今年はどこまで進めるかなぁ
ところ変わってマッチアップはヴィラン側がトガ&トゥワイス、ヒーロー側がナイトアイ&デク。狭く音が響き、声を小さくしても相手に伝わる程だ。
デクの表情だけが険しく、他全員は余裕気だ。理由は簡単でありナイトアイは個性により既に知っており、ヴィラン側は計画通りに近いのだった。
「Ms.ダークライがここにいたんだ。可能性は考えるべきだった」
「予知には見えていた。タイミングまでは分かっていなかったが……ここでか」
とはいえナイトアイも全て知れている訳ではない。個性『予知』はナイトアイが一時間の間自由に未来を視れるが、相手に成生がいるのが問題だった。
一時間自由に未来を視れるならナイトアイの情報処理能力と相まって一時間もかからないヴィラン捕縛の計画など全容が見えるものなのだ。しかし今回に限ってはそうではない。
一発で予知が確定した訳ではなかったのだ。
何度も見て、似た光景が多いから未来に起きるだろうという予測が今回の予知だった。いくつも未来が変わり、しかし全てが全く違う未来ではない。Ms.ダークライ自身を視たこともある。
だからこそ詳細な予知は出来ず、大まかな予知しか出来ていなかった。一言一句知ることはできないが、どういった状況になるかは分かるのだ。
そんな心境のナイトアイとデクの声にヴィランは口角を上げながら声を返した。
「成生ちゃん来てるです?」
「あいつはまったく!」「隠したがりだな!」
トガは嬉しそうに、トゥワイスは仕方ないと言いたげだ。
成生はヴィラン連合全体とは距離をとっている。成生が死穢八斎會にいるということをヴィラン連合も知っていたが、ここに来ているのは知らなかったのだ。
「……どうやら偶然らしいですね」
「当然だ。こいつらは死穢八斎會から呼ばれてきている。Ms.ダークライ側じゃない」
ナイトアイの情報に理解を示し頷くデク。しかしその情報はヴィラン側には良い情報でしかない。
何せ味方が増えたというだけなのだから。
「それなら最悪成生ちゃんに回収してもらえばいいです」
「気にしなくていいな!」「いやしろよ!」
「くっ!」
成生という最強のヴィランがすぐ近くに居る。救助という名目なら林間合宿の時にこれでもかと暴れた実績もある。
ヴィラン側が倒れても問題ないと判断するには十分だった。
が、その判断は一手遅かった。
「確かにそうだな。だがそれは助けに来たらの話だ」
「わ」
ナイトアイが5kgの重さを持つ印鑑を勢いよく投げつける。成生がいるという一瞬の油断、そこを見逃すナイトアイではなかった。
トガの腹に命中し吹き飛ばされ壁に激突、粉塵をあげる。トゥワイスも吹き飛ばされていくトガに手を伸ばすが、ヒーロー側が許さなかった。
「トガちゃーん!?」
「助けに来る前に終わらせる、デク!」
「はい!」
ワンフォーオールフルカウル、10%。Ms.ダークライという脅威のために早く制御を覚えようとした現状の限界。
仮免試験の時よりほんの僅かに増した程度の10%だが、それでも十分過ぎる身体能力になっていた。トゥワイス一人を真正面から戦えばねじ伏せられるくらいには。
「トガちゃん助けて―!?」
「な」
ただトゥワイスは真正面から戦うヴィランではなかった。しかもただ逃げ回るだけのヴィランではなく、身体能力も高いうえで逃げ回るヴィランだ。
デクが見たことのあるヴィラン連合は大半が形はどうであれ戦意を見せて向かってきていたため、全力でトガの方へ逃げ走り出したのはデクと言えど読み切れなかった。
「逃がさん」
追撃だとナイトアイがトゥワイスへ印鑑を投げる──が、伸ばされた手が勢いすら消して掴み取る。そしてその手は、トガの手ではなかった。
「けほ……仁くん、成生ちゃんがいるんですよ?」
「あっ、そっか」
トゥワイスがトガの言いたいことを正しく理解する。右手を伸ばし、トゥワイスは自らの個性で最も自分が危険に陥る者を複製する。
当然何が複製されるのかも予知を行っていたナイトアイだが、その危険性を理性で抑えきれず、今目の前の状況に手を出さざるを得なかった。
「させん!」
「っ!」
再び印鑑を投擲するも、粉塵を裂いて現れたもう一人の手に摘ままれる。それはさっき伸ばされた、トガの手ではない別人の手と同じものだった。
「成生ちゃんがいるなら最初から全開です」
粉塵が晴れた場所に立っていたのは全く同じ姿をしたMs.ダークライの姿。かつてのデビュタントの時のものではない。
髪型はウェーブがかったショートであり服装も私服……肩だしの白いトップスに水色のフレアスカート。伊達メガネもかけており見るからに隠してる姿だ。
その雰囲気だけは同じ。瞳こそ混沌としたものではなくトガの黄色いものだが、圧倒的なまでの存在感がそこにあった。
そしてそれが、もう一人。
「Ms.ダークライが……二人……!?」
トゥワイスの複製により増えたもう一人の成生。こちらは瞳が混沌そのものであり……Ms.ダークライを増やしたのだった。
「終わるのはどっちが早いか、試してみ
■■■
「せいちゃんの力は扱うのも難しいです。でも少しなら扱える」
トガの個性『変身』は身体能力も変化する。元のトガの身体能力からかけ離れ過ぎれば十全に扱えるわけではないが──トガは成生の友達であり、変身が初めてという訳ではない。
十全とはいかないまでも、多少なら使えていた。
そして増えたMs.ダークライはというと、困惑していた。
「ふむ?……分身、2倍ですか。なら容赦なく……いえ、これは」
複製されたことにではない。複製された当人だからこそ誰よりも理解できる、本体の影響のせいだ。
「どうしたんだ」
「成生ちゃん?」
申し訳ない表情をした成生が二人の方へ顔を向ける。
本体は未だ赤い蒸気を上げて自らの力を抑え込んでいるのだ。途方もない程に強大な個性だからこそ、複製された者に影響が出ない訳が無い。
「すみません。本体が今大変なことになってましてこっちにも影響が……既に身体を保つのも限界……一発だけしか無理ですね」
「「は!?」」
できて一発。Ms.ダークライの一撃なら十分な威力を持っているのだが……Ms.ダークライのが選んだ攻撃はヴィランとしては悪く無い選択肢であり、しかしヒーロー側が最も助かる選択だった。
「一発な「さよなら」」
油断せず、警戒を解かず、瞬きすらしていないナイトアイの身体が水平に吹き飛び壁にぶつかる。一発無造作に蹴るだけ、ただそれだけでプロが瀕死になる程の攻撃になっていた。
救いだったのはレーザーでもなければ光による攻撃でもなかったことだ。仮にレーザーによる斬撃を使われていれば壁すら貫通してヴィランもヒーローも真っ二つになっていたのだから。
「ナイトアイ!」
反応は遅れたもののナイトアイの下へ近寄るデク。流石はオールマイトの相棒と呼ぶべきか、衝撃は分散させ自ら飛ぼうとしていたことでダメージの軽減は出来ていた。
だが直撃した腹部は致命傷一歩手前。これ以上動かすのも危険ではあった。
「トガちゃんあとはお願いしまs」
「はぁーい。ありがとうなのです」
一瞬でナイトアイを無力化したMs.ダークライは姿を泥のように崩して消えていく。
二倍の個性は耐久力を落とした分身を作る。しかし成生の個性は今や本体以外では自らの個性に耐久力が追い付かない程の強大さになっている、二倍のように少しでも耐久が落ちれば即座に崩壊して当然だった。
「がっ……」
「意識はある。でもこのままじゃ……いや、守る!守って戦う!」
デクが受けている指令は各個撃破。それがどんな形であれ、目的さえ達成できれば問題は無いのだ。最も困難な道であろうと、救うヒーローであるデクは躊躇なくその道を選ぶ。師であるオールマイトと同じように。
デクがナイトアイを守る選択をする最中、ヴィラン連合の二人はMs.ダークライの影響を話していた。
複製で何もせずに崩れてしまうほどの影響を受けているのだ。複製でこそないものの、変わっているトガに影響が無いとは思えなかった。
「トガちゃん大丈夫?」「問題ない?」
「んんっ?……成生ちゃんの言う通りだったのです。変身にも何か変な影響が出てます」
手をグッパッと握ったり開いたりしてトガは力加減を確かめる。そして成生はしない牙の生えた笑みを浮かべ、動く。
「ものすごく元気が湧いてくるって感じです!」
「うっ!?」
一歩でデクの目の前まで跳び胸を殴ろうとする。が、両腕をクロスするようにデクは守る。反応は明らかに遅れていたが、ギリギリで態勢は間に合っていた。
だが壁がすぐ後ろにあったことで勢いが殺し切れず壁にぶつかり、身体が埋もれる。
(10%じゃ耐えられない!無理をしてでも上げないと!)
デクは即座に判断を下す。現状の10%のフルカウルでは間違いなく負ける、かといって100%を使えば地下ごと吹き飛びかねない。
故に、選ぶ選択肢は第三の選択肢。
「ワンフォーオールフルカウル……25%!」
「わっ!?」
先ほどトガにやられたように、一歩で目の前に到達し鳩尾へ向けて正拳を放つ。不意打ちにも近い一撃だったが反応したトガは即座に距離をとっていた。
デクが選んだ第三の選択肢は一時的に使える限界までパーセンテージを上げるというもの。身体は軋み、数分も動けば反動が来るであろう強化率。近くにMs.ダークライがいること、再びMs.ダークライを複製されれば全滅するという危機感が限界を超えさせたのだった。既にMs.ダークライは複製できないのだが、デクの耳には入っていなかった。
「あんまし保てないけど……戦えない程じゃない!」
数分というのはオールマイト達の戦いやこれまでの戦いの事を考えれば十二分に長い時間だ。増強系の個性の極限であるOFAは全開で振るえば、3秒で戦いが終わる程の力があるのだ。数分もあれば戦いなどとうに終わっている。
ただそれが言えるのは、身体能力で相手が明確に追いつけない場合だ。
「成生ちゃんの力に勝てると思ってるのです?」
「ぐっ!?」
変身の個性は血を吸った人に変わる。見た目だけでなく身体能力も……変身の個性が成長すればという前提なら、変身した先の人の個性も使えるようになる。
未だトガはそこに至っていないものの、今の成生は身体能力だけでも馬鹿げた能力を誇る。何せ彼女の身体能力は電花達にまだまだ劣るものがあれど、異形の反射速度で完全に電花達を圧倒できるようになりつつあるのだから。
とはいえ成生の反射速度も個性由来に近しい。変身で近づくことは出来ても同じになることは出来なかった。故に身体は動いても反射で動くことは出来ない。
ただ身体能力だけでも、十数m離れた相手に一歩で懐に入り拳を振るうくらいは容易いのだ。
「成生ちゃんの一番怖いのは反射速度。流石にそこまでは扱えないけど……っと」
「くっ!」
身体能力で言えばOFA25%で成生と互角程度。しかし個性や技能抜きでそれだと言うことだ。
緑谷の技能はフルカウルの戦闘技術に全振りだ。それ込みで身体能力が対等であるなら、トガの変身した姿は純粋にトガの技能だけが上乗せされて有利になる。
徒手戦闘ではあるためトガのナイフ技術は使えないし姿を隠す技能も使えないが、手刀でナイフの代わりにする。それだけで十分に優勢に進めていた。
「基礎戦闘能力は……今のデクくんの身体能力に追いつけるくらいには、強いんだぁ」
「なら、こうだ!」
デクはその場で思い切り手を振る。それだけで土埃が舞い風が荒れる。身の回りの環境を利用し不意打ちに繋ぐのはデクにとって格上に対する対処法だ。
Ms.ダークライならば個性で探知できるため効かないが、ここにいるのはトガだ。
「わ!?」
探知もできず、成生の身体能力があるせいで逆にその場所から動かないという選択肢をとってしまう。
突入する以前はデクはOFA100%を使わないと決めていた。使えばMs.ダークライが戦闘に入りかねないからだ。が、目の前のヴィランには今以上の出力でなければ倒すことはできないと判断する。
「デトロイト──」
「させね」
この場にいるもう一人を忘れていたのが、デクの間違いであり──同時に幸運だった。いつの間にかそこにいたMr.コンプレスが瓦礫を『圧縮』してを投げ、トガとの間に割り込ませていた。
ここにいたのは四人だけ。であるならば至る考えは一つだ。
「三人目!?」
「流石だぜ!」「Mr.コンプレス!」
「おいおい増やされちゃったのかいおじさんは」
トゥワイスによる複製だ。さらに最悪の事態に陥るデクだったが、この未来には意図的に辿り着いたのということを忘れていた。
再び距離をとったデクの背後には立ち上がるヒーローがいた。
「ぐ……衝撃を備えてこれか」
「ナイトアイ!」
一撃で意識まで刈り取られたはずの
来るであろう衝撃に備え防御に徹し、意識を無くさぬよう覚悟を決め、吹き飛ばされる勢いを直前に自ら飛ぶことである程度威力を減衰させる。身体能力が圧倒的に負けているため予知による事前準備した防御だったが、それでも致命傷手前までのダメージを負ったのだった。
「状況は……予知通り最悪だな。デク、私は動ける。それだけで十分だろう」
「……っ!はい!」
情報伝達は時間は最小で情報量は最大に。デクとナイトアイの会話はそれだけで十分だった。
「仁くん助かりました」
「おいおい相手は二人かい?」
未だデクの起こした土埃は舞っている。さらに成生に変身しているが故に、その力を振るえるがために、トガらしくなく油断していた。話しかけられていたMr.コンプレスもまた、同様だった。
──突如土埃を貫いて飛んでくる印鑑に気づかない程の油断。その行き先は、トゥワイス。
「俺に!?」「俺じゃない!?」
ただの牽制攻撃。だが予知により油断を突いた攻撃になり……トゥワイスに直撃すれば気絶するのは必然である威力はあった。
とはいえトゥワイスは鍛えてない訳ではない。二人とは違い油断していなかったために、ギリギリで回避できていた。
そして牽制があったのなら当然本命がある。飛んできたのは、一歩で踏み込んできたデクの拳。
「来るな!」「来い!」
トゥワイスが避けようとするが、それよりも先にトガが割り込んできていた。
「遅い、させる訳が無いのです」
この場で身体能力が互角なのはデクとトガ。デクが出てくるならトガが相手しなければならない。
そこを、
「ここ……でっ!」
「な」
ナイトアイが壁に叩きつけられた時にできていた瓦礫。握り込んでいたそれをトガが割り込むギリギリでデクはトゥワイスへ投げつけていた。
トゥワイスは体を丸くして耐えていたが、増強系の飛礫だ、耐えきれる訳が無かった。
「仁くん!」
「はっ!」
倒れたトゥワイスの心配、デクはそこを突きトガへ拳を振るう……が、再び圧縮された瓦礫が間に割り込んできた。
「わっ!」
「くっ!」
距離をとるデクとトガ。土埃は収まり全員の姿を全員が視認できる状態になっていた。
「仁くんが倒れちゃったのです。……これは、ちょっとマズいかもです」
「あとはトガヒミコと複製された男一人」
トガが戦略的撤退を考え、ナイトアイが次の攻撃を考えていた時、地響きと呼ぶべき音が鳴っていた。ナイトアイの予知が上手くいかない
ズズン……ズズン……ズズン……
五人がいる地面が揺れる程の大きさ。しかしヒーローにもヴィランにも、今回の一件に関わる者で地面に作用する個性持ちは一人としていない。
「大きな音……かなり近い?でもそんな大きさなんて」
「デク、私が叩きつけられた壁は砕けそうか」
予知の個性で先んじて何が起きるか分かっているナイトアイがデクの困惑を鎮める。迫ってきている者の正体も分かっているが、この場にいる戦力では対処のしようがないこともナイトアイには分かっていた。
「今のパワーなら、おそらく」
「向こうも迷ってる、逃げるぞ」
分断された壁は分厚い。が、OFAの出力を上げれば壊せる。100%なら地表までぶち抜ける威力があるのだ、たかが数mもない厚みの壁など
しかしデクが未だ迷っているのはナイトアイの方針が変わったからだった。
「各個撃破だったのでは?」
「目の前の予知は変わった。戦略もクソも無くなりつつある、まず合流せねばならん。私が牽制、お前が本命だ」
予知が変わった。それだけでデクには十分に危険であることは伝わる。何せそれができるのはMs.ダークライだけなのだから。
Ms.ダークライが動いた可能性がある。たったそれだけで撤退が視野に入るのだ、可能性が出てきた以上各個撃破ではなく、合流していつでも撤退できるようにする方を優先するのは当然だ。
ヒーローは戦略的撤退へ方針を変えつつ──この場にいるヴィランもまた似た動きをしていた。
「トガちゃん嫌な予感がする、逃げた方がいい」
「私もです。この音が到着する前に逃げるのです。退路は頼みます」
「任された」
ヒーロー側を警戒しながらトガはトゥワイスを抱え、Mr.コンプレスは圧縮している玉をいつでも投げれるように構える。ジリジリと少しずつ退きながら。
極小の動作だったが、ナイトアイは動きとその意味を見逃さなかった。
「どうやら事情が一致したな。向こうも後退してる……よし、一気に背を向けて真後ろの壁だ、いいな?」
「はい」
数瞬の沈黙が場を支配する。どちらも同じ考えになったからこその緊張が場に流れる。それを破ったのは、ヒーロー。
「行くぞ!」「はい!」
「くそっ!……ってあれ?」
飛んできた印鑑へMr.コンプレスは圧縮した玉を投げ、圧縮されていた瓦礫を展開し撃墜する。
続いて本命のデクが来るはずとトガがMr.コンプレスの前に立つが、何も攻撃は飛んでこず大きな音だけが響いた。そこまでヒーローの動きを見てようやく二人は臨戦態勢を解く。
「逃げるつもりだったですか」
「退いてくれたなら好都合だ、こっちも上に行くぞ!」
Mr.コンプレスが階段状に地面を圧縮し地上へと道を作っていく。音の震源ではないであろう方向へ。
五人が抜けた数秒後、壁を破壊しながら
成生の身体能力は現在がデフォでOFA25%くらい。ただこれは個性無しの時。個性有りだと色々変わるので個性無しの単純な数値にするとこうなる
そも成生の基本武装は思考加速と指先発光によるレーザーです。これとその派生についてだけは例外ですが、それ以外だと現状こんなもん。実は土流もオリジナルに負けるし