《惑星セレステラ 超大陸アマナス》
「「「「「《Magniom Imperoum,Autarneud Pruespoes!》」」」」」
「「「「「《Foliagun Dawot,Omuelniuz Solta Luclmausa!》」」」」」
「「「「「《Saicher Gausarl,Autarneud Pruespoes!》」」」」」
「「「「「《Saichtrias Popens,Autarneud Pruespoes!》」」」」」
その日の正午。何十万人もの人間が都の中央にある広場に集まり、狂ったように神や祖国を讃える祝詞を叫んでいた。
広場の周囲にはちょうど円形の広場から放射状に伸びる十五本の大通りがあり、そのうちの一つ、最も幅が広い南の大通りの反対側には青や白などの色材で覆われた清らかな印象を持たせる巨大な宮殿が見える。
その宮殿のバルコニーに、金銀の刺繍や透明度の高い宝石で飾られた白い装束に身を包む数人の男女が立つ。
「《Suenluwet!》」
腰に届くほどに長く伸びた白灰色の髪と髭が特徴的な老齢の男、教皇【サヴァーリオ4世】が、威厳のある低く大きな声で広場に向かって叫ぶ。
マイクを通して発せられた声は広場のみならず、この世界における魔法と科学の産物である拡声器や無線機などを媒介し、都はおろか人口十数人程度の集落まで、文字通り大陸全体に広がっている。
先ほどまでの喧騒が嘘のように静かになったのを見届けたサヴァーリオは、再びマイクに口を近付けた。
「同胞たる臣民らに向けて、神聖皇帝陛下からの御言葉である!」
そう告げると、後ろに立つ初老の男に場所を譲り、その場を後にした。
代わりにバルコニーに立った初老の男…………【ガーユシス・シン・エリオニアス・ネロ】は目の前に設置されたマイクの前に立ち、演説を始める。
「同胞よ!帝国は今大きく力を落とし、建国以来の未曾有の危機に瀕している!この危機の大因を作ったのは他でもない、実に100年あまりに渡る帝国の怠惰だ!有り余る強大な軍勢を有しながら、その力を振るうことなく怠惰を貪り続けた結果が今代の帝国の衰退を生んだのだ!」
語るガーユシスの声には強い力が込められている。広場の臣民も、ラジオ越しに彼の演説を聴く辺境の臣民も皆皇帝の声に心動かされていた。
「同胞よ!刮目して帝国を見よ!汝らの目には何が写っている?自由を謳歌する子らの姿か?田畑を耕す農民たちか?勉学に励む学者たちの教書か?吟遊詩人たちの歌う様か?今朕の目の前に立つ民衆たちか?」
言葉尻に「否!」と叫ぶ。
「今汝が見ているのは怠惰に溺れる愚者の姿である!今や臣民は神々への感謝を忘れ怠惰に侵され、四方の蛮族にさえ遅れをとる有り様だ!これを黙って見て居られようか!」
ガーユシスは「否!」、と再び大きく否定を示した。
「臣民よ!このまま怠惰に平和を生きれば、我らは1年も待たず蛮族に攻め滅ぼされ再び太陽に焼かれながら地を這う敗者となる!さすれば我が民族は神々によって末代まで呪われ続けるであろう!この運命を脱する術はもはやただ一つのみ!」
否定から続けられたのは力強さの籠った声であった。
「戦だ!大いなる武力は大いなる聖戦、大いなる血と火によって初めて活きるものなのだ!」
その言葉は拡声器が、無線機すら破壊されたかのような錯覚を全土の聴衆に与えた。
「聖戦は近い!此度の聖戦、異界の蛮族掃討が功を成せば帝国は再び天下を統べる神聖皇帝の君臨する地としてその名を轟かせることになる!そして我らの範図は広がり、永久に栄え続けることをここに予言する!」
彼が断言した時人々は文字通り心動かされ、まさに興奮の絶頂にあった。
「《Imperotal Legiomnas Canllaic Haic!Saicher Gausarl oud Saictrias Popens en Acs perondimio norm dawNuin wecty Saichods feollt en indalcm feolle geut deiclouras!》」
言葉を切った時、都に歓声が響き渡った。
統一暦302年(建国1805年)7月32日、第73代神聖皇帝と第70代教皇の名により異界侵攻作戦開始。
場所は変わって皇宮の地下。いくつもの星座の紋様が刻まれた岩盤の天蓋の中に、服装に統一性のない四人の男女が集まっていた。
「して、大戦の手筈は整ったのかね?」
髭を蓄えた老人、【アルナール・イドリス】が向かいに立つ少年【善鳳寺繁生】に問う。
「準備期間だけなら半年で充分だったはずの計画を115年も予定繰り下げてるからね。まだ三月と十日かかるよ」
背伸び頃の少年らしい、実に素っ気ない態度で答えた。
「素直に「順調だ」と答えれば良いものを…………」
仮面を被る女、【ソーピア・アーリーティヒエ】が窘めるが、繁生はふん、と顔を背ける。
顔を背けた先、つまりソーピアの向かいには【ファビオラ・ベラ】が立っている。
「順調と言うわけでもないでしょう」
と、ファビオラは呟く。
「聖帝都周辺にはすでにオルテ藩邦軍とヘルシャー藩邦軍が集まりつつあるけれど、ファルマート藩邦軍の急進派とアーヴェイト藩邦軍の報国派は共に軍役命令には従わず暗黒大陸にまで触手を伸ばしつつありますから」
アルナールは「左様」と肯定した。
「ともかくこの帝国主導の大戦、もとい口減らしは実行させねば話にならん。ただでさえ人員が出払っておるからな」
アルナールの言葉に一同はうんと頷いて席を立ち、入り口の向かい側にある二つの棺に向かった。
「諸藩邦の兵どもには気の毒だが、これも初代神聖皇帝と初代教皇との約束を果たすためだ」
そして一同は両手を組み、瞼を閉じる。
「「「「全ては大御祖神のために!」」」」