普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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お待たせ


成生「私は私の人生の主人公なんだよ。「普通」はそうなるの。お前はモブだ、なんて言う人間は許せないのさ」



一話の後書きより

嫌いなタイプ:芯があって自分自身が優秀だと思っていて(≒モブ呼ばわりするような人)、尚且つ個性が強個性の人


USJ襲撃 下

「てめぇらがオールマイト殺しを実行する役だとだけ聞いた」

 

脳無が凍結し身体の動きが固まる。不意打ちだった上に命令も受けていない脳無はただ受けるしか選択肢は無い。

 

「だぁー!!」

「ふん」

 

さらにもう一人の弔へ向けられた奇襲。子供で近距離だったからか弔は軽く避けていた。

 

「くっそー、いいとこねぇ!!」

「スカしてんじゃねぉぞ!!モヤモブが!!」

 

随分と威勢のいい連中が現れた。そして遠距離攻撃持ちが一人、しかも氷なんていうかなりの万能属性だ。

 

決めたルールだから手は出さないが、炎や氷といった熱量操作系の攻撃には私の指先発光をぶつけたくなる。相殺を貫通して格上だと見せつけるのは愉しいのだ。

 

そしてそれはそれとして、だ。

 

「モブ呼ばわり……こいつ……」

 

両手から爆発させる汗を流す少年。言葉だけじゃない、行動の端々から私の嫌いな要素が目に映る。

 

私はなんだかんだ言って「普通」は好きなのだ。「普通」なことは何も悪いことじゃない、ただ()()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

そして「普通」を押し付けることを一番分かりやすく行うのは、優秀だと自負する優秀な人間が「普通」の人同様の行動を起こした時だ。明確に差が現れ、否が応でも「普通」を押し付けられる。

 

そういうことを起こし、「普通」を見下すやつは反吐が出る程に嫌いだ。さらに自分の人生は自分が主人公だというのに、他人をモブなどと呼ばわり自分が他人の人生の主人公面する──到底許せる人間ではない。

 

さっと成生は両手で顔を隠す。平常心から余りにもかけ離れた表情、今この場にいる誰にも教える訳にはいかなかった。

 

「氷結…!」

「平和の象徴はてめぇら如きに殺れねぇよ」

「かっちゃん…!皆…!」

 

不幸中の幸い、全員が弔の方へ集中していた。さらに後方にいる成生の方には姿が制服なのも相まって、プロの探知範囲かオールマイトが視界に収めるだけで、ほぼ誰の目にも映っていなかった。

 

「……ふぅー……」

 

思考加速により平常心を取り戻し、顔から両手を離す。爆発少年を視界に入れるとイラっとする程度に感情を抑えきっていた。

 

爆発少年は痛い目見させるとして、4人の加勢。しかもこちらは二人が抑えられつつある。……さて、弔はどう出るかな?

 

「出入口を抑えられた。……こりゃあピンチだなぁ」

 

まずは現状認識から。相手が攻撃してこないならまずは冷静になろう、オールフォーワンの教えはちゃんと伝わっているみたいだ。

 

「モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られてる!そのモヤゲートで実体部分を覆ってたんだろ!?」

「っ!」

「っと動くな。「怪しい動きをした」と俺が判断したら即爆破する!!!」

「ヒーローらしからぬ言動。っと一般人がいんじゃねーか。何でここに?」

 

あ、やべ。程々に戦域が近づきつつあったから視界に入っちゃったみたいだ。目立ったりしないっていう認識外にいる……ミスディレクションだっけ?、それを使ってたのに。

 

仕方ない、自己紹介でもしよう。

 

「バッカ!モブ女もヴィランだ!!制服なんてのも騙すためだろ!!!」

 

 

ぶち殺してやろうか?

 

 

「っ失礼な!これでもちゃんと在籍してます!普通の進学校の生徒ですー。成生って言うんだ、君は?」

「あ、俺は切島です。……っておかしいだろこの流れ!」

 

……頭が爆発してる少年は放っておいて、硬そうな少年の名前は切島というのは分かった。クラスメイトの戯言を鵜呑みにせず、ちゃんと話すのはポイント高いぞ☆

 

「何でこんなとこにいんだ?」

「女には不思議が付きものなんだよ♪」

 

こういうのは程々に揶揄うのが愉しいのだ。何でか横にいる少年達は困惑してるみたいだけど。

 

「……えーと、どうすればいいんだこれ?」

「とりあえずそっちの方解決したら?」

 

指さす方は弔たちの方。ヒーロー側からすれば脅威度は圧倒的に弔たちの方が上だ。

こっちにかまけてないでまずはヴィラン確定した人から何とかしなよ?

 

「攻略された上ほぼ無傷……最近の子供は凄いなぁ。恥ずかしくなってくるぜヴィラン連合」

 

目が成生へと向けられている間に弔は態勢を立て直すことにした。まずは黒霧の奪還からだ。

 

「脳無、爆発小僧をやっつけろ。出入口の奪還だ」

 

弔の命令で脳無の身体が動き始める。凍結された身体を力任せに動かし崩れていく。

 

「身体が割れてるのに……動いてる!?」

「みんな下がれ!ショック吸収の個性じゃないのか!?」

 

そして崩れた先から身体が再生を始めていた。右半身が崩れたと言うのに数秒と経たずにほぼ回復しきっていた。

 

「これは超再生さ。個性が一つだけと言ってないだろ。脳無はお前の100%にも耐えられるよう改造された超高性能サンドバッグ人間さ」

 

回復も終わらないままに脳無は黒霧を抑えている爆豪へと襲い掛かる。オールマイト並の速度を持って殴れば肉塊になるのが妥当な結果だった。

 

「加減を知らんのか…!!」

 

だが結果はオールマイトが吹き飛んだというものだった。爆発少年を庇って脳無の攻撃を受けたのだろう。脳無のスピードに追い付けるのはオールマイトしかおらず、庇わなければ爆発少年が死ぬならオールマイトは迷わず庇う。ヒーローなのだからそういう動きをするのだ。

 

「仲間を助けるためさ。他が為に振るう暴力は美談になるんだ、そうだろヒーロー?

 

弔が無邪気に適当なことを話し出す。噓八百を並び立てて遊んでいるが向こうはやる気があるらしい。オールマイトは全力を出すためにさっさと生徒を外へ送りたいだろうに、生徒が意図を察せないとは少し残念……いやそっちのが才覚的には「普通」なのかな?

 

「3対5だ」

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた」

「俺らがオールマイトのサポートすれば勝てる」

 

(ヴィラン)の個性も分かり強力なプロヒーローもいる。油断しなければ勝ち目は確かにあると言える。

 

だが油断しなければ、の話だ。油断を誘うのがヴィランなのだ、そこをまだ理解してない当たり、まだまだヒーローの卵といったところか。

 

「ダメだ!!!逃げなさい!!!」

 

オールマイトも分かっているのだろう。半端な戦力では逆効果だ。そして生徒たちは、個性は強力と言えるがヴィランとの戦いという意味ではまだまだ落第だ。

 

「さっきのは俺がサポート入らなきゃまずかったでしょ」

「それはそれだ!轟少年!ありがとな!!!」

 

オールマイトの眼光が強まる。生徒が逃げないと判断し一気呵成に潰す方へ判断が寄ったのだろう。脳無さえ損害なく倒せれば正しいと言えるが……

 

「……弱体化してるオールマイトがやれるの?」

 

「しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!!!」

 

自らを鼓舞しオールマイトがこちらへと一気に踏み込む。その矛先は、当然脳無だった。

 

「脳無、黒霧、やれ。俺は子どもをあしらう」

 

ドゴォ!!!!

 

脳無とオールマイトがドゴォと拳と拳がぶつけあった音だ。さらにそこから二人はラッシュの態勢に入っていた。完全に殴り合いだ、技術の差こそあれどそのパワーは同じ。

 

ショック吸収と分かっていて殴りつける。……まさかキャパ越え狙いか?私が動画で見たことのあるオールマイトの全力なら可能だろう。けれど弱体化した今で……可能なのか?

 

「”無効”ではなく”吸収”なら!!!限度があるんじゃないか!?」

 

やはりか。だけど……いや、そうか。オールマイトはヒーローだ。

 

「私対策!?私の100%を耐えるなら!!!さらに上からねじ伏せよう!!!」

 

ヒーローならば、ピンチに追い立てた時こそ恐ろしい。何故ならヒーローとは──

 

「──ヒーローとは常にピンチをぶち壊していく者!!!ヴィランよ!!!こんな言葉を知っているか!!?」

 

 

Plus Ultra(更に向こうへ)!!!!!!!」

 

 

優に300を超えるラッシュ、脳無が耐え切れずUSJから吹き飛ばされていく。こっそり透明光を指先発光で伸ばし、脳無が飛んで行った先を知覚しておく。

 

「さてとヴィラン、お互い早めに決着つけたいね」

「チートが……!」

 

お互い早めに。弱体化は素の力だけではなく時間制限までありそうだ。いい収穫と言えるだろう。オールフォーワンに教えたらいい感じに嬲り殺しにするプランもすぐ考え付きそうだ。

 

「全っ然弱ってないじゃないか……脳無さえいれば……!」

 

弔が狼狽え、さらにオールマイトが眼力と雰囲気だけで動きを抑えつけていた。

 

「どうした?来ないのかな?クリアとか言っていたが……出来るものならしてみろよ!!!」

 

眼力は確かに恐ろしいレベルだ。なのだが、オールフォーワンと対峙した時と比較すれば同じかそれ以下だ。弔がオールフォーワンから重圧を向けられることは無いから全っ然耐えれてないけど、私はあるから何の問題にもならない。

 

だから、少し魔が差した。

 

「……いいのかな?」

 

弔の二歩ほど前へと歩みを進め、オールマイトと対峙する。不敵な笑みもしていない、「普通」の少女の成生だ。

 

「君は……一般少女?」

「依光成生って言います。ところでクリア……しちゃっていいんですか?」

 

ほんの一瞬だけ、成生は瞳の奥に深淵のような色を浮かべる。Ms.ダークライの片鱗を見せただけだったが、たったそれだけでオールマイトは冷や汗をかいていた。

 

その動きを止めたのは、背中からかけられた声だった。

 

「おい」

「死柄木と私で連携すればまだチャンスはあります」

 

まだチャンスはある。そう言いたげな二人であり、まだまだ戦う気満々だった。

 

「黒霧、逃げる準備。引き際を知りな、ヒーローを舐めるな」

 

たった一度。オールマイトと脳無の戦いを見ただけで成生は成長していた。ヒーローはピンチを超えていく存在だと認識すれば、応援にかけつけるヒーロー達の速度も変わるもの。

 

従来の予想ならあと数分はあるはずだったが、その程度の加速は優にしてくるだろう。ならばここが限界だ。

 

「どけ!」

「脳無の仇です!!!」

 

成生の制止を振り払い、二人はオールマイトへと突撃する。手が届けば殺せる、あと一歩で目標へと届くのだ。

 

だがその一歩が、遠かった。

 

「オールマイトから、離れろ」

「二度目はありませんよ!」

 

なりの勢いで割り込みに飛んできた緑谷少年が黒霧へと殴りかかる。警戒はしていたために弔と咄嗟の連携で五指を拳へと突きつけ──

 

「……だから言ったじゃない。引き際だって」

「来たか!!!」

 

──られなかった。一発の銃弾が手を横から狙撃し、邪魔をしていた。

 

 

「1-Aクラス委員長飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」

 

 

視線を入口へと向けると、そこには雄英所属のプロヒーローの集団がいた。

 

スナイプ、セメントス、ミッドナイト……十人近い数のトップクラスのプロヒーロー相手ではいくら弔と黒霧と言えど勝ち目はない。

 

私としては全員による奇襲と予想していたために少しがっかりだ。このタイミングだと二人だけでもギリギリ逃げ切れる。

 

「あーあ、来ちゃったな、ゲームオーバーだ。」

 

残念そうに弔が呟き、黒霧がワープゲートの展開を始める。

 

そこにスナイプの銃撃が2発届く。いくら弔と言えど遠距離狙撃には反応しきれていなかった。左腕と左足に一撃ずつ貰い、そこでようやく弔との間に空けておいた数歩の距離が埋まる。

 

「黒霧、私を殿(しんがり)に行きなさい」

 

死柄木へと向けられる銃撃の間に割り込む。既に弔が撃たれたが足一本あればワープゲートをくぐれる、十分だ。

 

「この距離で捕獲可能な個性っ!!?」

 

続くスナイプの銃撃。ほぼ連射で撃ったにもかかわらず、弔との間に成生が挟まるという異常事態にヒーローは一瞬何が起きたのかすら理解できていなかった。

 

さらにヒーロー達は成生のその様子を見てそんなバカなと一瞬だけ悔やんだ。銃撃に普通の少女が割り込めば蜂の巣になり死ぬだけだ。人質としか見えていなかったヒーロー達にはまさか人質が庇うなぞ考えられなかったのだ。

 

しかしそこに在った光景は……プロヒーローには信じられない光景だっただろう。銃弾を素手で掴み向きを変えて避けるなどオールマイトのような超人でなければできないのだ。

 

 

それを「普通」の少女が行っていた。

 

 

さらに成生は13号へと指を向け、向けられているブラックホールへと収束させた透明光を向ける。

 

「なっ!?」

 

私のレーザーはブラックホールに分解されない。貫通し、13号の右腕を貫いていく。

 

「一般人捕ばっ……!?」

 

死柄木へと向けられた銃口が今度は銃弾を麻酔弾に変えて成生へと向けられていた。

 

だが銃口を向けたということは成生の個性を銃口へねじ込めるということでもある。前髪の髪先から銃の内部に熱量を放り込み、弾薬を爆発させる。愛用の武器を破壊する完全なる不意打ちの爆発には、いくらプロと言えど一瞬たじろぐ。

 

「あと君……爆発少年、私が嫌いな権化みたいなやつだから痛い目見な

 

クスリと笑い、指先を向ける。たったそれだけだというのに爆豪から大爆発が起きた。正確には爆豪のコスチュームから。

 

爆豪は一撃で黒霧を仕留めるためにコスチュームに自らの汗を……爆発する汗をため込んでいた。使うことこそ無かったが溜め込まれたままであり──熱を操るものからすれば悪用されるには十分が過ぎた。

 

爆発は爆豪自身へと向けられたものであり、更に爆発の衝撃といった被害は周囲へと向けられる。間近にいた二人にも、爆発の衝撃が全身に浴びせられていた

 

「がっ……!?」

「ばく…ご…」

「ぐっ!?」

 

それだけでパタリと二人が倒れ、一人は膝をついた。氷で咄嗟に弱めたか、成長株だ。

 

本音では爆発少年は殺したい。けれどここで殺そうとすれば周りが動き出すし、そうなればオールマイトを殺すことになる可能性がほぼ100%だ。

まだオールマイトには生きて貰わねばならない……致し方ない。諦めるとしよう。

 

「っ!」

 

指先を向けられることに危険を察したセメントスがオールマイトと生徒、そして私を分断するように地面が隆起するも……手遅れだった。

 

セメントが隆起する直前、視界に収めていた筋肉の塊であるオールマイトがしぼみかけていた。骸骨のような姿ではないが、さっきまでの筋骨隆々とした姿に比べれば頬骨が痩せこけていた。

 

「やっぱり弱くなってたねオールマイト、あんなの昔なら一瞬だったのに。じゃあねプロヒーロー、たかが普通の女の子に一泡吹かされた情けない大人たち」

 

残されていたワープゲートを凱旋するように成生はくぐっていく。それはまるで勝者の振る舞いだった。

 

「何だったんだ……あの少女は……」

 

オールマイトはほぼ一瞬でおきた被害に、そう呟くことしか出来なかった。

 

 

 

こうして、USJ襲撃は実質的に成生の一人勝ちとなって終幕した。

 

 

 

 




爆豪殺ろうとしたら過程でオールマイトが庇って死にそうだったので仕方なしに退きました。

Q:もしオールマイトがいなかったら?
A:爆豪の両腕を破壊する方向でキレます。成生ちゃんは「ヒーロー志望がヒーローになれないと自覚・認識することは辱め&自らにとっては愉悦」だと分かっているので



成生「オールマイト!死なないで!こんなところで倒れたら私の計画が破綻しちゃうの!お願い、死なないで!」

オールマイト「邪悪過ぎる」

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