普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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四章本編リアル時間軸に突入です

原作が完結したので急ぐ


禁忌の奥から起きる者

 時は流れ、超常解放戦線が誕生してから三ヵ月が過ぎていた。

 死柄木の強化が進み、ナイトメアの行動も活発。ヴィランの全盛期が近づいてきていると市民には不安が表に出てき始めた頃だ。

 

 No.1だけではない、名だたるヒーローの数多くがその作戦に参加していた。

 

 今は最後の最終確認。作戦の指揮をとるエンデヴァーと警察の塚内警部が話していた。

 

「脳無作成の中核を成す殻木球大。やつの動向は読めている……が、ヴィラン連合と結託した今、トゥワイスの個性で増やした可能性が高い」

「艷羽と呼ばれる少女からか。信憑性は?」

「この場にいる何人か遭遇してます」

「あいつもか」

「あいつが誰か示してるのは知りませんが、公安からも信頼出来ることと……これを」

 

 塚内警部が示したのは一枚の写真。そこに居たのは殻木と……脳無。それもヒーロー達は今まで見たことのないタイプだった。

 

「ちっちゃい脳無!」

 

 2~30cm程の大きさ、バスケットボール並の大きさの脳無だった。初めて見るタイプを連れて何の問題も起こしてない以上、関係性を疑うのは当然。

 そして警察は突き止めたのだ、殻木こそが脳無の作製者だと。

 

「あそこにいる殻木を捕まえることは難しくない。しかし先走れば”戦線”に気づかれる。我々の命題は殻木、死柄木、脳無……超常解放戦線の一斉掃討だ。

 殻木が居る場所は病院であり病人がいること、あそこにいる殻木が分身だった場合を考えると」

「脳無が大量に現れる可能性か」

 

 エンデヴァーは一度脳無と戦っている。一体の黒が白い脳無を大量に生み出していたことを忘れていない。広い場所では乱闘になるため、強襲という構図の優位性が削がれてしまう。

 

 強襲という戦術をとる以上、優位性を最大限生かす戦い方を行いたい。故に選択は一つ。

 

 

「そうなった場合、閉所戦闘で速く殲滅しなければならない」

 

 

 外に出さず、乱闘にさせないこと。脳無の製作者が相手となれば脳無を大量に出してくる可能性が高い。

 

 一体一体が性能を発揮しきれば脅威だが、連携が大事な戦闘になれば話は大きく変わる。脅威度を落とす、ヒーロー側の戦略だった。

 

「そして今回の掃討戦、戦場と大事な要素はもう一つある」

「トゥワイスか」

 

 数は脅威だ。脳無もだが、数そのものという意味でいえばこちらの方が上。何せトゥワイスの最大の数は『無限』なのだから。

 

「やつの危険性はホークスがこれでもかと教えてくれました。ヴィラン連合の中でも危険性がトップが死柄木、次いでトゥワイスだと」

「広域制圧能力……殲滅すら可能な個性だ、さもありなん。対処は?」

「トゥワイスは今回のもう一方となる戦線の軍隊長が集まる定例会会場に現れる。そこを狙います」

 

 トゥワイスと殻木の最大の違いは表に出ているかいないか。表に出ているならば対処できるタイミング自体は多いと言える。

 

 であれば、後は手段だけだ。増やす前に倒す、それこそが最善の選択であり……そのための手段として現実的なのは、不意打ち。

 

 

「最善はスパイとして入り込んでるホークス」

「……最も危険なところに行くか、あいつめ」

 

 

 ホークスは超常解放戦線に潜り込んでいる。幹部クラスまで入り込むことは出来なかったが、それでも今回の定例会議に呼ばれる程度の信頼は得ていた。

 

「対Ms.ダークライとなり得る烈怒頼雄斗(レッドライオット)はどっちに?」

「定例会の方です。現状は読めないが、あるとすればヴィラン連合のトガがいる方が可能性はあるとのことで」

 

 こればかりは艶羽の情報を信頼するしか選択肢がない。Ms.ダークライは核が如き地雷だ、どこにあるか分からず、踏めば災厄を引き起こす。

 この場にいるヒーロー全員が束になってかかったとしても勝ち目が0。現れれば即時撤退が約束される程の存在だ。

 

 だからこそ、今回出てこないと言う保証が欲しかった。

 

「今回やつが出てこないと言い切れるのは?」

「超常解放戦線とナイトメアは同格です。言い換えれば合流することは無い。

 

 片方の機密を知れる会議なら手を引く。そこを狙います」

 

 良くも悪くもMs.ダークライと死柄木は約束を守る人間だ。だからこそその隙間を狙う。ヒーローの選択がそれしかなくなる前に死柄木を崩す。

 

 未来を決める戦いとさえ言える。ヒーロー達の決意は固かった。

 

「艷羽と呼ばれる少女はどこに?」

「ナイトメアの監視とのことで。キセルマイトも関係者らしく、連れて行かれました」

 

 今やキセルマイトもルミリオンと同格の、ヒーロー側の最上位戦力の一人。使えなくなったのはきついものがあるが、対Ms.ダークライと言われれば仕方ないと引かざるを得ない。

 

 

「戦力として見ていたのだが仕方ない。……これで確認は済んだ。

 

 行くぞ……超常解放戦線、ナイトメア、二大ヴィラン組織の片方を潰す」

 

 

 明確にヴィランを潰すという目的を持ったヒーロー達が、動き出す。

 

 

 ■■■

 

 エンデヴァーとイレイザーヘッドそして塚内警部の三人が殻木が潜む病院の通路を歩く。見つかるようルート選定まで既に終わっている。

 

 

 そして殻木が病院の通路を歩いているところを三人は見つけた。

 即座にイレイザーヘッドが『抹消』させ、殻木はみるみるうちに老いていく。

 

 

「やはり無個性ではなかったか」

「それがAFOが長生きできる理由か」

 

 

 個性『摂生』。運動能力と引き換えに二倍の寿命を持てる個性であり、その個性が無効化されたために年齢相応の姿に老け込んだのだった。

 

 

「個性の複製、人造個性とでも言うべきものか。『超再生』を脳無に搭載していただろう?二体だけでも共通して持っていれば予測はできる。

 AFOに提供していた技術だな」

 

 

 予測はしていたのは事実。確信になったのは艶羽が原因だ。

 

 艶羽がもたらした情報は多岐に渡る。ドクターの居場所は知らなかったが、ドクターが行ったことは知っている。

 結果が分かればあとは逆算して予測する。ヒーロー側の得意分野だった。

 

 最大の被害を受けた親友を持つ者は、目の前でドクターを睨み付けていた。

 

 

 

「今度はこっちが奪う番」

「観念しとくれ……!」

 

 

 

 イレイザーヘッドの捕縛布が殻木の首を絞めつける。

 

「観念──」

 

 殻木が白目を剥き気絶した瞬間、真下から脳無が殻木を襲った。

 腕にドリルを付けており、殻木の下半身が吹き飛ぶ。

 

 同時、どろりと殻木の身体は溶けていった。人ではなく個性で作られたものの証明だった。

 

「狙い通りだ!全員奥へ!エンデヴァーを奥へ進めろ!殻木を捕まえろ!」

 

 ただ、狙い通りでは無かったものもあった。

 

 殻木を貫いた脳無を皮切りに、病院のあらゆる場所から脳無が湧き出す。既に入院していた人は避難済みだったため問題無く……病院が戦場と化す。

 

 その戦場には、いないと想定されていたものも居た。

 

「お前強いな。死んでくれ」

「……黒だと!?」

 

 ハイエンドと呼ばれる喋る脳無。ドクターが操っているとされる黒色をした人形が数体現れていた。

 

 意外な戦力故にエンデヴァーは鼓舞に叫んだ。

 

「ミルコが遠隔攻撃できるやつを2人連れて先に進んでいる!

 俺とイレイザーヘッド、他全員でコイツラを仕留める!

 イレイザーヘッドが居れば再生しない!個性も使えない!一気に攻めろ!」

 

 

 

 その頃病院の奥、研究所ではドクター本人が動いていた。

 

 

 

「忌々しいヒーローめ……この病院は捨てたくない。どうにかして撃退を」

 

 カタカタとパソコンいじり死柄木の調整を行う。

 4ヶ月は死柄木の強化改造に必要な期間……だが必須ではない。強化改造は必須部分と重要部分、軽微部分、特殊事例と優先度が分かれる。

 

 既に必須部分と特殊事例は完了。重要部分はまだ未完成であり軽微部分などはまだまだだった。

 

「死柄木は70%じゃが……ハイエンドは皆起動・覚醒済みじゃ。全員送ったのは致し方ない、勝ち目は無いじゃろう……すまぬ。じゃが仕方あるまい」

 

 殻木視点で勝ち目は最早無い。時間が稼げればそれでいい。

 死柄木が目覚める。それだけが殻木の勝利条件なのだ。

 

 そしてそれは、文字通り時間の問題だった。

 

「死柄木は緊急起動シーケンスに入った。70%もないが……()()()()()()()。あとは逃げなければ巻き込まれるだけよの、起動した後が見れぬのは致し方なしか……」

 

 既に緊急スイッチが押されている状態なのだ。殻木に出来るのは見守ることくらいだった。

 

 であれば、殻木がとる選択肢は一つ。

 

「ジョンちゃん!ワシを逃がすんじゃ!」

 

 逃走。幸いにもここには最悪を想定し常に身の近くにいるよう指示している、『泥ワープ』の個性を持ち脳無がいる。数秒あれば逃げ切れる個性だった。

 

 

 

 しかし、ヒーローはその数秒を許さない。大きな衝撃音と共に鉄以上の硬さを持つ扉が吹き飛ばされ────ジョンと呼ばれた脳無も物量に潰される。

 

 

「てめぇは本物かぁ!?」

「!!!?!!?!?!?」

 

 No.5ヒーロー、ミルコ。『兎』の個性を生かし、高速機動で途中にいた脳無を全て突破してきていた。

 

 例え目覚めていようと脳無は脳無。ハイエンドもいたが、灯火や艶羽との遭遇で間接的に依光成生による『なりたい自分になる』強化……『よりヒーローらしい、強い自分になる』強化を受けているミルコである、敵ではなかった。

 

 

 

 脳無を軽く屠るヒーローの予想以上の強さ・速さ。殻木は衝撃の余り思考が完全にトンでいた。

 

 

 

「最悪も最悪。ならば……この手も使おうぞ!」

 

 血塗られたとすら呼べる程に真っ赤に塗られたスイッチを殻木は押す。

 デジタルでは動かない可能性があるからと、必ず反応するようにケーブルでアナログ的に直接繋がれたスイッチは起動指令を安置されていたカプセルへ送る。

 

 

 

 それは禁忌の中でも最奥に位置する禁忌。それがぱちりと目を覚ます。

 

 制御できない化け物。爆弾とすら称し、死柄木すら伝えたら使うことは絶対にしないと言い切った最期の手段。

 

 それは電花を作った時から在ったもの。電花が作れるならと試し、出来てしまった複製体(クローン)人間。

 

 奪姫が同胞と称しながら、助けるべきで無いと動かなかった者。

 

 トゥワイスや仁の増やした人とは違う人造物。そして()()が知れば忌むべきであると真っ先に破壊する代物。

 

 

 

 目覚めたのは十数体はあるクローンの内の一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 依光成生のクローンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 もちろん制御など出来る訳も無く、さらにはタイミングも最悪だった。

 

 何故なら今は、Ms.ダークライと依光成生の主導権争いをしている最中。クローンともなれば影響を受けない訳が無い。

 

 

「────!!!」

 

 

 慟哭にも似た、声にならない叫びが研究所に木霊する。しかして物理的な衝撃を持った声は、全方位を破砕していく。

 

 全方位に放たれる以上、殻木すら危険域に入っていたままだった。

 

 

 「モカちゃん!!」

 

 

 殻木が作った最も大切とする脳無は二体。ジョンとモカという小さな脳無だ。その内残されたもう一体……モカは盾となり、少しでもドクターへの威力を抑えようと動いていた。

 

 しかし稼げた時間はほんの僅か。モカを巻き込み潰す声による衝撃波。無差別に放たれるが方向性を持っている。だからこそ、()()()()()()ヒーローならば対処できる。

 

 

「マイク!」

「ミルコは死柄木の方へ行け!────ラウドヴォイス・オーバーフロア!

 

 

 プレゼントマイクの声が限界を超え、ライブ会場のフロアすら優に超える程の広範囲の衝撃を放つ。全方位に放たれていた依光成生(クローン)の破砕声すら容易に相殺していく。

 

 声による衝撃波はプレゼントマイクの専売特許。いくら依光成生とはいえ、身体も精神もマトモに動かないならプロヒーローの同等の個性には劣る。

 

 

「泣いてる声なんざあやすのは簡単なんだよ!」

「任せた!」

 

 

 ミルコはドクターすら無視し奥へ進む。死柄木を止める、そのためだけに。

 

 ミルコは艶羽から情報を受け取っている。死柄木がMs.ダークライと同等の戦力に成れる程の強化を受けていると。仮にそうなればヒーローに勝ち目は無い。

 

 脳無を生産するドクターは確かに危険だ。だが目の前の脳無は対処でき、ドクターさえ抑えれば増えることは無い。であれば最も最優先すべきは死柄木の討伐だった。

 

 

「無ぅ駄じゃよ!死柄木は起きる!既に起動シーケンスに入っておるわ!」

「てめぇは黙ってろジジィ!」

 

 

 プレゼントマイクの拳が殻木の顔面に突き刺さる。勢いそのままに吹き飛ばされた殻木は消え無い。トゥワイスによる分身でないことの証明だった。

 

 

「真贋確認!もう一発!」

「ごふぅ!?」

 

 

 最大の被害を受けた親友を持つ者のもう一人は、睨み付けるだけでは済まない。このまま殴り殺しても収まらない程の怒りを持っていたが、プレゼントマイクはヒーローだ。

 

 

 

「友達泣かせた分だ」

 

 

 

 殻木の捕縛を優先し、無力化は出来たと判断する。『摂生』の個性の都合上、身体能力は一般人並である殻木はプレゼントマイクに身体を捕まれるだけで無力化されていた。

 

 しかし殻木にはそれでよかった。殻木の本質の一つは研究者、本領は研究物にあるのだから。

 

 

「よそ見を……していいのかの?」

「っ!?」

 

 

 ラウドヴォイス・オーバーフロアは破砕音を相殺しただけ。依光成生(クローン)には何のダメージも負わせていなかった。

 

 

 

 

 

「さっきのっ……!よく見たらお前依光成生っ!?」

「あああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 ケダモノのように声を上げて文字通り力づくで襲ってくる依光成生(クローン)。まるで子供が暴れる時のそれだが、身体能力はハイエンド脳無すら超える。飛び掛かられるだけでマイクは背後の壁まで吹き飛ばされる程だった。

 

 

「かはっ……!」

 

 

 幸いだったのは依光成生やMs.ダークライのように技能を持っていないこと。彼らであればこれだけで四肢を粉砕し行動不能にする破壊能力を発揮するが、依光成生(クローン)にはそれが無い。

 プレゼントマイクが負ったのも軽度の全身打撲程度で済んでいた。

 

 

 

 

 

 しかし、殻木の捕縛は解除されていた。

 

 

 

 

「よくや」

「あああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

  依光成生(クローン)は常に敵味方の識別などできない暴走状態。ドクターが相手であっても行動は同じだった。プレゼントマイクがやられたように、殻木も飛び掛かられる。

 

 狙われる側の違いは殻木とプレゼントマイクでは身体能力・強度に圧倒的に差があること。同じことを殻木がやられれば、即死する威力だ。

 

 

 

 状況の違いは、時間だけ。 依光成生(クローン)が殻木に触れられた一瞬にも満たない、威力が伝わらないギリギリのタイミングだった。

 

 

 

「バニシング・フィストォ!」

 

 

 

  依光成生(クローン)の胸に灼熱の拳が突き刺さり、吹き飛ばす。殴られた灼熱はそのまま炎となり延焼し、 壁に叩きつけられた依光成生(クローン)は燃やされていく。

 

 

 ヒーローは迅速に行動できていた。それが今回の作戦の肝だから。さらに幸運にも 依光成生(クローン)が触れただけの威力によって殻木を無力化するという命題の一つを成し遂げていた。

 

 

 

「いったいこれはどういうことだ!?」

 

 

 No.1ヒーロー、エンデヴァーがそこにいた。

 

 

 

 困惑しつつも、炎の中からゆらりと立ち上がる怪物を睨みつけて。

 

 

 

 

 

 

 




タイトルはまんまクローンのことです。ヴィランなんだから人体実験されても文句無いでしょ?



お盆終わるまでにもう一話いきたい


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