仕事が命がけすぎて死んだふりして逃げたいんだけど………   作:じゃがありこ

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プロローグはこれでおしまい。後半は普通の小説です。


第2話

仕事が命がけすぎて辛いんで死んだことにして逃げたいんだがw

 

 

174: いっち

ただいま

 

175:名無しの転生者

お、帰ってきた

 

176:名無しの転生者

おかえり、イッチ

 

177:名無しの転生者

はよ、報告しろ

 

178:いっち

あー、実はまだ実行してないんだよね………すげー、不測の事態が起こっててな?

 

179:名無しの転生者

は?まだやってないの?

 

180:名無しの転生者

は?イッチマジか。ファン止めるぞ?

 

181:名無しの転生者

イッチ君………

 

182:名無しの転生者

安価は絶対だろ?

 

183:名無しの転生者

話ぐらいは聞いてやるよ

 

184:いっち

任務には誘えたし、準備も整えた(血液パックとか) 。内容は魔物の討伐。目標の魔物と遭遇 (森の中) 。上手いこと猫耳を庇って死んだふりをしようと思ったら、別の魔物が乱入。見たことのない人型の魔物だった。そいつが暴れて目的の魔物は瞬殺。こっちにも襲いかかってきて、二人とも負傷。いったん距離を取って作戦会議。ちなみに、ワイの10倍は魔物の方が強いな。猫耳よりも強い。

 

任務に行く前にここともおさらばかっていう感傷に浸って、校長にどや顔で「これはもう必要ありませんから」って言って予備の武器とか置いてきた。

 

185:名無しの転生者

あ〜理解した。完全に理解した(白目)

 

186:名無しの転生者

情報量の多さよ

 

187:名無しの転生者

で?どうするんだ?

 

188:いっち

安価する

 

189:名無しの転生者

は?

 

190:いっち

攻撃が通らないかつクソ強い魔物をどうにかしたい。いい感じに猫耳を庇えてセリフも言える方法

 

>>206

 

191:名無しの転生者

イッチやけくそになってる?

 

192:名無しの転生者

そら、ここにきて逃げ帰るわけにはいかないもんな

 

193:名無しの転生者

しゃあねぇ、やるか

 

194:名無しの転生者

たまげたなぁ………

 

195:名無しの転生者

地形がわからないと案が出せない

 

196:いっち

山奥の森の中。少し行ったところに川とその上に崖がある。今は森の中の切り株に身を隠している。

 

197:名無しの転生者

ああ、それは一つしかないな。

 

198:名無しの転生者

っていうか、イッチも考えていること同じだろ………

 

199:名無しの転生者

情報が局所的すぎるもんな。転生特典で成功率を上げたいんやろ?

 

200:名無しの転生者

協力してやるか………

 

201:名無しの転生者

崖までおびき寄せて川に落ちる

 

202:名無しの転生者

魔物と一緒に崖から落ちろ

 

203:名無しの転生者

魔物だけ落とすなんて許さない。お前も一緒に川にダイブしろ

 

204:名無しの転生者

人型の魔物かぁ………

 

205:名無しの転生者

みんな鬼だろw覚醒して、倒せばいいだろう?

 

206:名無しの転生者

お前が一番鬼畜だ。あえて、猫耳を崖から落として自分が囮になれ

 

207:名無しの転生者

これイッチが死んだふりじゃなくて純粋に死にかねないのでは?

 

208:名無しの転生者

もう一回安価しろ。逃げ切る方法を教えてやるぜ

 

209:名無しの転生者

魔物から逃げきる方法………

 

210:名無しの転生者

 

211:名無しの転生者

イッチがここでゲームオーバーはつまらない

 

213:名無しの転生者

流石にな

 

214:名無しの転生者

安心しろ、きちんと逃げさせてやる

 

215:名無しの転生者

お前らはどこ視点なんだww

 

216:いっち

逃げ切る方法

 

>>228

 

217:名無しの転生者

走れ

 

218:名無しの転生者

どうにかして魔物の足を斬り落とせ

 

219:名無しの転生者

倒せばええんやで

 

220:名無しの転生者

勝てばいいだろ

 

221:名無しの転生者

覚醒しろ

 

222:名無しの転生者

覚醒しろ

 

223:名無しの転生者

転生特典使え

 

224:名無しの転生者

上手いこと罠に嵌めろ

 

225:名無しの転生者

魔物も崖から落とせ

 

226:名無しの転生者

みんな鬼畜過ぎ

 

227:名無しの転生者

走って逃げる

 

228:名無しの転生者

魔物と戦いつつ覚醒して、寸でのところで負ける。相手の攻撃を受けて、森に吹き飛ばされる。で、血で跡を作りつつそことは違う方角にいい感じに逃げる

 

229:いっち

後で呪ってやるからな

 

230:名無しの転生者

まともなの引いたな

 

231:名無しの転生者

適切な当たりだから実質大丈夫

 

232:名無しの転生者

主人公ムーブだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつを崖におびき寄せて落とす。で、ここから逃げる。これが最善だろ」

 

夜光は雨の降ってきた空を見上げて、相棒の少女に提案した。お互い肩で息をしている。夜光の方は狙撃銃は破損し、近接用の刀に切り替えている。凛のほうは武器は無事なものの、夜光が表情を盗み見ると痛みに顔を歪めていた。太ももに走る切り傷からとめどなく血が流れ出している。それ以外にも至る所に傷がついていた。それは近接戦を得意とし、速さと魔力で相手を圧倒する凛にとって最大の武器を殺されたも同然といえる。しかし状況がより絶望的になったことで 、逆に夜光の頭を冷静にさせていた。掲示板の奴らは許すわけないが。

 

「どうやって崖におびき寄せる気ですか?」

 

「どっちかが囮になるしかないだろうな………まあ、俺がやるさ」

 

「は?夜光はバカなんですか?」

 

「いやいや、超冴えてるって」

 

「私より弱い貴方が囮をやるんですか?死にますよ?そんなんだから、童貞なんですよ」

 

「童貞関係ないだろ、お前が言いたいだけだろうが」

 

「私は天才です。だから問題ありません」

 

なおも食い下がる少女に夜光はデコピンを放つ。

 

「ッ!?何するんですか!?」

 

「でかい声を出すなよ。隠れてる場所がばれるだろ」

 

「………こ、この男」

 

「いいか?天才だか何だか知らないが、お前が怪我をしている事実は変わらねえんだ。『怪我人は引っ込んでてください。何のためのチームなのか考えてください』お前の言葉だろ?」

 

「………」

 

「お前のことは頼りにしてる。俺の攻撃がほぼ通じない以上、お前に懸かってるんだ。頼むぜ、あの日約束しただろ?俺もお前も計正も有栖さんも絶対に死なないで成人するって。お前にだって俺は死んでほしくないんだよ」

 

夜光が笑いかけると凜はため息を吐いて、薙刀を握りなおした。耳がピコピコと動き、尻尾が僅かに揺れる。

 

「すいません、冷静じゃありませんでした」

 

凜は頷くと立ち上がり移動を始める。夜光を見た後、立ち上がり派手な音を立てて魔物の前に姿を現した。魔物は夜光を視認するとクラウチングスタートで追いかけてきた。

 

「GIGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

夜光はそれを見て口角を上げた。そのまま、崖の方まで魔物をおびき寄せていく。そして、凄絶に笑みを浮かべて吠える。

 

「真っ向勝負と行こうかッ!」

 

そう言い残した後、地面を蹴った。濡れた足元の不安定さなど、微塵も感じさせない強烈な踏み込み。爆発するように雨の雫が周囲に入った空気を弾いていく。そして、少年の刀が………夜光の攻撃が迫った。魔物はそれを腕で受け止める。魔物の腕が固いのは想定の範囲だった。

 

「斬るなら首だろッ!」

 

離れた足を再び地面に着けるよりも早く、夜光は腰を蹴りぐるんっと駒のように全身が回るその勢いを乗せ、切っ先と右の足から放たれる蹴りがそれぞれ魔物の首と胴体を狙う。魔物は無造作ともとれる動きで異様に伸びた爪の刃を振るった。切っ先が少年の刀の真ん中に軽く触れた。それだけだった。それだけのはずだった。だが、加えられたわずかな力が精妙だった夜光の技術を、そのうちに流れていた力のバランスを完膚なきまでに壊してしまった。左に振り抜くはずだった刃が斜め下に打ち抜くはずだった踵が逸れていく。

 

「クソッ!理性的すぎるだろ!?ほんとに魔物なのかよッ!」

 

もはや攻撃どころではない。完全に制御を失って、地面に倒れる瞬間夜光は男を見せる。

 

無理な体勢で手を突き、その足めがけて刃を振るった。僅かに傷がつく。一瞬怯んだことが起点となり、戦況が変わる。

 

「『鳴電雷』ッ!」

 

轟音と共に雷光が瞬く。薙刀から放たれた轟雷は確実に、魔物にダメージを与えていた。

 

それでも、彼女の焦りはかき消えない。圧倒的な才能と経験値で武器を振るう少女。それに対し魔物の爪剣の動きは緩やかで無駄が多いようにも見える。しかし、その緩やかな剣が少女の渾身の攻撃を悉く凌いでいる。

 

「あああああああああああああッ!!!」

 

凛はまるで手応えのない水を斬っているような感覚に歯ぎしりした。そして、不安を振り切るように声を上げる。

 

やがて決着の時が訪れる。パンと甲高い音とともに少女の手にあったはずの薙刀が空高く打ち上げられた。明後日の方向に弾かれた刃が甲高い音とともに地面に転がる。

 

そして次の瞬間には―――――――少女の胴体を魔物が穿って………

 

そんな未来を見た夜光は寸でのところで、二人の前に割り込み魔物の攻撃を胴体で受けた。不自然なほど周囲に散っていく鮮血が少女を動揺させる。魔物はその感触に困惑する。

 

そして—————夜光は

 

「さようならだ。凛。お前のこと、結構好きだったぜ………」

 

夜光はフッと場違いなさわやかな笑みを浮かべると少女を突き飛ばした。

 

「あっ――――――――」

 

伸ばされる少女の手を少年は掴むことはなく、ただただ安堵したような笑みを浮かべているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夜光 = いっち
凛 = 猫耳美少女

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