「まず確認させい。先生を倒した理由は?」
「デビュタントに要らないから」
少し日が経った後、成生はドクターの下を訪れていた。電花の触診と言う意味では、正しくドクターという意味で間違いではなかった。
だが触診するドクターは、オールフォーワンへの側近であり……その忠誠心は崇拝というレベルだ。オールフォーワンを倒した成生など敵としか思えず、その人物がオールフォーワンを倒す前と変わらない様子で現れたのだから恐れ入る。
しかしこれまでかなりの時間を共にした仲だ。ドクターも、現れたら即座に攻撃する程までの怒りは抱いていなかった。理由さえはっきりしていれば、の話だが。
「……何故?」
「あの調子じゃオールマイトに負けてたよ。圧倒的に気迫で負けてたし、何より侮ってた。私なら初手で周囲へと被害を齎す方向に行くし、なりふり構わずオールマイトを倒そうとするならそれが最適解。なのにオールフォーワンは真正面から戦ってた」
ふむ、とドクターは考え込む。言葉をそのまま受け取るなら、Ms.ダークライが裏切ったのではなく、オールフォーワンの方がMs.ダークライを制御しきれなかったと見る方が妥当なのだ。
ドクターもMs.ダークライの実力は知っている。分析上では、真正面から戦えばオールフォーワンですら勝てない存在だ。最大戦力となった場合での分析なら……
故にオールフォーワンは真正面から戦うのは諦めた。後継が居たとしても諦める程だ、ドクターもそれを事前に知らされていた。一時的な敵対も十分にあり得るということも。
「因縁があるからって勝てない戦いに挑むの?……だったら私の役に立った方がマシ。私が参加している以上、勝てない戦いするなんて私の方が困る」
呆れるような言い方に少しだけドクターの拳に力が籠る。使えないやつだったから捨てたと言われても、捨てられた者が自身が崇拝するような者であれば当然の怒りだ。
それだけの感情を持っていたが、ドクターは押し殺し会話を続ける。伊達にオールフォーワンの側近ではなかった。
「それで計画が頓挫しようともか?」
「それは無い。私の勘だけど、遅れるだけでしかない」
「……どういう意味じゃ?」
まるでオールフォーワンとドクターの計画を全て知っているかのような言い草に、ドクターの口は少しだけ引き締まる。
どんどん直感が鋭くなるはずだ。Ms.ダークライがいないタイミングでオールフォーワンと話していた時に、二人はMs.ダークライの成長についてそう結論付けた。だがまさか、まさかそこまで直感が鋭いとはドクターは思いもしなかった。
「ドクターが一番知ってそうな気がするんだけど、オールフォーワン……あの姿って本物?」
オールフォーワンの後継計画まで掴み取る程の勘などとは。
ここにきてドクターができることは、ただ興味があるように黙って聞くことだけになっていた。
「ほう?」
「個性からして本物なのは間違いないんだけどさ。ドクター、
Ms.ダークライから出てくる言葉が全て正解であり、ドクターは背筋が薄ら寒くなる。
ドクターは自らの個性「摂生」を複製し、オリジナルをオールフォーワンに渡している。自らが持つ個性は複製したものだ。そしてオールフォーワンも同様に、自らの個性を複製した上でオリジナルを保管している状態だった。
その情報を欠片たりとも渡していないにも関わらず、Ms.ダークライは全貌を勘だけで明らかにした。オールフォーワンから何かしら情報を得ているのかもしれないが、絶対にここまで届く情報ではないとドクターは言い切れる。
なぜならオールフォーワンは慎重で狡猾だからだ。自身の弱点とも成る情報などドクター以外に教えるはずもない。
「私も複製するような個性を持つからなんとなく分かったんだ。似たような気配っていうか……オールフォーワンの個性って複製したものじゃない?」
「……」
奪い与える個性と、複製して自らのものにする個性。確かに最終的に自らのものにするという意味では近い特性を持っていると言える。
しかしあくまで近いだけだ。氷と炎が熱操作で近い特性を持っていると言っているようなものであり、氷だけを扱うものが炎を扱うものの動きが怪しいと勘づけるか?ということと同じだ。
それを何の疑いもなく言葉にした。まるで無邪気な子供が疑問を口にするように。
「そして個性に意志が宿るなんて話もオールフォーワンから与太話で聞いたことがある。……本物の個性オールフォーワン、研究所のどっかにいるんでしょ?」
「……」
少なくともデビュタント前はここまで直感は鋭くなかった。ただの一回の
「その移植先は弔でしょ」
「それは分からん。お主かもしれん」
これは本当のことだった。もしも弔に万が一があれば、成生に支配者になるという可能性があれば、薄い可能性は存在していた。
それも今潰された。オールフォーワンの個性は人格があるのだ。人格が融合するようなことになるのだが、力を受け入れる覚悟を前提としており、覚悟の無い……しかも強大な意思を持つ融合元の人格と融合するのは難しい。
そもそも、オールフォーワンが自らその可能性をゼロとしていたこともある。Ms.ダークライは器足り得ないと、明言していた。
「それこそあり得ない。オールフォーワンは私そのものを欲しがってた。それに私じゃ……逆に塗りつぶしちゃうよ?」
オールフォーワンはMs.ダークライを横に立つ者として認識しているのだ。ドクターも分かっており、後継として見るつもりは無かった。
ドクターからすればオールフォーワン後継計画の大半が暴かれたことは恐るべきことだったが、味方である以上恐れる必要はないことでもある。そして驚愕すべき事実は武力は知っている以上、直感の鋭さ……成長の速さという一点だけだ。
「……たった一夜の戦いでそこまでヴィランとして成長したか……流石はMs.ダークライと言うべきじゃな」
「これで問題は解決?こっちの話もしたいんだけど」
いつの間にか成生は自身の背中に転送させ、電花を背負っていた。電花をベッドへと下ろし様子を見ると、スヤスヤと眠りについており、母親が寝かしつけたようだった。
「電花か……経過はどうじゃ?」
「元気いっぱい、有り余る元気が良過ぎて変化超再生が間に合うのがギリギリ」
成生がドクターの研究所を訪れた理由はこれだ。
電花は実験体だ、寿命もそう長いものではない。だからこそ定期的に経過を見ておく必要があるのだが、今回は少し無茶をさせ過ぎたと成生は感じ取っていた。
元気が余り過ぎていることが心配ではあった。成生がお願いしたからテンションが上がってそうなったのか、それとも寿命を燃やし尽くそうと動いているのかが分からなかったのだ。
「ふむ……少しこちらで預かろう。そこまで元気良くさせたつもりは無かったんじゃが」
「私は助かってるからこのままでいいですよ。前に暴れたから数日は静かにしてていいだろうし」
ドクターが電花の身体を調べたいというので数日程預けることになった。問題が無ければすぐに戻ってきてくれるはずだ。
電花にはMs.ダークライとしての行動でも、私自身のメンタルという意味でも助けられている。こんなところで倒れられたらたまったものじゃない。
「電花がいないなら……壊理ちゃんと遊びましょうか」
丁度いい機会だと、壊理ちゃんの服を買ったりお話ししたりしながらも、個性伸ばしもガンガン進めていくのだった。
■■■
9月になり、ヒーロー仮免試験を行うということで会場にヒーローの卵たちが集まっていた。成生もまた、姿を透明にして紛れ込んでいた。
雄英はまだ来ていない。来ているのは士傑と他のところからの生徒だ。
私は少し前に到着した、今日は壊理ちゃんのお世話は休みだ。というのも、目の前にいる人物……士傑高校のケミィの姿をした人物が居たから遊びに来たのだ。その合流場所がここだった。
服装や格好は壊理ちゃんのお世話の時と変わらない。どうせ今日はずっと透明になって隠れている予定なのだ、姿を見せる必要も無い。
「お花摘みに、少し離れますねー」
「すぐ戻ってこい」
士傑高校の集団からケミィは一人抜け、トイレの方へと歩いていく。成生も誰にも気づかれないように注意を払いながらそれについていく。
そして、周囲に人がほぼいない通路まで来たところでケミィは呟いた。
「
「流石だね、
目の前の人物──ケミィの姿をしたトガちゃんが振り向き、透明になっている成生へと話しかけてきた。
本州全域を転送範囲として扱える成生はどこに誰が居るか、その気になれば把握できる。トガはヒーロー仮免試験に変身して潜り込もうとしてたのだ。成生も面白そうだとやってきたのだった。
そして話を聞けば、変身の個性に使う血液を集めに来たのだと言う。具体的な目標としては、緑谷と麗日だ。
「という訳で、緑谷君たちに会いに来たのです」
「んじゃ私も行くー。トガちゃんが見つかったら問題だし」
戦力的に私は別として、トガちゃんが一人で見つかったらヴィラン連合は致命傷になりかねない。荼毘の範囲殲滅やトゥワイスの数による制圧も貴重だが、トガちゃんの潜入も貴重なのだ。
トガちゃんが捕まれば単独隠密行動ができる人間がいなくなる。情報戦でヒーローに負ける可能性が一気に濃厚になるのだ。
「でも成生ちゃん参加できないですよ?私は変身できるから参加できるだけです」
それに私はトガちゃんのこと気に入っている。だからこそやるべきことは一つ。
「もしも危なくなったら助ける役割かなー」
「なるほどー、成生ちゃんがいるなら安心なのです」
なんかいつもこういう役回りになっているが、戦略的には間違いではないから困る。
今回はトガちゃんしかいないから見守るだけで十分だけれど、それも周囲に引率のヒーローが居る中でだ。プレッシャーはそれなりにある。
「士傑の一人に変身して入ってます」
「それじゃ私は観客席から見てるねー」
まぁ、ヒーローが居ると言っても私は余裕を崩すことはない。デビュタントの時と比べれば戦力は少ない。
ヒーローの卵たちの数は1000を超えるため同時に戦いにくれば話は変わるかもしれないが、そうなったら卵を壊しにいくだけだ。ヒーローは助けにいかなければならないため、戦いにすらならなくなる。
そんなことを、始まった試験を観客席から見ながら考える。遠目にイレイザーヘッドとか見えるけども、全然バレる気配は無かった。
「んー……あの様子なら心配する必要すら無かったかな」
トガちゃんは緑谷を見つけてボールをぶつけようとしたり引っ搔いたりと好きにやっている。随分と楽しそうだ。
一番警戒すべきだなと見た今の緑谷も、トガちゃんの体術なら翻弄できるレベルだ。これならまず倒されることもないだろう。
ついでだ、雄英や今後見ておくヒーローの卵の評価でもしておくとしよう。情報は武器だ、初見で突破できる個性ばかりじゃないのだから。
「雄英は随分と成長したみたいだね、特に緑谷。戦い方も変わってるし、体育祭で見た力を100とするなら……10くらい?それより下は無いかな。このまま成長されると私も追いつかれる日が来るかも……。……なんて、あり得ないか」
オールフォーワンの逆の個性だっけ、ワンフォーオール?……10%とでも言うべきかな?それだけで体育祭の時とは比べ物にならないくらい強くなってる。多分全身に力を張り巡らせてる感じだろう。
それでも今の私の素の体術で制圧できるレベルだ。私の変化超再生によって強化されていく上限は彼基準で言えば80~90%くらいだが、既に40%は超えている。これに超瞬発力を入れれば100%を超える。
とはいえ緑谷も相当に頑張っているのは見て分かる。以前に調べた時に知ったが、彼は元々無個性だ。オールマイトの後継と成る力をそう簡単に扱えるはずもない。それをあそこまで使いこなすだけでも尋常ではない努力が必要だったろう。
顔を別の方向へと向ける。そこにいるのは爆豪・切島・上鳴の三人。
「評価なんてしたくないけど、爆豪も成長してるみたいだねー……ただヒーロー仮免試験って言うくらいなんだから、性格変わってないなら落ちても全然おかしくないよね」
今見てる試験だと武力鎮圧における連携の面を見ている感じだ、ここで落ちることはない。
だが仮免試験というくらいだ。爆豪はヒーロー像における「助ける人への安心感」はマイナスに振り切っている以上、これだけで合格する等と言うことは無いはずだ。でなければ義賊レベルのヴィジランテだってヒーローになれる。
とか思って見てたら爆豪が丸め込まれた……物理的に。対峙している士傑高校の生徒の個性だろう。
「……初見殺しの個性も多いなぁ。「精肉」なんて、人形操作無かったら私でも喰らえば終わりだし」
どうやら揉み解せるように身体の性質を変化させる個性のようだ。耐性を持っている人なぞ存在しない個性であり、当たれば基本的に確殺だ。
私でも人形操作で私自身を人形として扱い、対応しなければ丸め込まれるだろう。精肉で人形自体を変質させようとも、操作させる部分でぶつかることになる。人形がどんな形になろうと、元の形に戻せるように操作できるのだ。そういう意味で私にはデバフ程度の扱いになる。
ただ面倒なのに変わりはない。対峙するなら向こうが動く前に殺すか、確実に回避してカウンターすることになる。身体能力と反応速度はあるから問題は無い。
「結局のところ、回避or先手必殺が私の最善手。サーチ&デストロイが最適戦略。……言ってて悲しくなるね」
丸め込まれた人を踏んづけながら上鳴と肉倉が対峙する。成生が注視していたのは、踏んづけられている人だった。
先程二人を助けるように動きそのまま丸め込まれた、切島の姿がそこにあった。
「……切島くん、か。んー……どうせだし、少し話そうかなぁ?」
成生は切島のファンだと伝えたが、ファンらしい行動を取れていない。タイミングが無かったというのもあるが、そもそも切島は体育祭後のインターンくらいしか行動する機会は無かった。未だ期間が短いために活躍していないヒーローと言える。
そんなヒーローに対して行動するのは……成生にしては珍しく、ためらいがあった。もしストーカーと言われたら一日二日は凹む自信はあった。
「いや、止めとこ。代わりにファンレターでも送るのがいいかな。っと、あれは……?」
妥協し、懐からファンレター用の手紙を出して書き始めながら様子を見ていると、上鳴が隙を突いて士傑の生徒を硬直させ、爆豪と切島が気絶させていた。
硬直させれば元に戻れる、電気系の個性なら当てるだけで硬直させられる。相性が良かったとも言えた。
しかし成生が見ているところはそれらも含めた上鳴という人物の全体像全てだった。随分と……自分が作った子に似ている。
「上鳴電気。帯電の個性……それに髪色とか、たまに出てる素の表情。もしかして、電花の?」
直感が合ってるって恐ろしい勢いで囁いてくる。絶対にそうだと叫んでいるようだ。
世界一父親として認識されない父親という不名誉を無理やり渡されたのは彼だったらしい。渡した側として、不憫だなと思わず哀れんでしまう。
「初動はあんまり良くないけど、危機に近づくと能力を発揮するって感じ。そんなところまで電花に似てる……逆か」
ボケた顔をしながらも、危険を察すると能力を発揮する電花の顔が浮かぶ。壊理ちゃんの身体に一度触れただけで、
あれは、私もだけど父親の特性まで引き継いでいたからこそのものだったらしい。
「パパ、ね。無責任どころか認識すら無いなんて……私ヴィランしてるなぁ」
思わず両手を頬に当てて身体をくねらせてしまう。悦に浸るというのはまさにこのことだ。
うっとりとしている成生だが、透明になって隠れている状態だ。隠密状態とも言えるのだが、身体を動かせば座っている椅子に擦れる音は出る。
それを見逃さない程、警備は馬鹿ではない。
「誰かいるのか?」
「あ」
転送退避!
「あ、危なかった。トガちゃんは……抜けたか」
咄嗟に上空へ転送で逃げた成生。いくら光速で反射できるとは言っても、基本的に戦闘態勢になっている時だけなのだ。ほんの少しでも警戒しようという思考が欠片も無いなら、不意を突かれることもある。
デビュタントしたからか、それとも個性がどんどん強くなっているからか傲慢が表に出てきているのかもしれない。少し気を引き締めて置いた方がいいかもしれない。
「このまま空から……いや士傑に風使いがいたっけ。隠密するしかないか」
透明のまま、トガちゃんが入っていった待合室のすぐ横へと転送する。人形操作を使えばトガちゃんがやっていた技術も成生は使える、気配を存在ごと消す技術を使うことで誰にもバレることはないのだった。
■■■
待機室へと入っていく爆豪、切島、上鳴。その後ろからスッと待合室へ入っていく。
中には既に通っていた士傑高校の夜嵐や、轟、緑谷達といった面々が揃っていた。そして一人で孤立させられるような場所は無い。
(だよねー。そりゃ私が声かけられそうな場所無いよね……そうだ)
人差し指だけでトントンと
そこにファンレターを挟ませてトガちゃんへと渡す。後は切島くんに渡すだけだ。
「これあの子に、ファンからって」
トガちゃんの耳に近づき極々小さな声で声をかけた後、今度はトガちゃんの正面へと移動し、目に指先を向けて催眠光を当てる。極々微小なレベルの光だ、仮に見つかっても見間違いか何かと誤解されるのがいいところのものだ。
催眠も相応に弱くなるが、指定した人を催眠させた人へ少し明るく見せる程度ならそれだけで十分。
「分かったのです」
意図を受け取ってくれたトガちゃんが切島君の方へと歩いていく。これで私ができることは終わりだ。トガちゃんの様子見終わったら、ゆっくり帰ることにしよう。
「ねぇ、君」
「え、あ。俺ですか。士傑の人ですよね」
「ええ。これ、入る寸前にあなたに渡してって言われたの」
ケミィの姿をしたトガちゃんが切島君に手紙を渡した。横で上鳴が興味津々に見ていたが、他の人から頼まれたというところで興味が薄れたのか、峰田と緑谷の方へ話に行っていた。
受け取った切島はポケットの中に入れつつ、軽く会釈する。当人から見れば他校の人だ、唐突な上に馴れ馴れしくも見えていた。
「誰から?」
「さぁ、読めば分かるんじゃない?私も知らない」
「はぁ、ありがとうございます。それで」
切島が感謝を口にし、詳細を聞こうとしたところで後ろから爆豪の声がかかる。交流のために来ている場所ではないのだ、時間が取れる訳もない。
「おい、次の試験内容始まっぞ」
「あ、わりぃ」
モニターに先ほどまで試験していた場所の全体像が映し出され、爆破されて壊れていく。
ヒーロー仮免試験の最終試験が始まった。
■■■
ヒーロー仮免試験の最終試験が終わった。随分と面白そうな内容だったが、特に何の問題もなく終わっていた。
試験として言えば、雄英は爆豪と轟が落ちていた。爆豪に関してはざまぁみろといったところだが、轟については残念だ。途中で馬鹿みたいな諍い起こしていたのが原因だろう。
けれどすぐに連携していたあたり、爆豪みたいに純粋なマイナスというより「本番で起きる予定外」に引っ張られたと見るのが正しそうだ。
トガちゃんはタクシーに乗って帰ると士傑高校の面子と別れ、周囲からはケミィが一人で帰路を行くように歩く。透明色になっている私が横にいるものの、気づける人は一人もいない。
「これで用事は終わりですね。成生ちゃん」
誰もいない路地に入り込み、トガちゃんが変身を解く。私も透明化を解き、横に並ぶように歩く。
「うん、協力してくれてありがとね」
トガちゃんが潜入できてなければ切島君にファンレターを渡すこともできなかった。内容は……気分がノッたまま書き連ねたような感じだったから、怪文書気味になってるかもしれないのは否定できない。
どうせ他人には見られないから大丈夫だろう。
「成生ちゃんの頼みなのです。代わりにあとでチウチウさせてください」
「トガちゃんならいいよー、弔たちに連絡しなくていいの?」
「あ」
やっべ、と言うようにトガちゃんはポケットに入れていた電話からコールをかけた。宛先は──ヴィラン連合。
『やっとつながった!どこで何してる!?トガ!』
『成生ちゃんと素敵な遊びに更けてました』
『定期連絡は怠るなよ!……って何だ、成生もいるなら安心だ』
この心配性はMr.コンプレスだ。スピナーとMr.コンプレスがヴィラン連合で一番心配性だが、スピナーは振り回される側だ。定期連絡だのといった「連合でやってほしいこと」を注意するほど舵取りはできない。
Mr.コンプレスは舵取りできるし、私の戦力も知っている。……スピナーは間近で見てたけど、何が何だか分からないくらいの強さとでも認識してるんじゃないかなぁ。
『むぅ、私一人じゃ危ないですか』
『一人捕まれば全員が危ないんだ、成生も一応注意してくれ』
思わずふふふと笑ってしまう。Mr.コンプレスはどうやら私たちを分かっていないらしい。
実は私とトガちゃんはヴィランとしての考え方がかなり近い。私は普通を押し付ける者を蹴り飛ばして自由に生きたい、トガちゃんは普通に生きたい。私たちは好きに生きて好きに死ぬ……恋も生も好きに生きる。近い考えは多い。
もちろん何故そうしたのかといった動機や、何故そう考えに至ったのかは違う。ただ最終的な考えは近いというだけだ。
それでも、友と言えるくらいには気が置ける仲にはなれていた。私もトガちゃんも求めた、友達という形はそこにあった。だから今回みたいなちょっとしたことでも遊びに来たのだ。
『Mr.コンプレスは心配性だね。私もトガちゃんもそんなヤワじゃないよー』
『そうなのです。大丈夫なんです。私は今まで見つからずに生きてきたので』
もちろんトガちゃんは強さも信頼が置ける。私はヴィラン連合の面子は個性と人格、身体技術で評価しているが、人形操作で模倣しなければ出来ない技術というのはトガちゃんくらいだ。
ただ私視点ならそうだというだけで、Mr.コンプレスは心配で口調が怒っていた。
『連絡くらいしろって話だよ!』
『それに有益でした。弔くんが喜ぶよ。出久くんの血を手に入れました』
『──!』
マイペースな私達の会話に、Mr.コンプレスの息を呑むような声が届く。本当に収穫があったことに驚いているのだろう。
私もトガちゃんが緑谷に会うところまでしか聞いていなかった。トガちゃんが会って話していたのは知っていたが、そこまでは見えてなかった。
面白いことになってきた。ヴィラン連合にも顔を出しておくのも悪く無さそうだ。
次回未定、4月からのリアルが分からん