原作沿いじゃないって?「基本的に」原作沿いな訳で、きちんと全部沿う訳じゃない
それでは成生ちゃんのデビュタントをどうぞ
成生ちゃん「私も皆も絶望する未来へようこそ」
ダークホールによりオールマイト達の戦いを報道していたヘリが墜落する間際、5m近い巨体を持った人物と一人の子供がクッションとなり受け止めていた。報道しているアナウンサーとカメラマン、そして操縦士の三人は無事に不時着し、火が上がる中を脱出できていた。
「うぅ……ありがとう……っ!?」
そこでヘリから救出された三人は、助け出した一人が見るからにヴィランだったことにようやく気付く。横に子供もいたが、目の前のヴィランが余りにも凶悪な姿をしていたため、腰を抜かしてしまう。
「あ、これかな?おかーさんが言ってたやつ!」
そんな中、子供がカメラマンから生放送用のカメラ機材をとりあげ、右手で持ち上げる。重さで言えば6歳児が持てるかはかなりギリギリであるというのに、まるで紙のような軽さと言わんばかりだ。
子供──電花なら身体能力はオールマイトが基準なのだ。この程度できない方がおかしい。
「ちょっと!?それは報道用の機材なの!ダメ!」
「ごめんなさい!貰います!」
「コラ!……あっ」
腰を抜かしたカメラマンが取り上げようと動こうとしたが、その前に5mの巨人……人形の依光成生が遮るように現れた。流石にカメラマンが対抗できるはずもない。
「貰う、いい?」
「は、はい」
ヒーローがいない現状、見るからに凶悪なヴィランに迫られれば要求を呑む以外に選択肢は無い。生放送用の機材を渡し、そのまま距離をとる。
「おかーあさーん!!!」
電花はそのまま機材を持って走っていったが、人形は一言だけ言葉を残してから歩き出した。
「来る、な。死ぬぞ」
まるで心配するような言葉。命を助けたという意味ではヴィランらしくないところに、どこかちぐはぐさが垣間見えていた。
「あれ……ヴィラン、なのかな?」
機材を奪ったという意味ではヴィランではある。強大な身体能力もあるようだ。だが、それならヘリに直接乗り込み奪えばいい。わざわざ助けてから奪う必要などどこにもない。
とりあえず命があったことに安堵し、三人はその場から離れていった。
■■■
電花たちが報道陣から機材を回収している最中、Ms.ダークライはライトホールを放った爆心地にいた。ヒーローが全員倒れ、動ける者は一人もいない。
ダークホールだけならまだヒーローは耐えきれただろう。オールマイトの渾身の一撃もあり、威力はほぼ無くなっていた。だが、ライトホールという追撃のもう一撃には耐え切れなかったのだ。
ダークホールには溜めが必要だ。当然ライトホールにも必要なのだが……エンデヴァーの攻撃を喰らった時間がそれだ。数秒あれば十分なのだが、その数秒でエンデヴァーの炎が届いたのだった。
だが届いたのは顔面のみ。武器である服には届かず……皮膚なら変化超再生があるMs.ダークライには無傷となる。
「流石はヒーロー。満身創痍でも今の私に一撃を届かせますか」
油断したとは言わない、変化超再生が無ければ違う戦い方をしただろう。一人一人いたぶるような戦闘に……オールマイトの渾身の一撃を警戒する戦闘にはなったはずだ。
空気土流でヒーロー達を動かし、倒れている場所を調整していく。視界に収まるようにひとまとめにできればそれで十分だ。カメラの視野は広いが、人の視界に収まるのと大差はない。
「オールフォーワン、オールマイト、エンデヴァー、ベストジーニスト、エッジショット、シンリンカムイ……グラントリノもかな? 私の宣伝には十分でしょう」
No.1ヴィランとヒーローを倒している。それだけでも印象は十分だがどうせなら多い方がいい。
透明色知覚発光……電花も到着しそう。準備はできた、あとは実行するだけだ。
「さぁデビュタントといきましょう。後には引けない……そんなこと、今更ですね」
「おかーあさーん!!!」
「電花、頼んだものは貰ってきた?」
「うん!」
電花が元気な返事をしている中、人形も到着した。どうせ時間はあるからと、ゆったりと向かってきたらしい。
「よろしい、それじゃあ……ちょっと待っててくれる?人形はこれを持って頂戴」
人形にカメラマンから奪った機材を渡し、立ち位置を調整させる。流石にここがいいなんてところまで指定はできないからある程度は適当だ。
「あとは7人が見えるところ……この辺りでカメラを動かさずに持ってて」
人形を配置に立たせた後、電花と目線を合わせるようにしゃがみ込む。母が子にいい子と言うような声でMs.ダークライは口を開く。
「電花、それじゃあそれの横に立って。私のためにあなたの個性を使ってくれる?」
「うん!」
電花が頷いた数秒後、関東一帯及び連携している報道機関に、ジャミングが走った。
■■■
オールマイト達の戦闘を映していたテレビが切れ、再度映ったのは土埃が遠くに見えるとある一地区。上空から撮っていたのが地上になっており風景が変わっている。
しかし同じ放送であり、同じ場所からだとは視聴者は考えていた。そしてそれを悪い意味で裏付ける……ヒーロー達が倒れている姿があった。
そしてその中央に──背を向けた、白いドレスを着た女性の姿があった。
『ごきげんよう市民の皆さん、ヒーローに……ヴィラン諸君。ここがどこか分かりますか?』
背を向けたまま彼女は聞き語る。ここがどこなのかと質問……その答えを、自らが一歩横に動くことで証明する。
『見えるでしょう、あの……平和の象徴オールマイトの姿が。ガイコツのような身体になってでも戦った、Mr.ヒーローと呼ぶ人の姿です。ここは、神野区ですよ』
テレビの向こう側から悲鳴が上がる。ヴィランと戦っていたオールマイトが倒れたということは、ヴィランに負けたということだ。ヒーロー社会の平和の象徴、それが倒れて動けないというのは平和が無くなるとすら言える大事件だ。
そんなカメラの向こう側の反応が分かっているように、少しだけ間をとり、再び彼女は口を開く。
『安心してください、オールマイトは死んではいません。何せ──』
オールマイトが死んでないことにホッとする人もいれば、次の言葉がまさか……と思う人もいた。その予想が、当たっているとは信じたくなかっただろう。
『手を下したのは私ですから』
白いドレス姿が黒に染まる。振り返りカメラに映った深淵色の瞳が、カメラ越しに冷気でも伝えているのかとすら錯覚させる。
『オールフォーワン。それがオールマイトと対等に戦っていたヴィランの名前です。二人とも私が地に伏せてあげました』
ウソだ、そう小声が出る程に衝撃的な事実。それが真実なら、彼女は一人でオールマイト二人分の力を持っているとすら言える。そしてそんな人物がヴィランだともなれば、恐怖以外に感情が出てこない。
しかもオールマイトが倒れ、動けず……彼女に傷は無い。傷一つつけられずオールマイトが負けたなど幻想としか思えない。ウソだと、テレビが間違っていると思うのも仕方ないことだ。
『しかしオールマイトは流石ですね。私がいなければオールフォーワンに勝っていた』
しかし彼女はオールマイトを賞賛した。オールマイトの実力は十分に理解していたのだと、対等に戦っていたヴィランには勝てたのだと。
ヴィランがヒーローを賞賛する。それはヴィランがヒーローをライバルや認めた相手だと口にすることだ。それほどに評価しているというのは……少なくとも全国放送規模でオールマイトに対してそう言えるヴィランであるということを意味する。
『ですが現実は残酷ですね。私がいる、それだけでこんなに戦局が変わってしまったのですから』
「私が来た!」そう安心させるのがオールマイトだとテレビの向こう側は皆知っている。それに対し「私が居る」それだけで戦局を変える者と言われれば、まるで対比のように現れたヴィランだ。
そう言う者は木っ端ヴィランでは山ほどいた。だが悉くオールマイトに潰された……逆にオールマイトを倒す者が現れるなど、市民やヒーローは考えもしていなかった。
『ああ、これは失礼を。私は──Ms.ダークライと申します。ヴィラン連合のリーダー、死柄木弔の妹弟子です』
そして告げられるヴィラン名とその正体、説得力が急激に増してきた。昨今で大暴れしているヴィラン連合のリーダー、その妹弟子と言われれば実力が有って然るべきなのだから。
『闇を導く光、そういう名前です。Ms.ヴィランと呼んでもいいですよ?オールフォーワンはそう呼んでた時もありました。……闇をヴィランととるか、そうではなくヴィラン以外も含めた者ととるかはあなた達次第です』
善良な市民からすればどうでもいい情報。だが、善良でないもの達からすれば最も欲しい情報だ。
オールフォーワンがMs.ヴィランと呼んでいたという事実が、視聴しているヴィランにそれほどの者だと認識させる。少なくともオールフォーワンと同格、下手すれば超えてもおかしくないほどのヴィランなのだと。
そしてヴィラン的思考を持ちながらヴィランになっていない者達へ、味方がいるのだと示す一言。背中を押すには、十分だった。
視聴者が釘付けになったところで、Ms.ダークライは少しずつカメラへと近づく。口角を上げ、ニッコリと笑いながら。
『それでは最後に……私からのプレゼントです』
えいっと可愛らしい声で人差し指でカメラに指差し、催眠光を放った。……全国放送でとんでもない視聴率を叩き出している状態の視聴者全員が、カメラ越しにその光を見てしまった。
『私が誰の目にも留まるようになってくれたら、嬉しい』
満面の笑みを浮かべるMs.ダークライ。その笑顔は邪悪というより、無邪気と言う方が正しかった。
使った催眠はカメラ越しということを考慮したもの。恐ろしく弱い催眠であり、ほんの少しだけ不安を煽るものだ。
勘の鋭い人はたまに幽霊みたいな感覚や見られてないのに何かに見られているという「よく分からないけど何かありそう」というシックスセンス的な感覚がある。そこに「Ms.ダークライが見ているかも」という感覚を混ぜただけだ。
勘の鈍い人なら数年に一回夢にMs.ダークライが出てくるくらいのもの。その程度の、極々弱い影響しかない。
テレビの向こう側は阿鼻叫喚だと言うのに、Ms.ダークライは満足そうな顔を浮かべてこれでお別れだと手を振る。
『それではお別れの時間です、私はどこにだって現れる──悪夢のように。あなたたちが自らを闇と呼ぶなら導きましょう。私は……Ms.ダークライなのですから』
電波が少しずつ悪くなっていく。電花の個性を全力で使っている以上、時間制限があるのも当然。むしろ関東一帯をジャミングしてこれほどの長時間ジャックできたこと自体が途轍もなく強力な個性であることの証明ですらあった。
『ごきげんよう。フッ……フフフ……ハハハ………アッハハハ!!!!』
嬉し泣きなのかも分からないが、泣きながら高笑いを上げる姿。それはまさに悪夢に見る少女のようだった。
オールマイトvsオールフォーワンを見てた全ての人間に催眠光かけました。効果は成生ちゃんがたまに夢に出てくるようになるくらい。ただ1年も経てば消える。
誰の目にも留まる、大成功だね。よかったね。
成生ちゃん「マスコミってあんなとこいちゃダメでしょ。私に有効活用してくださいって言ってるようなものだよ」
もっと人の目に映りたい?しょうがないにゃあ……第二部以降でやっていこう
成生ちゃん「ひとまず満足はしたから当分は裏に回るー……疲れたー……電花癒してー……」
ドクター「話聞かせなさい」
どこぞのヤクザ「おいおい待てよ。次の支配者さんよぉ」
どこぞの解放軍「目立ち過ぎではないかね?ちょっと
弔「あいつ何やってんだ」
二部の最初だけは投稿するよ!更新は30日だよ!その後は予定無いよ!