混ざりたくて 今も奮闘中
キミが こぼした愛は
僕に全部 染み込むのさ
煙のような 街で眠って
喉が渇いてるだけじゃないさ
'終わりだよ'って 'あきらめな'って
僕には No!No!No! 聞こえない
ただ風が 騒いで じっとしてらんない
今日も 探してるんだ
僕にもっと似合う シンプルスカイ
風と 君を呼んで
ここじゃない 世界へ逃げよう
雲が 邪魔したって
ひるまないぜ 吹き飛ばしてみせる
熱くて 吐き出した愛も
いつかきっと 飲み干せるさ
verses of angel
ここはレース場のウマ娘控室。
スポーツの競技者は不安や緊張を和らげ心を整え、集中力を高めるため、試合前に一連の動作「ルーティーン」を行うことが多い。
一言でルーティーンと言っても、"円陣を組む"、"瞑想する"、"胸の前で十字を切る"等、様々である。
ヨシエの場合のルーティーンは、大好きなアーティストの音楽を聴いて、気持ちを落ち着かせることであった。
ヨシエは昔からこのバンドの曲が大好きだった。
出会いのきっかけは何気なく聞いていたラジオからこのバンドの曲*3が流れてきたことだ。
君の夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ
風の強い日を選んで 走ってきた
"身体に衝撃が走る"とは、あの時のようなことを言うのだろう。
それからというもの、ヨシエはこのバンドのCDを買い漁った。
ただ、このバンドの世間の認知度は低く、友人に話しても知っている者はほとんどいなかった。
唯一知っていたのは、ルームメイトのオジュウチョウサンくらいだ。
それもそのはず、このバンドの曲は世間一般ではなく、どこかはみ出し者やひねくれ者に向けて歌っているようなものが多い。
ビッグヒットがある訳でもなく、TV等に出てお茶の間レベルでおなじみになったこともないし、派手な話題で騒がれたこともない。
しかし徐々に、ひとつひとつの積み重ねによって、30年以上歩んできたバンドだ。
ヨシエはこのバンドが歌う曲に、自らの半生を重ねていた。
このバンドは、"どんなに才能が無くたって自分の想いや信じたものには真っ直ぐな人"のために歌っているように思える。
そろそろ出走の時刻が近づいてきた。
「…さて、行くか!」
"終わりだよ"って、"あきらめな"って、私には全然聞こえない。
雲が邪魔したってひるまないぜ、吹き飛ばしてみせる。
ヨシエは今日も走り続ける。
思い描いた夢に向かって。