超常の力、『個性』が一般まで流布した超常全盛期。その全盛期において、最も考えられ、そして答えが出ることのない一つの問がある。
『個性とはいったい何なのか』
そんな答えの出ない問に、それでも人は人としての有り様を失い人としての矜持を失った中で縋った。
だが、どんな
そうして、世界はかつてと似た見た目を取り戻した。
今日も人々は秩序の中に穏やかに生き、穏やかに逝く。
だが、けして忘れてはならない。
『秩序』と『支配』をもたらすものが、世界を支配するとき。
『自由』を望み、彼らの支配を打ち砕かんと立ち上がる者達が必ず現れる。
【Nothing is True, Everything is Permited】
《真実など無く、許されぬことなどない》
各々の胸に、その言葉を秘めて。
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「……何だここは」
一人の男が目を覚ます。背は地面に。見上げる先には暗く高い天井が。質感からして、彼の見覚えのある存在が作った施設で間違いはなさそうである。だが、もはや二度と見ることは無いだろうと、つい先刻考えたのを、確かに覚えているのに。
ゆっくりと身を起こしてみると、あたりは、かつて初めて自分が訪れたときどころか守り手としての役目を果たし終えたときと比べてすら大きく荒廃していて。平らに残っていた足元すらもひび割れが走り塵が覆い、もはやこの遺跡が完全に死んだのだと納得するには十分であった。更に外から入り込んでいた光すらも、どこからから中を照らしていた寒色系の明かりすらも、その色を失っている。ただ常人の域を離れた彼の視覚に、わずかに陰影が浮かび上がるだけである。
「何が起こってるんだ……。おい! 誰かいないか! アレシア! またあんたなのか!?」
かつて、ただの傭兵であったとき。杖の守り手となるための試練としていくつも、ありえないような事を経験した。本来は存在しない空間に行くということも体験した。神々や、そして現代ではもはや神話と、いや当時も既に神話となっていた存在、場所に行き、そこで守り手としての知識を学んだ。
現在彼が置かれている状況は、それと似た状況に思える。であるならば、この場所で常に彼と対話してきたあのイスの女性もいるのではないかと。あるいは、彼が杖を譲渡した相手がいるのではないかと。
そんな期待を込めて放たれた声は、反響することすらなく暗闇に吸われて消えた。
「くそっ。なんなんだ一体……」
もうこの世に別れを告げる気満々だったのだが、何かが起きているのであれば取り敢えず動くしか無い。
そう判断し身体を起こし、ひとまず自分の身体を確認する。来ている服は……裸である。わずかに身体の下にあった部分に布の切れ端が散っているのを見ると、着ていたであろう何かは既に朽ち果ててしまった後であるのが見て取れる。それだけを見ると遥かな年月が流れたのだろうということは想像できた。
立ち上がり、記憶の中にある出口に向かって歩き出す。慣れた手付きで壁を登り奥へと進むと、わずかに岩の隙間から光が覗いているのが見えた。
光の直前まで進む。が、扉は開かず。
「いや、待て。ここは水没していたはずだ……」
そもそもが、男が初めて訪れた古代ギリシアならばいざしらず。現代ここに訪れるのは非常に困難だったはずだ。だが、外からの光が覗くこの出口へと至っても周囲が水に満たされてはいない。
一体何が起きているのかと。そう再び考えた直後。
地鳴りとともに。閉ざされていたはずの扉がゆっくりと左右に開いていく。思わず身構える男を尻目に扉が開ききった先には、一人の男が立っていた。
「はじめまして、ワシ使い。僕は君が来るのをずっと待っていた」
黒のスーツに大柄な身体。そしてその手にはあの杖が、かつて男も手にしていた、定命の者に不死を与える杖が握られていた。
今回からアサシンクリードシリーズ×僕のヒーローアカデミアの小説を書いていきます!