今日は第一艦隊として出撃だ。
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第一艦隊は特別だ。秘書艦は第一艦隊の旗艦として海域の奪取が主な任務になる為艦娘の中でも精鋭が配属される。そこに旗艦として配属された私は緊張しまくっていた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
航路の緊張も張り詰めていた。誰も喋らない。いや喋らなくていいなら楽なので私は助かるのだが、だが!緊張感はいただけない。
「・・・。」
「・・・加賀よ。」
「・・・。」
「おい!加賀!」
「・・・ッ!何かしら。」
武蔵に声を張られてしまいビクッとなりながら言葉を返す。ビックリしてちょっとチビりそうだった。
「航路は間違っていないか聞きたかったのだ。」
「ちょっと待って・・・ええ間違ってないわ。ソロモンへ向けて順調よ。」
「そうか・・・なぁ。加賀よ。初めての第一艦隊旗艦で緊張するのはわかるがもうちょっと肩の力を抜け。」
「そうは言っても・・・」
「まだソロモンへと到着してもいないのだ。肩肘張る必要もあるまい。」
「ええ。大和もそう思いますよ。加賀さんリラックスしてください。」
「・・・ええ。」
リラックス・・・リラックスか・・・いつもはどうやってリラックスしていただろうか・・・まったく検討もつかない。とりあえず深呼吸してみようか。
「スゥーーー・・・ハァーーー・・・」
「ふふっ」
「えっ」
深く深呼吸していると何故だか大和に笑われてしまった。何故!?
「どど、どうかしたかしら。」
「いえ、いつもは冷静沈着な加賀さんがこれほど緊張しているのが面白くて・・・」
面白いとは失礼な・・・だが緊張は解れない。困った・・・これではただの道化ではないか。ソロモンに到着するまで笑いものにされてしまう。それは嫌だ。
「・・・。」
だが何も言い返せなかった。提督は何故私を秘書艦にしたのだろうか。私はよく撤退を進言する艦として有名だった筈だ。それを第一艦隊の旗艦に据えるなんて・・・現場に到着せずに帰れと言っているような物ではないか。
「・・・もうヒトサンマルマルです。お昼にしましょう。」
「わかりました。みなさん!食事にしましょう!」
とりあえず提督の考えは置いておいて・・・食事だ。海上を航行しながら食べられる食事は限りがある。今日の戦闘糧食はおにぎりと瑞々しいトマトが一個だった。
「もぐ・・・」
「あっ!おにぎりの具がからあげです!」
吹雪がおにぎりの具に一喜一憂しているのを横目にトマトにかぶりつく。うんジューシーで美味い。海上に出ると痛みやすい生野菜をなかなか取れないのでこれは嬉しい。だが夜の分はないだろう。昼のうちにビタミンなどを取っておくのだ。
「もぐ・・・」
一足先に食べ終わり、彩雲を放つ。食事中に接敵など興が削がれることこの上ない。周囲を警戒しながらも航行の足を止めない。注意散漫にならないよう真剣に警戒する。
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「はぁ・・・!」
私たちは無事ソロモンへと到着し、戦闘を開始した。正に激闘と呼べる戦いで緊張しているいない等空の彼方へ飛ばすほどだった。
「・・・皆さん状況を報告してください。」
「武蔵、小破だ。燃料は余裕はあるが弾薬が心もとない。」
「こちら大和、損害はありません、ですが燃料、弾薬共に残りわずかです。」
「吹雪です。小破していますが燃料弾薬大丈夫です。
「雪風です!損傷ありません!燃料弾薬共に軽微です!」
「龍驤や。中破しとる・・・燃料弾薬ともに大丈夫やけど発艦はむりやな・・・」
幸いにも損傷は多くない。燃料弾薬共にあと一戦くらいは戦闘には問題無さそうだ。しかし龍驤が中破してしまっている。それに首元をひっかくような嫌な予感がする。この感覚は以前鬼級深海棲艦と遭遇することになった状況と似ている。その時は嫌な感じを振り払ってえらい目にあった。私は提督に繋いだ。
「提督、ソロモンに無事到達、三戦ほどしましたが最深部には未だ到達出来ず、損傷は軽微なれど龍驤が中破して発艦不可。燃料弾薬共に心許ないです。指示を仰ぎます。」
『・・・加賀はどう思う。』
ああ、これだ。私の恐怖感を読んだかのような質問。正直龍驤が中破しているだけあって嫌な予感がするこの先には進みたくない。こうなった時私が撤退を進言した時提督はそれを承諾し撤退を指示するだろう。しかしここまで来ておいて・・・
「・・・ッ」
『どうした加賀?』
最深部にも到達出来ずたかが数戦しただけで撤退とは・・・どう思われるだろうか。初めて旗艦配置でどうなんだろうか・・・しかしこの嫌な予感に相対する気にはなれず、私は口を開いた。
「この先、この戦力で敵と相対するには不安があります・・・よって私は、撤退を進言します。」
『・・・わかった。撤退しよう。気をつけて戻ってきてくれ。』
「はい・・・はぁ・・・」
緊張の糸が解れる。いや解いている場合ではないのだが。どうしても肩を落としてしまう。ああ、やってしまった。初めての旗艦配置でこの体たらく・・・この先やっていくのが不安になる。秘書艦、変えてもらおうかな。
『そうため息をつくな。加賀の感覚は信用しているからな。何か嫌な予感がするんだろう?」
「・・・ッ」
『まぁいい。次は先遣隊を出してからのソロモン攻略をする。それでいいだろう?」
「・・・はい。」
『気を落とすな。気をつけて帰ってくるんだぞ。帰り道も油断するな。』
「はい・・・」
・・・・・・
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私たちが帰って来たのは深夜だった。深夜にも関わらずドックや工廠は騒がしく動いていた。私達の収容が終わると入渠を済ませドックは閉まり、消灯されていった。
「はぁ・・・」
私はというといつもの波止場にいた。提督は早朝にソロモン先遣隊を出す為にまだ働いているが私は休んで良いと暇を出されてしまった。正直、しんどかったので嬉しかった。
「はぁ・・・」
持ってきた紙飛行機を飛ばす。夜の闇に消えていった紙飛行機は私の心を表しているようだった。
「はぁ・・・」
「おおーい加賀ぁ」
「・・・?」
私を呼ぶのは誰だろうか・・・夜の闇から現れて外灯に照らされたのは龍驤だった。
「龍驤・・・」
「加賀・・・今日はすまんかったなぁ・・・ウチだけ中破してもうて・・・」
「いえ・・・運が悪かっただけよ・・・眠れないの?」
「ああ入渠が終わってまだ体が火照ってなぁ・・・それにな?」
「それに?」
「今日の吹雪の加賀当番、出撃が無かったらウチだったんよ。」
なんだ加賀当番って。もしかして既にローテーションシフトが組まれているのか吹雪はそこまでしてくれているのか。
「眠くなるまででいいけど、ちょっち付き合ってくれへん?」
「えぇ・・・いいわよ。」
「おおきになぁ。」
そして私は夜が明けるまで龍驤と語り明かした。
つづく