ドントクライ ヨシエ   作:モービルス

6 / 7
──先頭は1番サトノダイヤモンド!!
──間を割って、3番マカヒキ!!
──マカヒキ!!
──サトノダイヤモンド!!
──並んでゴールイン!!
──さぁマカヒキか!サトノダイヤモンドか!2人全く並びました!どっちだ!

そこで私の夢は覚めた
また、いつもの同じ夢だ

私の名は、かつて日本ダービーを制したウマ娘「マカヒキ」

そんな輝かしい栄光も今は昔・・

前勝ったのはいつだっただろうか
思い出せないくらい前というのが正直な所だ・・


intermission3 まだまだいけるさ

 メイクデビューは快勝。

 サトノダイヤモンドと共に、とんでもない新人が現れたともてはやされ、トレーナーには引っ張りだこだった。

 あれよあれよという間にG1レース、日本ダービーに出走決定。レースではサトノダイヤモンドの追撃を僅か8センチ凌ぎきりまさかの1位入線。栄えあるダービーウマ娘となり、14万人の観客から盛大な祝福を受けた。夢の境地とは、まさにあのような舞台のことを言うのだろう。

 その後はフランスの凱旋門賞に出走。凱旋門賞では折り合いを欠いたが、前哨戦のニエル賞を勝利する等、海外でのレース参加は本当に良い経験だった。

 

 ・・そして、現在。

 先日は久々のG1レースジャパンカップに出走し、結果は9着であった。

 アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクト、3人の三冠ウマ娘の死闘を後方から見る形となった。

 アーモンドアイとコントレイル、2人の姿は、日本ダービーでの私とサトノダイヤモンドの姿と重なって見えた。

 私は、マスコミが言うように"もう終わってしまった元ダービーウマ娘"なのだろうか。

 

 トレセン学園ではかつての豊富な経験を活かして、多くの生徒の人生相談役を務めたりなんかしている。

 勝利の味は忘れてしまったが、いろんな人達から必要とされるこんな人生も悪くないな、と思ってしまう。

 もう私も高等部2年生だ。「進路」というものを考える時期に来ている。

 ・・さて、どうしようか。

 ウマ娘の進路は様々であり、フリーランスとなり国内外のレースに出走する強者、ニンジン農場等の農林水産業に携わる者、レースに関わり続けたい思いでトレーナー資格を取得する者、URAスタッフを志す者もいれば、トレーナーと結ばれ家庭に入る者もいる。

 私は何となくだが、後輩の育成に関わる仕事に就きたい、と考えている。

 日本ダービーや海外レースでの豊富な経験を活かし、以前とは違った形でも良いのでレースに携わり続けたい。

 

 

 

          ***

 

 

 

 ある日の夕方、トレーニングを終えて部室に戻ろうとしていた時のこと。

 ふと、練習場の方を見ると、熱心に障害レースの練習をしているウマ娘がいる。

 彼女の名はヨシエ。ジャパンカップに一緒に出走したので見知っている。

 周りには彼女のトレーナーと、あの「障害の絶対王者」オジュウチョウサンもいる。

 何故障害レースの練習をしているか気にはなったが、何とも楽しそうに練習しているのが印象的である。

 ジャパンカップでは、ゴール後に他の選手が地下バ道へ向かう中、マカヒキはビリのヨシエがゴールするまでターフに立ち、レースを最後まで見届けた。"すべての選手に敬意を払う"というのが、マカヒキのモットーである。大差のシンガリ負けであったが、ヨシエは最後まで諦めずに走っていた。そんな彼女を見て、観客席から拍手が沸き起こった。

 マカヒキはしばらくの間、熱心に練習するヨシエの姿を見ていた。

 自分の中に、忘れかけていた熱い気持ちが再び宿るのを感じた。

 

 部室に戻り、トレーナーと次走の打合せを行う。

「マカヒキ、次は京都大賞典に出走するぞ」

 京都大賞典とは、京都レース場で開催される芝2400mのG2レースである。中距離路線における実力者が出走することが多く、今回はキセキやアリストテレスに加え、最近勢いのあるヒートオンビート、地味ながら活躍しているモズベッロ、常識に囚われないウマ娘ステイフーリッシュなどが出走する。

「京都大賞典ですか・・よし、やってやりますよ!」

「お?なんか妙にはりきってないか?」

 トレーナーは、いつもと少し違う様子のマカヒキに気が付いたようである。

「ずっと勝ててないですからね。勝ちにいきますよ!」

 京都大賞典に向けて、マカヒキの猛特訓が始まった。

 

 

 

          ***

 

 

 

『さぁ、実力者の復活か、伸び盛りの新興勢力の台頭か・・G2レース、京都大賞典・・』

 

 ガシャコン!!

 

『飛び出しました!キセキ、好スタートを切りました!』

『正面スタンド前の先行争いです。アリストテレスも好スタートを切っています!』

『ステイフーリッシュも内から上がっていきます。さらには・・あっ、キセキ!休み明けですが3番手、4番手の前目に付けていきました!』

『先頭を取ったのはベレヌス1バ身リード、そしてダンビュライトが2番手、いい感じキセキは3番手、内からステイフーリッシュがいる。アリストテレスは5番手、その外ピッタリとヒートオンビート、さらにはヒュミドールがいて、その外マカヒキです。バ群差がついて、内々アイアンバローズ、オセアグレイト、そしてロードマイウェイ。後方3番手にムイトオブリガード、さらにディアマンミノルがいて、モズベッロ最後方。各ウマ娘3コーナー外周りコースに入っていきます』

 

 キセキ寄りの実況は気になるが、まずマカヒキは中段で様子を見ていた。

 最後の直線で、自慢の末脚に賭けたい。

 

「ハハッ!実況もいいカンジやんけ!行くぜオラァ!!」

 キセキが先頭へと駆け出す。

 

『キセキが押し出した!さぁキセキ!!闘魂注入!!喝が()る!!』

 

 ダンビュライトを先頭に、バ群が最後の直線に入る。

 直線に入り、キセキが先頭に躍り出る。

 

『キセキ先頭に立つ!復活なるかキセキ!アリストテレスも来ている!その後ろはマカヒキ!!』

 

 残り100m、マカヒキとキセキ・アリストテレスとの差はまだ2バ身もある。

 勝負は"キセキとアリストテレスの一騎討ち"、実況を含めた誰の目にもそう映っていた。

 

 しかし、勝負は最後まで分からない。 

 

 マカヒキの身体に、不思議な力が宿る。

 あの時の、ダービーの時のような不思議な力が。

 

「まだだ・・まだ私だって!終わった訳じゃないんだよ!!」

 

 マカヒキの末脚が爆発し、残り50mでさらに加速した。

 京都レース場の誰もが、マカヒキの全身を包み込む白い光を見た。

 

『大外からダービーウマ娘マカヒキだ!!マカヒキここに来て加速!!大外マカヒキ!!まとめて差し切ったァ!!』

 

 最後の最後でマカヒキはキセキとアリストテレスを差し切り、京都大賞典を勝利した。

 久々の、本当に久々の、マカヒキの勝利であった。

 

 

 後にファンの中でこのレースは伝説となり、京都レース場の支柱には次の文章が刻まれた。

 

──誰に何と言われても、その瞳には勝利しか見えていなかった。

  バ群を貫く強い姿、自慢の末脚、彼女は自らの称号を証明した。

  諦めない強い心、信じて戦い続ける気持ち・・

──そのウマ娘の名は・・

 




【登場人物】
・マカヒキ
トレセン学園高等部2年。
非常に落ち着いた性格をしており礼節正しく、中高年のファンが多い。
日本ダービーでのサトノダイヤモンドとの激戦はあまりにも有名。
また、フランスの凱旋門賞にも出走した経験があり、人生経験も豊富である。
上記のことから、トレセン学園のウマ娘の人生相談役になることもしばしば。
主な勝ち鞍:東京優駿(日本ダービー)(GI)、弥生賞(GII)、京都大賞典(GII)

・キセキ
コテコテの関西弁を話すウマ娘。トレセン学園高等部1年。
文化祭などの行事を盛り上げるのが大好きであり、「トレセン学園の宴会部長」と呼ばれている。
一方気性が荒い面があり、スタートダッシュが苦手。
主な勝ち鞍:菊花賞(GⅠ)



【あとがき的なもの】
今日はダービーなので記念に

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