Errors:World Connected   作:御代川辰

1 / 8
Episode.0 前準備
No.00-1 黎明に(さきがけ)を見る


《惑星セレステラ(Celesterra) 超大陸アマナス(Amanas)

 

「「「「「《Magniom Imperoum(統一帝国),Autarneud Pruespoes(万歳)!》」」」」」

「「「「「《Foliagun Dawot(最高主神),Omuelniuz Solta Luclmausa(万歳)!》」」」」」

「「「「「《Saicher Gausarl(神聖皇帝),Autarneud Pruespoes(万歳)!》」」」」」

「「「「「《Saichtrias Popens(教皇聖下),Autarneud Pruespoes(万歳)!》」」」」」

 

 その日の正午。何十万人もの人間が都の中央にある広場に集まり、狂ったように神や祖国を讃える祝詞(のりと)を叫んでいた。

 広場の周囲にはちょうど円形の広場から放射状に伸びる十五本の大通りがあり、そのうちの一つ、最も幅が広い南の大通りの反対側には青や白などの色材で覆われた清らかな印象を持たせる巨大な宮殿が見える。

 

 その宮殿のバルコニーに、金銀の刺繍や透明度の高い宝石で飾られた白い装束に身を包む数人の男女が立つ。

 

 

 

 

「《Suenluwet(静まれぇ)!》」

 

 

 

 

 腰に届くほどに長く伸びた白灰色(アッシュグレー)の髪と髭が特徴的な老齢の男、教皇【サヴァーリオ(Savorlio)4世】が、威厳のある低く大きな声で広場に向かって叫ぶ。

 マイクを通して発せられた声は広場のみならず、この世界における魔法と科学の産物である拡声器(スピーカー)無線機(ラジオ)などを媒介し、都はおろか人口十数人程度の集落まで、文字通り大陸全体に広がっている。

 先ほどまでの喧騒が嘘のように静かになったのを見届けたサヴァーリオは、再びマイクに口を近付けた。

 

同胞(はらから)たる臣民らに向けて、神聖皇帝陛下からの御言葉(おことば)である!」

 

 そう告げると、後ろに立つ初老の男に場所を譲り、その場を後にした。

 代わりにバルコニーに立った初老の男…………【ガーユシス(Garjusis)シン(Sin)エリオニアス(Elionias)ネロ(Nero)】は目の前に設置されたマイクの前に立ち、演説を始める。

 

 

 

 

 

同胞(はらから)よ!帝国は今大きく力を落とし、建国以来の未曾有の危機に瀕している!この危機の大因(おおもと)を作ったのは他でもない、実に100年あまりに渡る帝国の怠惰だ!有り余る強大な軍勢を有しながら、その力を振るうことなく怠惰を(むさぼ)り続けた結果が今代(こんだい)の帝国の衰退を生んだのだ!」

 

 

 

 

 

 語るガーユシスの声には強い力が込められている。広場の臣民も、ラジオ越しに彼の演説を聴く辺境の臣民も皆皇帝の声に心動かされていた。

 

 

 

 

 

同胞(はらから)よ!刮目(かつもく)して帝国を見よ!(なんじ)らの目には何が写っている?自由を謳歌する子らの姿か?田畑を耕す農民たちか?勉学に励む学者たちの教書か?吟遊詩人たちの歌う様か?今(われ)の目の前に立つ民衆たちか?」

 

 

 

 

 

 言葉尻に「否!」と叫ぶ。

 

 

 

 

 

「今(なんじ)が見ているのは怠惰に溺れる愚者の姿である!今や臣民は神々への感謝を忘れ怠惰に侵され、四方の蛮族にさえ遅れをとる有り(さま)だ!これを黙って見て居られようか!」

 

 

 

 

 

 ガーユシスは「否!」、と再び大きく否定を示した。

 

 

 

 

 

「臣民よ!このまま怠惰に平和を生きれば、我らは1年も待たず蛮族に攻め滅ぼされ再び太陽に焼かれながら地を這う敗者となる!さすれば我が民族は神々によって末代まで呪われ続けるであろう!この運命(さだめ)を脱する(すべ)はもはやただ一つのみ!」

 

 

 

 

 

 否定から続けられたのは力強さの籠った声であった。

 

 

 

 

 

(いくさ)だ!大いなる武力は大いなる聖戦、大いなる血と火によって初めて活きるものなのだ!」

 

 

 

 

 

 その言葉は拡声器(スピーカー)が、無線機(ラジオ)すら破壊されたかのような錯覚を全土の聴衆に与えた。

 

 

 

 

 

「聖戦は近い!此度(こたび)の聖戦、異界の蛮族掃討が功を成せば帝国は再び天下を統べる神聖皇帝の君臨する地としてその名を轟かせることになる!そして我らの範図(はんと)は広がり、永久(とわ)に栄え続けることをここに予言する!」

 

 

 

 

 

 彼が断言した時人々は文字通り心動かされ、まさに興奮の絶頂にあった。

 

 

 

 

 

「《Imperotal() Legiomnas() Canllaic() Haic()Saicher Gausarl oud Saictrias Popens en(神聖皇帝と教皇の) Acs perondimio(名に) norm daw(おいて)Nuin wecty Saichods feollt en(ここに聖戦の) indalcm feolle geut deiclouras(開戦を宣言する)!》」

 

 

 

 

 

 言葉を切った時、都に歓声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 統一暦302年(建国1805年)7月32日、第73代神聖皇帝と第70代教皇の名により異界侵攻作戦開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって皇宮の地下。いくつもの星座の紋様が刻まれた岩盤の天蓋(ドーム)の中に、服装に統一性のない四人の男女が集まっていた。

 

「して、大戦の手筈は(ととの)ったのかね?」

 

 髭を蓄えた老人、【アルナール(Alnaar)イドリス(Idris)】が向かいに立つ少年【善鳳寺(ぜんほうじ)繁生(しげき)】に問う。

 

「準備期間だけなら半年で充分だったはずの計画(もの)を115年も予定繰り下げてるからね。まだ三月(みつき)十日(とおか)かかるよ」

 

 背伸び頃の少年らしい、実に素っ気ない態度で答えた。

 

「素直に「順調だ」と答えれば良いものを…………」

 

 仮面を被る女、【ソーピア(Sopia)アーリーティヒエ(Alitihie)】が(たしな)めるが、繁生(しげき)はふん、と顔を背ける。

 顔を背けた先、つまりソーピアの向かいには【ファビオラ(Fabiola)ベラ(Vela)】が立っている。

 

「順調と言うわけでもないでしょう」

 

 と、ファビオラは呟く。

 

聖帝都(アマデウス・エメ)周辺にはすでにオルテ(Orte)藩邦軍とヘルシャー(Höelscher)藩邦軍が集まりつつあるけれど、ファルマート(Falmart)藩邦軍の急進派とアーヴェイト(Arvait)藩邦軍の報国派は共に軍役命令には従わず暗黒大陸(そとがわ)にまで触手を伸ばしつつありますから」

 

 アルナールは「左様」と肯定した。

 

「ともかくこの帝国(インペルーム)主導の大戦、もとい口減らしは実行させねば話にならん。ただでさえ人員が出払っておるからな」

 

 アルナールの言葉に一同はうんと頷いて席を立ち、入り口の向かい側にある二つの棺に向かった。

 

「諸藩邦の(つわもの)どもには気の毒だが、これも初代神聖皇帝と初代教皇との約束を果たすためだ」

 

 そして一同は両手を組み、瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「全ては大御祖神(おおみおやのかみ)のために!」」」」




統一帝国(Magniom Imperoum)
かつて二人の異界人の夫婦によって建てられた宗教国家で、正式な国号はル・アモナス(Lo Amonas)。
首都は初代神聖皇帝とその后である初代教皇の通称を取ってアマデウス・エメ(Amadeus Eme)と呼ばれている。
建国当時はまさしく平和な理想郷(ユートピア)だったが、二代皇帝と教皇が聖典や国史に過剰な誇張表現や改竄、信憑性のない噂に至るまで初代夫妻に関わるあらゆる情報を加筆し、事実上の洗脳教育を施したことで攻撃的な覇権国家に変貌した。

総人口約4億7000万人。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。