「忘れてないか?先生の個性が使えること」
「忘れてなんかいない!」
『空気で押し出す』個性でデク以外の全員を吹き飛ばそうと弔が動いた瞬間、デクが黒鞭で拘束する。
そこにエンデヴァーの炎熱と爆豪の爆発が叩き込まれ……ながらも弔は構わず黒鞭を振り切る。さらに空気を蹴り、空に飛び上がる。
そのまま着『地』し、地面に手を当てるように姿勢を変える。
「空を地面にできるっていいよな」
「しま」
空気を固めて地面にできるなら、起き抜けに地面に触れて大崩壊を引き起こしたことを再現できる。
当たれば致死だが弔にはヒーローが死なない確信があった。故に全てを壊すだけだ。
「お前は僕を忘れてるな」
透明化されていたキセルマイトが地面と化していた空気を打ち抜く。バキィという音が地面と化した空気から鳴り、自重のままに弔が落下。キセルマイトは落下に連続で拳を叩き込む。
「ぐっ……なるほど猛攻だ」
「半分は躱しておいて何を言う!」
ぶんと手の平を大振りすることでキセルマイトを追い払う弔。ダメージは負っていたが、大した傷ではない様子だ。
落下の数秒の間に叩き込まれた数十発の拳は半数以上が避けられていた。『光速反応』によって人の限界を超えた反射神経を持つ弔だ、簡単なことだった。
「守りに入ったらキツイな。面倒な裏切り者がいる」
「そりゃどうも」
「ただこっちは目的は明白なんでなぁ……そっちから来てもらうことにしよう」
緑谷に弔の視線が向けられる。ターゲットにされた緑谷は黒鞭が常に展開されるようになっていた。
未だ慣れていない形だったが、熟練度が上がればこんな形になるという予想だけはしていた。いつでも対応できるよう常に展開できれば理想的、OFAフルカウルと同じ思想だった。
そして
「それならこっちだって」
(黒鞭の拘束力はOFAで強化されてても、直接手で摑まえるよりかは弱い……今の僕は同じくらいの出力。
確率は半々……!けど離せば『光速反応』で全て避けられる上に『崩壊』もある!これしか選択肢は無い!)
遠隔の黒鞭による捕縛から
そんな思考を嘲笑い、弔は開いていた手のひらをグッと握る。
「緑谷、忘れてるだろ」
それだけで緑谷は
「ぐっ!?」
空気地面化による遠隔の拳。かつて林間合宿で放たれた凶悪な不可視の攻撃。
緑谷が忘れていた訳ではない。ただ単純に、弔の手数が増えすぎているのだ。AFOから継いだ力に、依光成生から受け取った力。さらに一撃即死の『崩壊』。『サーチ』こそ無いものの、依光成生から受け取った力には第六感染みたものまである。
さらに言うなら、依光成生は元々一撃即死の斬撃をメインに据えていた訳ではない。あくまでそれは決め技。最後に使う技であって、最初に放つ技ではない。そこまでの戦闘の組み立てこそが肝であり……決め技さえ近いなら同じ流れが使える。
そして依光成生が決め技として扱っていたのは至近距離からのレーザーソードか、急所を必ず貫くレーザー。後者はともかく、前者であれば────「『崩壊』の手の平」も同じ。
「これでフィニッシュだ────っ!?」
緑谷の顔面を掴み。AFOが発動……しなかった。まるで『抹消』されたかのように、『個性を奪う個性』が消え失せていた。
「個性が……なるほどね。狙ってたんだな」
「お前は……いや、お前たちは殺し過ぎた」
緑谷を掴んでいた腕をピンポイントの
そこからエンデヴァーの獄炎の拳が突き刺さり吹き飛ばされ、キセルマイトの風圧による拳が叩き込まれる。
個性が使えない以上防御も回復も不可になる。そんな状態でねじ込まれた連撃で弔は……拳の跡でボコボコになった地面の真ん中で、鼻血を指で拭きとっていた。
「カッコいいぜ、イレイザーヘッド」
ムクリと立ち上がり、肩をコキリと鳴らす弔。超回復の速度が遅れており、機能が消失してこそいないが使えないレベルまで落ちているのが分かった。
AFOも使えない。AFOで奪ってきた個性も使えない。けれど弔の、勝利への絶対の自信は揺るがない。
『崩壊』も使えない。使えるのは自らに内包されている身体強化的特性を持つ個性、それも自身にのみ影響を与える個性のみ。増幅するような個性は一切使えない。
けれど十分だった。何故ならその条件でも使える個性の一つこそ依光成生の個性『なりたい自分になる』個性なのだから。
「俺が視ている間はその『力』だけです」
「オールマイト並とはいかんが、それでも相当のパワーとスピードだぞ」
「反応速度は依光成生と同等みたいだな。油断すんなよ」
イレイザーヘッドを守るようにエンデヴァーとグラントリノが傍に立つ。一瞬の隙さえ見せられない、そのための分厚い壁だ。
壁をどう破壊するか思考に入る弔だが、雑念が入っていた。
「ぐっ!?……【俺のものになれ、弟よ】……先生か、我が強過ぎるぜまったく」
AFOはオリジナル、しかも融合する形で一つになっているのだ。AFOの意志が明確に弔に影響を及ぼす。
弔にとっては雑念と呼ぶに値するものでしかない。だが、今は邪魔そのものだった。
何故なら、AFOすら『抹消』している状態なのだから。故に、最も信頼する一人に頼る。
「一つ忘れてるぜ、ヒーロー」
さっきよりも速い自分に『なりたい』。そう考えて動くだけで必ず反映される
「さっきよりも速く!?」
「俺が持つ個性は『抹消』できないものもある。知ってるんだろ?この個性と戦ったってトガから聞いたぞ」
この個性と戦った、トガから聞いた。それらだけで緑谷とイレイザーヘッドは即座に誰の個性なのか辿り着く。
そして、『抹消』されてなお馬鹿げた個性があってたまるかと理不尽に思いたくもなる。
「依光成生の個性……!」
「これは俺の意志だ。あいつの横に居れるだけの力だ。あいつは寂しがりだからなぁ。
邪魔をするな、ヒーロー」
弔はエンデヴァーの牽制を避け、緑谷の黒鞭も光速反応で避ける。さらに接近しようとし一歩だけバックステップ。踏み込んでいれば爆破に巻き込まれていたのが目の前に映っていた。
しかし爆破を突っ切り、グラントリノのロケットのように力強い蹴りがねじ込まれる。回復しないのなら蓄積できる、ヒーロー側も分かっていた。
今、猛攻をかけるしかないのだと。続いて動いたのはキセルマイトだった。
「グランドスマッシュ!」
「お前は面倒だな、死んどけ」
渾身の力を込めたキセルマイトの拳を避け、カウンター気味に貫手で殺しにかかる弔。
が、腕を逸らされていた。
「そこには、志村の意志もある。踏み躙るんじゃねぇ」
「っ!誰だよ」
グラントリノが逸らしたと同時、炎の蜘蛛が弔を襲う。
「ヘルスパイダー!」
「ぐ!?っ!力は俺が上、緑谷を拉致ればいいだけだ。どけ!」
「おっとここでストップだ」
「ち」
再びキセルマイトの妨害により止められる。最初の妨害だったが故に高速で動けるキセルマイトが間に合ったのだった。
そして連携の最後に最大火力を持ってくる、ヒーローの連携として鉄則の最後が届く。
「そこだ!バニシング・フィストォ!」
灼熱の拳が弔に突き刺さる。流石の弔と言えど、No.1ヒーローエンデヴァーの火力だ。近接白兵戦における最大火力、大物ヴィランでさえ倒れ伏す破壊力は当然持っている。
「がふっ……!」
弔も例外ではない。膝を突く弔だが、一時的なダメージなのはヒーロー側も分かっていた。
故に油断せずに攻める。黒鞭、爆破、キセルマイトの風圧。密度が狭く避けられない追撃が弔へ向けられ────
『ねぇ弔、なりたい自分は何?』
「幻覚……いや、あいつの個性か。ああ……こういう個性だったんだな。即座には反映しないが……」
『なりたい自分になる』個性。『今の俺よりも先に居る俺』」
────光速反応で避ける。黒鞭を弾き避ける場所を作り、体勢を変え続けることですり抜ける形だ。
追撃をすり抜け、拳を握り溜め込む。そして貫くように一点に向けて空に放つ。
「っぐ!これは俺の!?」
拳による風圧、それも一点に集中させた技。キセルマイトの使うスマッシュピアーズと同じ原理だ。
見様見真似で放つそれは、『なりたい自分になる』個性により技として昇華されたものに変わる。
技だけが変わった訳ではない。さっきまでとは違う動き……すり抜ける時に使った動き、緩急を変え続けることで体感速度が明らかに変わる。
「さっきよりも速い!」
グラントリノに接近し弔が蹴りを叩き込もうとするも、グラントリノの身体を黒鞭が引っ張ることで避けられる。
お返しと爆破が弔を襲うが、何の陽動も無い爆破だ。ハッと笑いながら避けていた。
さっきまでと違う動き。脅威で言えば明確に上昇した姿。
けれどデクと爆豪の表情には余裕があった。弔が今使える個性と、使い方を知っている人を知っているからだ。
「おいデク」
「ああ、分かってる。
『浮遊』の個性で二人が浮く。デクはまだ訓練もあまりできていない個性であり、数秒もあれば解けてしまうはずの個性。だが今だけは……頭に痛みが走ることも無く使うことができる。
依光成生の個性はデク達ヒーローにも影響を与える。ヴィランが強くなっても、同じようにヒーローも押し上げる。その証明だ。
『浮遊』によって弔はワンアクション増やさなければデクには届かない。油断こそできない戦いだが、ほんの少しの余裕がヒーロー側に生まれていた。
■■■
ギガントマキアと元ヴィラン連合の超常解放戦線幹部らと雄英生徒及びヒーローの戦場。そこではあらゆる罠をしかけるヒーロー側と力で突き崩すヴィランの姿があった。
クリエティやミッドナイトの指揮の下、マキアすら沈めるトラップがいくつも展開されていた。
「これでトラップ三つ目だぞ!」
「マキアさえ止まれば……!」
落とし穴、ハマったと思ったら更に底へ、両手を塞ぐ植物、セメントス並みに即座に固める液体、地面と離れなくするブドウ。いくつものトラップがマキアですら沈める程に巨大な規模で展開されており、荼毘やMr.コンプレス、スピナーすら参加しマキアへの妨害を食い止めていた。
マキアが数歩進めばトラップ、トラップを突破すれば更にトラップ。脱出したと思えばトラップ。足止めなのか倒す気なのか不明な威力なものすらあり、マキアも半分程の力を使って妨害を乗り越えていた。
「厄介だな。マキアを止められる罠を即席で作るか」
「いや、ホークスが知らせてたんだろう。そうじゃなきゃ無理だ」
即席ではなく準備周到なもの。そうでなければいくら有能かつ数が多いヒーローと言えどこれだけの規模を作ることは出来ない。そのための情報は伝えられている。
ただこれは次善の策のハズだった。何故なら『マキアが起動し』『弔へ向かって動いた』ルート上なのだ。すなわちヒーローにとって最悪にも近い状況に等しい。
それでもこれだけの罠をはられていた。つまりそれだけの人が動けていたということだ。
「意外と解放軍の面子は使えなかったんだな」
周囲の警戒を怠った。スピナーの愚痴も当然のことだ。
ただこれは超常解放戦線が見落としてたのではない、隠していた人物が居たのだ。ヒーロー側に協力していた超常解放戦線側の面子は艶羽だけではない。もっと明確な裏切り者がいた。
キセルマイトという、『透明化』の個性を扱えるようになった裏切り者が。
「衛星も使えるのにな、意外と言えば意外だ」
今知っているのは弔のみ。荼毘ですら知らないため、解放戦線側に落ち度があったと見ていた。
チッと舌打ちをしながらも荼毘はマキアの妨害を炎を放出し止めた。そこで味方の妨害が少なくなっている事実を察する。
一人、面子がいなくなっていた。
「……あれ?トガはどこいった?」
「ああ、さっき成生ちゃんのとこ行くって言ってたよ」
「戦力分散してどうする」
溜息をしながら荼毘はトラップを粉砕する。Mr.コンプレスも進行方向のトラップを迎撃していたが、その声色はどこか心配気なものだった。
「止めたんだけど……あんな顔するトガちゃん初めて見たよ」
トガを最後に見たのはMr.コンプレス。彼が見たのは、焦りと親愛と、感情がいくつも入り混じったトガの表情。
親友として心配だけれどヴィランとして心配してない。立ち止まっても問題ないけど立ち止まっていられない。表情にあったのは葛藤そのものであり、最終的にトガは自分の心に従った。
ヴィランなら、好き勝手やるのが正解だ。
「……まぁ親友って言ってるくらいだ。気持ちは分かる。俺だって弔が苦しんでるって遠くで分かったなら駆け付けるしな」
「そりゃ仲のいいことで」
スピナーの理解に荼毘が茶化す。フンッと鼻息をたてるスピナーは荼毘も分かるだろと、あえて軽い口調で口にする。
「お前だって灯火が同じ状況になったら行くだろ」
「……あー」
親友とは言わずとも
「まぁ、否定はできねぇな」
「だろ?だから……今はマキアへの妨害を崩すだけだ」
「テンション上がってるきてるからな、任せとけ」
荼毘の熱は徐々に上がってきている。それは戦闘の長期化もあるが、エンデヴァーに物理的な意味で近づいているからでもある。
正体を世間には既にバラした後だが、エンデヴァーには直接伝えられていない。早くと心臓の音が速くなるのは荼毘自身分かっていた。
そして、テンションが上がれば熱も上がる。弔の下に到着すれば間違いなく最高潮になる確信が荼毘にはあった。
もちろん、ヒーロー側はそれを許さない。
「次から次に破られる……!でも!次の策はありますわ!」
次のその次を破ってもその次が現れる。ヒーローの粘りは荼毘の熱を以てしても簡単には破れないものだった。
「流石荼毘だが、やっぱ数が多いな」
「仕方ねぇことだろ」
ヒーローを妨害している荼毘ですら愚痴る程のヒーロー側の粘り。次の策を破るためにどうするかと一瞬思考した二人に、頼もしい声が届いた。
「……厄介。同志よ、捕まっていろ────本気で、主の下へ向かう」
「お、おぅ!?」
時間を取られ過ぎた。マキアの考えはそれだけ。だがそれは、ヒーロー達にとって絶望の一言だった。
スピナーの困惑と共にマキアの進行は終わる。同時、身体が更に一回り大きくなり、爪が伸び、顎のバイザーが顔を隠すように動く。正しく、ギガントマキアの戦闘用の形態だった。
マキアの蹂躙が始まった。
■■■
戦争の中で最大の戦場。そこにはヒーローがたった一人しかいない。それもオールマイトのような一騎当千・プロでもトップの最強のヒーローではなく、ただ倒れないだけの、
「成生を止めてくれてたんだな」
「切島のお兄さん!ダメ!今のおかーさんは止められない!」
奪姫の声を受けながら、烈怒頼雄斗は自らを『硬化』する。今の成生に近づけば、それだけで吹き飛ばされるか熱で焼かれる。
堕とし子は再生能力と身体能力で何とかしていたが、烈怒頼雄斗は個性を発動しなければ対処できない。
さらに成生を止めることは不可能。戦力で言えば堕とし子達が圧倒的なまでに上であり、彼らでさえ止められないのだ。烈怒頼雄斗が来たところで無駄なことだった。
「ああ……何となくだけど分かるよ」
けれど無意味なことではない。今必要なのは、成生を止めるために足りない者を埋めること。そして、成生に言葉が届く者だ。
どちらも切島は満たしている。ただ彼が来たとしても足りない。
母として知る者、一人の女性として見る者がいても、彼らが皆成生をヴィランとして見ていたとしても、まだ足りない。
成生を友として知る者も、成生が持つ個性を熟知する者もいないのだから。
「でも、今会わないといけないって気がしたんだ」
「どう……て……」
今、目の前の戦いの結果には起因しないという意味では無意味。せいぜいが足止めであり、止められないと烈怒頼雄斗は分かっている。
だとしても切島は身体が動いていた。何故なら彼は────ヒーローだから。
「助けてって、成生がそう言ってるからだろ!」
「わた、し……は……」
烈怒頼雄斗は正面からぶつかる。ただのフィジカルによるタックル。既に艶羽や大が抱きついて引きずられていたが、成生の真正面から烈怒頼雄斗はぶつかる。
だが、硬化した烈怒頼雄斗も抱き留めるだけでそのまま無視されていた。成生の足は、遅くこそなったものの止められてはいない。抱きつかれたまま成生は進む。
それでも烈怒頼雄斗は離れない。
「っ!……俺は、不器用だからよ」
抱きしめたまま、
数秒だけ止まる成生。感情を揺さぶる衝撃が『分からない』としても、貫通するように成生の
「……だ、め」
「大!仁!私達も!」
大を仁が増やし、純粋な物量をそのままぶつける。真正面だけは切島に任せ、烈怒頼雄斗の背中を押すように大や仁、奪姫の本体は押さえる。
「見えなくなっても、感じられなくなっても、俺は……いや、ここにいるやつはお前を忘れない!
今は止まらなくていい!ただそれだけ覚えとけ!」
烈怒頼雄斗の叫び。真正面から受け止めている彼でも、成生の表情は見ても『分からない』。
「わk……た」
けれど切島にだけは聞こえて、見えていた。
了承の声と……かつて笑っていた笑顔などどこにも無い、諦めにも近い苦笑。
成生を想うものなら誰でも手を差し伸ばしたくなる笑み。憤慨したのは切島だけではなかった。
「随分カッコイイこと言うんだね、成生ちゃんのヒーローは」
「トガさん!?」
成生の歩いてきた道側、背後にトガの姿があった。
真正面から受け止めているのが烈怒頼雄斗や堕とし子達なら、背中から抱きつくのがトガ。想い人の声が届くのなら、親友の声だって届くはず。そう信じ、トガは走って辿り着いていた。
成生の血で『変身』し、異常事態であり『変身』するだけで負荷が多大であっても、トガは成生に『変身』して走ったのだ。
すぐに辿り着けると、成生の力を信じていた。心配した親友と、その力を信じた、トガの行動理由はそれだけだった。
「心配だから来たのです。成生ちゃん、私が分かります?」
「……と、が……」
「分かってるなら十分です」
再びトガは成生に変身する。トガはこれまで何度も成生に『変身』してきた。そのおかげか、二人の間では『念波』の個性に近い個性を得ていた。
遠くであればどんな体調や様子なのか把握でき、近づけば精神すら読み取れるようになる。
但しトガに理解できるのは「トガの親友であるヴィランの少女成生」という存在。今の成生のように『分からない』精神性は理解できない者だ。
けれど、今の成生はただ『分からない』存在になろうとしているだけ。
一つは、今の成生を止めるために必要な
「この感じ、何か足りない……一つ?一人?……けど成生ちゃん、これ弔くんの方に行っても……」
そしてもう一つは、進める足を遅くさせる手段。トガは止める考えは一瞬で放棄し、そちらへ行動を移す。
「なら、ここで私達が動くだけです」
「……」
「もう聞こえてない?
でもいいです。先の先のために今は────私も、止める」
変身を顔の部分だけ解除する。『変身』の個性では本来使えない扱い方だが、トガと成生の間だけは例外だった。
成生は他人の個性さえも成長させる。仲が良いものであればある程成長幅は大きい。トガはその最たるものだ。
「一番目立つようになる。そう言ってた成生ちゃんが一番好きですよ」
「……ん……」
背中から抱きつき、踏みとどまる。トガも止めようと動いたが、成生は変わらず力づくで引きずられていた。
見えなくなっている成生の足は止まらない。成生の意志に関係なく進み続ける。
「ぐぐぐ……!」
「切島のおにーさん絶対離さないで!皆は引きずってでも止めろ!」
歩みは少しずつ遅くなっていく。だが、止まらない。
「奪姫ちゃん!成生ちゃん止められないから今は声を届けて!
「……っ!トガさん、信じますよ!?」
これだけの力が集まればどんな人でも止められる。それはMs.ダークライでさえも例外ではない。全盛期のオールマイトやオールフォーワンでさえも同じことになる。
しかし今の
「……分からない」
切島、トガ、堕とし子達。全員が必死に声を上げて止めても成生の意志は消え、時折浮上するだけの不安定な状態になっていた。
ただ、彼らの言葉は聞こえており、消えることは無かった。
明けましておめでとうございます(大大大遅刻)。色々あって投稿遅れました
中国行ったりドイツ行ったりイベントいくつも行ったりと仕事もプラべも忙しくて執筆が遅れてました
執筆はプラべ側だけど不定期系イベントは逃したら死ぬのでどうしてもこっちがおざなりになってしまうのです
更新はするんで許してくだせぇ