加賀の視線   作:電動ガン

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page5 私と日替わり定食

ぐぅぅーと腹が鳴る。ちょっと波止場でぼんやりし過ぎた。時刻は昼過ぎくらいだろう。今日は出撃も無く穏和な日々を過ごしていた。

 

「過ごして・・・と言ってもいつもの波止場だけどね。」

 

誰に言うでもなく独りごちた私は立ち上がり、昼食を取りに向かおうと立ち上がる。

 

「ふっふっふ〜」

 

「?」

 

振り向くとそこには特徴的なアホ毛、軽巡洋艦の球磨が私の前に立ち塞がっていた。

 

「今日の刺客は球磨クマー!加賀、覚悟するクマよ。」

 

「・・・あっ」

 

刺客、すっかり忘れていた。吹雪はいつまで続けるのだろうか・・・私が変わるまでか。そうか。

 

「とりあえず加賀、腹減ったクマ。メシ食いに行くクマよ。」

 

「え、ええわかったわ。」

 

球磨に手を引かれ間宮食堂まで連れ立って行く。近づくにつれいい匂いが鼻腔をくすぐり腹が鳴る。

 

ぐぅぅー。

 

腹が減ったと腹の虫が主張する。今日は何を食べようか・・・と考えているうちに球磨がガラッと戸を開けた。

 

「クマー!日替わりひとつクマー!」

 

「球磨さん、いらっしゃい日替わりひとつですね。あら加賀さんも。」

 

間宮さんが優しく返事をする。他にも遅めの昼食を取っている艦娘達が居て食堂は賑わっていた。

 

「・・・どうも。」

 

「加賀さんはどうなさいますか?」

 

「えっと・・・」

 

腹の虫はうるさいがまだ何でゴキゲンを取るかは決まっていない。いつもので宥めすかそうとする。

 

「いなり寿司を・・・」

 

「はぁいいつものですね。」

 

間宮が柔らかく答え、手早くいなり寿司を10個、用意する。それを受け取ると私は外に出る。

 

「それでは・・・」

 

「ちょっと待つクマー!!!」

 

「えっ」

 

「加賀!?どこに行くクマ!?」

 

「波止場に戻りに・・・」

 

「なんで!?」

 

「えっと・・・」

 

居づらいから、とは言えなかった。私には波止場で1人寂しくがお似合いなのだ。

 

「ダメクマ。」

 

「はぁ・・・」

 

「球磨が刺客なのにそれは許さんクマ。こっちに来て一緒に食べるクマ。」

 

「・・・わかったわ。」

 

いなり寿司を落とさないように踵を返し球磨の目の前に座る。まだ球磨の日替わり定食は来ていない様だった。

 

「加賀はいつもそれだけクマ?」

 

「ええ・・・」

 

「すっくねークマ。赤城を見習えクマ。それの三倍は食うクマよ。」

 

「私なんかがあまり大食漢を気取っても・・・」

 

「空母はたらふく食わねーとやってらんねークマよ。間宮さん!ここの青いのにも日替わりひとつ!」

 

「はぁーい」

 

追加されてしまった。食べられないわけではないが多すぎるのではないか?今日は出撃も無いというのに。

 

「はぁ・・・」

 

「ため息つくんじゃねークマ。加賀、球磨は厳しくいくクマよ。もっとみんなとコミュニケーションとるクマ。」

 

「でも・・・どうしたら良いか・・・」

 

「簡単クマ。食堂に来て誰かに、隣いいかしら?とでも聞くクマ。そこからは他愛のない話でもすればいいクマ。それが出来れば万全クマ。」

 

もぐ。球磨が話している間にいなり寿司を一口。もぐもぐ咀嚼し耳を傾けるとデコピンが私を襲った。

 

「話してる途中に食うんじゃねークマ。」

 

「ごめんなさい・・・」

 

「球磨も一口もらうクマ。」

 

ひょいと皿からひとつ取られる。ああ・・・私のいなり寿司・・・

 

「もぐもぐ加賀は積極性が足らねークマ。このままだと誰とも仲良くならずに戦っていくことになるクマ。吹雪はそこを心配してるクマ。戦いでのストレスを発散出来ずに更に戦いに行くなんて球磨は想像したくもねークマ。」

 

「・・・そうね。」

 

「加賀はどうしてそうなったクマ?前の加賀は流石にここまでじゃなかったクマ。」

 

「・・・どうしてでしょうね。」

 

「はぁー・・・加賀、話す気がねーなら球磨は奥の手に出るクマ。泣いたり笑ったり出来なくするクマ。」

 

「私だって話す気が無いわけじゃ無いわ・・・でも、なんて言ったらいいのかわからないのよ。」

 

「典型的なコミュ障クマ・・・これは困ったクマねー」

 

「はあい日替わり二つお待たせしましたー」

 

「ありがとうクマ。ほら加賀も食べるクマ。今日の日替わりは鯵の唐揚げクマ。」

 

「ええ・・・美味しそうね。」

 

「そういえば、加賀はそのコミュ障で困ったことはねークマ?」

 

「困ったこと・・・特にないわね。戦闘でも意思疎通は取れるし、物静かな方だと思っているから話しかけられる事も少ないし・・・」

 

「環境が更に拍車をかけてるクマか・・・吹雪も考えたクマね・・・」

 

「私がどうかしたんですか?」

 

「!?」

 

「吹雪・・・ちょうど今加賀を尋問中クマ。」

 

「そうですか。加賀さん話相手が出来て良かったですね。」

 

「いじめられてるわ・・・」

 

「そういう冗談が言えるなら大丈夫そうですね。」

 

「吹雪もメシまだだったクマ?」

 

「そうですね司令官の書類が溜まってたので。」

 

「秘書艦も大変クマねー」

 

「たはは・・・あっ、間宮さーん私に日替わり定食くださーい。」

 

「はぁい。」

 

「どうです球磨さん。加賀さんのコミュ障は。」

 

「そうでもないと思うけど環境が悪いクマ。話さなくても何とかなる環境に身を置き過ぎたクマね。」

 

「辛辣・・・」

 

「私もそう思ったんで刺客を差し向けたんですけどねー。どうです加賀さん。少しは変わりました?」

 

「・・・そんなのわからないわ。でもこないだは卯月と喋ったかしら。」

 

「成果は出てるようですね。良かった良かった。」

 

「成果がよりによって卯月クマ・・・何を喋ったのか想像つかないクマ・・・」

 

「さっき言ってた他愛のない事よ?」

 

「うーむむ・・・」

 

球磨が唸りながらご飯を口に放り込んで行く、その間に吹雪の分の日替わり定食が届き三人で昼食を共にする。

 

「・・・。」

 

「どうかしたんですか加賀さん。喉に骨でも刺さりました?」

 

「いや・・・何か喋った方が良いのかと思って。」

 

「無理に話すことはないと思いますよー」

 

「そうクマ。これは自然さが大事クマ。ここで何か喋った方が良いと思われて艦載機の話されても球磨達は困るだけクマ。」

 

「確かにそうね・・・自然さが大事なのね・・・自然さ・・・」

 

「ここで自然さに悩むのもコミュ障っぽいクマ・・・」

 

「すぐには治りませんよね・・・」

 

そう、すぐには治らないのだ吹雪も長い目で見て欲しい。私はいなり寿司と日替わりを平らげ、自然な会話が何なのかを考えながら思考を渦へと飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

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