普段の豪華過ぎるローブを脱ぎ捨て、比較的落ち着いたローブを身に纏い、両手にはグローブ、顔は仮面で見えないと言った姿でモモンガは戦いの地へ降り立った。
そんな不思議な風貌をした相手を前にエルダーリッチのデイバーノックは首を傾げ、少し考えた後に理由を推察すると納得したように手を叩く。
「なるほど、お前も不死者か、それで周りの目を気にしてそんな格好をしているのだな?」
そう言われた不死者…モモンガは何も言わず、即座に"万雷の撃滅"を放つ。"時間停止"をモモンガも考えはしたが、この世界のレベルからしてそれくらいの対策はしているだろうと使用を見送ったのだ。
「雷か、"水晶城塞"!」
デイバーノックは雷に強い水晶の壁を魔法で形成するとモモンガの魔法を打消す。そのあと水晶の壁にヒビが入り、崩れていく。
「受けよ!"水晶砲弾"!」
水晶の壁は破壊されたわけではなく、攻撃に転用されただけであった。放たれるは水晶の塊。流石のモモンガも回避せんとステップを踏むが、目の前に骨に張り付いた皮の顔が現れる。つまりはデイバーノックだ。
「何!?」
デイバーノックの放つ炎を纏った拳をモモンガは避けることができず、更には完全なる不意打ちに防御すら出来なかった。
「お前もアンデットならば炎属性の殴打はキツかろう!?」
その通りではあるが、モモンガは事前に掛けておいた"光輝緑の体"により一度だけ無効化することができた。それでもなおモモンガのピンチは終わらない。炎を纏ったままのデイバーノックの拳、蹴り、いずれもモモンガは辛うじて避けることしかできない。
「くっ!"現断"ッ!」
超位魔法は仲間を巻き添えにしかねず、さらに時間がかかる、こんな状況で発動は出来ない、かと言って得意の心臓掌握は不死者のデイバーノックには効果は無い。ならば炎系の魔法をと考えるが自身の体に炎を纏わせて攻撃しているのだ、効き目は薄いことはまさに火を見るよりも明らかだった。雷も水晶の壁に防がれてしまうとなると無難な現断しか手は残されていない。
「がはッ!?なんだ…!この魔法は…!」
突然の斬撃にデイバーノックも驚きを隠しきれない。しかしながら彼とて長年戦ってきた強者、生まれつき得ていた魔法の才に努力で格闘術を合わせた魔闘士デイバーノックは不死者とはいえその鍛え方が違う、故に現断の一撃とて致命傷には足らず、少し驚いた後は再度の攻撃を繰り出していた。
「"飛行"!更に"水晶全身鎧"!」
謎の斬撃を喰らった後のデイバーノックは飛行し機動力を増した状態で、全身を薄い水晶の鎧を見に纏う事で防御力を増していた。
「そしてこれでダメ押しだ!」
デイバーノックは器用に脚部から炎魔法を噴出しジェット機のように加速をし始める。
「出し惜しみはできん!現断!」
「無駄だ」
現断はダイバーノックの水晶全身鎧に防がれ、魔法を唱えた隙にデイバーノックの炎を纏った拳が突き刺さる。
「このまま炎を纏った拳で!貴様を殴り抜ける!」
速度・威力・カウンターをモノともしない防御力。この3つを兼ね備えた彼の最強形態は魔弾と呼ばれる。その速度から相手は決して逃げられず、故に必中。速度と炎の拳から繰り出される一撃は正に必殺。そして迎え打つにもその煌めく結晶の膜の守りはまるで無敵。デイバーノックの最強の最速最硬を兼ね備えた必殺の攻撃が魔弾である。
更にはデイバーノックは目の前の敵の強さを強く把握していた。自身の知らない現断なる魔法を立て続けに食らえば自身の敗北は読める。故に手を止めず連続で魔弾による攻撃を仕掛けた。その数計6回。
「お主の強さに敬意を払い、我が最強の攻撃を6回叩き込んだ…これでもう動けまい」
デイバーノックの視線の先には地に平伏すモモンガの姿があった。
「勝った…と思ったか?」
まるで何事もなかったかのようにむくりと立ち上がるモモンガに、デイバーノックは驚きを隠せない。
「馬鹿な!?何故立てる…!弱点の炎で何度も攻撃したはず…」
立ち上がったモモンガはローブをヒラヒラとさせる。
「悪いが、炎が有効だと言う演技をさせてもらった。」
「演技だと…!?」
モモンガは本来学力は低く、能力もレベルこそ100だがロールプレイのために一部のNPCに劣る程には無駄がある。しかしながらユグドラシルにおいて大抵のPVPではそれを感じさせないほどの強者でもあった。
それは何故か?戦いの知恵と戦略眼である。反則ではないなら何でも使う、何でも使える、それだけのセンスを彼は持っていた。故に今回、戦いに際して聖魔法への耐性を捨て去り炎耐性のある防具に変更したのだ。
「打撃はちと痛かったがまぁ、アレくらいならスキルで軽減できる。しかし飛行しながら炎魔法で加速するとは中々面白い戦い方だな。参考になったよ。」
「魔弾を…!六度も耐えたのか!?」
即座にデイバーノックは水晶城壁を唱え、水晶全身鎧との二重防壁を築く。
「その判断は正しいが無駄だな。魔法三重最強化・現断!」
放たれる強化された現断。1つ目は城壁を、2つ目は全身鎧を、そして最後の1つがデイバーノックを真っ二つに切り裂く。
「馬、馬鹿な…!」
チリチリと何かが焦げる匂いを撒き散らしながら両断されたデイバーノックは地を這った。
「…なるほど、炎への完全耐性とはいかないわけか」
焦げる何かとはデイバーノック自身、必殺の魔弾は強力すぎるその威力故、六度使えばその身体は限界に近くなってしまう。勿論しばらく経てば治るが、七度目は必ず自らを滅してしまう捨て身の技だったのだ。そんな肉体に強化された現断が当たれば容易く切れる、そう言うわけである。
「自らの力で自らを傷付けるとは、そこまでして勝利に拘る姿気に入ったぞ。」
そしてモモンガは両断されてしまったデイバーノックの半身を拾い上げると
「我に忠誠を誓い、我がナザリックの僕とならないか…?」
と囁いた。
〜捏造設定〜
水晶城塞…クリスタル・フォートレス
原作の水晶防壁より高い位階の魔法。雷にめっぽう強い。
水晶砲弾…クリスタル・カノン
原作の水晶散弾より高い位階の魔法。形成済みの水晶を再利用するとMPの節約ができる
水晶全身鎧…クリスタル・アーマー
原作の水晶盾より高い位階の魔法。雷に強く、物理にも耐性がある。
モモンガ様のローブ…火に対する耐性を持つ。ただし、聖への弱点はそのまま。