作者「思いついちゃったから☆」
たまには息抜きも必要だからね、仕方ないね。
弔「……?どっかで見たような顔がいた気がした」
アジト建設による個性伸ばしもようやく伸びてきたところで6月も終わりになっていた。思考加速を使い、遠隔操作で人形操作しながら自身は土流を最適化させていく。
さすがに一月では個性の特性を掌握しきるのが限界であり、そこから個性伸ばしに入っている段階だった。範囲は使えて50m程度、高さも50cmと動画で見たピクシーボブとは天と地ほどの差がある。固めると言った方向もまだまだだし、半年はみないとダメそう。
そんなところでマキアの時から身体を休める以外の休みなんて無かったし、たまには息抜きでもするかなと思い立った。どうせなら夏に相応しい服装のショッピングでも行くことにしよう。
「ドクターお金頂戴」
ということでお金を持ってそうなドクターの下へ転送移動。医者だって話は聞いているからお金も持っているだろう。こんな研究所作れてるくらいだし。
そして今はMs.ダークライじゃない。ただの「普通」の女の子の成生だ。口調も
「なんじゃ急に」
「おしゃれしてない高校生っておかしくない?春はよかったけど、夏は開放的だし服もそもそも持ってないから買っておいた方がいいからさ」
一応人形が着ると考えれば出費的におかしなところは無い。私も着るけどね。
「……両親に言えばいいのではないか?」
「あ」
最近実家に帰ってなかったので完全に両親の存在を忘れていた。
■■■
人形と転送入れ替わりで実家に戻り、親に強請ったらけっこうな額くれた。中学時代個性伸ばしばっかりやってて全然お金使わなかったから、もしも強請ったらと貯めておいたらしい。
一人で買い物っていうのもアレだけど、こういうのも嫌いではないのだ。何せ「普通」のことであり、何よりオシャレは女子の嗜み!
どうせだし少し遠出して買えるものは買っとこうと思い立ち、来たのは木椰市区ショッビングモール。
「……たまにはこういうのも普通に楽しい!」
適当な店に入って良さそうな服を試着していく。お金があると感覚的に「良さそう」レベルで買うから散財気味になってしまう。成生のセンスは普通レベルだ。普通ということは大量に買えばいい感じのコーディネートができるということだ。
滅多にない楽しみだ。仲間がいればもっと楽しいのだが、ヴィランの女の子なんて探さないといないしなぁ……だいたい指名手配されてるし。
成生が紙袋を一つ、パンパンにしてホクホクとした顔をしていたところで、ある声が耳に届いた。
「お!アレ雄英生じゃん!?1年!?体育祭ウェーイ!!」
「は?」
ただの一般人の声だ。だが意味するのは雄英体育祭に出た一年生がいるということ。
まさかと思い、今いる二階のバルコニーから下の階を覗く。そこには動画で見た雄英体育祭の面子、緑谷や飯田、麗日といったA組生徒の姿があった。私服でワイワイとしており、友達同士で仲良くしているのが目に見えて分かる。
「何で?」
休みだからと、切っておいた透明色の周囲知覚のための発光を起動させ周囲を認識する。思考力加速で莫大な情報処理も簡単だ。居るのはA組の緑谷、麗日、飯田、常闇、切島、芦戸、峰田、耳郎といった面々。そして離れた位置に弔。
……え、なんか弔がいるんだけど。
「何でぇ!?」
落ち着け私、ヴィランの女王になる私がこの程度で驚くのは、なんかこう……違うでしょ。
多分A組は単純に買い物だろう。夏休み近いし、プール行こうとかなら皆で買い物とかも理解できる。
弔は……え、一人?何をトチ狂ってそんな行動してんの?黒霧はこんなとこ来れないから分からないでもないけど、護衛の仲間も無し?
「……何か悩んでるのかなー?」
よし、先生も口出ししてないし放っておくとしよう。私が口出ししても碌なことにならなそうだ。どうせステイン関係で何かしら思うところあったとかでしょ。ドクターに見せてもらった動画はカッコイイ倒れ方してたし。
それはそれとして今は買い物だ。思考加速以外の個性使うのもオフなんだよ今日は!
そしてスタスタと二軒目に突入する直前、以前に聞いたことがある声がかけられた。その以前というのがUSJの時だったりする。
「あれ、あんた……成生とか言ったっけ」
「え?」
何故かこちらに声をかけた切島くんの姿があった。……思考加速開始。
何でぇぇ!!?落ち着け、落ち着け私……こいつとは初対面だ、初対面。こいつと会ったのは人形だけ。弔と合流したりしたら今はダメ。春川高校の成生と弔が繋がっちゃう。ついでに爆豪煽りとかもダメ。
……よし、現状把握大丈夫。人形操作でやってるときみたいに声を返せばいいだけだ。
「誰?」
「え?覚えてないのか?」
「初対面だと思いますが……」
客観的に見れば私は初対面のはずなのだ。間違えてはならない。今の私は人形と成り代わっている。春川高校の依光成生なのだ、Ms.ダークライではない。
「人違い?……USJで会わなかった?」
「USJ……あ、ナンパですか」
手をポンと叩き答える。USJって言ったら「ユ●バーサルス●ジオジャパ●」の方でしょ。誰も「うその災害や事故ルーム」だなんて思わない。
会った先がそこなんてナンパ以外の何者でもない。
妥当な返しをしたはずなのだが、突如私と切島くんの間にぶどうが生えてきた。
「ナンパだとぅ!?切島てめぇ!!!」
「わっ!?」
いやぶどうじゃない。峰田とかいうやつだ。A組にいた……はず、体育祭の騎馬戦あたりにはいた……っけ?
なのだが、どうもヒーローの卵とは到底思えない。ただのエロ魔神じゃないのかこいつ。
「美人JK…!切島ぁ!!!」
私の胸とかお尻とかちらちら見ながら切島くんに血走った眼を向けているあたり、だいたいの人物像も分かった。
「落ち着け峰田。知ってる人だと思ったら別人だっただけだ」
そして峰田だけでなく切島くんの方もだ。随分と好青年だ。個性も確か硬化……普通によくある個性だ。それに……爆豪と戦ってる。
「でも私は知ってますよ!」
「え?」
……ああ、やっぱり駄目だ。可能な限り煽りたい。
私みたいな個性伸ばしをしてないのだから爆豪に負けたのは当然だ。強個性相手に普通の個性が同じだけ伸ばしても勝ち目はないのだ。だから私の一番強力なところは「個性伸ばしを誰よりも効率よく長く行っている」事実なのだから。
切島くんも同じ真似ができればいいが、それはできない。でも応援してあげたくなるくらいの感情はあった。その理由もある。
「雄英体育祭!熱い戦いでした!」
タイマン二回戦で爆豪に負けたが、ヒーローらしく戦っていた。心に信念を持ち、個性が強い人に立ち向かう。まさにヒーローの卵だ。爆豪が見た目ヴィラン寄りなのも相まって動画見た時は応援したくなったのだ。
「ファンになっちゃいそうです」
成生はもじもじとして顔を赤らめる。切島も顔を赤くしていた。
「え!?いや、その」
「切島ぁ(血涙)!!!」
遂に血の涙を流してまで切島くんにつっかかる峰田。エロ魔神が間に割り込むな、蹴り飛ばして一階に落としてやってもいいんだぞ?
今の私は「普通」の高校生だからしないけど。
「こいつも一応騎馬戦いたんだけど」
あ、いたんだ。うとうとしながら見てたから覚えてないや。タイマン勝負の面子は見てたんだけどねー。
「私強い人にしか興味ないので」
「ガフッ!?」
もちろん信念が強いって意味……あ、なんかエロ魔神が血反吐吐いた。え、こんなのでダメージ受けるの?それなら排除しておこう。
「エッチなことしか考えてない人なんて人として邪魔だし?」
「ゲハァ!?」
「あるとしたら……モテるためにヒーローとか?そんなの順序逆だしねー」
「古傷がっ!!!!古傷が痛い!!!」
峰田は悶絶しながら転がり、階段を落ちていった。突然出てきた変態ならいい気味だ。
成生がそうやって峰田をいじっていたところで、切島は自らの手を胸に当て、握りしめていた。そして成生に目を向け、自らの想いを口にする。
「強い人か……俺はまだまだだ。
謙遜し、向上心をしっかりと持ち、よくある個性をもった人。そんな人こそ成生が好きなタイプだった。
成生が口角を上げ、ニコリと微笑む。そこにあるのは「普通」の少女の笑顔だった。
──切島が、見惚れるような笑顔だった。
「満足せず目標のために一途……うん、やっぱり私はあなたのこと好きかな。ヒーロー的な意味でね?」
「あっ、ああ。ありがとう」
照れている切島くんは少し可愛いところがあるみたいだ。もしもクラスメイトだったら声かけたり気にかけたりしただろうな、と少しだけ思いをはせる。
……結局ナンパみたいなことになっちゃったな。でも悪く無い気分だ、こんな気分も当分味わえなくなるだろうし、今楽しまなきゃね。
「名前、教えてくれないか?」
「
手を振り切島くんと別れる。一応聞き耳を立てておき、切島くんから聞こえてくる声に耳を傾ける。
「同姓同名見た目も同じってすげぇ偶然もあるもんだな!」
そんな偶然があってたまるか!!!
これで今年分はおしまいです。何で最後がギャグ回やねん!?ってツッコミは無しで。むしろ本来はこういう「普通の少女:依光成生」と「ヴィランの少女:Ms.ダークライ」のギャップがひっどいキャラです。
そのギャップを利用してヒーロー達に情報操作仕掛けて罠に落としてるけど、特に情報操作とかする必要も無かったらこんなんです。
そして切島がダークライの悪夢にかかりました、南無。ちなみにA組の中では成生ちゃん好感度トップです
成生ちゃんのこの先は来年の俺にご期待ください。一次創作の別作品予定もあるから更新は遅れるとは思う。
よいお年を!
作中のイラスト
【挿絵表示】
ですがこれはAIで作成したイラストになります