全員が裏の人間?そうじゃなかったらどうするのかなぁ(ニチャァ)
成生ちゃん「私はUSJを襲ってなんかいません。「普通」の女の子がそんなことするわけないじゃないですか」
オールマイト「んな馬鹿な。というかあの子怖い……」
USJ襲撃事件から一日ほど経ち、雄英では会議が行われていた。
警察の塚内警部も会議の一員として参加しており、襲撃したヴィラン連合についての話し合いだった。
「死柄木という名前、触れたモノを粉々にする個性。個性登録を洗ってみましたが、該当なしです」
「ワープゲートの方、黒霧という男も同様です。無戸籍かつ偽名ですね、個性届を提出していない、所謂裏の人間」
塚内警部の調査結果にスナイプは溜息を一つ吐く。応援で駆け付け、唯一ダメージを与えたからのだ。一番最初の発言権があった。
「何も分かってねぇってことだな。死柄木とかいう主犯が治ったら面倒だぞ」
スナイプの銃撃は一日二日で治らない。その間に何とかするという選択は取れないというのが調査結果だったのだ。後手に回っているのが拭えなかった。
「主犯か……。思いついてもなお普通行動に起こさない大胆な襲撃。用意は周到に行ったにもかかわらずだ」
「行動も”稚拙な暴論”、”自分の所有を自慢した”。これらから予想できる死柄木の人物像は、”幼児的万能感の抜けきらない、子ども大人”だ」
「何か問題あんのか?」
オールマイトの人物観察にブラドキングが疑問を呈する。そんなヴィランは山ほどいるからこその発言だった。
その疑問に応えたのは塚内警部だった。
「USJで検挙した
「ヒーローが飽和した現在、抑圧されてきた悪意は……そういう無邪気な邪悪に惹かれるのかもしれない」
無邪気な悪、だからこそ付いてくる者も多い。今でさえそれなのだ、これから先を予想などしたくもなかった。
「子ども大人……逆に言えば成長の可能性がある」
だがその予想をさせたのがたった一人の少女の存在だ。
「優秀な
オールマイトにだけ一瞬見せた、ヴィラン相手でも見たことのない深淵染みた瞳の色。思想犯というにはドス黒過ぎるそれは、長い期間プロをしているオールマイトでさえ恐れを抱くものだった。
ならば有り得る。しかしこれに答えたのも塚内警部だった。
「……依光成生という少女だけはヴィラン連合でも例外です」
「何?」
会議室がざわつく。例外という言葉には大抵碌なことがないからだ。
そして案の定、碌でもない調査結果が塚内警部の口から出てきた。
「彼女は高校に在籍しています。それも制服にあった春川高校に」
「それならとっ捕まえれば解決じゃねーのか?」
ブラドキングの言葉に首を横にふる塚内警部。居る場所が分かり、捕まえる理由もあれば警察である彼なら当然捕まえる。
だが本来あり得ない問題がそこにあった。
「ところが……襲撃当時、彼女は高校にいました」
「…っ!」
彼女にはアリバイがあった。それも大多数の監視下にあったという、雄英の情報の方が間違ってるんじゃないのかと問われかねない程のアリバイが。
「USJ襲撃はおおよそPM2:00あたりからでしたが、当然普通の進学校である春川高校もカリキュラムがあります。そして彼女はそこで授業を受けていました」
普通の進学校ならPM4:30くらいまではどうやってもカリキュラムに囚われる。件の人物も当然囚われていた。
警察が直接当人から聞くのは躊躇われるため周りに聞き込みしたのだが、彼らもいつも通りに過ごしていたとの答えを貰っていた。
監視カメラでさえ普通に暮らす依光成生の姿を捉えていたのだ。
まるでキツネにつままれたような話だった。
「は?だがそいつはワープゲートに入っていったのは全員が見てるんだぞ?」
ブラドキングの言葉に全員が頷く。塚内警部から渡された当時の春川高校の写真から、同一人物だと全員が認識していた。
「なら二人いないと成立しないだろう」
「いや、そもそもあれは本名なの?」
各々が同一人物だと認識している以上、USJに現れた彼女と何かしらの関係があると考えるのが当然だ。
しかし警察が同じことを考えない訳が無かった。
「別人である可能性もあります。そこでUSJを探したところ、毛髪が一本見つかりました。これをDNA鑑定にかけました」
「結果は?」
「
更に謎は深まる。会議室が一瞬静けさに包まれるも、まだ同一人物の可能性はあるとスナイプが考えを口に出した。
「完全に二人に分身しているってことか。エクトプラズムみたいな感じか?」
その言葉に塚内警部は首を横に振る。ここが解決さえできれば全て解決できるのだが、最も大きな問題がここにあった。
「ところが個性届を確認したところ彼女の個性は「指先発光」です。これも裏付けはとれてます」
「待て、指先発光?そんなところ見てないぞ。んな普通の個性なわけ無いだろう。銃弾を反らしたりと強力な増強系にしか見えなかった」
ヒーローが目にしたのは銃撃の間に割り込む程の速さを持ち、銃撃を反らす程の技術を持ち、スナイプの銃は破壊し、13号のブラックホールを貫通して右腕を損傷させた姿だ。
どこを見ても「指先が光る」個性に出来る真似ではなかった。
「いや、スナイプの銃を破壊してる……見えないレーザー?」
「バカな、色を自在に操る上に収束させるなんてプロヒーローでも難しい。トップヒーローでさえできるか分からないくらいだ。個性を鍛え切ってもできるか分からないようなレベルだぞ」
「それに13号のブラックホールを貫通できてる。レーザーではないはずだ」
各々が予想を立てるも、前述した分身個性とは全く別物だ。二人いたとしても完全なる別人としか言えないが、振る舞いがどこか似ているとオールマイトは見ていた。
「問題はそこじゃない」
会議のざわつきを断ち切るように校長が声を上げた。その声に会議室が一瞬で沈黙する。
根津校長の個性は「ハイスペック」だ。頭脳労働や戦略をメインにする校長の話なのだ。傾聴しない訳にはいかない。
「二つだ。一つは彼女は雄英を受験してきていたこと。この恨みなら話は早いんだけど、僕の直感は違うって言ってる。となれば偵察だ、偵察して攻撃を仕掛ける。計画的犯行と言える」
「そしてこっちの方が大問題だ。彼女が死柄木すら超えるヴィランだとしたら、何の変哲もない普通の少女が突如として強大なヴィランになっているという可能性だ」
「「「!!!」」」
校長の言葉に全員の顔が驚愕に染まる。仮に真実だとしたら、とんでもない事態だった。
「ヴィラン連合どころじゃない。あの子一人でヒーロー社会がひっくり返りかねない爆弾だ」
「……今すぐ捕まえるべきでは?」
校長の言葉に、オールマイトが迷った末に言葉を告げる。平和の象徴オールマイトでさえ、彼女を捕まえるべきだと判断していた。
「彼女が分身や別人であれば私たちが何の罪もない少女を捕まえたことになる。冤罪だと叫べば社会からの批判は襲撃された件もある以上、糾弾なんてレベルじゃすまない。雄英閉鎖すらあり得る」
USJ襲撃という大事件を何の罪もない少女に無理やり押し付けた。そうなれば雄英の評価が地に落ちるのも一瞬だろう。だからこそ手が出せない、校長はそこまで分かっていた。
さらに、問題はそこまでじゃない。むしろこっちが最大の問題だ。
「余りにもハイリスクであり、しかももし彼女が予想通りの狡猾なヴィランであれば罠である可能性も高い。手出ししようにも難しい」
彼女を優秀なヴィランと想定した場合、一番あり得る可能性がこれだ。ヒーローを嵌めるための罠、だとすれば手を出すには相応の準備が必要になる。
少なくとも、雄英からヴィラン被害が無くなったと社会が判断するくらいまでは彼女に対し行動できないのは間違いなかった。
「正直なところ、我々ヒーローが行える手はない。こうなると分かって打った一手だとしたらとんでもないヴィランだ。これだけでヒーローを詰みまで持っていける」
校長はそう締めくくる。険しい顔になっている教師も多かった。明確に戦略を行えるヒーローは少ない、雄英教師でさえ全員が出来るわけではないのだ。分からないヒーロー程フラストレーションが溜まるのも仕方ないことだった。
「この話は一旦私が預かろう。会議が紛糾しても意味が無いのさ」
そこで彼女に対しての話はひとまず区切られることになる。最後に一つ注意を残して。
「ああ、A組生徒には依光成生を見かけても襲わないように言っておくように。特に一名、襲いそうなのがいるだろ?」
教師たち全員の頭の中に浮かんだのは、爆発の個性を持つ少年の姿だった。
仮に襲ったらどっちがヴィランか分からないなと、全員の心が一致していた。
ヒーローサイドでは案の定成生ちゃんの「普通」に足を引っ張られました。いや引っ張るなって方が無理だよこれ。
そして根津校長は流石の「ハイスペック」。実質成生ちゃんが自由の身に。
Q;公安が殺ればいいんじゃね?
A:この時の公安はヴィラン連合とか雑魚扱いなので成生も眼中にない。なお公安ヒーローのホークスは戦闘速度全般が成生の反射速度に負けるので、常時レーザー出力で真っ二つがオチ
成生ちゃん「計画通り」
オールフォーワン「エグイ計画だね」
ドクター「賢い人ほど嵌りやすい罠とは非道い」