普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

67 / 90
転職して現状様子見です

多分どんどん忙しくなっていく感じ。更新する気はあるけど時間的に難しくなってくと思う

時間作りもクリエイターの必須技能なのは分かってるんだけどね……難しい


再臨祭

 数時間後、泥花市に到達したヴィラン連合。そこで灯火は唐突に動きを止めた。

 

「ん、お前は行かないのか?」

「行かない。行ったら余波が酷いことになるから」

 

 真剣な眼差しを町に向け、灯火は全員に聞こえるように口に出す。

 短過ぎる付き合いだが、だからこそヴィラン連合の全員は警戒心を強める。

 

「どういうことだ」

「向こうに奪姫姉ぇがいる」

 

 奪姫。その名前は研究所で聞いた名前であり、当時のヴィラン連合であれば壊滅する力を有する者のことだ。現在なら戦力差は分からないが、戦いは避けたいと即座に判断出来る程度には強いことに変わりはない。

 

「裏切りか?」

 

 ただでさえ解放軍という罠に突っ込もうとしているのだ。慎重にならざるを得なかった。

 

 事情を知る灯火以外は、だが。

 

「違う、今の私たちは皆好き勝手動く。代わりに一つだけ約束してることがあるの。

 

 たった一つだけ──兄弟姉妹での喧嘩は基本的に禁止」

「殺し合わなきゃいいんじゃねぇか!?」「殺そうぜ!?」

 

 灯火が続けて話そうとフフンと鼻息を鳴らし……荼毘が約束の意味を理解し先んじて声に出していた。

 

「ああ、なるほどな。向こうにいるならこっちも動くなってことか。相互不干渉ってことか」

 

 言いたいことをだいたい言われた灯火の顔は露骨にブスッと不機嫌な表情へ変わる。

 声のイントネーションも不機嫌を隠さないまま、灯火は話を続ける。

 

「……そう。だから堕とし子がいる組織同士の抗争に堕とし子が参戦することは基本的にない。例外があるとすればおかーさんに何か言われた時と、双方が確認とれてない時くらい。

 今はおかーさんは何も言わないから好き勝手動いてる」

「ってことは堕とし子がいない組織といる組織の抗争なら参戦するって訳かい。怖いねぇ」

 

 Mr.コンプレスの言葉に灯火は頷く。

 

 これは最低限のルールだった。堕とし子は子供であり複雑なルールを作っても分からない。だから約束を作った電花には彼らの感情と母親を信じるしか選択肢は無かった。

 すなわち兄弟姉妹が母を慕う感情。それだけは絶対だと信じ、ルールを破ると母に怒られると兄弟姉妹に伝えた。

 母を慕うなら破らない。母を慕ってないなら慕う兄弟姉妹が敵対する。

 今も当然、約束は遵守されていた。

 

「九州の時とかがまさにそれ、勇也兄ぃとかヒーロー側のどっかにいるかもだけど私知らないし。今回は私も奪姫姉も視えてるし喧嘩になっちゃうから参加しない。だから純粋な組織同士の戦いになるだけ」

「構いやしない。どうせやることは変わらん」

 

 堕とし子が参加しなくなるだけ。ヴィラン連合からすれば好都合だった。

 灯火はマキアにも届きうる鉾。だが今はヴィラン連合が自分たちのみの力を鍛えているのだ。助力はあくまで助けを求めているときに欲しいもの。

 

 今は、要らなかった。

 

「じゃあ頑張ってね」

 

 ひらひらと手を振る灯火を高台に残し、ヴィラン連合は泥花市の町へ歩を進める。

 ここに居る灯火を含めた、堕とし子()()のことは知らずに。

 

「……崩華がいるけど、まぁ大丈夫かな。多分おかーさんの指示で残ってたやつだろうし、勇也兄に懐いてたしっかり者だし。向こうに大もいるみたいだから二対二でちょうどだね。

 

 崩華も真正面から参戦はしないから大丈夫かな」

 

 灯火は無邪気に笑う。兄弟姉妹で仲良しだから考えも同じなんだなぁと嬉しく思ったがために。

 

 ■■■

 

 泥花市の町に踏み込むとヴィラン連合は解放軍の圧倒的な物量によって分断された。弔の崩壊でかなりの個人と、荼毘の蒼炎で範囲殲滅を仕掛けたが失敗したのだった。

 

 そして今、トガヒミコは解放軍幹部キュリオスと対峙していた。分断するべく仕掛けられた地雷を避け、そこまでが織り込み済みだったが故に分断されたのだ。

 

「連続失血死事件、その犯人、トガヒミコですね」

「誰です?」

 

 キュリオスの眼差しは真剣なもの。侮るつもりどころか格上の者へ送る視線だった。

 それも当然。なにせトガヒミコはヴィラン連合の中でも唯一、彼女から()()()友と呼ばれているからだ。

 

 

「彼女──Ms.ダークライに友と呼ばれる存在。ただの一般女子高生が狂気に至り、出会った狂気を共有する……素晴らしい。

 

 そんな話を取材したい……受けてくださる?」

 

 

 ただトガが示した表情は、明確な敵意を持ったモノだった。

 

 

「成生ちゃんは成生ちゃんです。あの名前は他所の名前、一緒にしないでください」

 

 

 何も知らない者が口を挟むな。親友と呼べる仲の友達であり、絶対不可侵の領域。侵そうとするのならば、純粋な敵意を持って相対するのみ。

 ヒーローやヴィランだからではない、ただ譲れないものだから。

 

 弔と一緒に全部壊すという元々あった戦う動機が変わる。皆と共にではなく友の為に。

 

 ゆらりとトガの姿は消える。個性ではない、ただの技術だ。

 

「これが消える技能ですか!」

 

 囲んでいるのに見えない。元々あった技術に加え、成生と遊んでいたことによる影響。感知系の個性をいくつか使えなければ見つけられない程に成長していた。

 

「話に聞いてたより消えるのが速い!ですが!」

 

 囲んでいた者達が道を覆い尽くすように、足場を無くすように走り──地面が爆破する。

 

「っ!地雷!」

「正解です!」

 

 声の先に見つけたと、解放軍の目が集中する。

 

 しかし、一瞬遅い。既にトガはシリンダを展開済み。解放軍の人間に刺し、吸うところまで動いていた。

 

 トガは成生の影響を最大クラスに受けている一人だ。身体能力も劇的なまでに成長していた。

 

「ちう」

 

 ただ、無策で突っ込む癖は(成生)と同じだった。

 

 シリンダを通して血を飲もうとした瞬間、血そのものが爆破。装備が吹き飛び顔や身体に刺さる。

 

「っ!?」

「血を吸うアイテム!ですが無駄です!

 

 私の指揮する者達の血は私の個性『地雷』が仕込まれてます!

 

 ただ──油断はしません!」

 

 キュリオスが走る。手首につけていたリングのスイッチを押して。

 

「展開──チェインリング。あなたがMs.ダークライから影響を貰ったように、私も影響を受けているのです!

 

 こんな風に!

 

 チェインリングは地雷の個性を簡易的に扱い、爆破するグローブとなる。本来ならいたぶる程度の威力であり人を吹き飛ばすようなものではない。

 が、爆破されたトガは地面に水平に飛び、壁に打ち付けられていた。小規模な地雷どころかロケットランチャーでも喰らったような威力だった。

 

 がららと崩れる壁と共に地面に倒れ伏す。増強系の個性でもなければ指先一本動かせないダメージ。

 しかしトガはグググと、立ち上がる。それが限界だと分かっていても、譲れないものだから。

 

 

 譲れないものだから──トガは笑う。

 

 

 

「ごほっ……成生ちゃんみたいに……私も好きに生きるのです」

 

 

 

 二人で一緒にいて成生が微笑む時、トガは笑う。それが当たり前だから、友達と呼び合える仲だから。トガと成生にとっては「かぁいい!」と言い合えるそれが普通だから。

 同じように笑い、最後の力を振り絞る。吹き飛ばされる直前に握った血の入った瓶。割れなかったそれを口に放り込み噛み砕く。

 

 血を飲む。さっきまで吸おうとしていた、襲ってくる人の血ではない。ストックしておいた血だ。誰の血なのかは……誰の目にも分かりやすく目立つ姿で分からせる。

 

 血の海から立ち上がり変わった姿は──親友の姿。最強のヴィランと称されながら……誰かに頼りたいだけの女の子。

 

「Ms.ダークライ……!?はっ!ストックしていた血!

 

 ですが姿と身体能力の一部だけ化けたところで悪夢に変わったわけではない!ならば」

「舐めないでください」

 

 消える技能に加え、超が付く程の一瞬の加速。動けないはずの身体から目にも止まらぬ速度、誤認し見失うのも仕方のないことだった。

 

 トガの膝がキュリオスの腹にめり込む。

 

 

「がっ……!?……嘘」

 

 

 『超瞬発力』で一気に加速し膝蹴りで腹に衝撃を放つ。吹き飛ばないように威力を分散させ、一人の身体に衝撃を走らせて全身を破砕する。

 

 成生が使った身体操作である『人形操作』+『超瞬発力』。それをただ吹き飛ばすという優しい使い方などトガはしない。身体能力を自分の意思で100%扱い切れるならば、威力をどこに集中させるかさえ自由自在なのだ。

 今のトガに容赦はない……慈悲さえも。理由は簡単なことだった。

 

「私は、成生ちゃんの友達です」

「が……」

 

 倒れ込むキュリオスの首を掴み、そのまま持ち上げる。階段をあがるように一歩分だけ『宙に地面を作り』、立ち、キュリオスの足を地面から離す。

 

 土足で踏み込んできた人には、私と成生ちゃんの関係をちゃんと伝えないと。トガの感情はそれだけに集約されていた。

 

 

「すごいところも弱いところも知ってるのです。

 

 成生ちゃんああ見えて努力の鬼です。私だから知ってますが個性をずっと使いっぱなしにしてる。個性伸ばしをずっと続けてるようなものなのです。それなのに限界なんてまるで見えない。

 

 でも寂しがりです。私と一緒です。だから暇さえあれば一緒に遊びます」

 

 

 私は成生ちゃんじゃない。だから成生ちゃんみたいに鍛えた個性の使い方は出来ない。レーザーは使えないし頭の回転も速くない。思いっきり目立つことも出来ない。

 でも知ってる、これ全部成生ちゃんがそう使いたいからそうしてるだけだってこと。ホントは成生ちゃんの個性は望めば力を与えてくれるような個性。だから使い方は使う人によって変わる。

 

 

 だって、そうじゃなきゃあんなこと聞いてこないのです。

 

 

「私が血を飲んだだけでいろいろ干渉してくる……成生ちゃんの個性はとんでもです。成生ちゃんと相性が良ければ望めば望む程力が溢れていく。

 

 ──『なりたい私』は何?なんて聞かれたら答えるに決まってるじゃないですか」

 

 

 トガはキュリオスの首を左手に持ったまま、右手を手刀にする。そしてキュリオスを解放しようと襲ってくる人を右手で()()

 一時的に手を硬質化させるだけの個性……成生ちゃんの想い人(ヒーロー)の個性。ナイフを今持ってないから仕方ないのです。

 

 襲ってくる人の背後に一瞬で移動する。

 前に見せてもらった成生ちゃんの『瞬発力』の個性。成生ちゃんと追いかけっこしたり着いていく時には必須なのです。

 

 負った傷を『再生』させる。さらにキュリオスもろともと範囲攻撃で負っていく傷も再生させていく。

 瞬時にとはいかないまでも死ぬことは無くなる『再生』の個性。応急処置代わりですがこれも仕方ないのです。

 

 

 望む私になれるように力をくれるなら貰います。

 

 

「好きに生きる私です。成生ちゃんの友達の私です。もうなってるから手を取り合っていこ?って」

 

 

 きっと成生ちゃんが私程度にしかこの個性を使えなければ、みんな幸せだったと思える個性。

 使って初めて分かるのです。成生ちゃんの個性は本当なら成生ちゃん以外を許容しない。だからこれはきっと裏道で……私と成生ちゃんの、友達っていう絆の象徴。

 

 

「Ms.……ダークライ……の……ちから……」

「違います。

 

 私が成生ちゃんから貰っただけの、『私だけの力』です

 

 

 成生ちゃんは誰にだって微笑む。だけど一緒に手を繋いで笑ってくれる人なんて……きっと一人(成生ちゃんのヒーロー)を除いていない。

 

 だから、私はずっと横にいてあげるのです。一緒に笑って生きたいから。私からは手を離さないから。むしろ振り回してあげるくらい一緒に居たいから。

 

「見え……ない……ぐふっ……」

 

 成生ちゃんが使った、『光学迷彩』の個性。実際には指先発光の応用って話ですが、応用なんて私にはできないのでこうです。

 

「私、あなたのこと嫌いです。さよなら」

 

 『硬化』した指で、キュリオスの首を切った。

 

■■■

 

 周囲の解放戦士を殲滅したトガだったが、最後の一人を切ると同時に倒れ込んだ。息が上がっており、身体もギシリと音が鳴っていた。

 

「使えば使う程に熟れる成生ちゃんの個性……だけど、使いすぎました……やっぱり負担大きいです。傷は治りましたが身体まともに動かないです。ホント奥の手です。

 

 一番近くにいるのは……仁くん」

 

 感知系の個性を最後に発動し『変身』は解ける。

 個性を使う分には問題なかったが、限界を超えた挙動だったのだ。いくら個性の抜け道を使ったとはいえ成生の個性は余りにも強力であり独善的なもの。肉体強度まで完全には保証してくれなかった。

 

 満身創痍。そんな言葉の状態が最も適しているとすら言える今のトガの目の前に立ったのは……黒いタイツで覆われた男ではなく、彼岸花の簪で髪を結った白髪の一人の少女だった。

 

「大丈夫か」

 

 男口調で話す少女の言葉は優しいもの。友達によく似ているとトガはクスリと笑う。

 味方であることはそれだけで分かったからだ。

 

「……仁くんじゃない……でもその雰囲気。成生ちゃんの、知り合いです?」

「一応娘だな」

 

 灯火の妹だろうと予想を付け、甘々の灯火と比べると姉妹らしくないなぁと心ぐちる。

 

「トガさんだけは殺さないように守っといてって母さんと電花の姉貴に頼まれてるんだ。

 

 仁さんがくるまでに何人か来そうなんでな。それまでは守る」

「あなたは……誰の?」

 

 ギガントマキアとの戦いや九州でのエンデヴァーとの戦闘を知っているトガは荼毘が灯火に甘いと見ていた。おそらく身内なんじゃないかと勘が叫んでいた。

 

 その勘は正しいと彼女──崩華は告げた。

 

「あんたらのリーダーだよ」

「ふふ、ふ……どっちにも……全ぜ…ん…似てないの……です」

 

 トガはそれだけ呟き意識を落とす。

 あの二人の血を継いでいるなら間違いのない安全が保証される。トガは考えすらしていなかったが深層意識ではそう感じ取っていた。

 

 気絶したトガの様子を見、崩華は微笑む。母親が微笑むのと似た顔立ちをして。

 

「よく言われるよ。母さんにもな」

 

 破壊の権化と悪夢の血を継ぐ者。しかしてその表情は柔らかい。その二人の血そのものが夢なのではないかと誤認しかねない程に。

 

 ただ現実は待ってくれない。解放軍の数は十万を超える。トガが百人規模を何とかしようとも、数千人がトガ一人に向けられている。トガを守るならば、彼らが襲ってくるのは必然のことだった。

 

 もっとも、二人の血を継いでいるのは現実。崩華の口からは軽い口調で声に出ていた。

 

「邪魔な奴らは殺しておくよ」

 

 地面に手を当て、個性を発動させる。一見何も起きていないが、何が起きるのかは解放軍にはすぐに分かった。

 

「か……」「あ……?」「え」

 

 襲ってきた数十人の動きが止まる。一歩でも動けば何が起きるか身体が理解したからだ。動けば、身体が崩れるのだと。

 

 何もかもを崩壊などしない、無為の破壊行為を崩華はしない。母親や姉妹が甘いが故に、彼らに敵意や殺意を向けることなどないよう崩華は育っている。

 

 ただ崩華は、襲ってくる者への破壊行為の躊躇は皆無だった。

 

「散れ」

 

 襲ってきた解放軍の身体の中から勢い良く華が咲き、身体が崩れていく。身体の分子構造が一部崩壊され柔らかくなった身体を突き破り、咲いた華は赤く染まる。

 

「『咲華(サクハナ)』。射程距離はあるけど触れた場所ならどこからでも分子を崩壊させて花を咲かせることができる個性。……伝播させることも可能、こんな使い方教える姉貴共は一度母さんに張り倒されるべきだと思う」

 

 五女、崩華。個性『咲華(サクハナ)』。崩壊の力を完全制御・補助的に活用した個性であり、崩壊する元となったもののエネルギーを華に変える個性である。華は咲いた後崩壊させるも自在、壊せば後に残るのは塵だけ、残せば華だけが残る。

 

 崩華は物は壊さない、人は壊す。塵だけ残して消していく。ただ、美しく消していく。

 

「……まぁ甘い母さんはあの三人を張り倒すことは絶対しないだろうけど。勇也の兄貴にしばかれるべきだな」

 

 自由人過ぎる三人の姉(電花と奪姫と艶羽)。彼らに振り回される妹はため息を吐きながら屠り続ける。何もかもを壊したくなどならない、華になって最期を見せてくれた方が面白いのだと力を奮いながら。

 

 血は継いでも継がれない意志(何もかもを壊す意志)もある。それを証明するかのように。

 

 

 






三ヵ月とか半年とか一年とかスパンになってもおかしくないので気長に待っててください

リアルに何かある場合を除いてエタる気は無いので
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。