普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

36 / 90

注意!!!




今回のお話から成生ちゃんの印象が大きく変わります。こんなの求めてない!という方はご注意ください



ヴィランからヒーローになることはないのでご安心を












時系列だけで言えばデビュタント後の成生ちゃんのお話です。


成生ちゃん「………」



依光成生の悪夢 ~デビュタント後~

朧げに映る世界。泡沫に漂う身体、幻のような儚げさが其処かしこに感じれる。

 

 

これは夢だ……明晰夢というやつだ。いつかだったか、随分と昔のような覚えがある。その頃の記憶だ。

 

 

 

もう無くなった実家、その自室で考え事をしていた時だ。小学生の……一年生だったか、確かその頃だ。

 

 

 

 

「一番目に留まる人、ヒーロー……オールマイト」

 

「経歴からして当然なんだろうね……」

 

 

パソコンで動画を見て、調べて経歴を調べた。オールマイト専門サイトみたいなものまであったから、何をしたのかはすぐに分かった。

 

 

そして、それが余りにも馬鹿げたレベルのヒーローらしい行動ばかりだったことも。そんじょそこらのヒーローとは桁外れの人助けを行っていたことも。

 

 

「今から誰の目にも留まるためには何をすればいいの?」

 

 

だから、考えなければならなかった……誰の目にも留まるための、手段を。この時に独り言が多かったことだけは覚えてる。

 

 

「今はオールマイトが一番目立ってる……オールマイトを超える?」

 

「オールマイトを超えるくらい誰の目にも止まりたいなぁ……ヒーローじゃ無理かぁ」

 

 

ヒーローになってオールマイトを超えるってことも当然考えた。ヒーロー社会なんだからそれが一番理想的な行動だ。

 

 

でも、理想的な行動が最速・最善であるとは限らない。

 

 

「ヴィランになってオールマイトを超えるのと、どっちが目立つって言うなら……多分ヴィランの方だよね」

 

 

目的は誰の目にも留まること、名声でなく悪名だったとしても目的は叶うのだ。ただ、オールマイトが居る中で超えなければオールマイトよりも目に留まることはまずない。

 

 

つまり、オールマイトが引退するよりも速く名声か悪名を轟かせる必要があるのだ。

 

 

そしてヒーローとヴィランのどちらの道を選ぶのか……成生は既に決められていた。過去の自分によって。

 

 

「今個性伸ばししてること自体本当はダメなこと。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ははは……笑っちゃうよ。とっくに道なんて選んでたなんて」

 

 

 

「じゃあヴィランしかないね。力を蓄えてから……やっぱり早くても高校生かな」

 

 

 

遅すぎるとオールマイトが引退しかねない。何せ私が高校生で50歳を超えるはずなのだ。年齢の影響が出たと言われてもおかしくない。

 

 

「ヴィランになってオールマイトを超える。どうすればいいかなー」

 

 

気軽に考える成生だったが、思考の海に潜った結果……目を見開くようなことに気づいた。

 

 

 

「──待って、私がヴィランになったら……おかーさん達は?」

 

 

 

成生は普通の少女だ。個性もバレており、それがヴィランに堕ちたとなれば親の教育が悪かったと言われるのは間違いない。

 

 

それがオールマイトクラスの脅威ともなれば、嫌な想像しか出てこなかった。

 

 

 

「ヴィランの親。そんなの……リンチに合っても、殺されたって文句は言えない」

 

「私のせいで殺される?誰とも知らない他人に?」

 

 

 

見開いていた瞳から涙が溢れ出す。両親の死、それを呼び起こさなければならないのは普通の少女である成生にはできないものだ。

 

 

「嫌だよ……そんなの嫌。なんで殺されないといけないの?」

 

 

「分かってる、私がヴィランに堕ちるから。私がヴィランに堕ちなければ死ぬことなんて無い」

 

 

溢れ出す涙の疑問の答えを自ら導き出す。小学一年生とは思えない論理思考だが、元々早熟な成生には簡単なものだった。

 

疑問の答えは疑問が何処から来たのかなのだ。簡単であり……成生には()()()()()()()ものだった。

 

何せそこには──

 

 

 

 

 

「じゃあヴィランにならないとしたら……私の想いはどうなるの?

 

 

 

 

 

──本来無ければならない、自らの原点(オリジン)が介在しないことになってしまうからだ。

 

 

ヴィランにならず誰の目にも留まるというのはヒーローでオールマイトを超えることに等しい。そしてそれは時間的に不可能である以上、ヴィランになるしか選択肢は無い。自らの想いを選べば必然とそうなる。

 

だがヴィランになれば両親は間違いなく死ぬ。それも成生には選べない選択だった。

 

 

 

「押し殺せって?これまで鍛えた想いを無駄にして使えないものにしろって?諦めろって?」

 

 

 

だが簡単に諦められるようなものではない。その選択肢は失ってはならない原点(オリジン)を失えと言うに等しいのだから。

 

これまで鍛えてきた個性の、想いの源となるものなのだ。それを無情に捨てるなど、成生にはできない……否、できなくなっていた。

 

 

 

「鍛えれば鍛える程に膨れ上がる想いを……私にとっては生きる希望とすら言えるものを……殺せと?

 

 

 

もはや成生にとって原点(オリジン)は生きるために必要なものなのだ。これが無ければ死ぬ、そう言い切れる程の重さを持つ想いであり、蔑ろにすれば、屍のような思考と身体をした人間になっていくことだろう。

 

すなわち生き地獄。自ら進んでそこに飛び込むなど、狂人でなければできないことだ。

 

 

 

「その先にある未来は……うぅん、未来は無い。絶望の淵にずっと立たされる生き地獄、……そんなの私には耐えられない」

 

 

 

当然成生も耐えられないと判断出来ていた。原点(オリジン)に従うかどうかにより、人生が決まる。そこで現れた選択肢にポタポタと床に涙が落ちる。

 

原点(オリジン)を選びヴィランになれば両親が死ぬ。

 

原点(オリジン)を選ばなければ両親は死なないが、成生自身が死ぬ。

 

 

強過ぎる想いと、それに反応した個性が引き起こした悲劇への選択肢だった。

 

 

「何で……どうして……?嫌だよ……こんなの嫌だよ……」

 

 

涙が前が見えない程に流れる。気づいたことを言葉に出して情報を整理するも、結果は同じ。

 

 

 

「私の想いを諦めるか両親を諦めるか……。……自殺するか、親を殺すか……選ぶしか……ない……」

 

 

 

常人ならば想いを諦めても死ぬことはないどころかくだらないとさえ言うことだろう。だが原点(オリジン)と呼応している個性がある以上、個性が暴発しようが構わないという覚悟がなければ選べないのだ。

 

いつどんな暴発をするかも分からない以上、自殺以外に選択肢は無い。

 

 

 

小さな身体には、余りにも酷な選択だった。

 

 

「きっと普通なら……ヴィランなんて選ぶ私が死ぬべきなんだろうね……」

 

 

ヴィランとは市民に被害を齎す者達。いなければいない程助かるのだ。善良な一市民がヴィランに堕ちるか死ぬか選ぶなら、死を選ぶこともあるだろう。それが聡明な人物なら尚更だ。

 

 

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……私は……嫌だよ……皆死んでほしくなんて無い。私の想いが歪だから……それでも私の原点だから……」

 

 

 

 

謝罪の言葉なのか、懺悔の言葉なのか、普通の少女はぐちゃぐちゃになった感情から漏れ出る言葉を零すことしかできない。

 

選べない選択肢を選ぶ。理性というブレーキがロックをかけていたにも関わらず、生死をかけた想いが涙と共に無理やりにロックを壊す。

 

 

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……私が……やるから…………うぅぅぅ…ひぐっ……うわぁぁぁぁぁぁぁ……!!!

 

 

 

 

7歳という児童が悩むには重過ぎる内容を、早すぎる成長が齎した。

 

 

涙を流しながら歩み続ける。ヴィランという道を選んだがゆえの涙。普通の少女だからこそ、流す涙がそこにあった。

 

 

■■■

 

息を乱れ、ガバッとベッドから目を覚ます。デビュタントの後、アジトに戻って眠っていたのだった。横に電花もおり、スヤスヤと眠っていた。

 

「ガッ……はっ……」

 

フラッシュバックするのは昨日の記憶。光速切断に、ダークホール、ライトホール。……どれだけの死人が出たのか、予想もできない。

 

『助けて!誰か!』

『火が……!瓦礫が!落ち……あああああああ!』

『逃げろ!逃げるんだ!!!』

『誰が…!ヴィランが!何で!どうして!?』

 

頭の中に聞こえるのは悲鳴や怨嗟の声。事実、昨日の戦いで遠くから聞こえていた声だ。

 

「……随分な悪夢を見ましたね」

 

……今思えば、弔との特訓の前でも思考力加速は働いていた。今と比べれば極々わずかでしかないそれだが、個性が出た時から働いていたとするなら……成長を早熟にさせたのだろう。

 

少なくとも小学一年生が考えるようなことではない。そして選べるかどうかも。

 

頭をブンブンと横に振り、夢の影響を紛らわす。もう、今更の話なのだ。

 

 

「もはや、進み続けるしかないと言うのに」

 

 

両親の死という選択肢が選ばれ、原点(オリジン)のための第一段階は完遂した。良心がこれでもかと抵抗し、人を殺した事実が涙へと変わる。

 

まだ、ヴィランとしてデビュタントしただけだ。まだまだ先はある、泣いてなどいられない。

 

涙を拭い、ベッドから出る。そんな動作のふとした思考の中に、一つの可能性を思いつく。

 

「でも……もし想いが口に出せそうな人が居れば……話すのも悪くは無いですね」

 

Ms.ダークライ……成生はフッと苦笑いを浮かべる。思考に浮かんだ、そんな都合のいい可能性なんてあり得る訳が無いものだった。

 

 

 

「闇に堕ちると無意識だろうが自覚するヒーローや少年少女なんて……居る訳ないか」

 

 

 

両親と自分自身を選び、自分自身を選んだ。ならば、同じ境遇の……ヴィランでなくヒーローなら、何か違うものが見られるかもしれない。

 

もし違う未来があったのなら……そんな未練だった。

 

 

 

 

 

 

 

一年とかからない遠くない未来、余りにも予想外過ぎるそんな人物が現れることになるとはこの時のMs.ダークライは考えることすら無かった。

 

 




これが成生ちゃんの胸の内です。

ヴィランになんてなりたくないけど、原点(オリジン)を諦めて死ぬことは嫌。だからヴィランになるという、悲愴な決意です。

常闇くんのダークシャドウが惚れたのはこの辺が理由




普通に考えて、普通の少女が良心(両親)を簡単に殺せる訳ないじゃないですか
普通に考えて、普通の中学生がオールフォーワンと初対面で対等に話せる訳ないじゃないですか


その答えは、小学一年生から自殺するか親を殺さなければならない葛藤を思考加速された上でしなければならなかったから。

そりゃオールフォーワン初対面で恐怖なんてせんわ、常に自殺するか考えてる状態になってんだから




デビュタント戦でダークホールで瓦礫撤去してたり(これで二次被害が大きく減った)、報道陣を殺さなかったり、最後に涙を流してるのはこの悲愴な決意が漏れ出したものです。

所謂、「やってしまった……ならせめてこれだけでも」という行為です。


人形に両親を殺させたのも、「直接手を下すことはできなかった」というのが答え


ちなみに成生ちゃんが原点(オリジン)を諦める選択肢を選んだらマジで死にます。

どっかの変なタイミングで髪の毛口にすることくらいあるはずなので、勝手に個性が発動(※この時はまだ女性限定とか無い)してそこで身体がパンッと破裂して死にます。



前話「悪夢と惨劇とデビュタント その7 ~Ms.ダークライ・デビュタント~」前書きの伏字

成生ちゃん「()()()()絶望する未来へようこそ」


今後は多くて週一くらいの更新予定


■■■

Tの決戦兵器さんより、支援絵頂きました!
止められない足と罪悪感に泣く姿と、でも自らが進んでそうなったのとそのせいで下を向けずに上を向くしかないのがまさに成生ちゃんって感じです

【挿絵表示】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。