無駄に強い六腕   作:ベルゼバビデブ

2 / 5
第二話です。


曲技!"踊る三日月刀"のエドストレーム!

 これは、コキュートスとペシュリアンが闘っている頃のお話。褐色肌の踊り子風の姿をしたエドストレームは、真紅の鎧に身を包む小柄な騎士と対峙していた。その小柄さと鎧のスカートアーマーからエドストレームは相手が女の子であると判断をした。但し、相手が子供とて容赦はしない。強者とは外見だけでは判断できぬものと知っているからだ。

「お嬢ちゃんが私の相手?ふふ、可愛がってあげるわ」

「あら、それは楽しみでありんすねぇ」

 相手が女性という事で舌舐めずりをするシャルティアは自身の勝利を確信していた。いくら強いとは言え所詮は人間、どう料理して愉しもうかと想いを巡らす。そんなシャルティアに対してエドストレームは一切の油断なく自身の技を用いて目の前の小娘を殺さんと、魔法を込めていた。

「楽しめると思うわ…勿論私がね!!」

 放たれる三日月刀には"舞踊"の魔法が付与され、エドストレームの思いのままの軌道で飛んでいく。その数実に16本、普通の相手ならば全方向から飛んでくるこの技になす術はないが、シャルティアならば話は別。ガチビルドと称される彼女の能力をもってすれば振るうスポイトランスに叩き落とされる。

 

 

 事はなかった。縫う様にスポイトランスを避けた三日月刀はそのままシャルティアの真紅の鎧にぶつかる。しかしながら威力が足りない。三日月刀に舞踊の魔法だけでは真紅の装甲を貫くだけの力が無かったのだ。その事にシャルティアはほくそ笑むとますます自身の勝利を確信し、三日月刀を気にせずエドストレームへ突っ込んでいく。

 

 しかし、シャルティアは次の瞬間脚の腱を切られ、走るその脚を止める。

「何!?」

 漂う三日月刀の変化を見ればシャルティアは状況を理解する。超高速回転をしているのだ。それならば破壊力が増すのも頷ける。よくよく聞けば超高速回転すらそれらはキィィンと不愉快な音を立てており、その煩わしさにシャルティアは舌打ちをする。それならばと翼を広げ、飛行をしエドストレームへと突っ込んだ後、スポイトランスによる刺突を繰り出すが、回転する三日月刀によって弾かれてしまう。

「中々良い突きだけどねぇ…それじゃあ私の守りは貫けないよ」

「クソがァ!」

 始まるはシャルティアによるランスの猛攻、踏み込み払い、突き、回転切り、しかしいずれも超高速回転する三日月刀に弾かれる。技が効かないのならと次の手に出たシャルティアはその肉体が織りなす圧倒的な力を持って三日月刀を弾かんとランスを振るう。

「へぇ…嬢ちゃん、肉体強化系の武技でも使ったのかい?まだパワーが上がるなんて驚きだよ」

 三日月刀で守るだけのエドストレームとてプロである。長年培ったこの闘い方は自身の防御も攻撃も全て三日月刀で行う、その防御性能は非常に高く、反応さえ出来ればペシュリアンの空間斬ですら防御し得るのだ。…当然反応さえ出来ればであるが。

「クソ!クソクソクソ!!」

 まさにヤケクソと形容できるその猛攻は衰えを知らず、寧ろシャルティアの肉体に攻撃の経験値として蓄積していく。一撃一撃毎に速さと強さとキレが増し、反対に隙は減っていく。防御の合間に空いた三日月刀でチクチクとシャルティアの鎧を貫き傷を与えていたエドストレームも流石に驚きを隠せない

「な、中々タフな子だね…いや、闘いの中で進化してるのか…!」

 シャルティアのタフさを若さと戦闘中の成長、更には脳内麻薬と判断して対応をはじめるが、無論シャルティアはタフなわけではない。シャルティアの種族は"真祖"つまりは不死者に該当する。疲れやスタミナなど元からないのだ。シャルティアはこのままゴリ押しでブチ抜かんと槍を振るう。こっそり使用したを生命力持続回復"はエドストレームからのダメージを帳消しにこそ出来ないものの、時間稼ぎはしてくれるのだ。それでも足りなければこっそりと眷属の蝙蝠を夜の闇を良いことにまるで野生かの様に振舞わせ、スポイトランスで斬りつけHPを奪っていく。

「そろそろ終わらせるよ!」

 持久戦に先に痺れを切らしたのはエドストレーム。当然である、元より彼女らは強者、今まで自分のペースで相手を弄び殺したり拷問することすらあれど、お互いに決めきれないなどと言う闘いをした経験は少ない。反面シャルティアは全ての癖をその身に宿したエロNPC、じっくりたっぷり時間をかけて相手を味わうなどと言う事は慣れっこだ。

 シャルティアの攻撃の隙の一瞬を突き、エドストレームは防御に回していた三日月刀をも攻撃に回し、シャルティアへ攻撃を仕掛ける。これが不味かった。エドストレームは勘違いしていたのだ。目の前の相手を。

「"不浄衝撃盾"ッ!!」

 シャルティアから放たれるはスキル。日に回数制限こそあれど、圧倒的防御性能を誇るシャルティアの盾だ。シャルティアは漸く手札の一枚をここで切ったのである。つまりはまだまだ余裕があるのだ。

 

 しかし、シャルティアにも誤算というものはある。

 

 エドストレームは放たれた不浄衝撃盾を見て瞬時に超高速回転三日月刀の隊列を変更し、一部を不浄衝撃盾との相殺に使い残りを突破させたのだ。シャルティアはそれに対して左腕を翳し、左腕を犠牲に耐えて見せる。その甲斐あって三日月は致命傷には至らず、エドストレームは一部の三日月刀を、シャルティアは左腕を失い勝負は仕切り直しとなる。

「左腕を切り飛ばしたのに叫ばないなんて…!」

 普通なら闘えるような状態ではないが、シャルティアは気にもせず切りかかる。咄嗟に防御の為に三日月刀を使うが、どうも様子がおかしい。三日月刀の数が減ったせいで防御性能が著しく落ちているのだ。そして防御の合間を貫き漸くシャルティアの一撃がエドストレームを捕らえる。エドストレームはそこで漸く理解した。切り飛ばした左腕が徐々に再生しているのだ。更にもう一撃ランスの薙ぎ払いがかすったときにその再生が一瞬早まる。

「まさか…体力を!?」

 気づいた時にはもう遅い。土壇場でのHP吸収など洒落にならないのだ。加えて超高速回転三日月刀に付与する舞踊の魔法は着実にエドストレームのMPを散らしていく。三日月刀を両手に構え、少しだけMPの節約を画策するが、回転を止めた三日月刀を見て漸く理解する。三日月刀の著しい刃こぼれを。してやられたと理解したその一瞬が敗因だった。

「"清浄投擲槍"ッ!!」

 放たれたそれはシャルティアの手札のから切られた一枚、つまりはスキル。先程が盾であれば今度は矛。それは刃こぼれした超高速回転三日月を次々に蹴散らしエドストレームへ突っ込んでくる。どうにかして地面を蹴って横に避けようともどれだけ走ろうとも何故だかソレは止まらない。無論シャルティアは温存したMPを用いて必中性能を増やしている。最早三日月刀で止める事も、なんとか躱すことも出来ない。その一撃に貫かれればエドストレームは堪らず血を吐き膝をつく。

「鬼ごっこは終わり?」

「…!」

 エドストレームが最期に見たものは先程まで闘っていた可憐な少女の血よりも赤い二つの瞳であった。




次回予告!
 魔闘士!"不死王"デイバーノック!

〜捏造設定〜
シャルティアの足の腱切ったらシャルティアは止められるんだろうか
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。