普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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とりあえずネタバレチラ見したいところまではいけた


死穢八斎會&堕とし子vsヒーロー その2

戦略が変わったからと言って目的は変わらない。エリを取り戻すための歩みはまず、数という暴力を失った警察を再び機能させるところからだった。

 

「まずは合流だ、上に戻ろう」

 

 実力者でも警察の数には圧殺される者は多い。事実、命令を受けた死穢八斎會のメンバーは数に押されれば負ける者もいた。残り数人しかいない相手であり、警察の数で一人以上を相手にできるなら越したことはない。

 

(分断は一人だけか……一人ずつ分けたかったが、警戒されているのは違いない)

 

 当然入中は阻止しようとする。警察が合流する前に分断し、各個撃破を推し進めたい。

 だが入中は迷っていた。本当に受けた命令をそのまま実行するだけでいいのかと。入中としては時間稼ぎと、可能であれば圧殺まで行いたかった。

 

「妙だな……地下の形状が変わらない」

 

 ヒーロー達に自らの個性が分析されているとしても、隠れている以上そう簡単に地下迷宮が破られることは無い。破られないならば時間制限はあれど、目的を達成することは容易だ。

 

 オーバーホールから受けた命令の達成という目的なら、の話だ。

 

(残り時間はまだある。しかし受けた命令は……。……ならば……確実に、全体を小分けにする。話はそれからだ)

 

 自らの実力を考えればもっと先に行ける。分かってはいたが……不安要素も大きくあった。

 

「潜り込んで操っているとすれば……操る時に顔を出している可能性がある」

「確かになぁ。イレイザー、狙えるか?」

「出てくるときが無いと何とも……」

 

 相手はヒーロー。油断などできない存在であり、彼ら全員を同時に相手取っているのだ。慎重な男は不安に押し潰されていた。

 

(いや、あいつだけは確実にやらねば……!たとえ、俺が負けたとしても!(ヴィラン)連合に頼ったとしてもだ!)

 

 入中は自らの欲求を捨てた。オーバーホールについていくことになり外道に堕ちたと認識した彼は敬愛する親分を見捨てたのだ、もはや退路は無い。退路がないなら盲目的にオーバーホールを信ずるだけだった。

 

 入中はブーストされた力を全力で行使する。圧殺できるだけの力はあるが、それは抵抗されなかった場合だ。迎撃すると命令された以上、警戒すべき相手であると言い換えてもいい。さらに言い換えれば、無理やり圧殺するのは困難極まりないことであるとも言える。

 

 入中は一つだけ必ず達成することを決めた。これだけは必ずやれと命令された内容を。

 

「また道が!?」

 

 命令……それはヒーローをいくつかに分断し、最も危険な者を見極め──オーバーホールを除く自陣の最も実力のある者の下へ送ることだった。

 さらに孤立はさせなくていい。むしろ孤立させようとすればヒーローは勘づき、余計な力を発揮すると説明を受けていた。あくまで一人でも分断できればそれでいいと。

 

 大雑把な指示だったが、結果的にナイトアイの戦略の上をいっているものだった。一つだけ問題があるとするなら……ヴィラン同士の連携と、ヒーロー同士の連携には差があるということくらいだ。

 

「危ねぇ!」

「アカーン!」

 

 牽制気味に最も危険な者へ放った地下のうねりは二人の分断に成功し、武闘派な者達へ送り込む。かばった二人は幸運にもヒーローでも武闘派の二人だった。

 

「烈怒頼雄斗!ファットガム!」

「二人だけじゃない……まだ道がくねって……一気に分断する気か!」

 

 入中は本来ならば全員を圧殺できるだけの力を使い、ヒーロー達の頭上から地下を柱のように形状を変え散らすように放つ。

 当たれば圧し潰される質量が相手では今のヒーロー側に対抗できる者はいなかった。ヒーロー全員が回避に徹し、散らされていく。

 

「くっ」

「これで……!どうだぁ……っ!!!」

 

 柱で散らばったところへ壁を落とすように展開し、さらに壁を厚くし完全に分断する。操作しきった地下は自らの周囲すら利用し、散ったヒーローを分断するに成功していく。

 

 一つだけのミスを残して。

 

「マズぃ……そこっ!視えたっ!」

「しまっ!」

 

 自らの周囲すら使い操作しきったのだ。操っている中心を視えたイレイザーヘッドに個性を消されていた。前のめりの態勢になっていた影響で両手足を埋めたままの宙ぶらりんになってしまう。

 

 だが、既に操作は終わっており地下のうねりは収まらない。届かない距離まで分断された者達は入中の手中だった。

 

「デク!」「ナイトアイ!」

 

 身体能力が強化できてしまうがゆえに避ける幅が大きくなるデクの手を、ナイトアイが取り分断される。

 

「マズいっ!」

 

 イレイザーヘッドも手を伸ばそうとしたが()()()()()()()()()()()と察し、集団との合流の合理を選ぶ。と、同時に宙ぶらりんになっていた入中へ捕縛布を伸ばし手元へ移動させ捕獲した。

 分断された代わりに、一時的にだが地下迷宮を壊したのだ。先に入中が二度と地下に潜らないことを優先していた。

 

「分断はされきってしまったが……こいつは捕まえられたな」

 

 イレイザーヘッドの足元には個性を使おうともがく入中の姿。抹消され使えなくなったがブースト時間だけは続いていた。ハイになったが個性が使えないという苦痛が身体に走る。

 

 もっとも、イレイザーヘッドの選択が正解だったのかは分からない。地下迷路を壊した先にあったのが、それ以上の危険だったのだから。

 

「あなたが、わたしのあいて?」

「危険なのはお前か」

 

 悪夢の堕とし子の長女と一人の死兵が、そこにいた。

 

 

 分断され、相対する者が決められた戦い……正面衝突と呼べる戦いだ。複数同士のヒーローとヴィランの戦い、マッチアップはかくして決められた。

 

「デブに、赤い髪か」

「落ち着いて戦え」

「二人…!」

「ええ度胸や!」

 

 入中がいた場所よりも更に地下の階層にて……死穢八斎會の鉄砲玉「八斎衆」の二人、乱波肩動(らっぱ けんどう)天蓋壁慈(てんがい へきじ)、烈怒頼雄斗とファットガム。

 

「あは!デクくんだぁ!」

「らっぱの兄さんやってくださいなぁ!」

「トガヒミコ……!」

「お前はヴィラン連合の……」

 

 分断されたが近い場所に(ヴィラン)連合協力者トガヒミコとトゥワイス、デクとナイトアイ。

 

「入中は落ちたか、だけどお前は俺たちだけで十分」

「ぎゃくー!わたしがメインー!」

「助けは呼べるが一気に分断されて衝突か……貧乏くじ引いたな」

「俺を貧乏くじって?警察もいるんだぞ?」

 

 「八斎衆」酒木泥泥(さかきでいどろ)と……オーバーホールを除く面子において最強の存在、Ms.ダークライの堕とし子依光電花、イレイザーヘッドとロックロックに警察の大多数。

 

「治崎……()()()()か?……」

「俺をその名で呼ぶな」

 

 そして、ヒーローとヴィランの辿り着く最終地点にオーバーホールとルミリオン……そして壊理。

 

「Ms.ダークライはどこにいる?」

「俺が知りたいところだ。壊理を放って何してるんだか……お前を殺せば来るかもしれないな」

 

 Ms.ダークライという存在はおらず、いるのは純粋なヴィランとヒーロー、そしてヒーローが保護すべき対象だけだった。

 

「そうか……エリちゃんは保護させてもらう」

「やってみろ」

 

 分断された地下でヒーローとヴィランの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 ──とある一部屋だけは絶対不可侵とされた上で

 

 

 

 

 

 

 

 地下の奥深く。分断された地下よりもさらに深い深層の地下。そこにたった一つの部屋があった。あるのは通気口だけであり、入口も出口もない。入るには何かしらの個性が無ければ入れない部屋だった。

 

 

 まるで、Ms.ダークライのアジトを彷彿とさせる作りだ。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!何……これ……抑え……きれない……」

 

 一人、完全に隔離された部屋に……身を震わせる少女の姿。オーバーホールと話した後にこの部屋に移動し、移動したとほぼ同時に背中から赤黒い蒸気を上げていた。異常であり身体が破裂しそうな現象、それを少女は身体を無理やり抑えつけていた。

 

 彼女の個性は貴重かつ強大だ。強大さで言えばオールマイトやオールフォーワン、貴重さで言えば壊理でさえも容易に飛び越え、社会を一変させられる個性だ。そして……その片鱗を使うだけでMs.ダークライというヴィランになれていたのだ。

 

 社会の天秤という評価は伊達ではなく、むしろ過少評価とすら言える程の個性だった。

 

 本来あるべき社会にいれば彼女は、オールマイトやオールフォーワンを差し置いて救世主や英雄と呼ばれる存在なのだ。少女の姿であろうと搦め手など一切使わないでそれだけの活躍ができる程の個性を、正しく有していた。

 

 それだけの個性なのだ。強大で貴重で……同時に、危険な個性だ。普通という概念からは真逆とすら言える。

 

「はぁっ……はぁっ……!!」

 

 抑えられずに胴体が弾け飛ぶ──幻覚を見る。

 まるで自らの中に何者かが大量に存在し、身体の中から貫いて出てくる──幻覚を見る。

 水が入ったコップを落としたら砕け散るように自らがバラバラになる──幻覚を見る。

 

「私に……何が……起きてるの……?」

 

 少女──依光成生から発せられていた熱気は少しずつ収まっていく。異常な熱は収まっていくものの、落ち着いたのは戦いの一部が終わった後だった。

 

 

■■■

 

 

 分断される少しだけ前、正面衝突となると戦略が決まった戦い──1対3の戦いは既に始まっていた。

 

 サンイーターと三人の戦いは実力差を連携で埋める戦いだった。

 実力で優っているサンイーターの触手が力を強める寸前に窃野が隠していたナイフで切りつけ、サンイーターが引いた瞬間に宝生が結晶の身体で体当たり、反撃を多部がフォローし宝生の体当たりを確実に当てる。

 

「連携……っ!」

「いいだろ?ゴミにはゴミなりの連携ってのがあるのさ」

 

 体当たりし、結晶に身を包んだ宝生はさらに右手を固め、威力を高めた拳を振るう……が、拳がサンイーターの顔に当たることは無かった。

 

「諦めろ。俺は……サンイーター(太陽すら喰らう者)だ」

 

 蛸の膂力を『再現』し、結晶による傷は手に覆わせた甲羅で防ぐ。個性無しの膂力では負けているサンイーターだが、タコの膂力を『再現』すれば関係ない。

 さらにサンイーターは自らの個性を解放していく。喰らったものを力に変える個性を遺憾なく発揮する。

 

『サイズ可変』

『複数同時再現』

『特徴自由選択』

 

 サンイーターの雄英で鍛え上げられた二年半の結晶。インターンも含め、プロヒーローと比較しても遜色ないトップレベルであるルミリオンすら認める技術の集合体。

 

 それが今、心が太陽に追いついたことで『再現』される。

 

 

 

「混成大夥キメラ・クラーケン!!!」

 

 

 

 巨大なタコの触手がサンイーターの背中から一瞬で生え、部屋全体を埋め尽くしていく。勢いよく埋め尽くしていく触手は放っておけば部屋が完全に埋まり切り、圧殺されると思わせるには十分だった。

 

「オイオイオイオイオイ!!!」

 

 突如として発生した大質量に三人は避けるのがせいぜいだった。宝生は吹き飛ばされるも不意打ちではないため意識はあり、窃野と多部は距離を離して避けきる。

 

「俺一人で十分ってのはこういうことか!」

 

 大質量での攻撃は味方も巻き込む。地下のように閉じた空間ならなおさら気にしなければならない。だからサンイーターは敢えて味方を遠ざけたのだ。

 これで完封できる、相手が木っ端ヴィランなら間違いなくそうなった。

 

 ここにいるのは、実力のある上に相性も悪いヴィランだった。

 

「多部!」

「うまっ!」

 

 マスクで顔全域を覆っていた男、多部がタコの触手へ噛みついて千切る。次々と放たれる食い千切りはタコの触手を動かせなくさせていく。

 

「多部は何でも食べられる!消化速度も速い無限の胃袋だ!タコなんざ全部喰っちまえ!」

 

 十本近くあった触手が一本ずつ使えなくなっていく。このまま何もしなければ数分と経たずに動けなくなる。

 

(なら神経毒で!)

 

 サンイーターの判断は間違っていなかった。食べることが個性なら毒も食べる。消化も早いなら毒の周りも早い。

 多部に注意を向けなければならなかった、だから見えていなかった。

 

 バッという音と共に、神経毒が込められた触手が窃野の手に収まる。

 

「そのサイズなら、俺が盗める」

 

 窃盗の個性は一定以上のサイズまでのモノを瞬時に手元へ移動させることができる。動揺したサンイーターへ宝生の拳が叩き込まれる。

 

「流れるような連携……利用されてると分かってるのか?」

 

 流石に止められずサンイーターは吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

 

 ここまでの対処に思わずサンイーターは疑問を問いかける。実力のあるヴィランであり連携もできてるのだ。仲が良くなければ難しいことだ。それを利用されてるのは天喰環には納得したくないことだ。

 

「お前らはオーバーホールもMs.ダークライも知らない。どん底に落ちている者に正しい意味で手を指し伸ばしてくれる人をな」

 

「オーバーホールは俺達を必要としてくれた。人生捨てた飛び降りをヒーローにキャッチされた時は絶望したもんだ

 

 必要ともされねぇ、自ら希望を見出すこともできねぇ人間には価値なんかねぇ。だというのに死ぬことすらお前ら(ヒーロー)は許さなかった」

 

「そんなゴミをあいつらは肯定してくれる。オーバーホールは必要だって言ってくれるんだよ」

 

「価値を与えてくれた男の為だ。邪魔者は殺す」

 

 (恐怖で従ってるんじゃない……洗脳に近い……!)

 

 サンイーターの考えは間違っていない。価値が無いと言われた者に価値があると示してやれることは、依存・洗脳させる第一歩だ。

 

 ここにいるとされる、最も強大なヴィランがやってることと同じように。

 

「そんでMs.ダークライはな……女神だ。目ぇ見て自分らしく個性を使って生きてくれれば私は嬉しいってな、言ってくれたんだよ!

 あなたがゴミだと思っても私にとっては宝石だって言ったんだよ!

 

 オーバーホールが先に拾ってくれてなかったら!まず間違いなく惚れてた女だ!どんなヴィランだって肯定されてあんな笑み向けられれば惚れんだよ!」

 

「どんなヴィランだって肯定してくれる、ヴィランを輝かせてくれる太陽、女神、そんで触れたら燃える宝石があいつだ!言っちまえば俺ら(ヴィラン)にとっての夢なんだよ!

 誰もが欲しがる!手を伸ばす!あいつに笑って(夢が輝いて)ほしいからってなぁ!

 

 お前たちには絶対に分からないだろうな!」

 

「ねじ曲がって痛々しい笑い顔のくせに……何でか分かんねぇけど惚れちまう。ねじ曲がっちまってる日陰者の俺達と同じだって言ってくれてる

 

 だから!あいつと一緒に笑ってやる!」

 

 オーバーホールの洗脳だけではない。間違いなくMs.ダークライという存在に魅了されていた。

 

 Ms.ダークライは強大な存在だ。目もくらむ程の存在感を持ち、ヴィランなら誰もが欲しがる女性だ。手に入れれば世界が手に入るとまで呼ばれる宝石であり、魅了されるのもおかしくはないことだった。

 

 ただそれが本当に自らの意志だけから発せられたものであるか……個性によって発せられたものなのかを知る者はどこにもいなかった。

 

「輝かせてくれる太陽、か……分からないでもないさ」

 

 ある意味でヴィランとヒーローは対称的だった。他者の意志で堕ちて洗脳され魅了されていく者に対し、自らの意志で尊敬し合い繋がり合う者。環境要因や自立性といったことを考慮すれば優劣は無い。

 

「俺にも太陽はいる。だけどな、あいつらは言ったさ……俺はサンイーターだってな!」

 

 相手本人を見て、認める。行いは同じながらも性質は真逆。ただ想いが大きい、大切な譲れないものがあるという事実は同じ。

 

 諦めないことも、同じだった。サンイーターは再びタコを再現し触手を伸ばす。が、見切られており宝生に踏みつけられる。

 

「バカが!……っ!?」

「そこだ」

 

 宝生が背中から思いきり見えない触手に突き飛ばされる。腰につけていた袋ごと飛ばされ、前のめりに倒される。

 実力差というのは何も個性の強大さだけで決まらない。使い方というものがあるのだ。

 

 タコは保護色を持つ。さらにキメラ・クラーケンを千切られた触手がそこら中に散らばっているのだ。視認し辛い上にカモフラージュもあり、見えないのも仕方のないことだった。

 

 袋の紐が解け、中から結晶が一つサンイーターに飛んでいく。

 

「もう一つ!」

「っ!」

 

 さらに窃野の視界を防ぐように瓦礫を蹴り跳ばす。窃盗で取られるも、サンイーターの狙いはそこではない。

 

「貴様っ!……!?」

 

 目にしたのは宝生だけだった。大事にしていたとある結晶が奪われたのだ。奪われた後……ガリッという音と共に、結晶をかみ砕いた姿を見てしまっていた。

 

 激怒しかけるも、目の前のヒーローを正しく認識していたからこそ宝生は立ち止まる。

 

「!?」

「何!?」

 

 実力あるヴィランだからこそ他二人も気づいた。目の前のヒーローの様子が明確におかしくなったことに。

 

「がっ……!?これは……!?」

 

 ──サンイーターは一つだけ間違いを犯した。偶然の間違いではあったが、それは正しく間違いではあった。

 

 それも、この場どころか他の戦場の戦局すら左右するほどの大きな間違いだった。

 

「髪の毛……っ?」

 

 宝生が大事にとってあったそれは、小さな結晶だった。一本の髪の毛が巻かれただけの、宝生の個性で作られた結晶だ。そして問題なのは髪の毛の方だ。

 

 

 

 

 サンイーターは食べたものの影響を受ける──依光成生の影響を。

 

 

 

 

「Ms.……ダークライの……!?」

 

 サンイーターの個性は『再現』。但し食べたものに上限はない。そして上限が無いというただ一点において、サンイーターの個性はマスターピースの特性に合っていると言えてしまっていた。

 それゆえに、サンイーターの個性はより濃ゆく影響を受けてしまう。マスターピースである彼女の特性を一時的にだが得てしまったが故に。

 

 さらに、運が悪かった。本来なら過去に堕とした髪の毛一本であり影響があっても多大程度であって化け物染みたものではないはずなのだが……今現在の依光成生は、自らの個性の影響真っ只中にいた。強大過ぎる個性の影響真っ只中だ。

 今現在だけは遠くにある髪の毛一本であろうとも、自分自身である欠片なら馬鹿げた影響を与えてしまう状況だった。

 

[あなたは、そんな風になりたいのね]

「あ」

 

 サンイーターは一瞬だけ幻視する……白い髪をした少女。白いワンピースを着た、瞳を閉じながらも微笑む姿。触れれば折れるような華奢な身体にしか見えないのに、しかしそこには途方もない力が込められていた。

 

「が……!制御……できな……っ!!??」

 

 ドクンドクンと心臓の鼓動が、身体そのものの熱が高まっていく。個性が暴れ、混成大夥と呼ばれた技術が、技でも術でもない力に変えられていく。

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 大きく、ただ大きく膨れ上がる。壁を壊し、三人を死なない程度に叩きつけ、下に上に横に大きくなっていく。

 

 そんな──最終的には数十m以上のサイズのバカでかい蛸へ少しずつ大きく変わっていく。

 

純粋な蛸と違うのは、触手が十何本もあることと頭に小さな殻をかぶっていることだけだった。

 

 




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今年中にあと2~3話いきたいけど無理そう
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