加賀の視線   作:電動ガン

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page3 私とタピオカ

「はぁ・・・・・・・」

 

今日も今日とて波止場で黄昏ている。先日来た鹿島は妙に張り切って帰ってしまうし吹雪は人選を間違っていないかと考えるも私にとってはどうすることも出来ずに佇んでいることしかできない。今日は誰が来るんだろうと考えていると不意に声をかけられた。

 

「加賀さん。」

 

「?」

 

声をかけてきたのは大和だった。その手には何かドリンクのようなものが握られており二つあることから私の分も持ってきてくれたのがわかる。

 

「どうぞ。」

 

「ありがとう・・・」

 

手渡されたドリンクを見る。ミルクティーのようだが太いストローを見るに何か特別な様相をしている。

 

「タピオカミルクティーです。熊野さんが作っていたのをいただいてきました。」

 

「そうなの・・・」

 

「お好きじゃありませんでした?」

 

「いえ・・・初めて飲むものだから・・・」

 

「ふふっ、そうでしたか。」

 

ストローに口をつけて飲むとフニフニのタピオカが口に飛び込んでくる。甘い。フニフニ。甘い。口の中が楽しくなってきた所で大和が更に口を開いた。

 

「良い天気ですね・・・」

 

「そうね・・・」

 

「加賀さんは今日、出撃はないんですか?」

 

「そうね・・・今日は無いわ。提督もゆっくり休めって。」

 

「そうでしたか。ゆっくりできてますか?」

 

「ええ、とても穏やかに過ごしているわ。」

 

風が頬を撫でていく様を感じながら水平線を見つめる。大和と共に眺めていると私の口が勝手に開く。

 

「大和は・・・吹雪に頼まれて?」

 

「はい、そうです。加賀さんが波止場にいるので話し相手になって欲しいと。」

 

「そう・・・退屈じゃない?」

 

「そんなことありません。ゆっくり水平線を眺めるのも大和は好きですよ。」

 

そう言って大和は水平線の先へ視線を投げる。

 

「加賀さん、最近何かあったんですか?吹雪ちゃんがここまで世話を焼くのは珍しいもので・・・」

 

「いえ・・・何かあった・・・と言うわけでは・・・ない・・・のかも・・・」

 

「ふふ、大丈夫ですよ。加賀さんのペースで話してください。」

 

「ありがとう・・・」

 

私はここに訪れる刺客に何を話すかを考えるようになっていた。大和にも何を話そうかと考えていると。不意に遠くから声が聞こえた。

 

「おーい・・・」

 

「?」

 

「誰かしら・・・」

 

遠くにひらひらとセーラー服が見える。

 

「はっ・・・はっ・・・加賀さん!」

 

「吹雪・・・」

 

「誰かに声をかけてそのまんまというのも・・・なんかアレだなと思いまして・・・」

 

「そう・・・」

 

「吹雪ちゃんもタピオカミルクティーもらってきたの?」

 

「はい!タピオカってもちもちで新食感ですね。」

 

「大和もタピオカ初めてですがなかなか楽しいですね。」

 

「ふふっ・・・それで加賀さん、今なんの話をしていたんですか?」

 

「今考えていたところよ・・・」

 

「たはは、そうでしたか。」

 

吹雪が現れたことで場の空気が柔らかくなった気がする。吹雪もコンクリートブロックに腰掛け、タピオカミルクティーを啜った。

 

「ねぇ・・・大和。」

 

「はい、なんでしょうか。」

 

「少し、聞いてくれる・・・?」

 

私は少しずつ悩んでいた事を大和に話した。大和は真剣に聞いてくれた。吹雪も茶々を入れる事なく黙って聞いてくれていた。私は少し、前に進めた気がした。

 

「戦場が怖い、ですか・・・」

 

「ええ・・・」

 

「加賀さん、貴方は少し勘違いをしていると思います。」

 

「勘違い?」

 

「はい。これは大和の自論なんですが。戦場とは大小問わず恐ろしいものだと思うんです。」

 

「・・・なるほど?」

 

「怯える怯えないに関わらず、怖いものだとちゃんと認識して怖さに応じた対応を取ることが戦場での行動の一番の大原則だと思っています。」

 

「・・・そうなの?」

 

「はい。なので加賀さんの言った通り、怖さがピークを迎え撤退を進言してしまうのも何も問題無いように思います。現にそれで回避出来た脅威もあることですし。」

 

「・・・それは偶然よ。」

 

「加賀さんが何かを感じ取ったのは偶然じゃありませんよ。艦娘の本能だと思います。

 

「そういうものかしら・・・」

 

「吹雪ちゃんもそういうことありませんか?」

 

「私ですか?そうですねぇ・・・この先は危ない!っていうのは感じたことはありますけど・・・」

 

「その危ないと感じても、作戦の為なら恐怖に打ち勝って進むというのが戦いというものじゃないかしら。」

 

「うーん、私の考えでいうと加賀さんってそんなに恐怖を感じてないと思いますよ。」

 

えっ、何それは。吹雪の解答に面食らってしまった私は押し黙ることしかできなかった。私が恐怖を感じてない・・・?

 

「加賀さんが怖いと思う程度って私たちが思う怖いよりもキャパシティが大きいと思うんですよ。私が怖いって感じる脅威よりも、加賀さんが怖いって感じる脅威の方が強大というか・・・」

 

「大和もそういうところあると思います。吹雪ちゃんが怖いって言っても頑張って進みましょうと言うけれど加賀さんが怖いって言ったら確実に何かあると思ってしまいますし・・・」

 

「そういうものかしら・・・」

 

残っていたタピオカを吸い上げ、空を見上げた。そうか私の怖いは他の艦娘よりも度合いが違うのか。それは考えたことがなかったな。そういえば私が撤退を進言した時はその先に何かある事が多かった気がする。先日の集積地然り。

 

「なので大和は加賀さんの言う臆病のことは何も心配要らないと思いますよ。」

 

「私もそう思いますねぇ・・・深く考えすぎですし、みんなとのコミュニケーション不足だから自分が見えてないだけだと思いますよ?」

 

「そう、なのかしら・・・」

 

「はい、戦場での加賀さんは滅多に敵に怯んだりしませんし、加賀さんが怖くて帰りたいって言う時は必ず何かあります。臆病だなんて思わないでください。自分の感覚をもっと信じて欲しいです。って大和は思いますよ?」

 

「・・・。」

 

「加賀さんは自分が思うよりずっとずっと強い人ですよ。」

 

「そう・・・なのかしら・・・」

 

「治さなきゃならないのは臆病よりもコミュ障だと私は思いますね。」

 

「うぐ・・・」

 

「さて、タピオカも無くなりましたし。おやつもらいに戻りましょう!加賀さんも来ますよね?」

 

「う・・・わかったわ・・・」

 

「そうこなくっちゃ!じゃ行きましょう!」

 

そうして私たち3人は隊舎に戻っていった。吹雪は次の刺客を誰にしようかなと言っているし、大和は終始ニコニコしていて、私の悩みもすこし解消されて前に進めた気がするけれど・・・なんか安心した。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

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