普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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クリスマスプレゼントは何も一話だけとは言ってない

オールフォーワン「びっくりしたかな?」

成生「びっくりした。私の個性の成長っぷりに」

オールフォーワン「そこなのか」


15歳 成生の個性

「ところで私の爪とか髪って何の実験に使ってるんですか?」

 

オールフォーワンとの出会いから一年ほど経った頃、ふと成生は疑問に思ったことをぶつけてみた。

 

成生は襲い掛かる弔の手を払い疑似ブラックホール空間を五指から出る五本の収束光で斬り裂きながら口に出す。弔が苛立っているのがよく分かる余裕さえあった。

 

 

一年で成生は恐ろしい程の成長を遂げていた。成生自身不思議だと思っているのだが、成生の技術を飲み込む速度は常人とは桁違いだったのだ。

 

 

一日で弔の体術から避ける術を得、数日もすれば弔の全力の攻撃から避け続けられるようになり、一か月もすれば両手にギリギリ触れないような組手を行えるように、一年も経てば片手間に捌けるようになっていた。

 

 

天才などという言葉では言い訳にすらならない。弔の体術はプロヒーローにさえ通用する程なのだ。しかも成生との鍛錬により更に体術レベルは上がっている。反射速度がバグっているとしか相対している弔には考え付かなかった。

 

「チートがっ…!」

 

弔の五指が地面に触れ、足場を崩壊させていく。成生も態勢を崩すはずだ、弔の狙いは間違っていなかった。

 

「ん」

 

狙い通り態勢を崩された成生が地面へと指を向ける。一瞬すら遅い程の速さで指が光り、熱量がそこへと発生し大きく風が吹いた。

 

一点に集中させた光から吹く風なら、指向性を持たせることなど容易い。

 

「おっと」

「クソが……!」

 

五指で触れるように顔へと向けられた手を、戻した体勢から首をひねって避ける。個性と体術、どちらも成長していなければできない戦いを成生はしていた。

 

「10分です」

「ここまでだね~」

「……先生、いつまでこいつと遊んでればいいんだ?」

 

苛立ちを隠さない弔はオールフォーワンへと半ば怒りをぶつけていた。もはや片手間の雑魚と扱われているようなものであり、プライドの高い弔からすればずっと揶揄われているとしか見えていなかった。

 

「成生の答えはそうだね……では来週にでも教えよう。弔の質問にはこう答えよう、君が納得できるまで」

「こいつとはもうやり合いたくない」

「じゃあ止めようか。黒霧、来週以降は成生をこちらに呼ぶようにしてくれ」

 

そして次の週。いつも通り……ではなく黒霧本人が成生を迎えに来ていた。ベッドごとの移動ではなく本人だけ呼ぶ形らしい。

 

なんでもベッドごと移動は場所が固定させているから分かりやすい上に黒い靄が見られないので隠密性も高いのだが、今回は場所をとりたくないらしい。

 

黒霧のワープゲートを抜けた先にあったのは、大量の実験生物用のカプセルがある部屋だった。カプセルに入った脳無から、ここが生産している場所なのだと即座に理解できた。

 

待っていたオールフォーワンと、そしてもう一人の姿がそこにはあった。白衣を着、ゴーグルのようなメガネをした研究者のような男性だった。

 

「まずは紹介しよう。私の側近だ、名前は殻木球大……ドクターと呼ぶといい。実際に医者だ」

 

「この子か!脳無の完全上位化素体という最高の個性を持つ少女というのは!私がオールフォーワンの側近が一人、ドクターだ!これから長い付き合いになるだろう、よろしく頼むぞ!」

 

ドクターと握手した後、周囲をキョロキョロと見回す。一年の間のどこかでオールフォーワンと話していた、脳無と呼ばれる者のカプセルだけではない。奥を見れば脳無の元となっている研究なのか、それ以外にも研究していることがあるのが視界に入る。

 

「ここは?」

「脳無を作っておる。個性を複数所持する意思のない人形じゃよ」

 

「個性の複数所持、ですか」

 

指先発光しかできない私からすれば絵空事の世界だ。そんなことができれば「普通」とはまるでかけ離れた個性になるが、ヴィランとして個人として力を付けたいのなら真っ先に手を出したくなる能力だろう。

 

 

そんなことを考えている成生の思考に、オールフォーワンの言葉が横槍を入れた。

 

 

「そうだ。()()()()()()()()()()()

 

 

「……は?」

 

 

成生の思考に横槍どころか、完全に思考が沈黙していた。成生にはオールフォーワンの言葉が全く理解できなかった。

 

「私の個性は指先が光るだけですよ?」

 

「そうだ。いや、僕もそうだと思っていた」

 

うんうんと頷くオールフォーワン。成生の方へと顔を向けると人差し指を立てて、「だが」と話を続ける。

 

「だが余りにも不可解なことが多過ぎるだろう?一般人レベルの膂力であるにもかかわらず弔の攻撃をギリギリで避け続ける。一年で片手間になるほどの成長。そして……発光による熱量を君自身は受けていない」

 

「あ、そういえば」

 

発光するなら熱量も出る。小学生では出ていたが、光線のようにしたり戦い方に利用したりした頃から自分自身には跳ね返ってきていなかった。熱量から突風が起きるからと助かっていたのだが、そもそも熱が出るなら自分自身にも熱く感じ取れるはずだ。

 

何せ光線で疑似ブラックホールすら焼き斬ることが出来るのだ。熱量で言えば熱専門のプロヒーローですら相殺すらできず死ぬだろう。かのエンデヴァーでさえ不可能だ。

 

「おや、気づいていなかったのかい?だがこれらは説明がつくのさ。君の個性が違うものだったということでね」

 

「むしろそれしか考えられないですね」

 

人差し指を顎に当て、首を傾げて思考を加速して考えてみる。

 

オールフォーワンが挙げたのは弔の攻撃を初見で避け続けたこと、一年で片手間であしらえるほどの成長性、発光と熱量無効。そしてそれらは複数の個性を所持しているようだということ。

 

まず複数っぽい動きをする個性なことは間違いない。何せ身体強化と成長性に熱耐性だ。これらを一つで示せるなら何かしらの動物を模した異形型だが、私の見た目は人間そのものだ。

 

「んー…分かんない。適用範囲が広過ぎるのでは?」

 

「そうだ、広過ぎるんだよ。だから僕も考え始めはまるで見当が付かなかった」

 

多くの個性を知っているオールフォーワンですら知らない個性。それならば思考を加速させようと分かるはずもないか。

 

ふぅと一息つく成生に、ニヤリと笑うドクターが目も笑わせて口を開く。横にいるオールフォーワンも口角を上げていた。

 

「一つヒントをやろう。お主の髪といった身体の一部は、脳無の身体に使われておる。使った脳無は複数の個性所持を簡単に行うことができおったわ

 

ドクターの言葉を聞き、首を傾げて再び思考を加速させる。新しく情報が入ったならば辿り着く答えも違うことが多い。正しい情報はあればあるほど助かるのだから。

 

「まさか天然のマスターピースなんてものが居るとはのう……この目で見るまで信じられなんだ」

「それは僕もだよドクター」

 

二人の会話を無視して成生は思考に没入する。

 

ドクターの言葉は私が提供した身体は脳無に使われているということだ。そして脳無とは意思のない人形。私の身体を使って作った人形に複数の個性が利用できる。それらが繋ぐ答えは──

 

「──私には個性が複数ある?」

 

「ある意味でそれは間違ってない。君が持っているのは一つだ。けれど、君には産んでくれた両親がいるだろう?」

 

最後にオールフォーワンが告げたヒント。ここまで届いた言葉から予想できる成生自身の個性。

 

思考を加速させることができる成生は、答えに到達するのもすぐだった。

 

「指先発光……両腕発光から。頭の回転……思考力加速。……え、まさか……」

 

辿り着いた答えは余りにも荒唐無稽。そんな個性があったとしても意味があるのかすら分からない。けれど、そうだとしか考えられない。

 

 

「──持っている個性を自分自身に最適な形で適用させる個性?

 

 

オールフォーワンとドクターがニタリと笑う。それが答えだと二人して言っているようだった。

 

「正解だ!正確には『所持している個性を自らの個性に変化・最適化させる個性』だ。見た目に現れない異形型の個性とも言えるだろう。条件さえ揃えばこれ以上なく強力な個性だよ!」

 

「ああ、だから指先発光の個性伸ばしで思考力加速……つまりは学習能力が上昇したんですね。副次効果とでも呼ぶべきか」

 

指先発光が最初の個性だった。だがその一つの個性伸ばしをしたおかげで本来持っている個性も伸びたのだろう。思考力も加速したりしなかったりするようにでき、デフォルトでは常人よりか速くなるようになっていたのだ。

 

弔の攻撃を初見で避けたのはそのおかげで、成長したのは弔との訓練で思考加速も個性伸ばしした形になったからだろう。指先発光からの熱量無効は光る現象がそうなるように発光させた現象を最適化させていたからだ。

 

「そうだ。それ以外に考えられない。僕が君の個性を奪えなかった理由もそれだ」

「え、奪う?」

 

思わずオールフォーワンの方へと目を向ける。一年の間にオールフォーワンのことを調べてこそいたが、そんな素振りなど無かったのだ。

 

「どうせ調べて知っているだろう?僕の個性は『個性を奪い、与える』ものだ。初対面の時に握手しただろう?その時に試したのさ」

 

脳裏を過ぎるのは初対面の時のこと。確かに手を組む的な意味で握手はしたが、まさかそんな真似をされているとは思わなかった。

 

はぁと一つ溜息を吐き、オールフォーワンへと不敵な笑みを見せる成生。ドクターには成生のヴィランとしての姿が瞳に映っており、オールフォーワンも雰囲気が変わったのを感じ取っていた。

 

「そういうことでしたか。貴方が隠し事するのは今更なので特に言うことも無いですが……与える個性、ですか」

 

成生の個性が分かった今、オールフォーワンの持つ個性は最高の相性を持っているのがすぐさま思いつく。

 

そして、それを利用しない成生ではなかった。

 

「……さらにドクターの研究は個性の複製というところも行っている。時間さえあれば本来よりかは劣化個性だが、どんな個性でも君なら使いこなせるだろう」

 

加えてオールフォーワンやドクターの協力姿勢。成生が完全にヴィランとしての笑みを浮かべるのも仕方のないことだった。

 

「私の個性は最適化させる。それなら持てば持つほど強くなる?」

 

「いや、限度があるはずだ。……君が望む個性になったら限度となる、という意味だがね」

 

オールフォーワンの言葉はつまり、成生が望む、成生のヴィランとしての姿を体現するイメージをそのまま再現できるということだ。

 

心臓が高鳴って仕方ない。気分がこれほど高揚したのは人生で初めてだ。望むものが全て手に入る、最高の気分が過ぎて倒れてしまいそうだ。

 

「とりあえずずっと欲しいと思っていた個性と増強系が一つ以上貰いたいところですね。だましたお礼に一つ……下さいな。『人形を操る個性』、ありますか?

 

成生の告げた個性にドクターは首を傾げ、オールフォーワンはフフフと笑っていた。オールフォーワンには何をしたいのかが予想できたようだった。

 

「やはり君は面白いよ、成生。あった方がいい個性はあげるつもりだったから安心するといい」

 

「あ、習熟もあるのでくれる個性は一度に二個までにしてくださいね」

 

「普通」の少女、依光成生は巨悪オールフォーワンへと軽く注意し、そのまま紹介はお開きになった。




というわけで成生の正しい個性は「所持している個性の最適変化」です。突然変異ですね、「普通」とはいったい……。

サブ個性1(指先発光)が伸びたからメイン個性(最適化)も伸びた。メイン個性(最適化)も伸びたからサブ個性2(思考加速)が伸びた。という流れですね。


ちなみにですがこの個性のせいで成生はヒーローにはなれません。

というのもこのメイン個性、「サブ個性の成長」以外では鍛えられません。10年近くサブ個性伸ばし続けてヒーローでも通用するレベルの個性に成長し、そこでようやく目に見えるという大器晩成型の個性です。

雄英の3年間なんぞじゃどうあがいても無理です。というかオリジン的にヒーローになる場合はオールマイト越えしなければならないので即不可能が決断され、鍛え切れずにヴィラン連合送りになります。どうあがいてもヴィラン!

脳無に使用したらすごい助かるのも当然で、これ複数個性がほぼ前提の個性です。言い換えると成生の身体自体がドクターの脳無完成系になります。
パワーとかが無い?後付けすればいいだろ!
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