灰被りー元ウマ娘、現競走馬だけど質問ある? 作:パンダコパンダ
交換券を使い手薄だったダート枠にデジたんを手に入れた私に
不可能なことなんてない……。
晴れだ。
悔しいほどの晴れだ。
せめて不良馬場なら、問題なく走れるっていうのに、悲しいほどに青空だ。
いや、弱気になってちゃいけない。
今日のこのレースは、私が勝つところを見るために整えられた舞台。
今日この日は、サンドリヨンによって日本競馬史上初めて、地方からクラシックを獲ったウマになる舞台。私のために作られ、私のために開催される舞台。
「今日は気合十分やな」
そりゃあもちろん。負けるためにくるバカはいないんだから。
『五月も終わりに近づいた最後の日曜日。大観衆が見つめるのは、地方からのシンデレラストーリーなのか、それとも、中央という名の力の証明か』
パドックで自分の体をまじまじと見つめられることにももう慣れた。足の筋肉の具合だったり歩き方だったり、発汗だったりと見られるポイントはウマ娘の頃とほんの少しだけ違うが、それでも大体は同じ。
なら、堂々と歩いていれば良い。
『一番人気はやはりこの馬。桜花賞で驚異の末脚を見せたこと座の一等星、ハープスター。鞍上の河田も自信満々の表情とコメントをしています。自身の二冠を脅かす他馬を一蹴することができるのか!』
『続く2番人気は、笠松からやって来た刺客。前でも後ろでも戦える変幻自在の脚は、今日どういった展開を見せるのか。単勝オッズ3.2倍のサンドリヨン。気合は十分です』
各馬がゲートの前に集まる。今日の私はウマ娘の頃と同じく18番の大外枠。ハープスターは10番だしヌーヴォレコルトは9番。ハープスターはどうせ一番後ろにいるから、ペースメーカーは中団に居座る馬。
今日のイメージは、差しの先頭。
続々と他の馬たちがゲートに入っていく中、ブルルと息を吐いて私も入る。
『さて、大外枠のサンドリヨンが入り全頭準備が整いました』
私の後方でゲートが閉まると、スイッチが押された。
『さあゲートが開いて目指すは樫の女王! 第75回オークス! スタートしました!』
一斉に飛び出した私たち。
しっかりと横一線から幅が狭まる中、まずまずのスタートを切ったのに合わせてアンカツが手綱を操る。
『前めに出るのはペイシャフェリス。バウンスシャッセ、マイネグレヴィルも前へと進出します。注目の18番サンドリヨン安堂は中団でしょうか。前にも後ろにも行かない状態。対する一番人気はハープスターは後方から4、5頭目といったところで1コーナーを回っていきます』
一番前がコーナーに入り、私はちょうど真ん中あたり。多分8番目とか9番目とか? 外側から行ってる分スタミナは使うが、横並びも一頭だけなのでそれほどロスというわけでもないから大丈夫。
アンカツも無理に引っ張ったり押したりもしていないから、問題はない。
2コーナーを抜けて向正面。近くにいた11番マーブルカテドラルと17番フォーエバーモアの2頭が、私とヌーヴォを抜いていくが無視して焦らずに向正面。
『さあ、先頭は変わらず4番。差はないですが集団を引っ張り少し縦長の状態で1000メートルを通過します。通過タイムは60秒ジャスト。1分ジャストです。少しゆったり目なペース。これは最終直線が楽しみだ』
下り坂からポツンと突き出た山を乗り越えて3コーナー。もうすぐ3コーナーで下り坂が終わる。
3〜4コーナー間で緩い上り坂になったことで前との差が少し詰まった。先頭、先行集団の後ろについたバウンスシャッセとヌーヴォレコルトと私たち。アンカツの手綱に従って少し外側に寄ってコースを確保すると同時に、4コーナーを抜けた。
『さあ最後の直線525メートル! 2メートルの坂を進む18頭! 14番ブランネージュが先頭を捉えたか! 中団にいた9、5、18番も前へと出ていく! 18番サンドリヨン安堂後ろを見る! ハープスターが一頭大外に持ち出して飛んでくる! やはりこの二頭なのか!?』
「来よったで!!」
ブルルと私は一つ鳴き返事をする。
大丈夫、馬の広い視界の中にあの鹿毛は見えてこない。
大丈夫、馬の強い心臓が私の体に血を渡らせる。
大丈夫、笠松の皆とスレの奴らが私のことを見てくれる。
『サンドリヨン! 18番のサンドリヨンが抜け出した!! 続くのはヌーヴォレコルトだ! ハープスターは届くのか! 届くのか! だがまだ3馬身は差がある』
うるさい歓声が、ターフに響く脚音を飲み込む。
そうだ。この感覚。別に走ることが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。勝つことが嫌いなわけじゃない。むしろ勝つために生きているのだ。
そんな私の存在を、ただの地方馬だと思い込んでいるバ鹿どもに教え込むこの瞬間が、私が走る理由。
『残りわずか200メートル! 先頭はサンドリヨン! サンドリヨンだ! オグリキャップが走れなかった道を! ライデンリーダーが掴めなかった夢を!』
思い知れ。バ鹿ども。
『目に焼き付けろ! 日本競馬史上唯一! 地方から中央クラシックを制した馬!』
私が笠松のサンドリヨンだ!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「勝利騎手インタビューです。サンドリヨン号で日本競馬史上初となります、地方馬による中央クラシックを制覇を達成しました。安堂騎手です。レースが終わって、まず率直な感想をお願いします」
「はい。そうですね。勝てて良かったっていうのが、一番です」
「直前までノーザンファームしがらきにて調教を行なっていたそうですが、その努力が実りましたか?」
「結構ハードな調教やったんですが、サンドリヨンがしっかり熟してくれたおかげですね。日に日に調子上がっとったんで」
「桜花賞とは違って中盤から抜け出すような、王道的な展開でしたが」
「桜花賞の時は全然僕のこと聞いてくれなかったんでね。ただ今日はえらく大人しかったんで、不気味に思ってたくらいなんですけどね」
「ありがとうございます。それでは最後に、次戦に向けての意気込みをお願いします」
「勝ったとはいえ、この子はまだまだ成長しますので、応援のほどよろしくお願いします!」
「ありがとうございます。サンドリヨン号安堂騎手の勝利インタビューでした」
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キタ、ファイン、アルダン、フラッシュ。
あとはサポカ引きまくるしかねぇ!!