青年が生まれつき目の悪い青年がいた。日曜日だったが、青年が親からお使いを頼まれ地元の店に向かって歩いているとある男とであった。全身真っ黒のスーツを身に纏い、黒のシルクハットの帽子をかぶった妙齢の男だ。
男は水筒をもっており、いきなり青年に話しかけた。
「キミ。目が良くなりたいと思ったことはないか?」
青年はやばい人に絡まれたと思い無視して逃げようとしたが手をつかまれ、話を続けられる。
「最近良いものが手に入ってね。この水筒に入っている水を飲むと目が良くなるんだ。見たところキミは目が悪いんだろう?試しに飲んでみないか?」
青年はめがねをかけており、手には杖を握っていたため、変な人にから
青年は逃げようとするが、男の握る力が強く走ることも、ままならない青年は会話で抵抗しようとした。
「興味ないn..ムグッ!」
男は振り返る青年に水筒を無理矢理飲ませていた。
「プハッ!いきなりなにするんですか!?」
「強引だったがすまなかったね。よく周りを見てごらん。これがこの水の効果だ。」
青年は咳き込みながら周りを見渡すと今まで見えなかった距離のものが、ぼんやりとだが見えるようになっており、先ほどの男の言葉が虚言や妄言のたぐいではなく、事実なのだと理解してしまった。
買い物を終えた青年は感動していた。普段店員に何が目の前に置いてあるか聞きながら歩き、商品を選んでいたが、近くで見れば商品の字も形も見えるようになっていたからだ。家に帰り、家の景色をしばらく見た後もう一度水を飲もうと水筒に手をかけるがふと止まった。男がある注意をしていたからだ。
「水を飲むのは1日ひとくちまでしか飲んではいけないよ。体が慣れるまで時間が必要なんだ。」
と注意していたからだ。
「あぁ..それともうひとつ注意することがあってね。自分で満足できるとこまで見えるようになったらそこから飲むのはおすすめしないよ。」
青年は明日が来るのを待ち遠しく思った。
次の日青年は目が覚めてめがねをつけた後、すぐに冷蔵庫に入れてあった水筒をのみ、効果を実感した後昨日のことが夢では無かったと確信した。なぜならめがねを付けながらではあるが、日常生活を送る上では困らない程度に目が良くなったからだ。
その日は杖を持って行かずに学校へ笑顔で向かった。家族や友人からは目が良くなったことを素直に祝福され、普段自分が見ることの叶わなかった景色のきれいさ、人と会話をしながらその人のうれしそうな表情や仕草が見れて感極まった。
そしてさらに水筒の水を飲めば、めがねというフィルターも通さずに今の景色が見れるのではと期待した。
3日目、青年はめがねをつけることも忘れて水筒の水を飲んだ。すると遠くまで見ようとするとぼやけたままだが、日常生活を送るのにめがねも必要ないほどに見えるようになった。
その日は1日中めがねをつけずに過ごし運動をするときも、人と話すときも、ふと横になったときでさえストレス無く動け、僕はなんて縛られた生活を強いられていたのだろうと今との生活とのギャップを感じ、それ以上に今以上に目が良くなれば遠くのものを見るのに目を細めたり、近くまで寄らずともよくなることに期待を抱いた。
4日目、青年は普段より2時間早く起床し、近くに置いてあった水筒を飲んだ。そして部屋の窓から外をのぞくとそこには信じられないほど綺麗な景色が広がっていた。道路についた車のブレーキ痕から何十軒も遠くにある家の洗濯物からさらに遠くの山々の形さえ鮮明に見え、感動のあまりその場に泣き崩れてしまった。
その日はめがねも杖も捨て、朝から散歩をした。近くの段差に気づかず転ぶことも、遠くにいる見知った顔の人が歩いてくることも、歩くたびに変わる輪郭のハッキリしている景色もすべてが青年にとって新鮮だった。太陽が昇り始めたときの町の景色も、、真上にあるときの揺らぐように見える地面も沈むときのオレンジに染まる町並みをも見ている間に町は暗くなり始めており、そこで初めて時間も学校も忘れて1日中歩いていたことに青年は気づいた。
家に帰ると心配していたのだろう、両親がいて怒られつつ泣きながら安心する様を見て青年はほっとした。
そして、青年はもう一度水筒の水を飲んだらどうなってしまうのか想像できなかった。
今まで目の前の物でさえ判別出来なかったのが、ぼんやりと見えるようになり、輪郭がハッキリし、遠くの物まで近くで見るように見えてしまった。なら今度は?
その日の晩、青年は1日中歩いたせいで疲れていたにもかかわらず眠れなかった。今見える景色に感動していたのも原因だろう。寝たら全て夢だったのではないかと思ってしまうほど幸せだったのだから。
しかし、それ以上に次の日に見る景色を想像して興奮が収まらなかった。そして0時を過ぎた瞬間、水筒の中の水を飲んだ。そして窓の外を見渡すが、なにも変わった様子はなかった。
朝見た景色と何も。
いつの間にか寝ていた青年は起きると時計は23時を指しており、昨日の疲れと、見える景色が変わらないこと似脱力したせいで、ほとんど1日中寝て過ごしていた。そして起きたとき青年は違和感を抱いた。部屋は真っ暗であるはずなのに部屋の中が見えるのだ。鮮明に。思い返せば昨日の夜に見た景色もおかしかったのだ。夜中に見る景色なのだから、暗くて見づらかったり少なくとも周りの景色はほとんど黒に埋め尽くされているはずではないか。
青年は目が良くなる水を飲んでから夜景を見たことはなかったが、それでも自分の見ている景色がおかしいことは理解してしまった。
なぜ、真夜中に町の景色が鮮明に見えるのだろう。
青年は恐怖した。しかし時間が経つにつれ、暗くても見えることは不便ではないし、むしろ夜景が見れなかったのは残念だったが、夜にも散歩が出来るようになり、悪いことばかりではないのではと思い始めた。
そして水筒を持って夜の散歩に出かけた。しばらく歩き、ふと携帯で時計を見ると0時を回っていた。
青年は水筒の水を飲むか少しの間考えた。明らかに今見ている景色は普通ではない。だが、ここから先の景色は生まれてからほとんど目の見えなかった自分に与えられたいわばチャンスなのだ。今まで自分が見れなかった景色を当然のように見ていた周りの人たちを見返すことの出来る唯一の。目が悪くて不便だろう?と蔑んだり、貶したりされてきた持っていて当然の物を持たずに生まれた自分が周りの人に言ってやるのだ。
そして水筒の水をさらに飲んだ。
そして昨日と同じように景色は変わらなかった。
いつの間にここまで来たのだろう。ふと気がつくと学校で青年は授業を受けていた。黒板を見て、ふと教室の壁側を見るとそこには廊下があった。一瞬違和感なく思ったが、青年は二度見することになった。ドアが開いているわけでも小窓が越しに見ているわけでもない。壁が。無いのだ。いや、よく見ると透けているようにして、壁の奥にある廊下を見ていた。するとさらに奥の校舎の壁も透けて見えた。
その後は教室から幾つもの教室や店、家、マンションだけでなく、電車や飛行機の中まで覗いた。目の届く範囲は国内だけに留まらず、海外の至る建物にまで届かせ、施設だけでなく町並み、自然、地下の中まで観察していた。
そして学校が終わる頃まで彼は瞬き1つしていなかった。
彼は家に帰ってからすぐに寝てしまった。その後親が夕食の準備が出来たと起こしに来ても、家の近くで騒音が鳴り響こうともぴくりとも動かなかった彼だが夜中の0時ちょうどに唐突に体を起こし、水筒を手に取り、口に近づけた。近くで誰かが言っている。もう1度だけ飲みたいと。誰かが言っている。もう飲んではいけないと。
誰かが。
誰かがだれかがダレカガ誰かがだれかがダレカガ誰かがだれかがダレカガ誰かがだれかがダレカガ誰かがだれかがダレカガ誰かだれかダレカダレカ誰かだれかダレカダレカ誰かだれかダレカダレカ誰かダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカダレカ
自分はダレなのだろう。
次の朝、ソレは目覚めた。いつものように朝の支度をし、学校へ向かった。朝両親と少し会話をしたが何か両親の姿に違和感を覚えたがあまり気にならなかった。
そして歩きながらヒトとすれ違うたびに違和感を覚えた。
そして教室にたどり着き、多くのクラスメイトを見た瞬間違和感に気づいた。
ヒトのからだがすけているのだ。
昨日のようによく見なくてもヒトの皮は無く、筋肉、骨、肉が丸出しで、理科の実験に使う模型のようにソレからみるヒトは見えた。よく見ようとすれば血管から内蔵、その中の菌一つ一つすら見ることが出来た。
そしてふと何かを気になって横を見ると親しいユウジンがいた。
何か言葉を発しているように見えるが何も聞こえない。
だが、自分を心配しているようなことを話している。
いや、気味悪そうに、何かに怯えながらソレを確かめるように話している。
はて。なぜそう思ったのだろう。聞こえていないはずなのに。
そう言えば朝から音を聞いた記憶が無い。朝に聞こえる鳥のさえずりも。両親の言葉も。キッチンで朝食を作る音も。ヒトの歩く音も道路を走る車の音もドアを開ける音も
自分の声も。
ふと気になってトイレの方まで行き、鏡をみた。
そこには首から下は普通のダンシセイトの格好をしているが、頭の部分は顔が無くなっており、その場所に大きな1つの目玉が代わりに生えていた。
ナンダ。ジブンジャナイカ。