その後は予定なし
平々凡々の日々とはこういうことを言う。そんな日々が毎日続く。
成生は小学校では平々凡々の「普通」の女の子だ。家にいる時も同じ、「普通」の女の子だ。長い白髪に指定の制服、綺麗系の顔であり学年で2,3番目辺りに位置するくらいには整っている。
父と同じ野菜菜園作りが趣味という、少し小学生らしくない趣味を除けば、そこらにいる小学生だと言ってもただの事実だ。
成生はそう「普通」の女の子を、演じていた。
「普通」と違うのは、指先から先だけだ。成生の個性は「指先発光」。光りさえバレなければ、どこでどう光らせようとバレることはない。机の中、トイレの一室、果ては自らの口の中や菜園の土の下。どこでも成生は自らの個性を使うことができた。
地面の中なら発光しようと熱量が溜まるだけだ。口の中でも同じことであり、成生の持つ個性の出力では電灯程になれればいい方だ。使えば使うほど体力を消費するというデメリットもあったが、コスパは恐ろしい程よく、懐中電灯レベルの灯りなら一日中光らせても息切れしない程だ。全力で光らせ続けても十数分はしないと息切れしないのだからデメリットと呼ぶような消費とすら言えない。
しかも消費が体力ということは個性が伸びれば体力も伸びるということだ。伸び盛りの今でそんなことをすればイカれた体力を有することになる。
成生は気づいてこそいなかったが、成生が行っているそれはよくて高校生が行うもの、それも雄英高校ヒーロー科が行う「個性伸ばし」と全く同じものだった。
本来なら高校生程に成長してなければ「個性」を伸ばすのは危険であり、だからこそ雄英高校では行われているのだが……小学生の身で成生は何の問題もなく伸ばしていた。それは「普通」の個性であるがゆえにでもあった。
強個性と呼ばれる「爆破」や「炎熱」といった個性は総じて好き勝手使えば危険だ。半歩間違えればヴィランへと落ちても何らおかしくない。プロヒーローの下でもなく普通の環境で個性を伸ばしでもすれば間違いなくヴィラン扱いされたことだろう。
だが成生の個性は光るだけだ。強弱もつけられるが、最強では熱量が発生こそするものの熱でありせいぜいハロゲンヒーター代わりになるくらいのものだ。
もっとも──それは小学一年生の終わりの段階での話だ。
5歳の時、2年前は指先が弱弱しく光るだけだった。それが7歳で電灯くらいにはなっているのだ。これを高校生になるまで成長させていく予定が成生の頭にはあった。
「フフフ……」
自室で成生の瞳は怪しく光る。小学一年生だが父譲りの頭の良さから既に自室を貰っている。そして彼女にはヒーローもヴィランもその瞳には映らない。彼らの行いが尊く輝くものや憧れ惹かれるものであっても、成生には常に変わらない目標があり揺らぐことは無い。強いて言うのならば、その目標はヴィランの考えだったということくらいだろうか。
誰の目にも止まる人になる。成生の目標は全く持って揺らがない。目に止まる方法が余りにも幼稚なことが分かっていても、成生は変わらず突き進む。
そして、その目標を掲げている以上思考がそこに到達するのは致し方のないことだった。
「一番目に留まる人、ヒーロー……オールマイト」
ウェブに上がっている生放送の動画。そこには雲を散らせるオールマイトの姿が映されていた。
どこから見ても視線はオールマイトへ向けられている動画に、羨む成生。
「オールマイトを超えるくらい誰の目にも止まりたいなぁ……ヒーローじゃ無理かぁ」
今の人外とすら言える力を持つオールマイトで向けられる視線はあの程度。憧れるだとか、かっこいいだとかそういう視線をまとめ切ったとすら言えるのがオールマイトだ。
言い換えれば、オールマイトと同じ以上の目に止まるのはヒーローでは不可能であることを意味する。
「じゃあヴィランしかないね。力を蓄えてから……やっぱり早くても高校生かな」
周囲には完全に個性伸ばしを隠し、成生は自らの目標のために突き進む。
そして、成生が中学生になった時に転機は訪れた。