今日は出撃だ。
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大海原を駆けていく。ここは比較的脅威が少なく、穏やかな海だ。深海棲艦も散発的。ピクニック気分で私たちは進んでいた。
「・・・。」
「はぁーっ今日は天気が良いですねーっ」
「そうね。散歩するには良い天気ね。」
天気の良さを気にする2人は陽炎と不知火。2人とも久しぶりの出撃シフトの為張り切っていた。しかし私はどうにも落ち着かない。首元をチリチリするような嫌な予感がしている。
「ちょっと2人とも久しぶりの出撃だからって気を抜きすぎないでよー?」
「そうですね。慢心してはダメ・・・です。」
「まぁまぁ久しぶりの出撃になったんだから仕方ないよ。その為に提督も近海哨戒の任務に就かせてくれたんだしさ。」
2人に声掛けるは重巡最上、羽黒、衣笠の3人。今日の編成は駆逐ニ、重巡三、そして私の空母一という準水上打撃艦隊だった。
「・・・。」
「・・・?」
「加賀さんどーしたの?」
陽炎と衣笠が不意にこちらを気にかける。言えない。嫌な予感がして怖いからもう帰りたいなんて。
「・・・いえ。」
「な、何か気になることでもあるんですか?」
「羽黒・・・そうねちょっと。」
そう言って私は偵察機を撃ち上げた。この首元をチリチリする恐怖感の正体を探らなければならない。
「偵察は大事だよねっ!・・・でもこんな近海でそこまで気にすることなくないかな。」
「最上。羽黒が言ったでしょう。慢心はダメって。」
「そうだけど・・・まだ鎮守府を出発してそれほど経ってないよ?」
「加賀さん・・・何か気になるんですか?」
「・・・いえ、ちょっと。」
口籠もってしまった。私の臆病も今に始まったことでは無いがどうにも上手く伝えられない。だがこの恐怖感を無視するわけにもいかない。陽炎と不知火の久しぶりの出撃を邪魔するわけにもいかない。どうしたものか・・・
「加賀さん。ちょっとだけでは伝わりません。言葉にしていただかないと。」
「ちょっと不知火・・・まぁでも私もそうかな。」
「・・・ごめんなさい。」
「謝って欲しいわけじゃないんですよ。加賀さんの感じたことを伝えて欲しいんです。」
「・・・まだ確証を得られないから、伝えていいか悩むわ。」
「加賀さん。百戦錬磨の一航戦が何かを感じ取っているんです。確証が無くても大丈夫ですよ。」
「そうですよ。」
「・・・でもせっかくの久しぶりの出撃なのに・・・」
「せっかくだからです。不知火達は無事に帰りたい。」
「うかうかしてて取り返しの付かないことになったらそれこそ久しぶりの出撃が台無しです。」
「・・・そう。わかったわ。」
そう言われては・・・ということで全員に話した。言いようの無い恐怖感を感じること。それが気になって偵察を増やしたこと。流石にすぐ帰りたいとは言わなかったが。
「・・・加賀さんがそう感じるってことはよっぽどのことだよね。」
「最上、あなたも瑞雲を飛ばしてみたら?」
「うん、そうするよ。行けっ瑞雲!」
最上が瑞雲を飛ばす間も偵察を怠らない。何かひとつでもこの恐怖感の正体を捉えられたらと思う。
「久しぶりの出撃が物々しい雰囲気になってきましたね。」
「でっ、でも加賀さんなら何か感じ取るのもわかるかなって・・・」
「そうですね。羽黒さんも水偵を飛ばさないんですか?」
「あっそうだよね・・・」
「私たちも飛ばしとこう。羽黒。」
「うん。衣笠ちゃん。」
重巡の皆も水偵を飛ばし偵察を開始する。今のところ変わった物は見つかっていない。航路を平和そのものだ。このまま気のせいで終わって欲しいが私のこの感覚が不発であった試しは無い。
「・・・?」
「・・・どうしたの最上。」
「今何か見えたような・・・ちょっと呼び戻してみるね。」
「私の艦載機を向かわせるわ。位置を教えて。」
「えっと東に・・・」
どうか気のせいであって欲しい。何もいないで欲しいと思いつつ艦載機の彩雲を向かわせる。そこにいたのは・・・
「・・・ちっ」
「どうしたんですか加賀さん!?」
「潜水艦よ・・・8、9・・・かなりの数ね。」
「潜水艦・・・!?」
「どうしてこんな海域にそんな数が!?」
「提督に打電して。潜水艦多数。こちらに有効打無し。撤退する・・・と。」
「了解!ワレ センスイカン ハッケンセリ・・・」
「・・・帰りましょう。私たちに出来る事はもう無いわ。」
「・・・そうですね。流石にあの数の潜水艦は私達2人ではとても・・・」
自然な流れで撤退出来た。空母が居ると的になるだけだしね・・・
・・・・・・
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・・・
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ああ・・・今日はいい感じで撤退出来た。おやつをもらいに間宮さんのところへ行こう。
「・・・こんにちは間宮さん。」
「あっ加賀さん。おやつですか?」
「ええ・・・」
「今日のおやつはカステラですよ。すぐに用意しますね。」
「牛乳もお願い。」
「はぁい。」
今日はカステラだったか。牛乳と一緒がジャスティスだ。
「お待たせしましたぁ。」
「ありがとう。」
カステラと瓶の牛乳をもらい、外に出る。向かう先はいつもの波止場だ。
「〜♪」
鼻歌も出ちゃう。それほどまでに今日の撤退劇は華麗だった。潜水艦発見から流れるような撤退だった。波止場に着いたらいつもの場所に腰を下ろし、カステラを頬張る。うん、美味い。
「〜〜♪」
牛乳を一口、流し込む。カステラと溶け合い何とも言えないハーモニーが口の中に広がる。幸せだ。
「〜〜〜♪」
つづく