!」
落とされた左腕を代表する大小様々な傷を既に癒した様子の自称剣豪を見る。
顔は布で覆われて目元くらいしか見えないがその目元が中々ご機嫌な様子だった、悔しい。
感想戦を行う。
突如、後ろに現れたのは【トラポート】によるものらしい
【トラポート】への理解を深めた結果
視認できる範囲での戦闘向け短距離トラポートの実用化に成功したのだそうだ。
本人曰く「【夢幻の具足】をイメージしたでござる」らしい。
【夢幻の具足】はデビルサバイバーで登場した種族【幻魔】の種族スキルだ
障害物を無視した移動をする事が出来る。
多分これを使用した奇襲攻撃が自称剣豪の切り札だろう、まんまとしてやられたわけだ。
途中から俺狙いに切り替え、【トラポート】で距離を詰める機会を窺っていたらしい
【自爆】の煙で見えなくなった時点ですぐに動いて位置をずらすべきだったか
でもそんなの読めないよなぁ、実戦だったらどう動くのが正解なんだろ
いや、そもそも自爆の煙をそういう風に使う相手なら多少動いた所で無駄か
目視以外の方法で観測する事くらいはするだろう、そうでないと機会を逃す事になる。
それとこちらの仲魔の妙な頑丈さについて聞かれた
多分【ヒュギエイアの杯】を使って体力の嵩増しをしたのと
俺のPTの仲魔はほぼ全員【三分の活泉】か【五分の活泉】を持っているからそれの事だな
「あの……」
「何でござるか?」
「もう一戦しましょう」
「嫌でござる、次は負けそう故に。
それに拙者、繋げたばかりだから腕が痺れて……」
そういう彼の腕を見る、肉体的には悪くはないが霊的には不細工な繋げ方をされていた
これは良くない。
「【ディアラハン】」
「あれ?」
これで良いな、勝ち逃げは許さんぞ。
その後、他の人も交えたりして勝ったり負けたり死んだり殺したり、模擬戦を行った。
死亡や蘇生を繰り返してるうちに【食いしばり】を覚える事もたまにあると聞いたが
残念ながらそういう事はなかった。
でもまあ、良い経験になったと思う。
「ただいま」
異界に帰り、俺たちが帰ってくるのを待っていた<カーシー>を少し撫でてから荷車に乗る
<ライコー>たちが乗り込むのを確認してから<カーシー>に声をかけた。
「出してくれ、ゆっくりで良いよ」
「しゅっぱーつ!」
<カーシー>の能天気な声と同時に荷車がゆっくりと動く。
うちの異界の西側は秋になっている、その少し冷たい空気の中を荷車は走った。
家に着くまで少しある、その間今日の模擬戦の軽い反省をしておきたかった。
こういうのはその記憶に新しい間にやった方が良い。
「どう思う、<ライコー>?」
勝敗、敗因、対戦相手の考察等を簡単に書き留めた紙を見ながら<ライコー>に聞く。
<ライコー>もその紙を覗き込んでから
「そうですね……」
<ライコー>との反省会が行われる。
「まあ何とも、レベルが上がるたびに足りないものが増えている気がするな……」
もちろん気のせいだが。
今日の模擬戦、勝率自体は悪くはなかったが楽な戦いばかりでもなかった
だから目的だった「強敵との戦い」は達成できたと思って良い
おかげで自分も「同じくらいのレベルの人たちの中では弱い方ではない」くらいに思えた。
こういう感覚は勝てて当たり前の戦いばかりしていると得られないものだ。
とはいえ「満足!俺は最強!足りないものなんてないわ!」なんて思えるわけもなく
今後の課題がこうやっていくつも見つかるわけだ。
細かいのをストーン頼りにしてると連戦で尽きた時、意外と厳しいなぁ
そのうち【デクンダ】とか【デカジャ】を誰かに覚えさせようかなとか
うちのPTって耐久力はある方なんだなとか
大体負けた時って俺が真っ先に死んでるパターンだなとか
人型シキガミ複数のPT強かったなぁとか
<シロ>の【マカジャマオン】や<シオン>の【テンタラフー】は刺されば強いとか
そんな事を思い出しながら<ライコー>の意見を聞く。
「今日の反省点の中で、ここは消しても良いでしょう」
「PT半壊時の俺の回復以外でのPTの立て直し方」「更なる遠距離火力」
課題として書かれていたそこの項目を指で示す<ライコー>、そして続けた
「実戦では<カブソ>さんもフロストさんも加わりますので」
<カブソ>はレベルが上がって新しいスキルを得た、その事を言っているのだろう
覚えたスキルは【リカームドラ】だった
本猫も何でこんなの覚えたのか分からないと首を傾げているスキルである
どうもスキルという物は悪魔自身ですら必ずしも自由になるものではないらしい。
【リカームドラ】
女神転生お馴染みの使用者が死亡する代わりに味方全員を回復、蘇生する回復魔法だ。
作品によってはHPだけでなくMPも回復させてくれるらしい
ゲームでは工夫次第ではそこそこ使える魔法らしいのだが
俺はあまりそういうプレイをしていなかったからピンと来ない。
この世界では【俺たち】の中ではそれなりに知名度がある回復魔法であり
ずっと昔に効果の検証も済んでいた。
この世界でも使用者の死の代わりに味方を回復する所は変わらない
違いは、その使用者のレベルや保有MAG等でその効果が大きく変わるというところだ
例えばレベル1未満の簡易式神が使用した場合では【ディア】一発分がせいぜいだと言う
ゲーム上よりも明確に命の価値に差がついている、そういう事なのかもしれない。
レベル20を超えた自分なら複数人に対する蘇生が出来る、とは<カブソ>本人の言葉だ。
また契約した悪魔であるからその縁により死んでも確実な蘇生も出来るという。
ただし<カブソ>が貯めているMAGを消費する形になるので使えるのは1戦闘に1回
使用した場合はその分のMAGの補填も要求された、受け入れた。
これがあれば咄嗟の立て直しは十分できる、最近ではいざという時の切り札と見ている。
とはいえ気分的にはあまり使用したいスキルではない
後で蘇生するとは言え「だから死んでくれ」とはそう口にしたい言葉ではなかった。
そして話題に出たもう一人の仲魔、フロストは……
「お兄さん!」
声をした方向に視線を向けると
<ジャックフロスト>たちを従えてブンブン手を振っている【キングフロスト】がいた
錫杖のようなものを持っていて冠を被り、ジャックフロストよりも二回りくらい大きい
そんな姿をしている雪だるまだ。
その周りには<ジャックフロスト>たちがいる。
今のフロストは魔王【キングフロスト】だった。
【氷結ギガプレロマ】や【コンセントレイト】等を覚え、ひたすら火力が上がった。
頼りになる良い仲魔だ。
荷車をフロストの前で停めてもらい降りて声をかける
「ただいま」
「おかえりホー!」
フロストの周りにいる10体ほどの<ジャックフロスト>たちを見る。
この子たちはフロストが【キングフロスト】になってから湧くようになった子だ
「キングがいるから来たホー!養ってもらうホ!」とか言っていた。
【キングフロスト】に【ジャックフロスト】は付き物だからな、そういう事もあるのだろう
ただフロストの方は養う気はないらしく自分の戦力として働かせるつもりらしい
今日はそのための訓練をしていたはずだ、そう言っていた。
「それで、訓練の成果はあったのか?」
【ジャックフロスト】たちの訓練というのが想像できなかった
まったく上手く行く気がしない。
俺のその疑問の声にフロストは顔をきゅっと引き締めて
「こんな感じホ!……【フロスト衆】!二列縦隊に、集まるホー!」
フロストの号令で素早くフロストの前で二列の縦隊を作る<ジャックフロスト>たち
「気を付け!前へ、ならえ!」
さっと腰に手を当てる<ジャックフロスト>たち、自信満々の顔をしていた。
「こんな感じホ……」
「お、おう」
なんて言ったら良いのかわからない。
<ジャックフロスト>たち、【フロスト衆】なる名称の集団は
「おいらたちの一糸乱れぬ動きに感動してるホー」「今日一日の訓練の成果だホー」
「ヒー!ホー!これはご褒美のアイス期待できるんじゃないホ?」
「おいらは謙虚だからチョコ最中で良いホ」「おいらはみ〇れだホ」
「アイスにかき氷は入るホ?」「バニラアイスこそ至高ホ」
と和気あいあいとしている。
「実戦に出すまでにせめて方向転換が出来るようにするホー!」
フロストは燃えている。
俺からは「あまり無理はするなよ」としか言えなかった。
<カーシー>が少しスピードを上げたようだ、風が当たって涼しい。
「フロストさん、元気になりましたね」
「そうだな、良かったよ」
<ライコー>の言葉に頷く
フロストが悪魔変化した時、目当ての悪魔と違うものになってしまったらしく
「違うホ~騙されたホ~」とのたうち回っていたのだ。
その後も戦闘時では今までと変わらなかったが、時間が空いた時など少しぼんやりしていた
悪魔変化先が思うようにならなかった事を気にしていたんだと思う。
今はようやく【キングフロスト】である自分に折り合いがついたのだろう
ああでも、「違う悪魔に変化出来るよう頑張るホ」とも言っていたから違うかもしれない。
何になりたかったんだろ、【じゃあくフロスト】かな【フロストエース】かな
まあそこは良いか、本人も言いたがらなかったし。
それにしてもあの訓練、どこまで意味があるんだろ。
「ん!主様!主様!しばらく道を逸れるよ!工事中!」
見れば前方の道にカラーコーンが二本置かれている、<カーシー>の言うように工事中だ
その先で<エルフ>たちが道路工事に使う木の枝や砂利、粘土等を集積しているのが見えた
「こっちの方はあとは養生だけっぽいね!養生養生!」
工事が終わって間もない乾燥中の道路を見ながら<カーシー>は荷車を曳く。
確かこの状態になったら<ホレのおばさん>が道から水分を抜くんだったな
【ホレのおばさん】は井戸と泉に関連性がある悪魔だ、それで水を多少扱う事が出来た。
普通に乾燥させると時間がかかるから最後の仕上げを<ホレのおばさん>にやって欲しい
そんな事を工事責任者の<エルフ>が言っていたはずだ、それを待っているんだろう。
道の横を通り少し揺れる、整備した道路のありがたみを少し感じた
整備した道路と言っても別に舗装してあるわけではないが、それでも違うんだな。
忙しそうな<エルフ>たちに軽く声を掛けてその横を通り過ぎて行った。
道中、今度は空飛ぶ<ピクシー>と遭遇した、糸の束を抱えている。
「ねえねえ!良いでしょこの糸!私が紡いだのよ!」
糸の良し悪しはわからないし細くて見えにくいがとりあえず相槌を打つ。
「ちゃんと糸になってるじゃないか、立派なもんだよ」
「そうでしょ!ようやくお婆ちゃんから合格貰ったんだから~!」
満面の笑顔の<ピクシー>はそれだけ言ってどこかに飛んで行った
上手く紡げた事を報告したかっただけらしい。
お婆ちゃんとは<ホレのおばさん>の事だ
おばさんとかお婆ちゃんとか婆とか鬼婆とか<ピクシー>たちに好き勝手言われている。
<ピクシー>たちとは特に仲が良いようだ。
家屋に入る前に遠くの畑で一反木綿の農作業を手伝っている<ピクシー>たちの姿を見た。
収穫を手伝っている様子だった、ナスやコーンを小さい体で抱え込んで運んでいる
【ピクシー】には農作業を手伝う逸話がある、だからそれは不思議な姿ではない。
とはいえ、うちの<ピクシー>は【ピクシーの矢】や【妖精の軟膏】の製造もしている
更に一部の子たちは糸紡ぎまでしている
そしてこれは<ピクシー>に限らないが異界に湧いた悪魔との戦闘もしているのだ。
働かせすぎかもしれない。
「<ライコー>、後で働いてる妖精たちに何か差し入れしておいてくれ、内容は任せる」
「かしこまりました……【フロスト衆】の分もですか?」
「うん、まあそこはフロストと相談してな?」
列に並べるようになっただけで甘やかすのはダメ!と言われるかもしれないが。
「ワン!ワン!」
話を聞いていた<カーシー>がこちらを見ながら尻尾を振って可愛い犬アピールして来た。
上目遣いに見上げている、あざとい子だ。
「……<カーシー>にもな」
「はい」
ふふっと<ライコー>は楽しそうに笑った。
模擬戦をした数日後、珍しい客人を我が家に招く事になった。
リーダーと山田さんだ、この二人が座卓を挟んで正面にいる
俺の知らない間に何度か偽名を変更したそうだけど結局今ので落ち着いたらしい。
ピクシー狩りをしていた頃とは髪型が違う、頭を丸めてスキンヘッドにしていた
当たり前だが霊装も更新をしているようだ、あの頃のそれとは込められている力が違う
しかしそれ以外の見た目はそれほど変わった様子もなさそうな、そんなリーダーが言った。
「今、ちょっとした修学旅行を計画していてなぁ。
それのお誘いに来た」
修学旅行?
「天使狩りのお誘いだ、恥ずかしい話だが天使を殺す機会に恵まれなくてな
だが日本にいる穏健派天使を辻斬りするわけにもいかん、俺が社会性がある男だからだ。
そこで人を誘ってちょっくらお勉強会と洒落込もうと思ったわけよ」
そう言ってリーダーは湯呑のお茶を一口飲んでから口にする
「場所はドイツ、テューリンゲン州がヴァルトブルク城。
不幸にも政治の才能があった詩人が再建を提言した事で有名な城だ。
他にも謂れはあるがそこは俺にとって重要じゃねぇな、ここを攻める」
城を?
「詳しく、聞かせて貰っても良いですか?」
俺のその言葉にリーダーはニカっと歯を剥き出しにして笑い
「そのつもりで来た」と座卓の上に資料を広げ始めた。
敵と戦うために外に出る、そんな日が来たのかもしれない
そう思った。
なるべく酷い事になる所の地名は出さないようにしていましたが
D国のV城だのT州だのA市だのE市だのG市だの書いてると混乱したので
現実の地名出します、もしかしたら唐突に謎の配慮をして地名を弄るかもしれません
キングフロスト レベル30
耐性は変化なし、氷結吸収、火炎弱点
キングブフーラ コンセントレイト 氷結ギガプレロマ
空からの贈りモノ(ジャックフロスト限定のサバトマ、召喚時少しバフが付く)
突撃フロスト衆を習得
恵まれたスキルの代わりにキングフロストの間は異界内のジャックフロストの面倒を見る事になる
聖女ちゃんの【トウビョウ】
物理耐性、【変化】持ち、空飛ぶ蛇
トラフーリ、暴れまくり等あるがあまり使われない
変化で大きくなり、聖女ちゃんの乗り物兼荷物持ちになる
実質逃走用の使い魔
多分今後登場しない人物設定
自称剣豪
中肉中背、性別男、ぼっち
ステタイプ 速力運
普段のスタイルは短距離トラポートの繰り返しで異界内を移動
ボスの背後に現れ【霞駆け】で混乱させ【暗夜剣】で技を封じ
その後首を取る戦闘を繰り返していた、実は物理反射の敵はライコーが初
マッチングの条件は「対ボス戦想定」「頑丈」にチェック、これで主人公PTと当たった
ボスが全回復と蘇生使うのはクソゲーでは?とマッチングくんにご意見を出す、無視される
今回使わなかったCOMP内の仲魔は【自爆】持ちオンリー、召喚出来る爆発物として使う
鍛錬場のマカミ
赤柴、自称ぽっちゃり
霊地活性化で湧いた悪魔に主人が殺された事で餓死する事となった元犬の霊
元<イヌガミ>、現マカミ
マカミに変化した事で鍛錬場に配属が決まった
ガイア連合で飼われているまだ主がいないイヌガミ達相手に
普段から、我マカミぞ?とマウントを取っている