コミュ障ぼっち、ガイアを行く   作:犬西向尾

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5話

 人の生んだ深淵なる闇であるガチャにマッカを吸い取られ、シロには相手にされず

<ライコー>もメンテナンス感覚で修理に出してしまった今(よく考えたら今まで一度も修理に出した事がないのに気づいて突発的に怖くなった)

 俺は暇を持て余し【ガイア連合山梨支部】を彷徨い歩いている

 その俺の前に見知った顔が通り過ぎれば用もないのについ声をかけてしまうというもの

 

「久しぶり元気してた?」

「やあ、お客人久しぶり、それはこっちの言葉だよ、どうだいあれから?」

 ギャアアアア! 班長のニトリが流暢に喋りだした! 

「……」

 驚きで言葉が咄嗟に出ない

「なんだい、用があって話しかけたんじゃないのかい、だんまりなんて随分じゃないか」

 拗ねた顔をするニトリ

 おかしいなぁ俺の知ってる班長のニトリは無表情で棒読みでひらがなしか話さないんだけど、あれぇ? 

「いや久しぶりでついね、見違えたよ可愛くなったね」

 とりあえず褒めろ褒めてから話の用件を探そう、反射的に声をかけたなんて言うと不機嫌になるかも

「ああそうかい、あれから盟友の羽振りがちょっと良くなってね」

「それでヴァージョンアップしたってわけさ」

「私は非戦闘型だから戦闘スキルとかにはリソース回さなくて済むからさ、結構変わったろ?」

 そう言ってニヒヒと笑うニトリ、いや本当変わった言葉が流暢だし表情もコロコロ変わる

 よしよし機嫌は悪くないな

 次は服装褒めるかいや今までと違いが判らない髪型は変わってない、ええい用件作ろ

「それで何か用かい?」

「ああ、それなんだけど」

 

 

 

「宝玉君があたしのところに来るなんてね、もう来ないと思ってたよ」

「また文無しになっちゃったの? 働くなら簡単でも異界絡みの方が報酬いいよ」

 完成しているように見えている宝玉輪の何かが気に食わないのか、宝玉を付けたり外したり持ち上げたりして渋い顔をしている班長

「時間が空いちゃいまして」

「時間が? シキガミちゃんとよろしくしてるんじゃないの?」

「よろしくなんてしてませんよ、今修理中です、だから帰ってくるまで働きたいと思いまして」

 何でもかんでもそういう風に思うのはどうかと思う

「修理中? ああ、当ててあげようか? ガチャで爆死したでしょ」

 !! なんでわかったの! 

「図星みたいね、山梨支部にはマッカさえあれば遊ぶ所がたくさんあるからさ」

「普通の娯楽はもちろん、霊装のショッピング、シキガミ用のコスプレ服の展示と販売、温泉、食事処、

 楽しいもの美味しいものも探せばいくらもある、シキガミの修理中は普通はそれを楽しむ休暇ってわけ」

 まあ「シキガミと一緒じゃないと楽しめない」って人も結構いるみたいだけどねーと続け

「それなのに暇してる奴にはとりあえずガチャで爆死したってカマかければ、まあそこそこ当たるんだよねー……よし完成っ」

「じゃあ暇つぶしに聞いてあげる」

 宝玉輪をしまい込み、工具の片づけをしながら班長は言う

「なに狙ってガチャ爆死したのさ」

 

 

 話しは長くなるんですが

「沼った言うだけなのに?」

 これは俺のシキガミ<ライコー>に汎用スキル【剣術】を覚えさせてちょっとした頃

<ライコー>の後姿の尻を見ておm「ちょっと待て」

 はい? 

「そういう話しするなら怒るよ」

 いやそういう話じゃないから大丈夫です、話し続けますね

 後姿の尻を見て思ったんですが、【剣術】覚えさせてから歩き方がより人間的になったなぁって

「ああ、ある種の汎用スキルはそういうところあるね」

「人としての概念が強くなるって表現で広まってる話し」

 ええ、それです、でもそれちょっとおかしいんじゃないかと思って

「おかしい?」

 人間の身体の動かし方は、人間の身体の構造、機能、重量バランスなどの各種事情のもと、人間の身体を効率良く動かすために生まれたもののはずです

 だけどシキガミの身体は紙の塊で内臓もなく重量バランスも全く違います

 将来的にはほぼ人間と同じにして見た目以外も見分けを付けなくするって話もありますが、とりあえず俺の<ライコー>はまだそうじゃないです

 そして条件が全く違うシキガミの身体を人間のように動かすなら

 人間のように動かすようになる前と比べて動作に意味もなく、非効率でエネルギーのロスが多くなって

 つまり弱くなって消費MAGが多くなるのが自然なんじゃないかなって

「けどそんな話はないでしょ」

 はい、ないです、【剣術】は良いスキルで需要が高いですし

 そもそもシキガミは大量に運用されその規模に相応しいノウハウも蓄積されています、その上で「剣術スキルを積んだら弱くなった」なんて話はないです

 

 汎用スキルに【食事】というのがあります

 これを付けると消化器官が存在しないシキガミが普通に食事をすることができて、しかも吸収できます

 これが【人としての概念が強くなる】という事なんですが

 つまりこの【概念】とは「機能的に出来ない事」よりも優先される上位のルールという事です

【機能的にはできない(下位ルール)】けど

【そのシキガミは人間なのだからできない訳がない(上位ルール)】だからできる

 だから【剣術】を得たシキガミは得る前のシキガミより強い

 出来ない理由や阻害する現実的な要因を「概念」というより上位のルールで塗りつぶすから弱くなる理由がない、単純に出来る事が増えるから強くなる

 汎用スキルの習得は「技能を覚える」のではなく出来るよう概念を上書きするのではないか

 

 で、考えたんです

 スレでガチャの外れ扱いされてる汎用スキル【水泳】これは実は当たりスキルじゃないか

 つまりこれはシキガミを「人間と同じように水に浸からせる」事ができるようになるんじゃないか

「シキガミは最初から完全防水だよ、血しぶきを浴びて脆くなっちゃ困るからね」

 いやいやいやそういう話じゃなくてですね

 大事なのは人間と同じという事で、これは外で異界回ってるような人たちには結構大きい話になるんじゃないかと思ってですね

「どういう事?」

 派出所にある回復設備は派出所ごとでまちまちという話は知ってますか? 

「掲示板でも何度か話題になってたし知ってるよ」

 で、その回復設備に【霊温泉】というのがありまして

 地方霊能力者の紹介する【霊温泉】は等しくゴミらしいですけど

 派出所にたまにあるそれは星霊神社の温泉ほどじゃなくても普通に回復設備として有効だそうです、俺はそっちはまだ入った事ないんですが

 まあとにかくちゃんと効く【霊温泉】に人間が入ると回復速度が上昇する、それ以外にも諸々の回復効果がある

 で、シキガミは霊地の魔力を吸収して自動修復する機能がある

 シキガミが【霊温泉】に概念上【人間と同じように温泉に浸かった】という事になれば人間と同じように回復速度上昇が見込めるんじゃないかなーと、つまり自動修復速度の上昇です

 水とお湯の違いがありますけどまあそんなもんは些細なことでしょ

 そうなれば結構助かる話になると思うんです、霊温泉が実質シキガミの修理装置になる、温泉に入るだけなら修理の人手もいりません

 今はあんまり使えないスキル扱いされてるけど検証の余地があるんじゃないかと

 そのために汎用スキル【水泳】が欲しかったんです

 あからさまにネタや外れ扱いされてるようなスキルって次はいつ作られるかわかりませんし

 

 

「ふーん、割と面白い話し聞かせてもらったわありがと、ところで本題に入って良い?」

 なんですか

「結局ガチャにいくら突っ込んで爆死したの?」

 そんな昔のことはわからない

 ケラケラ笑われた

「しかしちゃんと考えていたんだね、てっきり<ライコー>で【水泳】だからランサーでそういう話かと思ったよ失敬失敬、あははは」

 もちろんですとも、はい、何をおっしゃっているのかよくわかりませんが

 私のこの気持ちに嘘はないのでありますはい

 

 

 

 

 ちなみに他に狙ってた「戦闘スキル【ヒートウェイブ】」「汎用スキル【弓術】」

「童子切安綱レプリカ改二」「ショタオジのネコマタ監修……か!? ちゅ〜〇もどき100食分」

(最後のはジョークアイテム枠である)

 どれも当たらなかった、せめてどれか一つ当たればなぁ、やはりガチャは回数回さんといかんか

 

 

 

 

 

「まあなかなか楽しく生きていたようで良かったよ」

「あたしの方の近況も話しておこうか、宝玉輪の話しもあるし」

「その前に……ニトリー! お茶ー!」

 違和感を覚えた

「【家事】スキル入れたんですか」

 確か自分が働いてた頃はニトリはお茶を淹れたりはしなかったはずだ

「違う違う、そっちは宝玉君がいた頃からあるよ、何を隠そうあたしの世話はニトリがやっているのだ」

「入れたのは【食事】の方」

「いややっぱねー、飲み食い出来ないのに自分の分だけ作らせるのってちょっとアレじゃない?」

 頷くしかない

「私としては出来るのにさせない方がアレだと思うけどさ、どうぞ」

 にとりがお茶と煎餅を三人分運んできた、

 早い、言われる前に準備していたのかもしれない

 礼を言い受け取りお茶を啜る、普通に美味しい

 

 

「まず宝玉輪を作るきっかけになった、恐山の話しだけど」

「あの時の不安は何だったのって感じになっちゃったね」

 知っている、あの後あっさりガイア連合は恐山に対する積極的介入を決意

 霊山恐山に巣食う有象無象の悪魔たちを瞬殺、拠点の確保、そして悪魔に陥落された霊的拠点の攻略と解放まで一気にやったらしい

 今でも結構な数の霊能者が拠点維持のため恐山にいる

 恐山そのものを陥落寸前まで追い込んでいた悪魔たち、それはいったいどれほど強かったのか

 その動きの原動力になったのが

「やっぱ幹部って呼ばれるような人って強いんですねぇ」

 最初期からガイア連合で活躍している最古参霊能者、アナライズの基準になった男、

 拳一つで悪魔を滅する筋骨隆々の大男、メシア教絶対許さないマン、人呼んで霊視ニキ

 正直憧れる

「終末思想を唱える秘密結社ガイア連合の幹部だもの、そりゃ強いっしょ」

「ですねー」

 納得しかない、お茶を啜り煎餅を齧る

 

「それであたしとしては思っていた形とちょっと違うけど、まあ話しに聞く恐山での戦いが激戦になると思って」

「とりあえず完成した宝玉輪の現物全部と、仕様書と今までのテスト結果を纏めたのをショタオジさんに直接ぶちこんだわけなんだけど」

「なんかあたしがぶちこんだ日にはもう全部終わってたらしいのよねぇ」

 ありゃりゃ

「でもショタオジさんが宝玉輪を高く評価してくれたっぽくて」

「宝玉輪一個当たり結構良い金額で買い取ってくれるって話になってさ」

「ちょうど良い機会だからそのマッカ分を全部注ぎ込んで、しかもショタオジさんに強化してもらったのが今のニトリ!」

 ニトリの身体を抱きしめ両手で両頬をムニムニする班長

「もうーやめてったらそれー」

 口では嫌がってるようだが喜んでるなこれ

「良いでしょ! あげないよー」

 自慢されてしまった

 良いけど、もらっても困りますがな

 まあ文字通り血肉を削って作ってた宝玉輪だ、しっかり報われて良かった

 努力した人が報われるのは良いことだ

 

「そんで問題がこれから」

「問題ですか?」

「戦闘評価の為にショタオジさんがあたしの宝玉輪を実戦に出てる人に回したら、変に評判良くなっちゃってさ」

 良いことじゃないか

「いざという時に回復アイテムとして使えるアクセサリーとして」

 あー

「お洒落好き女転生者とかシキガミを着飾りたいって人とかの需要に当たっちゃってさ!」

「しかも誰かが「これ女性悪魔との交渉とかに使えるんじゃね? 光物だし、女神とか鬼女とかに」みたいな余計な事言いやがってさ!」

「名指しで依頼来るなんて今までなかったから嬉しくて何にも考えず全部受注しちゃってさ!」

「なんかもう仕事もマッカもうじゃうじゃ来たんだけど原料の宝玉が足らないの!」

「買い漁っても現物が足らないの! 自家製宝玉は一日数個しか作れないの!」

「他の人に宝玉作るの頼んだら質が悪いの納品されてうんざりなの! もう宝玉君じゃないと満足できないの!」

「このままじゃせっかくの依頼なのにごめんなさいしなきゃいけないの!」

「宝玉君、何日バイト入れる? 一日百個とか出来ない? 今ならマッカで給料払えるよ? ね、ね?」

「百個とか無理です、まあしばらくの間なら……」

「ありがとう!」

 

 

 ふーふーと息を落ち着かせてお茶を飲んでる班長、ブラックとはとても言えないガイア連合でセルフブラックしてる人なんているんだなぁ

 とりあえず話の種を一つ

「そういえば恐山の事なんですが」

「うん?」

「今後どうなるんですかね、ほらガイア連合って今までそこまで外の組織に深く関わった事なかったじゃないですか」

 恐山が異界に沈むのを恐れて動いた、今は安定している

 今はその異界はガイア連合が握っているに近い、が手を離せばまた悪魔は湧いて出てきて恐山イタコの脅威になるだろう

 人ひとりが育ち戦力になるのには時間がかかる、

 一度組織として人的資源にダメージを受ければ回復するのは簡単な話じゃないはずだ

 ならガイア連合が手を引いたらまた同じように異界に沈む可能性に怯える事になる、また同じように動くのは面倒だろう

 しかし今なら一番楽な方法がとれる、ガイア連合が異界を奪い管理するのだ攻略し消滅させてもいい

 もちろん恐山イタコは徹底抗戦するだろう、きっとそこは彼女たちにとって故郷や誇りなのだから

 しかし実質異界をいつでも奪える戦力が近くに張り付き、攻略過程で内部の情報はある程度判明し、そして恐山イタコはこれまでの孤軍奮闘で戦力が疲弊している、

 助けた形になったガイア連合に対し油断もしているかもしれない、これなら相手のホームでも勝てると思う

 乱暴な、強硬的な手段に出るならこれ以上の状況はない

 親切面して助け油断した時に脇腹を刺す、そういう構図だ、人の世において良くある話である

 しかしそういう動きや噂はあんまり感じない

 ガイア連合は恐山イタコとどういう関係を求めているのか

 まあ動く時はがっつり動くガイア連合だし、自分には察することが出来てないだけなのかもしれないが

「あーそれねー」

 と宙を少し見上げ

「多分関係を深める方向で進むと思うわよ」

「これ以上ですか?」

「そう、それも双方が望んだって形でね」

「何でですか?」

「うちら(ガイア連合)の方の、理由になりそうな判断材料はいっぱい有って長くなるから端折るわ」

「外れたら恥ずかしいからイタコ側のだけ言うけど」

「女の勘」

 

 

 わからん

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