普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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Ms.ダークライVSヒーロー&ヴィラン

「エリを奪われるのはもはやどうしようもない、お前がエリを気にせず戦うつもりなら尚更だ。なら全員皆殺しにする以外に道はなく、お前が最も邪魔であり倒せる可能性がある選択はこれしかない」

 

 オーバーホールの選択は共闘。Ms.ダークライがエリに害を加える可能性が出た以上、抵抗しないという選択はとれない。それなら可能な限り戦力を準備するしかなく、今戦える者を集めるのは必然。

 

 Ms.ダークライはルミリオンの方へ一瞥する。オーバーホールから目を離していたが、オーバーホールからはMs.ダークライに隙など見えなかった。

 

「ルミリオンも同じ考え?」

 

 この共闘はかなり唐突な提案だ。受け取る側が拒否することも容易であり……事実、返事はそっけないものだった。

 

「エリちゃんさえ保護できればそれでいい」

 

 エリを抱きかかえながらルミリオンは答える。しかしその返しは、Ms.ダークライを愉しませるものでしかなかった。

 

「そう……じゃあエリを殺してでも奪い取ると言ったら?」

「……戦いたくはないかな」

 

 戦意に火が付いているMs.ダークライは適当に理由を付けてでも戦おうとする。ルミリオンからすればたまったものではない、何せようやくエリを保護できつつあるのだから。

 

 しかし感情だけでダメとは言えなかった。理由は簡単だ。

 

「正直ね。ただ私とオーバーホールが戦えば被害が出る、見逃せないでしょう」

「っ!」

 

 戦えば被害が出る、それは間違いなく地上にも及ぶ。Ms.ダークライの広範囲攻撃が避難もしてない街中で起きれば起きるのは惨劇だ。

 

 それを止めるためにヒーローは戦うのだ──

 

 

 

「ところでナイトアイ、予知はここまで見えていたかしら?」

 

 

 

 ──ここに賭けた全員で。

 

 

「お前の未来は知らなかったが、お前のヒーロー(烈怒頼雄斗)の未来から……ここまでは決まっていた。ここから先は知らないがな」

 

 ルミリオンの後ろから、デク達三人が合流していた。

 

 デクに抱えられていたナイトアイは自力で立ち、ルミリオンの横に並びMs.ダークライと対峙する。師弟並び立つ姿は、ボロボロであっても輝きそのものは失わない。

 

 未来は過去に行った予知で決められていた。過去で行ったことが未来に関わるのだ。だからこそ──Ms.ダークライはヒーローの背後の上へ指差しニヤリと笑う。

 

「ならあれも見えてなかったようね」

 

 ズドォォン!!!

 

 指さされた先、天井から数本の触手がなだれ込む。デクとナイトアイ、イレイザーヘッド、ヴィラン連合も含めた面々が逃げた方がいいと判断した巨大な化け蛸。それが遂に追いついたのだった。

 

 一振りでも命中すれば確実に吹き飛ばされ地中に埋められるであろう大きさ。動揺するのも当然だった。

 

「なっ!?」「追ってきてたのは蛸……!?」 

 

 引き起こした、ただ一人を除いて。

 

「ここからの未来は私が作るということ、あれが分かりやすい象徴でしょう?」

 

 Ms.ダークライは知っていたわけではない。ただ蛸から自らの何かを感じ取っただけだ。

 

 感じ取れば自らが引き起こした何かであることくらいは分かる。ならばMs.ダークライが過去に誰かへ何か影響を及ぼした結果が今に届いたと言えた。

 

 化け物サイズの蛸、個性によるものだと誰もが思うために……即座にナイトアイは判断を下す。

 

「っ!未来は我々が作るのだ!イレイザーヘッド!」

「分かってる」

 

 個性によるものなら抹消の個性が効く。即影響が効いたのだが……イレイザーヘッドとルミリオンが目にしたのは、確かな信頼を持つ者であり突入時にはそんな姿などしていなかったヒーロー。

 

「天喰……!?」「環!?」

 

 最もプロに近いと信ずる教師と、誰よりも輝けると信ずる親友。そのどちらもが目の前にMs.ダークライという脅威がいるにもかかわらず、動揺を隠せていなかった。

 

 対して陥れた張本人である彼女は、ただ嗤うだけ。

 

「私と敵対すればこうなるという、目に見える被害ね。

 

 フフ……アハハハハ!あの子は随分と歪な姿になったのね!歪んだ姿になりたいだなんてヒーロー失格でしょう!?本当にヒーローなの!?私と一緒に来た方がいいんじゃない!?

「……っ!」

 

 滅多に怒らないルミリオンの顔が怒りに染まる。それでも感情に任せて行動に移さないのは流石ヒーローと言う他ない。

 

 十分にパフォーマンスができたとMs.ダークライは天井に指していた指をそのままヒーローに向けようし、マズいと直感し動きを止めた。

 

 同時にルミリオンは天喰とエリをデクたちが破壊してきた壁の外へ連れ出していた。

 

 

「指一本動かさせんぞ」

 

 

 動きを止めさせたのはオーバーホールの仕業だった。

 

 それ以上指を下げていれば床から伸びて来ていた棘に刺さりそのまま千切れていた。オーバーホールの分解と修復で、地面から棘がMs.ダークライの身体の間を動かせないように生えていた。

 

 無理やり動かせば可能だが数瞬の時間がかかる。となればその数瞬で相対している面子なら何か対策を打てるのは容易に想像がついた。

 

 ただMs.ダークライは、身体を動かさなければ戦えないなどと思ってる彼らを滑稽と見ていた。

 

「……身体を動かす必要がどこにあるの?」

「な」

 

 マスターピースであるMs.ダークライの身体は自在に動かせる。例えば──髪先。

 

「髪の毛……っ!?」

 

 依光成生が最も研ぎ澄ませている個性は『指先発光』。ただこれはあくまで個性登録していた時はそう見えていたからというだけに過ぎない。実際は、応用して扱えば身体の『先』と成せる箇所からならどこからでも発光できる。

 

 異なる未来で爆豪が『クラスター』と呼ばれる技能にて掌の汗がニトロになるのを、別の箇所の汗から発動できるようにしたようなものだ。個性の応用ではあるため困難なのだが、Ms.ダークライからすれば息をするより簡単だ。

 

 しかしこれまで鍛えてきたのはあくまで五指からのもの。髪先からレーザーが放てたとしても、威力はまるで収束できていないものだった。

 

「威力は低い!ただの熱いだけの光だ!イレイザーヘッド!」

 

 事実、自在に髪先を操作し全方位に放たれるレーザーはナイトアイに火傷すら負わせていなかった。

 

 それでも全方位に光っている髪だ、眩い光は目くらましにはなる。同時に光である以上、目には影響が出る……つまり、イレイザーヘッドが直視を躊躇う程度の隙はできる。

 

「そう、それだけで十分──あなた達程度ならね」

 

 今のMs.ダークライのレーザーはただの光ではない。正確には、個性だけではないのだ。

 依光成生は熱と光、そしてダークマター染みた特性を持った何かを伸ばしていると認識していた。間違いではない、だがそんな個性は今は存在しない。

 

 正解は、マスターピースによる『成長』だった。レーザーではない、成長で爪が伸びているように、髪先であったり指先が実際に伸びているのだ。

 ただ元々の身体以外のところ、ダークマターのような特性を持った伸びた部分は老廃物のように即座に消える。それらが結果的に依光成生が認識している特性を持っただけなのだ。

 

 そして今のMs.ダークライは何となくという直感だけで自らの成長さえも操作する。伸びた部分は消さないように……鋭くなるように。

 

「髪が鋭く……!?」

「う…!」

 

 この場にいる全員に髪先からのレーザーは当たっていた。そこから鋭く針のようにしたのだ、一歩でも動けば刺さる針地獄の形成だ。さらにほんの少しだけ髪先をずらし針がそのまま切り傷を作る。

 さらに髪先程度に手間取っているなら丁度いいと言わんばかりに、Ms.ダークライは身体の間に生えている地面から生えた棘を力任せに破壊していく。

 

 縛りのないMs.ダークライには個性が使えない状態にしなければ勝ち目は無い。肝心要のイレイザーヘッドは視界が髪先で埋められており、Ms.ダークライが見えていなかった。

 

「暴れるとなると流石にイレイザーヘッドは邪魔ですね……で、ここからどうします?盾となるファットガムも烈怒頼雄斗もいない。当たれば致命でなくとも傷を負う。

 

 どんどん脱落していくだけね?」

 

 ほぼ制圧されたに等しい状態。動けるのはすり抜けられるルミリオンだけだが、身体能力には差がある。なにより『成長』も使い始めたMs.ダークライの攻撃は範囲攻撃が増えている。

 

 目の前の状況からルミリオンも単独で戦ったところでいつかすり抜けが失敗する時が来るのは分かっていた。考えている間にも状況は動く。

 

 すり抜けができなくとも、傷を負っても、死ななければ戦える者がここにはいるのだ。

 

「俺を、舐めるな」

「あら」

 

 全身に傷を負いながらもMs.ダークライの髪先に手を触れ分解する。しかしMs.ダークライも分かっており分解されるよりも早く髪先の成長を終わらせ元の姿へと戻る。

 

 髪先による制圧が終わる。それは同時にイレイザーヘッドの視界が戻り、Ms.ダークライの身体を捉えることを意味する。

 

「仕方ない、それじゃあ動きましょう」

「その前にお前は死ぬがな」

 

 オーバーホールの身体能力は高い。ルミリオンと個性無しで戦っても互角程度にはなるだろう。油断しているMs.ダークライ相手なら近づくことくらいはできていた。

 

 ただ触れられるかは別の話だ。

 

「っ!?」

「私に触れられるわけがないでしょう。誰だと思ってるんです?」

 

 Ms.ダークライの身体能力は消失により素の身体能力だけとなっている。つまり変身したトガと同じ程度であり、OFAにすると25%を優に相手どれるくらいだ。反射神経は異形により光速のままであり、予測した攻撃すら反応できるレベルである。

 

 しかしそれ以上に厄介なのは、鍛え上げた体術だった。オーバーホールも地下に潜っているヴィランの中では随一のものを持っている。個性の相性もあるが……乱破と五回戦って全勝できる程なのだ。

 

 が、Ms.ダークライは低く見積もっても同等レベルだった。オールフォーワンに準備してもらった弔との特訓と、学習能力が高いことに起因していた。

 

「分解と修復。触れれば死ぬ……かも分からないですがね」

「何……?」

 

 触れられることも無く分解による棘もオーバーホールの腕による直接的な攻撃もヒョイヒョイと避けるMs.ダークライ。そして髪先が根元から分解されたことでヒーロー達もようやく動けるようになってきていた。

 

 だがオーバーホールとは連携が取れる筈もない。オーバーホールもヴィランなのだから。

 

「やってみますか?」

 

 ヴィラン同士の戦いは殺るか殺られるか。ヒーローの鎮圧するような戦いではなく、確実に殺す策は優先的に扱う。クロノスタシスと自分自身を分解し修復、腕を四本と頭から矢印のような特徴をした髪を生やし、当たれば強制的にスローにする能力を髪に付与する。

 当たれば致命まで持っていける個性だ。

 

「いい度胸だ」

 

 腕を増やし致命攻撃の選択肢を増やし、棘による先制で動きをけん制する。Ms.ダークライは簡単に避けるが、避けるモーションは起きる。

 

 オーバーホールの動きを見極めなければ連携はできない。だからこそ──一人だけは可能だった。

 

「やれ!治崎!」

 

 ルミリオンが背後からMs.ダークライの視界を塞ぐ。完全に透過しているからこそできる手であり、オーバーホールとそれなりに戦って癖を見抜いていなければできなかったことだった。

 

「俺をその名で呼ぶな!」

 

 激高するオーバーホールはその手をMs.ダークライに届かせ……触れた。

 

 バツン!!!

 

「倒した……のか?」

「分解したんだ、生きてる訳がない」

 

 分解の個性により上半身が消し飛び、個性は抹消により使えない状態にある。戦いはこれで終わったと、ほんの少しだけ緊張感が弛緩したその時だった。

 

 

 

 

 

 

「そう思ってるなら間違いですよ」

 

 

 

 

 

 

 地震が起きたように地下が揺れ、オーバーホールの二本の腕がグシャリという音と共に千切れ砕け散り矢印の髪の毛は千切られる。速過ぎる脚力は蹴りにより物理的に千切れる領域まで至れる、そこまでの力があれば千切った腕を蹴り飛ばすだけで砕ける。

 

 さらに再生途中であろうが腕まで生えれば髪を引き千切る等簡単だ。

 

 

「指先一本あれば私には十分、再生するんですよ」

 

 分解によって吹き飛んだのは上半身だけ。下半身は残っており、身体全てが粉々にされた訳ではなかった。それだけあれば、彼女には十分だった。

 

「はや」

「身体を強靭にしてね」

 

 倒した油断、一人には確実に拳を入れられる隙。Ms.ダークライが選んだのはイレイザーヘッドだった。

 殴られた勢いのままに受け身も取れず壁に打ち付けられる。イレイザーヘッドの意識もそのまま飛ばされていた。

 

 抹消は、もう使えない。タイムリミットが設定されてしまったのだった。

 

「どうやって……!?個性は消していたはず!何をした!Ms.ダークライ!」

「……教えてあげると思う?」

 

 ナイトアイの言う通り、超再生の個性を持っているものの抹消によって消されていた。それは間違いない事実であり……しかし、発動したのは成生自身は超再生の個性と認識している別の特性だった。

 

 マスターピースと成っている以上、『成長』という個性でない部分には個性の消失は効かない。

 

 さらに抹消の個性は、異形系には効きづらい。個性の影響を0にはできないのだ。本来の個性は異形の個性である成生は、既に超再生が持つ再生能力すらも自らの異形(個性)に混ぜていた。

 

 本来であればマスターピースが持つ『成長』は津波のような指すら生成できる程のもの。それを自らの体の維持と、せいぜいが指や髪が伸びる程度に収めているのだ。あり得ざる超再生能力を持つのも当然だった。

 

「さて、どうします?まだやりますか……ヒーローにヴィラン」

 

 本来の自らの個性を認識しないままに扱う成生。しかし異常には気づいており、何かが起きていることは分かっていた。

 

 別の世界線ではオールマイトすら超えるヒーローの力を持つヴィランが、最適化などというダウングレードしていた力を握り潰し──目覚めていく。

 

 纏っているように赤い蒸気が少しずつ湧いていく。まだ身体の表面に僅かに漏れる程度だが、成生の意志に関係なく身体から零れていた。

 

 ■■■

 

 オーバーホールが吹き飛ばされ、ルミリオンも一度距離をとる。次なるヒーローの一手は、Ms.ダークライからしても意外なものだった。

 

「私が前に出る」

「ナイトアイ!?」「ナイトアイ、正気ですか?」

 

 デクどころかMs.ダークライでさえ思わず疑問が口に出る程のアクション。だが続けられた言葉がMs.ダークライを納得させた。

 

「さっきのレーザーはもう使わないだろう?」

「……予知ですか、先読みされてるようで面倒ですね。確かに使うつもりは無いですよ。今は消失中ですし、つまらないですし」

 

 予知ではない。既に今日可能な分の予知の個性はほぼ使い切っており、使うタイミングも無かった。

 

 ただのブラフ。しかし一言だけでMs.ダークライの行動を狭めさせていた。

 

 Ms.ダークライという人を調べたナイトアイだからこその一手。制圧系の攻撃に対してオーバーホールが共闘できるからこその戦術的予測。そしてそこから更なる決め手。

 

 次なる一手はナイトアイにとっても賭けだ。しかしここまで来た以上賭けに乗らない訳にもいかない。しかし可能性はある。

 

「その驕りが我々に勝機を与えてくれる」

 

 Ms.ダークライが最強のヴィランである事実。切り捨てられたからだろう、あのオーバーホールがヒーローと共闘するという屈辱すら行ってでも戦おうとした相手。

 

 その事実をMs.ダークライが認識しているという隙。そこを突くしか方法はなかった。

 

「驕り……ね。これは余裕って言うんです」

「驕りに決まっているだろう」

 

 ナイトアイが半身に構え、投擲にハンコを構える。そして対峙しているMs.ダークライへ直線的に走る。

 

 同時にルミリオンとデク、オーバーホールも行動を起こす。まず真っ先にオーバーホールが床を分解して棘にし、三人の動きを隠すように、Ms.ダークライの視界を潰すように展開していく。

 

「また目くらましの分解ですか……いや、他の二人も」

「前に出るのは一人じゃないってね!そして俺より強い威力持ちはいる!」

「っ!デクですか!」

 

 今のデクはトガと戦った時と同じOFAの出力だ。ルミリオンよりも遥かに身体能力が増強されている。Ms.ダークライといえど警戒した方がいい程度の近接戦闘の身体能力を有していた。

 

「消失のリミットまでにケリを着ける!」

「そうですか、残念」

「え」

 

 パシッと軽い音と共にデクの蹴りが止められる。

 

 警戒しているのは身体能力だけ。体術といった面ではデクはオーバーホールにさえ数段劣る。同等以上であるMs.ダークライが相手では身体の使い方が圧倒的に負けているのだ。

 加えて言えば身体能力が近かったのはトガが変身した時の姿だ。今やあの時を超えているMs.ダークライとでは身体能力でさえ負けていた。

 

 二人がかりで近づいて鎮圧する。そんな発想にMs.ダークライは溜息をついていた。

 

「はぁ……決め手はどうするつもりです?オーバーホールも効かないとなれば私を倒そうなんてできないでしょうに」

「……さぁね!無いからどうしようって感じさ!」「っ!」

「自棄ですか……」

 

 Ms.ダークライが気にするのは『自身をどうやって鎮圧・討伐・行動不可にするつもりなのか』という一点だけ。

 デク・ルミリオン・ナイトアイは火力不足、オーバーホールは既に打つ手がないと信じ込んでいる、誰もが決め手を持っていないのだ。

 

 疑問に答えたのは、少し離れた距離からサポートしていたオーバーホールだった。

 

「いいや決め手はある」

「オーバーホール?」

 

 身体能力が増強され、耳もいいがためにMs.ダークライには聞こえてしまう。

 

 それが、隙だった。

 

「これだ」

 

 Ms.ダークライは強過ぎる個性であり、油断を誘うとしても単独では困難。だからこそ狙うべきはここしかなかった。

 

 デクとルミリオンに紛れほぼゼロ距離まで近づいていたナイトアイが握っていた銃から──銃弾がほぼゼロ距離から放たれる。何度もオーバーホールは目くらましのためだけに分解していた訳ではない。もっとも不意を突いて近づけるであろう人物に、最大の切り札を渡していたのだ。

 

 Ms.ダークライがこの場で恐れるのはオーバーホールだけだった。最強のヴィランであり大した攻撃など効かないという自負もあるが、危険と判断しているのは事実であり……だからこそ効かないというパフォーマンスすら行ったのだ。ルミリオンという目潰しも面倒だったが、せいぜいこの二人だけだ。ナイトアイの近接戦闘など鎧袖一触と思考すらしてなかった。

 

 故にオーバーホールは何かあるのだと声で誘い、近接戦闘で強い二人を先行させることで相対的に戦闘能力が低いナイトアイが油断を突ける。そして決め手は、既に直線に走るくらいなら支援できる場所にいるオーバーホールが渡していた。

 

 オーバーホールが個性破壊弾を完成させており今の手持ちにあること。ナイトアイはその賭けに勝ったのだ。

 

 

 

 放たれるのは、個性を破壊する弾丸。

 

 

 

 

 消失はナイトアイがゼロ距離になった時からリミットは過ぎ既に個性は使える、転送すればこの距離ですら避けれる。が、思考を加速している思考は戸惑っていた。

 

 (……避けないといけない攻撃。避けないと個性が破壊されて私は何もできなくなる。それは嫌だし、タルタロスどころか研究所に送られて実験生物扱いになるだろう

 

 ──そのはずなのに、避けないでもいいって思ってる私がいる。避けないならそんな未来があるはずなのに、大丈夫だと言っている私がいる

 

 私は……どうすればいいの?)

 

 

 個性を破壊する弾丸はMs.ダークライの胸の中心へ向かい──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──打ち抜いた

 




成生ちゃんはマスターピースです
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