ほぼ本編、だって成生ちゃんの役割はレスキューだし。
成生ちゃんの好みのタイプが出ました。人はそれを無理ゲーと呼びます。
あと成生ちゃんの弱点も出てます。もし成生ちゃんがヒーロー側だったら致命的な弱点です。
成生ちゃん「暴れるのはね、計画してからなんですよ」
オールフォーワン「君暴れたらだいたい死人がでるじゃないか。計画したら死人が出るって意味かい?」
ドクター「市民が死人にはなるか」
成生ちゃん・オールフォーワン「は?」
虎が成生によって沈んだ頃、トガは麗日によって組み伏されていた。横には木にナイフで髪を縫い留められ動けない蛙吹梅雨の姿があった。
二人に傷はない。梅雨も動けないだけだった。
「梅雨ちゃん、ベロで!手!拘束!できる!?」
「すごいわお茶子ちゃん……!ベロは少し待って……」
背中から抑えつけたトガを更に拘束しようと画策するも、多少の時間がかかる。ならばと麗日がトガを注視するのも仕方のないことだった。
「お茶子ちゃん……あなたも素敵。私と同じ匂いがする」
「?」
注視し抑える距離にいればトガの言葉は聞かされることになる。ましてや私と同じだなんて言葉、未だヒーローの卵である麗日が聞き捨てることもできなかった。
「好きな人がいますよね」
「!?」
「そしてその人みたくなりたいって思ってますよね。分かるんです、乙女だもん」
(何……この人……)
「好きな人と同じになりたいよね当然だよね。同じもの身につけちゃったりしちゃうよね。でもだんだん満足できなくなっちゃうよね、その人そのものになりたくなっちゃうよね、しょうがないよね」
トガの興奮したような笑み、麗日は緑谷という思い当たることを脳裏に浮かべる。そんな恋バナをしているところに──
(うんうん、トガちゃん分かってるねぇ……乙女の気持ち)
──透明化した成生が来ていた。プロヒーローを沈めてすぐにこちらに転送して飛んできたのだ。何せムーンフィッシュとマスタードが倒れた以上、一番戦力がやってくる可能性が高いのがトガのところなのだ。即座に護衛するならここしかなかった。
「あなたの好みはどんな人?私はボロボロで血の香りがする人大好きです。だから
(私は普通の人が好きだよー。普通で、ヴィランだろうがヒーローだろうが信念は曲げない直球でぶつかる子かなぁ?あ、でも一回折れたとかで起き上がった子とかも好きかなぁ)
成生が望むタイプは「普通」を押し付けない、芯のある男だ。個性も普通がいい。どうせ成生の力があれば関係ないのだ。
そんな男性と、バカップル極まりない恋愛がしたいというのが成生の理想だった。
──もっとも、「Ms.ダークライに向けて
「恋バナ楽しいねぇ!」
手首から先だけは自由だったトガが麗日の太ももに注射器を突き刺し、血を吸い取り始める。麗日もプロではないのだ、完全に関節を極めるような真似はできていなかった。
「お茶子ちゃん!?」
「チウ、チウ」
麗日は両手を抑え込みに使っているが、トガの五体を抑え込んでいる訳ではない。梅雨が解放されなければこのまま血を取られるだけだった。
何とかしようと麗日が体勢を変えようとした瞬間、全く別の方向から声がかけられた。
「麗日!?」
轟、緑谷、障子の三人が森を抜けて出てきた。
あ、これはマズいかも。トガちゃん抜け出せなかったら私が
「障子ちゃん皆……!」
梅雨の声に麗日の力が弱まる。その隙を突いてトガは拘束から脱出した。
「あっしまっ……」
あーよかった。生徒全員相手にするのは簡単だけど、かっちゃんとかいうのがもしかしたら爆豪とは別で、こいつらの中に攫う対象がいるかもしれないのだ。
実は私にも弱点はある。殺傷能力が高過ぎることと拘束能力が低いことだ。レーザーもレーザーソードも、空気土流も殺意極まりない攻撃性能をしている。使えば死ぬ可能性が非常に高く「捕まえる」ことには全く向いていないのだ。
じゃあ身体能力で拘束するしかないが、身体能力の増強で超再生に合う身体はまだまだ先の話だ。今の増強系を捕まえるのは不可能に近い。
結果、虎やマンダレイにやったように空気土流で不意を突き、超瞬発力と光速反射を使った体術で圧倒するしかないのだ。まぁそれだけでも十分過ぎるのだが。
「人増えたので殺されるのは嫌だから。バイバイ」
一瞬だけ止まった時の表情が「いいもの見た」って風に見えたのは気のせいかな?
「待っ……!」
「危ないわ、どんな個性を持っているかも分からないわ!」
梅雨ちゃんだっけ、蛙の個性に警戒する能力も高い。成生のままなら仲良くなれただろうけど……ヴィランだし無理か。
まぁいい、これでトガちゃんも退避へ入った。あとは攫う対象を捕まえるってところだけど、Mr.コンプレスが実行犯だと思うんだよね。ダントツで攫うのに適してる個性だし。
「何だ今の女……」
「
「麗日さん怪我を……!!」
「大丈夫、全然歩けるし……っていうかデクくんの方が……!」
「立ち止まってる場合か、早く行こう」
合わせて全員で五人かな?一応確認のために透明色知覚発光で周囲認識……あ、Mr.コンプレスがいるね。もしかして攫い終わった感じかな?
「とりあえず無事でよかった……そうだ、一緒に来て!僕ら今かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ」
「…………?」
「爆豪ちゃんを護衛?」
やっぱりあいつかよ
……待てよ?
というか、爆豪
「その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
(爆豪はどこ?)
「え?」
……あ、Mr.コンプレスがやったか。だったらあとはMr.コンプレスの護衛と合流だけだな。
「何言ってるんだ、かっちゃんなら後ろに……」
緑谷達が後ろを振り返るも、そこには誰もいない。まるで手品でも起きたかのような現象に、一瞬緑谷の目の前が真っ暗になっていた。
それを現実に引き戻したのは──皮肉にも、
「彼なら俺のマジックで貰っちゃったよ」
木の枝の上に立つ仮面をしたマジシャン、Mr.コンプレスがそこにいた。
やっぱりか。認識してたけど実際に口にされると「よくやった!」と言いたくなる。今は透明化してるから言わないけど。
「こいつぁ
「──!?返せっ!!」
背中に抱えられ動けない緑谷は、叫ぶことしかできなかった。
■■■
「返せ?妙な話だぜ。爆豪くんは誰のモノでもねぇ。彼は彼自身のモノだぞ!!エゴイストめ!!」
「返せよ!!」
緑谷は思い切り叫び、成生はMr.コンプレスの話に聞き入る。
うーん、確かにヒーローは「返せ」って叫ぶこと多いよね。それが本当に本人のためになるのかは別の話にしておきながらだ。
例えば虐待されてる子供が迷子になったとしよう。それを育てたいヴィランが攫うのをヒーローが止めて、虐待してる親の元へ返す。
もしその後子供が虐待で死んだら、それは子どものためと言えるのだろうか?
「意外と話合いそうだね」
あ、思わず声に出ちゃった。まぁいいか。透明化は解けてないし、どうせ気づかれな──
「っ!?誰だ!?新手か!?」
──いなんてことは無かった。障子が気づき、周囲の警戒を更に高める。
「どけ!」
さらに私が声を出した方向とMr.コンプレスの方へと轟が凍結させるべく氷を放つ。
Mr.コンプレスは軽快にトンと木の上を蹴り上がり、私は空気地面化により階段状になった空へと駆け上がる。
「我々はただ凝り固まってしまった価値観に対し「それだけじゃないよ」と道を示したいだけだ。今の子らは価値観を選ばされている」
枝の上に着地し、説明するようにMr.コンプレスは5人に話しかける。余裕のある様子であり、場数をくぐっているヴィランらしい雰囲気をしていた。
障子が背後を確認し、いなくなったのが爆豪だけではない事実に気づく。
「…………!爆豪だけじゃない……常闇もいないぞ!」
「わざわざ話し掛けてくるたぁ……舐めてんな」
轟が目の前のヴィランが問答無用でないことから、会話で隙を伺おうと探る。油断を誘うのがヴィランだというのに、前回から学べてるのかが怪しいところだ。
それに……舐めてる?当然だろう、私が加わったことで戦力差が違い過ぎることになったのだから。
「元々エンターテイナーでね、悪い癖さ。それに舐めもするさ……彼女がこっちに来たようだからね。暇なのかい?」
「私の役目はだいたい終わったかな。あと二つくらい?」
どうせだしと、透明化を解除して「普通」の少女、依光成生の姿を現す。制服もUSJの時と変わっておらず、明らかに前回の続きと言った様子だった。
「お前は!依光成生!」
自己紹介したんだっけ?名前も覚えててくれたのは嬉しい。強大なヴィランでもない限り簡単には覚えてくれないから。……あ、雄英の先生に手傷負わせたなら十分強力なヴィランか。
「久しぶりだね緑谷に轟。爆豪はこっちだし……切島くんは合宿所かな?」
気にするのはあのとき会話した4人だが、ここにいて無事なのは轟だけか。失望させてくれるなぁ、ヒーローの卵。
「何でここに!?」
「いけないわ。彼女は
注意を促した、蛙吹梅雨が思い出すのはUSJが襲撃された次の授業の時のことだった。
□□□
「お前ら、依光成生といった少女を見たか?
「ざけんな!」
「何で!?」
相澤先生の注意に爆豪ちゃんがブチギレて、緑谷ちゃんが反射的に質問をぶつけたの。
内容が内容なだけに、手を上げずに質問するのも止む無しと相澤先生は答えたわ。
「お前らも見たと思うが、油断なんぞしていないスナイプと13号に負傷を負わせた。それも一瞬でだ。プロ数人分くらいの強さを持ってるヴィランだと思え」
「はい!何故日常で見かけることがあるのですか!?」
これまた反射的に飯田ちゃんが質問をぶつけたわ。手を上げながら言っても意味ないでしょと言いたかったけれど、相澤先生は合理的じゃないと思ったのか、一気に話したわ。
「……他所の高校に実際に在籍しているからだ。そしてUSJに現れたのは別人の可能性がある、話はこれまでだ」
相澤先生はこれ以上話すことはないと区切り、そのまま終わらせたの。分かったのは、
□□□
そんな彼女が、目の前にいる。クスリと、「普通」の少女の笑みを浮かべて。そこだけを見れば、私と友達になれそうと思えるような少女が。
「へぇー…イレイザーヘッドは流石だね。私が見せた情報からの力量予測も最大評価、嬉しいねぇ。あと理由?……
「なっ」
余りにもヴィランらしい理由に緑谷が衝撃を受ける。容姿や雰囲気と実力・思考が余りにもかけ離れ過ぎており、まるで身体だけ別人が乗っ取ったかのようにすら思えた。
「ねぇ、何で常闇も?」
「ムーンフィッシュを一方的に蹂躙する暴力性を見せてくれてね。彼も良いって判断したのさ」
談笑するような様子に怒号が上がる。声の主は──緑谷。
「この野郎!!貰うなよ!!」
「緑谷落ち着け」
障子が宥めるも効果はない。何せ緑谷からすれば最大のライバルにして友である爆豪が
「麗日こいつ頼む」
「え、あ、うん!」
轟が背負っていた生徒を麗日に渡し、指向性広域氷結を放ってきた。Mr.コンプレスは軽業師のような動きで避け、私は自身に相対距離転送で100m程上空へ飛ぶ。
「あれ、どこに……まぁいい。悪いね俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!ヒーロー候補生となんて戦ってたまるか」
個性で氷を圧縮しビー玉ほどの小ささの玉にしながらMr.コンプレスは氷結を避け続ける。そして無線を起動させた。
「開闢行動隊!目標回収達成だ!短い間だったがこれで幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に”回収地点”へ向かえ!」
「追撃が怖かったら私を呼んでね!」
Mr.コンプレスの横に転送で現れ、無線に追加するように言葉に出す成生。突然のことにMr.コンプレスもギョッと驚いていた。
「びっくりさせないでくれよ」
「つい」
「幕引き……だと」
Mr.コンプレスと共に木々の上へと上がる。成生が着地したのは足場が明らかに空の上だが、空気地面化がある成生に足場の心配はいらない。
「ダメだ……!!」
「させねぇ!!絶対逃がすな!!」
ヒーローの卵たちの声を嘲笑うかのように二人は軽快に駆けていく。最速である緑谷は動けず、それ以外の面子は速度増強系はいない。単純な速度で追いつくことはできなかった。
「ちくしょう速ぇ!あの仮面と依光成生……!」
「飯田くんいれば……!」
今いない者に頼ることはできない。だからこそ今いる面子で最善を行う──緑谷が策を思いつき、話始める。
「意外と大したことないなヒーロー科」
「油断大敵だよ、Mr.コンプレス。ヒーローはピンチの時ほど怖い」
「肝に銘じておくよ」
軽い会話をし、移動に集中する。何せ今使用しているのは『空気地面化』で空を蹴り、『人形操作』『思考加速』でMr.コンプレスに合わせた速度を、『超再生』で人形操作の負荷を解決というものだ。
超再生以外は既に習熟が終わったものであり自由自在だが、超再生のせいでコンマ00数秒ほど遅くなっていた。光速すら認識できる成生からすれば負荷がでかいと言えるだろう。
そしてMr.コンプレスの速度が落ち、成生も護衛はここで終わりで問題ないと判断し荼毘の隣へ転送で移動する。
が、合流地点のほぼ直上というところで、Mr.コンプレスの背後に勢いよく何かがぶつかり地面へと落とされた。
「!?」
ヴィラン連合の合流地点、そこにMr.コンプレスを追ってきた生徒三人……緑谷、轟、障子の姿があった。
次回、林間合宿襲撃編完結です。
今回はほぼ本編。ただし雄英から見た成生ちゃんの評価とかが挟まってますが。
戦力評価がプロヒーロー数人分?ハハハハハ、ギガントマキアと同格のMs.ダークライがその程度と?
成生ちゃん「でもイレイザーヘッドが最高評価にしてくれたのは嬉しい」
弔「分からんでもない」
こいつらイレイザーヘッド好き過ぎない?