加賀の視線   作:電動ガン

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加賀の視線は初心にかえってやってみようかなと思います。

なろうでも作品投稿してます。良かったら見てね。

https://ncode.syosetu.com/n3463fc/


page1 私と波止場

「・・・。」

 

波止場で海を眺めていた。まだ日が高く少し暑くも感じる。私は加賀。横須賀鎮守府の艦娘だ。私は変わり者だと言われている。自分でも自覚はしてはいる、変わり者と言っても誰かに諌められるものでもないしその境遇に身を置いている。

 

「・・・。」

 

私は持ってきた紙飛行機を飛ばす。海風によって空高く舞い上がり、そして海面に墜ちた。

 

「はぁ・・・」

 

私のどこが変わっているのかを教えよう。私は臆病者なのだ。臆病のせいで要らぬ撤退をしたりした。みんなは勘が鋭いなどと評価してくれたが私はそうは思えなかった。

 

「・・・。」

 

艦娘として生まれそこそこ長く生きてきたつもりだけど臆病だけは治らなかった。赤城さんにも申し訳ない。治らんかったものは治らんのだ。

 

「・・・はぁ」

 

「あのー加賀さん?」

 

声をかけられ振り返ると吹雪がいた。ビニール袋を持って立っている。すわ一人で黄昏ていたのを見られてしまって少し恥ずかしい。

 

「吹雪・・・いったいどうしたの?」

 

「買い物から帰ってきたら一人でいる加賀さんを見かけたもので。」

 

「そう・・・」

 

「何か悩み事ですか?」

 

ぎくりと思わず唸ってしまった。しかし臆病を治したいと思っているなんてことは・・・吹雪も何か言いづらいことだと思ったのか隣に座りビニール袋からソーダのアイスを取り出した。一本いります?との厚意を受け取ったので遠慮なく一本もらうことにした。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

シャクシャクとアイスを齧りながら再び水平線を眺める。遥か遠くに見える水平線も航空機があればその向こうまで見えるのにな、と考えたが航空機の操舵などまっすぐ飛ばすのも大変だという結論に至り、自己の中で完結しへこんだ。

 

「それで・・・わざわざ変わり者のところにやってきた理由は何かしら?」

 

「ああいや、特に理由はないんですけど・・・」

 

「・・・冗談よ。」

 

「たはは・・・」

 

苦笑する吹雪を横目にへこんだメンタルを回復させる。臆病者なのでメンタルは簡単にへこむのだ。

 

「加賀さんあまりおしゃべりするところ見たことないので・・・黄昏ているから何か悩みとか困ったことでもあるのかな〜って・・・」

 

「・・・。」

 

「・・・あれ?」

 

「・・・悩みくらい、誰でも持っているものではないかしら。」

 

「そ、そうですよね・・・」

 

「・・・」

 

「・・・たははは・・・」

 

吹雪になら・・・吹雪になら話せるんじゃなかろうか。そんな気が過るが首を横に振る。私は横須賀の戦力の中枢を担う空母の一人なのだ。あまりに情けない言動は影響が大きいと思う。あ、アイスなくなった。

 

「吹雪・・・」

 

「はい?何でしょう?」

 

「あのね・・・」

 

アイスが無くなった口寂しさだからかあっけなく言葉は紡がれて出てきた。臆病なこと、普段から要らぬ撤退をしてること、提督にも仲間にも申し訳ないこと・・・一度箍が外れるとどんどん湧き出てきていた。

 

「・・・結局、何もかもが怖いのよ。敵も、仲間も。今よく吹雪に話せていると思うわ。」

 

「加賀さん・・・」

 

「いいのよ。見損なうでしょ。こんな臆病者の話なんて長く聞く必要は無いわ。戦意に響くわよ。」

 

「あのー・・・加賀さんはもっとみんなとコミュニケーションを取った方が良いと思います。」

 

「そんなの・・・どうすれば良いのよ・・・」

 

「うーん・・・一緒にご飯を食べるとか・・・一緒にお出かけするとか・・・」

 

「ハードルが高いわ・・・そこまで辿り着けないの。」

 

「うーん・・・コミュ障・・・!」

 

吹雪のアドバイスは難易度が高すぎる。もっと現実的な案はないものだろうか。こう、待ってるだけで良い、みたいなやつ。

 

「・・・加賀さんが本気で臆病を治したいというならば一つ、考えがあります。」

 

「・・・どうなのかしら。困ってはいるけれどそこまで本気とは・・・」

 

「ああああ!もう!」

 

「ひっ」

 

頭をガシガシと掻きむしる吹雪に驚いていると立ち上がった吹雪がコチラを向き直る。いったい何をする気なのだろうか。不安で胸がいっぱいになったところで鼻息荒く吹雪は言った。

 

「加賀さん、臆病、本気で治しますよね?」

 

「え・・・でも・・・」

 

「ね?」

 

「うう・・・はい・・・」

 

「ならこれから私は試練を与えようと思います。」

 

「あ、あんまり難しいのは・・・」

 

「大丈夫です。そこまで難しくはありません。加賀さんは動く必要が無いですから。」

 

「私が・・・動く必要が無い・・・?」

 

それなら出来そうかもと思っていると吹雪は腕組みして踏ん反り返る。

 

「これから私が加賀さんへ向けて刺客を送り込みます。場所はここ。加賀さんいつもここにいるでしょ?」

 

「別にいつもここにいるわけでは・・・」

 

「そうなんですか?じゃあ他はどこに?」

 

「・・・ここにいます。」

 

「はい。なのでここに送り込む私の刺客とおしゃべりしてください。それが試練です。」

 

「はぁ・・・」

 

「たははは大丈夫ですよ。あんまり騒がしい子は寄越さないですから。少しずつ慣れるためのものです。いずれは加賀さんからお話し出来るようになりましょうね。」

 

「わかっ・・・たわ。」

 

「なんです今の間は。せっかく協力してあげようと思ったのに・・・」

 

「いえ、協力してくれて嬉しい・・・嬉しいけど・・・」

 

やっぱり不安だわ。なんて・・・私が臆病を治すなんて出来るのかしら。吹雪が協力してくれることで少し光明が見えた気がしたけれど・・・やはり私なんて・・・

 

「もう・・・今日のところは私です!ほらほら何おしゃべりします?」

 

「え、ええっと・・・」

 

それから日が暮れるまで吹雪とおしゃべりした。いや吹雪が一方的におしゃべりしていた、という方が近いけれども。それでも私は吹雪の作戦が上手く行くかは不安だった。でも少しだけ信じてみようと思う。やっぱり仲間だもの。

 

 

 

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