普通少女のヴィランアカデミア   作:火ノ鷹

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仕事が忙しくなってきたのとプリオケが始まった影響(作者はガチのシンフォギア適合者)で執筆時間が中々とれない


不定期更新なので許してくだせぇ


ワンフォーオール 感応

 

「死して再び会うとはな、オールフォーワン」

「驚いた。志村菜々……弔のお祖母さんだぜ」

 

 オールフォーワンですら驚く事象。弔が理解できる筈もない。

 ……その後ろにいる少女は別だが。

 

「いったいこれは……」

「個性とはその人そのもの。忘れた?」

 

 個性に翻弄されて生きる普通の少女には分かっていた。自らの個性を操り切れなくなった時、別人のような自分が現れる。よりみつせいという女児……分かりやすい自分自身だ。

 すなわち、自らの個性には自らの人生そのものが宿る。そしてワンフォーオールの出自から、予想は容易だった。

 

「成生の言う通りさ。個性には意志が……その人そのものが宿る。個性を奪う僕は良く知っているさ」

 

 そしてオールフォーワンも分かっていた。個性因子を誰よりも詳しく調べた人間なのだ、当然だった。

 

「転移だ。

 

 臓器に、細胞に記憶が宿っていると言われるように、個性因子には意識……まさしくその人そのもの宿ることがあるらしい」

 

「ドクターの研究で分かったことだけどね。僕は直接個性因子に触れられる力を持っていたから判明したのさ。

 

 そしてワンフォーオールは……『個性を与える』個性に『個性をストックする』個性。個性因子そのものが転移していた。

 

 だから志村菜々がここにいる。合ってるだろう?」

「答える義理は無いな」

 

 オールフォーワンの話に鼻で笑うように彼女は突き放す。言葉だけで口撃してくるオールフォーワンという人間を知っているからこそ、話す価値すらないと志村菜々は理解していた。

 

「茶々はそれくらいでいいだろ」

「あなたが……弧太郎の」

 

 ただ、オールフォーワンのことは憎しみという感情を持ってこそいても自らの孫は別。

 

 市民に被害を及ぼしていても、自らの血を分けている孫となれば……形はどうあれ感情を抱かないはずもない。

 

 

 弔からすれば、どうでもいいではあった。

 

 

「安心しろよ、あんたもしっかり恨んでる」

 

 

 弔にとって志村菜々はヒーローの一人でしかない。過去であれば肉親として見れただろうが、今であればヴィランとヒーローの関係でしかない。

 

 

 それを証明するように、ゴゴゴという音が鳴り世界が崩壊を始める。

 

 

「いいぞ弔!君の怒りが世界を侵し始めた!「所有者の意思でしか動かせない」ワンフォーオールの原則を!君の怒りが上回っている証拠だ!」

 

 昂るオールフォーワンに弔は視線を向け────オールフォーワンの身体へピシリとヒビを入れる。

 

 融合しながら崩壊の個性を使ったのだ、自らが崩壊しない使い方を知った今、弔には融合を切り離せる力があるのだ。

 

「おっと、僕も嫌われていたか。成生には被害が出ないようにしているのに酷いなぁ」

「黙れ」

「上等だよ、それでこそ恐怖の象徴……!」

 

 オールフォーワンと弔の身体の乗っ取り合い。だがワンフォーオールを奪うという一点において目的は同じ。まずはその目的を達してからでいいと二人が結論付けるのは同じタイミングだった。

 

 ワンフォーオールにオールフォーワンの個性が走り──止まる。

 

 

「それでもまだ、力は足りてないみたいだ」 

 

 

 ワンフォーオールと弔の視線の先、そこには『ワンフォーオールの始まり』死柄木与一の姿があった。

 

 

「弟は僕に似ていじっぱりだから」

「……そうだね、否定はしない」

 

 与一の言葉はゆったりとしたもの。まるでここではオールフォーワンが何をしようと問題にならないと宣言しているかのようですらあった。

 

「次はその子か、兄さん」

「お前が僕のモノにならないから」

 

 オールフォーワンを睨む与一。自らのモノになるかならないかこそが全てと考えるオールフォーワンを理解できない……肉親であれどそう思ってしまうのだ。

 

 気持ちは分かる、けれどそれは間違っている。それを認めてほしいだけなのだ。故に、意地の張り合いであしかない。

 意地の張り合いだが、間違えていると言える仲間が居る。その筆頭が────今の継承者だ。

 

 

「僕達はそっちにはいかない。僕達はこの子の中にいる」

 

 

 デク、緑谷出久。9番目の継承者だが、その意志は初代というよりオールマイト(八代目)と同じ。

 誰よりもヒーローの彼は、誰よりも救う思いが強い。当然、ヒーローとしてヴィランを許さない。

 

 ()()()()、ヴィランならの話だ。

 

 

「怖いのかい?」

 

 

 オールフォーワンの言葉に与一は首を横に振る。意地の張り合いでしかない以上、恐怖を抱く必要もない。

 

 ただ、ワンフォーオールの全員が恐れている人はいた。意志の強さなど関係なしに、ワンフォーオールの力でさえも届かない……ただただ強大な力を持つ者、一人だけ。

 

「僕達は兄さんを恐れてはいない……意地を張り合ってるだけだから。恐いのは背中の少女さ」

「成生か」

 

 弔の後ろから普通の少女(成生)が与一の真正面に立つ。オールフォーワンのように融合している訳ではない、ただ弔の中にいるだけだ。

 ただオールフォーワンで奪ったわけではなく、同居しているような形だ。その影響でここに立っているのだった。

 

「初めましてだね、依光成生。普通の少女と呼んだ方がいいかい?」

「どちらでも。私のことを知っているようですね」

 

 普通の少女(成生)の言葉に与一と菜々は険しい顔をする。 普通の少女(成生)の行動を知っている、故に人間性が分かっている……直接知ってはいない。

 彼女の個性がオールフォーワンすら超える程の危険性を持っている、今はその事実だけあればいい。

 

 ワンフォーオールが、聞かなければならないことがあったのだ。

 

 

「個性が余りにも独善的過ぎる。それはワンフォーオールにも近いところはあるからね。だから一つ聞きたいんだ。

 

 

 

 ────君はあと何年生きられる?

 

 

 一瞬だけ、ピタリと普通の少女(成生)の動きが止まる。心当たりがある訳ではなかった、ただ言われてその可能性を考えることができてしまったのだった。

 

 自らの個性の反動。それがただ廃人になったり、死ぬだけで済むものなのかどうか。それ以外からも代償を払っているのであれば……十分に可能性はある。

 

「長生きはしないんじゃないですかね?ヴィランですし」

「なるほど、理解はしているんだね。君のオリジナルも分かってるんだろう?」

 

 ここにいる普通の少女(成生)はコピー、劣化品だ。故に理解する能力もオリジナルに比べれば低い。オリジナルなら理解している可能性はあれど、今ここにいる普通の少女(成生)は予想しかできない。

 

 口から出た言の葉は、彼女らしいものだったが。

 

 

「大丈夫だよ弔。私達は死なないから」

「心配なんざしてねぇ」

 

 

 真っ先に出たのは弔への心配。弔も即突っ返したが、その声色はさっきまでの怒りに満ちた姿とは別人のようですらあった。

 

 一拍おき、 普通の少女(成生)はワンフォーオールの言葉を理解する。

 こんな場所でそんなことを聞く。つまりはワンフォーオール自身も同じ現象が起きている。

 

 事実を並べ、普通の少女(成生)は与一へと口を開く。

 

 

「強大な個性……そして緑谷出久は『無個性』でありワンフォーオールは引き継がせる個性。

 

 ……そういうことですか、ワンフォーオールも大変ですね」

「君に言われたくないな」

「じゃあオールフォーワンに食べられちゃってくださいな?」

「断るよ。

 

 僕らは選んだんだ。この子の中にいるって」

 

 選んだ。何故だかその言葉が普通の少女(成生)には妬ましく聞こえていた。

 

「この子は力は持っていない。あるのはただ常軌を逸した意志だけ、救うという意志だ。

 

 その意志を尊重した僕らは誰もがこの子についていくと決めた。頑張れと、言いたくなるからこそ……そう決めたんだ」

「それはそれは素晴らしいことで」

 

 ハハハと軽く笑う。その声には、どこか羨ましいという声色が混ざっていた。

 

「けどそれは私も背中を押す側として」

「違うだろう?」

 

 指摘に普通の少女(成生)の動きがピタリと止まる。

 

 

「君は誰も信じていない、信じているのは自分だけ、それも自分の力だけだ。背中を押すのはただの暇つぶし」

 

「時代が悪かったと言えばその通りなんだろうね。僕達という突出したヒーローと、兄さんという突出したヴィランがいた。

 

 だから社会の天秤と呼ばれた君はどっちつかずになり……何も信じられなくなった。なりたい自分ですら見失う程に」

 

「だから、信じたいんだろう?人の善性を。自分が悪側に行ってしまうと分かっていたから。

 

 ……だから、自分のヒーローを望んだんだろう?」

 

 

 与一が口にしたものは、普通の少女(成生)にとっては全て事実だった。

 

 が、事実であるからこそそれは……逆鱗に触れていた。

 

「ふふふ……」

 

 ゆったりと両手で顔を覆う普通の少女(成生)。その瞳に抱いているものを隠しているかのようだ。

 

 

 隠されていたものは、次の瞬間解き放たれた。

 

 

 

 

「ははは…………アハハハハハ!」

 

 

 

 

 笑い声、成生が出すことは滅多にない笑い方。

 

 しかし続いた声は、地の底から響くような底冷えした声だった。

 

 

 

 

 

「貴様らに、何が、分かる」

 

 

 

 

 

 弔どころかオールフォーワンですら初めて見る怒気。ワンフォーオールの空間に罅すら入るほどの(意志)の塊。ワンフォーオールを壊す()()なら彼女だけで十分と言わしめる程の怒りと力がそこには込められていた。

 

 その怒りを治めるように、弔が彼女の肩を叩く。壊れないと知っているから、優しくポンポンと諫めていた。

 

「弔」

「話は終わったろ?なら──」

「させない」

 

 弔の怒りによって破壊が始まりかけた世界を、与一が止める。

 

 崩壊そのものに抗ってくることなど初めてのことであり、弔も何が起きているか戸惑っていた。

 

「なんだこの」

【これが力だよ弔!】

 

 弔と融合しているオールフォーワンが出を伸ばす。さっきまでの冷静さはどこへやら、声が分かりやすく昂っていた。

 

 

 

【君の意志と僕の能力があれば奪える!成生の力でブーストすれば確実に!】

 

 

【弟よ、選んだだって?そんなゴミクズを?それは間違いだ!こんな素晴らしい力、誰かを救うためだけに使うだなんて馬鹿げてる!】

 

 

 

【俺のモノになれ!世の中に知らしめるんだ!

 

 ()()()()って!】

 

 

 

 オールフォーワンの言葉はたった一人を狙い打ちにしたもの。ワンフォーオールの体現者であるオールマイトであり……憧れとして見ていた少年に向けられてはいなかった。

 

 

「バカに、するな」

 

 

 緑谷に力はない。あるのは意志だけ。力と意志の相対と言う意味では成生と真逆の存在だが、この場においては誰よりも強い存在と成る。

 

「な、に、?」

 

 驚く弔とAFOに、強い意志の宿る眼光が突き刺さる。

 

 

 

ボク達(ワンフォーオール)を、嘗めるな」

 

 

 

 クスリと、普通の少女は笑った。

 

 

 

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