普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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今回から新章扱いです。成生の出番はほぼありません

代わりに子供たちが暴れ回り始めます


予定では解放軍との戦闘くらいまで。今年中に終わらせたいなぁ





三章 ヴィラン&チルドレン ready
堕とし子の脈動 灯火


 九州にてNo.1、2ヒーローとなったエンデヴァー・ホークスが脳無に襲撃された。重傷を負ったものの燃やし尽くすことに成功し、No.1という存在を世間に知らしめた事件だ。

 大半がそれらの戦闘及び「これまでのNo.1ヒーロー、オールマイトではなく今のNo.1ヒーローエンデヴァーを見ろ」とカメラに言い放った通称「見ろや君」が大きなポイントだった。

 

 新しいNo.1ヒーローの活動の始まりのスタンディング。何代も受け継がれてきた力を振るう不出生のヒーローでなく、一個人が作る輝かしい未来の第一歩。

 

 そう、なるはずだった。

 

「まずその怪我と出血何とかしないと」

「俺はもう動けんぞ。誰か呼んで……」

 

 スタンディングが終わりホークスに介抱されているエンデヴァーの前に、二人の影が近寄っていた。

 

「ちょーっと待ってくれよ。色々想定外なんだが」

「ホントね。でもまぁ悪く無いんじゃない?私からしたらある意味想定内よ、だってそこに轟炎司がいるんだから」

「それもそうか。

 まぁとりあえず、初めましてかな?エンデヴァー」

 

 二人……ヴィラン連合の荼毘、そして悪夢の堕とし子の四女である灯火の姿だった。

 赤いスカートに黒いオフショルダートップス、ついでに黒ニーハイ。靴は姉達が最近好んでいるものと揃えて黒いローファー。

 顔立ちは整っているが黄色い瞳はツリ目できつそうに見え、長身でありポニーテールが姉達三人より姉らしく見えさせる。

 

 エンデヴァーとホークスはヴィラン連合も悪夢の堕とし子も知って入る。しかし全容は知らない。特に悪夢の堕とし子達は全員で何人いるかも分かっていない。

 ただ分かることは一つだけ、ヴィランの下に集った者達ということだけだ。

 

「……!……あのスナッチを殺したようだな。ヴィラン連合、荼毘……!」

 

 ()()()()()()()()()()()、蒼と()()()炎の壁が展開される。ミルクレープの様に層を重ねた壁は周囲の瓦礫を燃やし尽くしていく。

 

「うん、綺麗。もう少し調整すれば蒼になるのかしら?」

「何だ、()()()()()()()だったのか?」

「ううん、兄姉は敬うものでしょう?電花姉ぇも奪姫姉ぇも、艶羽姉ぇも皆カッコいいもの」

「そりゃお前……の姉見てたら納得もするか。

 エンデヴァー、少し話そうぜ。せっかくの機会だ」

 

 新たに現れたヴィラン二人。満身創痍のヒーローとはいえ立ち向かわないのはヒーローではない。No.1、2ヒーローともなれば尚更だ。

 

「ぐっ」

「いやあなたは休んでてください。俺がやります。雨覆(ザコ羽)くらいしかありませんけど……時間稼ぎくらいは」

「勘弁してくれ。俺はそこの脳無を回収しに来ただけだ。勝てる筈ねぇだろ。

 

 ──満身創痍のトップ2相手によ!」

 

 荼毘が駆け出す。目的は言った通り脳無の回収だけだ、故に走る先はエンデヴァー達の居る位置とは微妙に違う。二人の横にいる脳無の下へだ。

 

「──!そのまま行って!」

「後ろは頼んだ」

 

 何かに勘づいた灯火へ飛んできた影はドォォン!という音と共に衝撃を叩きつける。

 炎の多層壁を乗り越え、服の一部が燃えしながら走ってきた者の名前はミルコ。No.4ヒーローでありその個性は「兎」。戦闘力は物理戦闘のみに割り切った武闘派であり、先ほどの衝撃はただ踵を落としただけだった。

 それを片手で受け止めた灯火。しかしその顔には面倒だと分かりやすく書かれていた。

 

「兎さんはお呼びじゃないの」

「はっ!ガキあやすのは好きじゃないのはこっちも同じだよ!

 

 エンデヴァー!ニュース見て跳んできた!こっちは任せろ!」

 

 灯火と対峙するミルコを背に荼毘は二人へ蒼炎を放つ。本来ならミルコとエンデヴァー達に挟まれており不利であるため撤退すら視野に入るのだが、荼毘は灯火の力を信用していた。

 

「そこ退け轟炎司。焼かれたくなけりゃぁな!」

「ぐっ!……蒼の、炎?」

「エンデヴァーさん捕まって!何も無く動くよりマシです」

 

 エンデヴァーがホークスに捕まり距離をとろうと離れる。荼毘に二人共止めを刺されることと脳無を奪われることをホークスは天秤にかけ、後者を選択した。

 仕方の無いことではある。今始まりの刻を迎えたエンデヴァーを落とさせるわけにはいかないのだから。

 

「脳無は返してもらうぜ」

「くっ」

「安心しろ、これ以上手は出さねぇよ。俺が手を出したら灯火が面倒なことになりそうなんでな」

「灯、火?」

 

 ギリギリで荼毘の蒼炎から逃れる二人。攻撃は終わり、荼毘とエンデヴァー達というヴィランとヒーローの対峙もまた終わる。

 ただ終わらないものもある。例えば──口撃。

 

「轟炎司、お前の子供だろ。ちゃんと姿を見なくていいのか?」

「なにを……いって…………」

 

 エンデヴァー、轟炎司には四人の子供がいる。長男である燈矢はかつて事故で失っているが、他三人は家で過ごしている。

 子供と言われても意味が分からないのも当然。ただのでまかせ口撃であると判断するのも止む無しだった。

 

 そんな話の中心である灯火はというと、ミルコと拳をぶつけ合っていた。

 

「やるな」

「そちらこそ」

 

 ミルコの猛攻を圧倒的なまでの反射神経と身体能力だけで対応する灯火。ほぼ互角であり個性を使っていないというのにこれだけの戦力がある、というのはミルコからしても信じられないことだった。

 ただ、知らないことではなかった。故に口撃を一言だけ仕掛ける。

 

 

「聞いてるぜぇ?四人目の悪夢の堕とし子!何人動けるかまでは知られてねぇが、()()()()()()()()()って話らしいな!」

 

 

 ほんの一瞬だけ灯火はピタリと止まり、隙を突きミルコは蹴り飛ばそうとし──逆に蹴りをカウンターされる。

 隙を突く技能、油断せず油断させる技術。姉達三人と遊ぶ灯火はそういった技能を持ち合わせている。何せ遊ぶ姉三人は母に最も近い(電花)姉、最悪の弱体化能力を持つ(奪姫)姉、誰よりも速い(艶羽)姉なのだから。

 

「……どこでその話を?」

「ぐっ……さてな!情報が速いやつがヒーローには多いんだよ!」

 

 たった一撃、されどあのミルコに一撃だ。灯火が個性を使っていないことを考えれば、成長すればミルコは敵ではないとミルコ自身分かってしまう。

 

 そしてミルコの焦燥を気づきもしていない灯火は「速い」というワードに見当がついていた。今や兄弟姉妹全員好き勝手に動いている。自分の欲求を満たすためだけにだ。

 確実にそんなこと(情報を漏らす)をする姉がいた。

 

「おおかた楽しいこと好きな艶羽姉ぇだろうけど」

「ぬ」

 

 何もない宙へ右手を握りしめ、一気に手を開くことで空気砲を放つ。ちょうどデクが先日ジェントルに放ったものと同じ、五本指による同時に5つはなつ空気砲でだ。それをサポートアイテム無しで放っていた。

 

 ミルコは回避しつつ近寄ろうとするも、野生の直感がエンデヴァー達の方へ走れと頭に響かせていた。

 

 

「まったく……全力使うの疲れるから()なんだけど、仕方ない。

 

 何せここは私の晴れ舞台でもあるから!」

 

 

 何かが来る、危険な技だ、避けなければならない。

 エンデヴァー達を両脇に抱え、さらに遠くへ脱兎の如く逃げ出す。少し離れて警戒していたヒーロー達にも離れるように声を荒げる。

 

「急いでここから離れろ!」

 

 ミルコの直感は正しかった。

 放たれるのはかつて母親を止めようとしたエンデヴァーが使った究極の一撃。それを模して放つ、灯火が今放てる最大の大技。

 

 

「赫灼熱拳──ヘルファイヤーウォール!」

 

 

 赫灼熱拳。エンデヴァーが使う炎の極致にして奥義。真正面から受けて立ち上がれる者はいないとすらされる技。母親でさえも真正面からぶつかることはしなかった灼熱の業火。

 

 

 

 灯火は使える──血を継いでいるから。個性を継いでいるから。

 

 

 

「「「な!?」」」

 

 

 エンデヴァー、ホークス、ミルコ、他のヒーロー達全員が驚愕する。しかし足は止まらない。止まれば迫ってくる業火の壁に焼き尽くされるだけなのだから。

 しかし壁には一点だけ穴があった。分かりやすく、人一人分だけ避けるような穴が。

 

「よし、回収完了だ」

 

 その穴から抜けてくるように荼毘が脳無を抱えて灯火の方へ歩み寄っていく。やるべきことは終えた。なら後は帰るだけだ。

 

「氏子さん頼む」

 

 荼毘が耳につけていたデバイスからドクターへ通信、ドクターは脳無に指示し泥ワープの個性を発動する。ただし対象は荼毘だけだった。

 

「お前は残るのか」

「帰るわ。熱は逃がしきってるけど『外』で全力使うのは初めてだから」

 

 ズズズ……という音と共に空間を侵食する黒い靄が灯火の周囲に集まっていく。成生が死穢八斎會との戦闘後に使ったそれと似て非なるものだ。

 どこが違うのか。それは単純明快に──使い手だ。

 

「だってもう夕方。子供は帰る時間でしょう?」

 

 泥に消えていく荼毘の瞳に映っていたのは、灯火の掌から出ていた黒い靄。

 

 最上位脳無の特徴は強靭な肉体、超再生する身体、そして複数の個性の搭載だ。

 

 奪姫や艶羽の考え方は一つの個性をまず特化させてからサブの個性を得るというものだった。だが灯火は違う。

 

 姉三人にはどうやっても追いつけない。だから複数の個性を特化させないまでも使いこなせるようになるという考え方だった。

 

「さよなら。いつかまたどこかで」

 

 ミルコにひらひらと手を振り靄の中へ消えていく。灯火から離れていたミルコは舌打ちをしつつ、()()()()()()()()()()目を向ける。

 

「チッ……すまねぇ、あれは消し切れないわ」

「いいえ、助かりました」

 

 ヘルファイヤーウォールから距離をとり威力を減衰。蹴りによる衝撃を幾重にも放ち壁にする。ミルコが取れた防御はそれしかなかった。

 

 トップヒーローがそうせざるを得なかった、というのが問題だった。しかもどんなヴィラン相手だろうと肉弾戦闘という一点であれば最高峰にいるミルコだ。そのミルコが肉弾戦で互角、個性を使われれば「市民を守る」という戦いにおいてほぼ負けだ。傷を負った人がいないことが唯一の救いだった。

 

 さらに灯火によって齎された情報はそれだけではない。

 

「……間違いなくエンデヴァーさんの技」

 

 灯火が放った一撃は赫灼熱拳。使えるのはエンデヴァーに連なる者くらいなのだ。

 エンデヴァーもホークスも心当たりは全く無い。故に脳無との戦いに勝利したことよりも、灯火という疑問の方が大きかった。

 

「認めたくないがな。あの圧縮の仕方といい、俺の技を真似たものだ、随分と様になっていたが。いったい何者……ぐ」

「エンデヴァーさん!?」

 

 失血、個性使用の限界、エンデヴァーは気を失う。ホークスが叫ぶも、意識は遠のいていく。

 死ぬわけではないと分かっていてもホークスは心配だった。

 

「あとで知らせてやっから今は寝てろ」

 

 もっとも、ここには頼れるヒーローがいるのだ。二人共ミルコに抱えられ近隣の病院へ連れ去られるのだった。

 

 

 

 

 

 




灯火は一番妹らしい妹の性格をしてます。見た目は一番姉。というかこの姉妹は見た目だけ長女から四女までは逆転してる。性格は上の方が大人。
長女が見た目一番子供で四女が一番大人っぽい。五女の闇子はまだ未定、もっと大人っぽくなるかもしれないし例外扱いにするかもしれない。





↓灯火のイメージです。AIで作ってます


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