ドントクライ ヨシエ   作:モービルス

3 / 7
キレイな 夢を見たんだ
混ざりたくて 今も奮闘中
キミが こぼした愛は
僕に全部 染み込むのさ

煙のような 街で眠って
喉が渇いてるだけじゃないさ
'終わりだよ'って 'あきらめな'って
僕には No!No!No! 聞こえない
ただ風が 騒いで じっとしてらんない

今日も 探してるんだ
僕にもっと似合う シンプルスカイ
風と 君を呼んで
ここじゃない 世界へ逃げよう

雲が 邪魔したって
ひるまないぜ 吹き飛ばしてみせる
熱くて 吐き出した愛も
いつかきっと 飲み干せるさ
verses of angel



intermission2 出走前ルーティーン

 ここはレース場のウマ娘控室。

 ヨシエは出走前、あるアーティスト*1の曲*2を聴いていた。

 

 スポーツの競技者は不安や緊張を和らげ心を整え、集中力を高めるため、試合前に一連の動作「ルーティーン」を行うことが多い。

 一言でルーティーンと言っても、"円陣を組む"、"瞑想する"、"胸の前で十字を切る"等、様々である。

 ヨシエの場合のルーティーンは、大好きなアーティストの音楽を聴いて、気持ちを落ち着かせることであった。

 

 ヨシエは昔からこのバンドの曲が大好きだった。

 出会いのきっかけは何気なく聞いていたラジオからこのバンドの曲*3が流れてきたことだ。

 

君の夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ

風の強い日を選んで 走ってきた

 

 "身体に衝撃が走る"とは、あの時のようなことを言うのだろう。

 それからというもの、ヨシエはこのバンドのCDを買い漁った。

 ただ、このバンドの世間の認知度は低く、友人に話しても知っている者はほとんどいなかった。

 唯一知っていたのは、ルームメイトのオジュウチョウサンくらいだ。

 それもそのはず、このバンドの曲は世間一般ではなく、どこかはみ出し者やひねくれ者に向けて歌っているようなものが多い。

 ビッグヒットがある訳でもなく、TV等に出てお茶の間レベルでおなじみになったこともないし、派手な話題で騒がれたこともない。

 しかし徐々に、ひとつひとつの積み重ねによって、30年以上歩んできたバンドだ。

 ヨシエはこのバンドが歌う曲に、自らの半生を重ねていた。

 このバンドは、"どんなに才能が無くたって自分の想いや信じたものには真っ直ぐな人"のために歌っているように思える。

 

 そろそろ出走の時刻が近づいてきた。

「…さて、行くか!」

 

 "終わりだよ"って、"あきらめな"って、私には全然聞こえない。

 雲が邪魔したってひるまないぜ、吹き飛ばしてみせる。

 

 ヨシエは今日も走り続ける。

 思い描いた夢に向かって。

 

*1
ボーカル、ギターの山中さわお、ギターの真鍋、ドラムスの佐藤から成る日本のロックバンド「the pillows」。一般的な愛称は「ピロウズ」。1989年9月16日結成。結成以後、数多くの名曲を生み出しながら、「これぞ」というヒット曲を持たず活動を続けている。始めは芽が出ず、ずっと低空飛行を続けていたが、様々な経験を経て武道館ライブを行うまでに至った。30年以上活動を続けており、これまでにアルバムを22枚、シングルに至っては37枚リリースしている。キャッチコピーは「永遠のブレイク寸前」。

*2
the pillowsの名曲『バビロン天使の詩』。10thアルバム「Thank you,my twilight」及びベストアルバム「Once upon a time in the pillows」に収録されている。PVが非常に個性的。

*3
the pillowsの代表曲『Funny Bunny』。8thアルバム「HAPPY BIVOUAC」に収録されている。発表後にアニメ作品などで使用されたほか、他のアーティストによるカバー・バージョンが発表された。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。