《カルネアデス藩国北部 廃鉱山入り口の廃屋》
[[統一暦302年 8月1日]]
「
『申し訳ありません…………ただ、とにかく早め早めに伝えた方がいいと
と、カインからティラスの名を出され、
(全く、ティラスのせっかちが裏目に出るのは久し振りだな…………)
完全に踏んだり蹴ったりである。
「モーセとは連絡が着いているのか?」
『はい。すでに
晴明はモーセの現状を知ってほっと胸を撫で下ろした。
「同じような失態は二度としないことだ。わかったな」
呆れを隠さないまま最後に
《アマナス大陸西部
[[統一暦302年 8月1日]]
ハイリヒ藩邦の都からそう遠くない洞窟の奥深くに作られた、
「Zzzzzzzzz……………………」
洞窟全体に響き渡るほどの大きないびきが、“なぜか”洞窟内にある穴だらけの扉を通して空間に広がる。いや、この洞窟内での音の反響と透過性は非常に強く、この洞窟を住み処としている
「Zzzzzzzzz……………………」
呼吸の度にいびきをし、その度に大きな音が響く洞窟内。音源をつかんだ魔物・怪異は次第に群れを成しはじめ、瞬く間に大規模な軍団となり獲物を目指す行進に変貌した。
「Zzzzzzzzz……………………」
わずか数分で迷宮内に蔓延る三千体近い魔物たちが大軍を成し、ついに音源への入り口を発見した。横列を成せないほどに狭い筒状の通路の先頭を歩くのは魔物と呼ばれる存在の中でも一際強い力を持つ
「ギギッ!」
我先に突撃しようとする下位の魔物たちを、先頭に立つ
「ギギ!ギグウ!」
「ギリャ!ギー!」
手下の抗議を押さえつけるのを傍目で見ながら、一匹の
「ギギャア!」
刹那、後方から魔物の悲鳴が響く。前方の魔物たちは何事かと振り返るが、ここは日の光が入らない洞窟であり、
が、肉を斬る音と共に何かが近付いて来ていることは確かだ。
「ギャアッ!」
そして、
「
洞窟を崩さんばかりの大声を張り上げ、身長の半分もある大太刀を振り回し魔物を斬り伏せながら例の扉に近付くのは、男物の
少女の名は【
対する魔物たちは司令塔との距離が離れすぎていることもあって完全に混乱しており、次々と殺されてゆく同胞たちを前に恐慌状態のまま戦おうとする者すらいる始末だった。
「はっ!?しまった敵襲か!」
一方少女の大声と共に目覚め、同時に
「いかんいかん!
一方のミシェルは思わず声に出しながら崩れた服装を綺麗に整えると、
「{囲いの外に満ちたる物よ、
(長いこと魔法を使ってると、自分が人間じゃなくなってきてる気がするな)
ミシェルは
間抜けなことに群れの長たちは突如として蹴破られた扉の方に注目し、動きが鈍って指示が遅れてしまった。
「《{
呪文の詠唱が終わると同時に、手のひらから異界の文字、複数の円、幾何学図形によって形作られた光の魔法陣が浮かび上がる。
「ギギャギャ!」
危機を察した群れの長たちは慌てて命令を出して手下たちを逃がそうとするが、すぐ近くにいる下位の魔物たちはミシェルの魔法陣を凝視するばかりで完全に動きが固まっていた。
「《
魔法陣の前に蓄えられた
「〔
一気に炎が膨張し、ミシェルから見て前方の魔物たちを通路ごと焼き尽くす。
身動きが取れなくなるほどに集まっていた魔物は、何も理解しないまま消し炭に変えられていった。
「〔
無論、魔法陣の光が見えた際に攻撃を感知した
こうして2709匹もの魔物のうち143匹もの個体が斬殺・刺殺、およそ900匹が溺死、ほぼ同数が焼死、残りは水と炎から逃げようとしたために圧死、および急激な酸素濃度の低下により窒息死する結果となった。
「ぶはぁっ!死ぬかと思ったぁ!」
魔法の炎が多量の二酸化炭素を作ったことによる酸素不足の影響で一気に低酸素症に襲われたミシェルは、深く息をしながら水の張った地面に座り込む。
「死ぬかと思ったのは私の方です!こんな狭くて酸素の薄いところで炎の
ミシェルの声は
「いやあすまんすまん!私も焦ってしまってな!」
「笑い事じゃないと言ってるでしょうが!」
大雑把なミシェルと生真面目な
ミシェル・ド・ノートルダム(Michel De Notredame)\西暦1503?~1566?
占星術師、医師、詩人。
今日ではラテン語名のノストラダムスの通称で知られる。
実在が疑われるため漂流者として登場させた。
史実では死因不明のまま1566年にこの世を去ったが、本作では病床に臥していた所を紫に呼び出され、そのまま漂流者となる。
同時期に漂流物として異世界に飛ばされた安倍晴明ら五名の漂流者と共に十月機関を組織した幹部の一人。