無駄に強い六腕   作:ベルゼバビデブ

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第一話です。


絶技!"空間斬"のペシュリアン!

 セバスは現れた敵を仲間達に任せ、屋内へと進んでいく。

 

 八本指の六腕の一人、全身鎧に身を包む一人の騎士は四本腕の三本指の蟲王の前へ歩み出ると一度軽く礼をする。反射的に蟲王…つまりはコキュートスも武人としての心から礼を返す。

「俺は"空間斬"のペシュリアン。まずはアンタの名を聞こう。礼ができるんだ。言葉くらいわかるだろう?」

「コキュートスダ」

 コキュートスはハルバートを構え、目の前の騎士から溢れる闘気とも言える何かをその肌で感じ取っていた。目の前の相手は--強い--それだけはわかる。そしてそれはペシュリアンも同様だった。

「ではコキュートス殿!最初から全力で行かせてもらう!喰らえ武技"空間斬"ッ!!」

「ーッ!?」

 ペシュリアンが剣を振るうとその空間斬という名に恥じぬ様に空間に亀裂が入る。そしてその亀裂の左右で景色がズレた。コキュートスは自身の身体が軽くなった感覚を覚えると左手の一つが切られていることに気がつく。そしていつのまにか空間の亀裂は消えており景色も元に戻っていた。

「俺の空間斬は全てを切り裂く技、この俺に切れぬ物…無し!次は胴体だ!!」

 そんな宣言に黙ってやられるコキュートスではない。即座にハルバートを構え、一気に駆け出す。アレほど強力な技なのだ、リキャストタイムは必ずあるとそう判断したコキュートスは次の空間斬が飛んでくる前に決着をつけんと3本の腕で猛攻を仕掛けていた。

 ガキンカキンと度々鳴る金属音と、コキュートスの猛攻の前に防御するしかないペシュリアンの構図は一見、コキュートスの優勢に見えるがそれは間違いである。

「決メ切レヌ…!」

「どうした?そんなもんか?」

 コキュートスの読み通り、ペシュリアンの武技、空間斬は正に絶技、決まれば全てを切り裂く必殺の技だが、無論強い技にはそれなりの対価を要する。それが使用する集中力であり、再使用までの時間である。本当を言えばペシュリアンは最初の空間斬で決め切れなかった事でだいぶ焦っていたのだ。最初の一撃は確かに体を真っ二つに切り裂く様に放った筈だが、コキュートスの類稀なる闘いのセンスとも言える何かが成せた技か、空間斬を喰らう瞬間右に避け、腕の一本を失うだけに留めたのだ。しかしながらペシュリアンとて絶技を放てる程の剣士、コキュートスの腕3本が放つ程度の猛攻であればなんとか防御に徹すれば対応圏内であった。そして、リキャストタイムが終了し、再度の絶技を放つ。

「コキュートス殿、俺にこの技を2度打たせた貴殿の事は忘れぬぞ!四つ腕の異形たる武士!さらばだ!武技、空間斬ッ!!!」

 放たれた空間斬は横一文字、先程と同様に空間の亀裂により景色がズレる。コキュートスの身体とて例外ではない。そして地に落ちたのは3本の腕。

 

 そう、3本の腕のみ

 

「馬鹿な!?俺の空間斬を…!?」

 コキュートスは放たれた空間斬を3本の腕を犠牲に防御、コキュートスは気づいていたのだ。確かにこの技に切れないものは無いが、その範囲には限りがある。当然だ。空間の亀裂と景色のズレは無限に広がるが、先程とて気付けば元に戻っていた。切れるのは狙った箇所のみで後の部分は演出、ただのエフェクトでしか無いのだ。それに気づいていたコキュートスは自身の胴体の前に3本の腕による防御を展開し、自身の胴体が真っ二つに切り裂かれることを回避したのだ。

 しかしながらペシュリアンとてその光景には驚いたものの、相手の腕を全て刈り取ったのだ、俄然自身が優勢と気を持ち直し、二度の絶技で悲鳴をあげる自身の肉体に鞭を打ち剣を振るう。

「見事だ!二の太刀要らずと思っていた俺に3回目の攻撃をさせるとは…!」

 その斬撃はコキュートスの首を切り落とさんと放ったもの。しかしそれは2本のブロードソードに防がれる。

「ペシュリアン殿、貴殿ノ空間斬、正ニ絶技。実ニ見事、ソノ技ヲ会得スルマデノ鍛錬ヲ思エバ同ジ武人トシテ感服スル。」

「ば、馬鹿な!?」

 ペシュリアンが驚くのも当然、コキュートスの腕は4本とも生え揃っていたのだ。

「…済マナイナ、一日ニ一度ダケ、腕ノ瞬時再生ガ可能ナノダ。」

 コキュートスの種族は蟲王、防具はつけられず己の外皮鎧が頼りだが、伊達に蟲の王とは名乗っていない。膨大な魔力とそれなりの生命力を一気に失うが、欠損した部位を再生させることも出来なくはない。最初の一撃で失った一本を再生させなかったのは油断を誘う為…などではなく、単にこれこそが彼の奥の手であり、同時にピンチを作りうるからだ。再生したばかりの箇所は当然元よりは弱く動きも鈍い。生命力を消費することで更に動きは鈍る。それ故に2度目の空間斬を待ったのだ。今のペシュリアンは空間斬の2度目の使用で集中力と疲労の消費が激しい。毎日励んだ鍛錬を嘲笑うかの様に肩で息をする始末である。そんなペシュリアン相手ならば多少動きの遅いコキュートスでも対応可能。最早決着は明白だ。振われたハルバートをなんとか剣で防御するものの、そのまま剣はどこかへ弾かれる。最早次の攻撃を防ぐ手が無い。

「…見事。」

「ペシュリアン殿モナ。」

 コキュートスのブロードソードを突き付けられたペシュリアンは敗北を認め、目を閉じた。

 

 上には上が居る。相手が化け物であるならば仕方のない事だ。

 

 そんな風に諦めたペシュリアンだが、いつまで経っても死んだ実感がない。コキュートスほどの腕であれば相手に死んだと気付かせる事もないのかと目を開ければ首は繋がったままである。

「うん?うん?」

 ペタペタと体のあちこちを触ってみてもきられた箇所は見当たらない。そんな様子を見兼ねたコキュートスは

「ペシュリアン殿、我々ノ仲間ニ成ラナイカ?」

 そんな勧誘に少しだけ悩み腕を組む

「我々六腕とコキュートス殿の仲間とで最後に勝った方にお互いつくと言うのはどうだろう。コキュートス殿程の武人で有れば我々も歓迎するぞ。」

 コキュートスは自身らの勝利を確信したい為、その条件を了承すると…空間斬を教えてくれと頼んだりしていた。

 




次回予告!
 曲技!"踊る三日月刀"のエドストレーム!


一応少しだけ続きますが、この武技"空間斬"をやりたいが為にこの短編書いたようなものです。

〜捏造設定〜
コキュートスの腕の再生関係

武技"空間斬"…空間そのものを切り裂き、対象の強度に関係なく確実に切断する技。発動時に発生する空間の切断面に沿って景色がズレるというエフェクトが入るが、その見た目に反して有効範囲はそこそこ狭く、代わりに空間を切る技なので実対象に対しての間合いは比較的広く近〜中距離技に部類される。

そもそもコキュートスが街に出張って闘ってるのは変ですが、俺はコキュートスが好きなんだよ!(言い訳)
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