夏油傑は呪術師だ。
5歳の時には術式を発現し、7歳の時には呪霊に乗って空を飛んでいた。
そんな傑は、10歳の12月24日深夜、空を飛ぶものを見つけた。
それが、サンタクロースだった。
「おや。クリスマスイブはちゃんとベッドにいないとプレゼントを貰えないよ?」
「貴方はサンタさんなの?」
「そうだよ。私はサンタクロースだ。しかし、君はサンタネットワークにはいなかった子だね。何故か登録されない子供がいると聞いたが」
サンタさんは呪霊に取り憑かれて、疲れた顔をしていた。
傑は、もちろんそれを祓ってあげた。
「おや、スッキリした」
「そうだよ、僕はいい子なんだ。だからプレゼントを頂戴」
「いいよ。私も君の事が知りたい。君の事を知れば、未登録の子供が減るかも知れない」
そうして、傑は名誉サンタクロースになった。
サンタクロース達は皆、非術師なので、呪霊を祓う存在はとてもありがたがられた。そして、サンタクロースの加護を受けた傑がサンタクロースの魔法を使うことで、サンタネットワークに呪術師が登録されるようになったのだ。
ただ一つ、問題があった。
プレゼントを渡す難易度が高いのである。
何故なら、呪術師は日本を護る戦士だったから。
傑はその生き方に感銘を受けた。そして、術師の子供達の環境が大体の場合悪い事に心を痛めた。
結局、プレゼントは保留になってしまった。
「悔しいかい? 傑くん。君が大人になったら、状況を変えるんだ。次代の呪術師担当のサンタクロースは、君だ」
傑は決意を込めて頷き、より一層の研鑽に努めた。
呪術も頑張ったが、サンタとしての勉強もそれはもう頑張った。
そんな傑だが、転機が訪れる。
「東京都立呪術高等専門学校に入学してほしい」
スカウトである。考えてみれば当たり前の事だ。
そして、呪術師の事をもっとよく知る必要があった。
「運送会社に就職予定なので、12月のクリスマス商戦時にはお休みをいただいて良ければ。あと、中退して良ければ」
「運送屋? 呪術師はもっと稼げるが」
「私はそこに就職したいんです。免許も取れ次第取る予定ですし」
「わかった。呪術師の事はおいおい知っていけばいい」
「ありがとうございます」
こうして、傑は呪専に入学した。
望んでいた情報は得られた。
一番の難関は、やはり御三家だ。
無謀じゃないかって言われたけど、一番プレゼントをあげたい悟は15歳。
クリスマスの時は16歳になってしまっている。
サンタの特権まで使っても、今年のクリスマスが子供判定されてプレゼントをあげられる最後の年なのだ。何故なら、サンタのクリスマスは6歳から15歳までが対象だから。今年は悟もクリスマスは帰るという。なおさら、御三家への潜入は必須だ。
だから、頑張った。頑張ったけど。
「傑。信じたくなかった。……説明しろ。どうしてこんな事をした? サンタクロースです、なんてクソな言い訳しないよな?」
私は五条家に囚われていた。
どうしよう。もう間に合わない。どうしよう。待っていてくれる子供達がいるのに……!
「泣いてもすまねーんだって」
「だって悟。私のせいで、私がヘマをしたせいで子供達が泣いちゃう」
「人質か、俺だって泣きてーよ。なんで相談してくれなかったんだよ」
「悟様」
そこで、悟に五条家の人が声を掛けた。
「袋の中身、全てプレゼントでした」
「は?」
「全てのプレゼントにカードや手紙が添付してあって、禪院家や加茂家の名前もあります。子供達の年齢、顔写真とランクのようなもの、住所と家の間取りとランクのようなもの、あとはサンタさんへの手紙ですね。それも、部屋いっぱいになる程の量で、袋は空間拡張されていたようです。悟様はBで五条家はSでした」
「何それ。袋は普通の袋に見えたけど?」
そこで、悟はプレゼントを見にいくのか、下がっていった。
「だから言っただろ、新米サンタに呪術師はまだ早いって!」
「先輩!」
トナカイコスプレをした先輩が宙から現れ、私を掴んだ。
「飛ぶぞ!」
「飛ばせるかよ」
いつの間にか戻ってきた悟に先輩は気絶させられる。
「あああああ! 先輩! トナカイ先輩!」
悟は頭を抑え、私を指差した。
「サンタ? 本物? まじで?」
悟がトナカイ先輩の首を握る。
「ら、乱暴はやめてくれ! 家宅侵入は悪かったけど、何も盗ってはいないし、傷つけてもいない! 真実だって縛るよ!」
「俺は傑が本物のサンタかって聞いてんの」
「わ、私は……言えない、言えないんだ悟」
ボロボロと涙が溢れる。私のせいで、先輩が殺される。
「そうかよ。で、子供達にプレゼント届ねーとお前とトナカイ先輩、やばい?」
「呪、呪術師へのプレゼント、初めての試みなんだ。これが失敗しちゃうと、来年またクリスマスが中止になっちゃう。私、悟と硝子に、どうしてもプレゼントあげたくて。だって、15歳までしかクリスマスプレゼントあげられないのに」
悟は頭を掻いた。
「……プレゼントは配らせておく。ただし、ポストや玄関先に投函するだけな。禪院家とか加茂家に侵入なんて、無理だから! お前、明日絶対学校来るって縛れよ」
私はこくこくと頷いた。
そうして、私とトナカイ先輩は解放され、翌日、学校に行った私は早速先生と悟に呼び出しを受けた。
「サンタクロースか……にわかには信じがたいが」
「ということで、傑。説明してほしいんだけど」
「人違いじゃないかな」
「傑。トナカイコスの奴。もう身元確認してるんだけど? トナカイ運送だっけ? そういえば傑も運送会社に勤めるって言ってたよな? 傑が話してくれないなら、こっちで勝手に上層部に報告して調査するけど」
私は観念して、話した。
サンタクロースであること。
術師の子はサンタクロースの子供リストから漏れること。
自分がサンタクロースの力を継ぐことで、術師も子供リスト入りできるようになったこと。
あまり恵まれていない子供が多い事。
そんな子達にプレゼントを贈っていきたいと願っていたこと。
今年から術師専用のサンタクロースとして選ばれたこと。
「サンタクロース……そして術師の子供リストか」
「大人しく差出人不明の荷物にしておけよ。子供の枕元は無茶だって。寝てるともかぎんねーし。で。ランクって何」
「いい子ランクと家の侵入難易度だよ」
「俺はBか……なんでだよ、そこはSだろ」
「魔法が判定した独自のランクだから……Bは十分いい子だよ」
「良かったじゃないか、悟。……傑。その慈善事業、後援に呪専を加えることは可能か」
「あ。ずりぃ。五条家も後援する。てかさせろ」
「でも、この事業は極秘事業で」
「初手でバレるようなら隠すの無理だって。諦めろ」
そうして、サンタ事業呪術部門は呪専の後援を受けることになったのだった。
私はしばらく監視付きになったが、プレゼントのおかげで悟が任務で一命を取り留めたというので良かったと思う。
そして、2年目の冬。
12月に入った。先輩や一年生が部屋に押しかけてくる。勿論悟や硝子も。
「傑ー! サンタの仕事見せて!」
「私にも見せろ」
「良いけど、近づいたら駄目だよ」
「なんで?」
「プライバシーがあるからに決まってるじゃないか」
私はサンタの魔法を行使して、サンタネットワーク(術師部門)を起動。リストの最初の名前をタップすると、その子の書いたサンタへの手紙と妖精さんの用意してくれた素行調査表、宛名シールが出てくるので、合わせてプレゼントを考える。
「それ何?」
「サンタさんへの手紙と、素行調査表だよ」
「怖」
「私の分もあるのかい?」
「冥冥先輩は、私が就任したのが遅かったので、すみません。5歳から15歳までなんですよ」
「そこを何とか。私はいい子だろう?」
「わかりました。手伝ってくれるなら、余ったプレゼントをお一つ横流しします」
「任せたまえ」
「俺もする! 何すればいい!?」
「私がプレゼントを作るから、呪専のパンフレットと夜蛾先生の手紙を一緒にサイズのあった箱や袋に入れて、宛名シールを貼ってほしい」
「お任せください!」
「私もやるわよ!」
私は、懸命に考えて、その子にぴったりのプレゼントをサンタの魔法で創造する。
それに呪専のパンフレットと夜蛾先生の手紙を添えて、用意した箱に入れて、宛名シールを貼って完成!
「今のプレゼントは何?」
「内緒だよー」
「プレゼントってこういうふうに作るんですね」
「サンタさんの仕事って感じです」
「郵送にしたんだ?」
「そう。送料は呪専持ちだって。まあ、クリスマスイブには非術師部門の応援に行くから忙しいんだけどね」
「12月はずっとサンタ業するんだっけ?」
「実は私、プレゼント生成の際に呪力が混ざっちゃうんだ。それで、一般向けのプレゼントが作れない事が発覚してね。そういうわけで、12月は授業も任務も10日間程度の休みで出られそうだよ。当日の配達も術師部門はないしね」
「それなら、卒業しても術師出来る?」
「出来るよー」
「やった」
それから、私は子供達に細やかな幸せを与え続け、無事次世代にサンタクロースの力を継承した。
私は知らない。
自分に与えられた本来の運命を、サンタになって薙ぎ倒したなんて。
ただ私は、正義のヒーローを貫けたことを喜んでいた。
プレゼントはもれなく呪具だったりする。
サンタ仲間は皆非術師でいい人なので闇堕ちしない。
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マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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