術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

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幕間

 

 

八十枉津学園から少し離れた公園其処は九重花久遠と八峡義弥が初めて出会った場所だ。

八峡義弥が其処に向かったのは都市伝説的上手さを誇る屋台ラーメンがあると言う噂を聞いての事だった。

 

残念ながら八峡義弥が向かった時にはそのラーメン屋は開いて無かったが、今日この夜は屋台ラーメンが暖簾を上げていた。

 

「あひぁ~、でてますねぇ~」

 

八峡義弥が在籍する第93期生の担任、駕与丁雅教師は居酒屋をハシゴしてこの屋台ラーメンに辿っていた。

暖簾を潜り椅子に座ろうとして先客の顔を見る。

 

「ありぇ?贄波せんせ?」

 

呂律の回らない様子で駕与丁雅は贄波阿羅と出会う。

 

「嫌な人が来ちゃったな」

 

駕与丁教師を見て涼やかな声色で贄波教師はそう言った。

 

「んふ~丁度良いですね~」

「ラーメン奢って下さいよぅ」

「あ、店主さん、お酒下さーいっ」

 

「アイヨーッ!」

 

焼酎を出されてそれを一気に呑む駕与丁は一気に酔いが醒めていく酒を飲むと驚く程にこの教師は醒めやすくなるのだ。

そしてラーメンが出来上がる間、二人は細やかな会話を続ける。

 

「アレの中には五十市依光が眠っている」

 

その話の内容はこの学園に入学した男、八峡義弥についての事だった。

 

「八峡くんの事ですか」

 

八峡義弥。

半年前までは普通の学生だった、だが彼が罰当たりな真似を行い災いを呼び寄せた。

それを対処する為に祓ヰ師の神童・五十市依光が訪れて八峡義弥を救う為に命を失った。

 

あろう事か、八峡義弥はその死の直前に五十市依光を見捨てたらしい。

その結果、五十市依光は死亡して、五十市依光の怨みを得てしまったのだ。

 

「本来ならば学園は」

「才能の無い人間を入れる事は無い」

「アレはまるっきり才能の無い雑魚だ」

「暇潰しになると思ったが」

「暇潰しにもならない穀潰しだった」

「近頃は遊ぶ分には丁度良かったが」

「最近は逃げてばかりでつまらなくなったな」

 

「八峡くんについての教育方針は」

「別に聞いて無くてですね」

「その、五十市くんが宿ると言うのは?」

 

駕与丁雅は教師ではあるが祓ヰ師としての知識は不足している。

彼女は別の分野に特化していた。

贄波阿羅は焼酎を飲んで、彼女の疑問に答える。

 

「……人の呪い、それも祓ヰ師の禍憑(まがつき)は」

「その呪いの影響は絶大である故に」

「解呪した際の祝福……恩恵も絶大だ」

臨核(りんかく)の拡張、洞孔(どうこう)の展開、術式の強化」

「そして稀に、祓ヰ師の術式を刻む事もある」

 

何故八峡義弥が祓ヰ師としてこの学園に訪れたか。

それは彼個人に対する才能を見抜いたワケではなく。

 

「八峡義弥は五十市依光の術式を刻む可能性がある」

 

限りなく可能性は低いが八峡義弥は五十市依光の術式を継承出来るかも知れない。

 

だが、それはあくまでの話であり、もしもの話であり、ありえない話であった。

 

「だから、八峡くんを」

「祓ヰ師に、引き入れたんですか?」

 

彼女の問いに。

贄波阿羅は静かに首を横に振る。

 

「いや……ただムカついただけだ」

 

贄波阿羅と八峡義弥が出会った当初。

八峡義弥は部屋の隅でガタガタと震えていた。

五十市依光の禍憑を受けてから彼の声が聞こえるのだと言う。

八峡義弥は五十市依光の死は自分のせいでは無いと訴え自分勝手な言葉を並べ続けた。

 

八峡義弥のそんな所が癪に障ったのだろう。

徹底的に虐めてやろうと学園に半ば無理矢理入学させたのだ。

 

「八峡義弥が術式を得る事など不可能だ」

 

だから、八峡義弥が五十市依光の術式を継承する可能性など無く、ただ単に、ムカつくから入学させただけに過ぎないと。

 

「何故そう思うんですか?」

 

しかしもしもの事がある。

その可能性が無いのか聞く駕与丁だが。

 

「簡単な話だ」

「五十市依光は正義の味方だからだ」

 

贄波阿羅は意味深な事を言うだけだった。

 

「?それ、どういう」

 

「ハイヨォ!ラーメンオッ待チィ!」

 

彼女が話をする前に店主がラーメンを持ってくる。

 

「いただきます」

 

贄波阿羅はどんぶりを掴むと、麺も汁も熱々のままで一気飲みする。

数秒で空になるどんぶり、そして贄波阿羅は立ち上がる。

 

「ご馳走様でした」

「勘定はこの女性が」

 

「え、ちょっ!」

「あの聞いてなっ」

「早ッ?!」

 

縮地を使ってその場から逃げる贄波。

結局、駕与丁雅に会計させたのだった。

 

 

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