術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話 作:三流木青二斎
発芽する種は木の幹を作り出し滑らかな曲線を描く木の枝が産まれる。
その木の枝の端には弦が張り出し更に地面から垂直で真っすぐな木の枝が生え、枝の先端は尖り尻には木の葉が羽の様に生えて来る。
「よいしょぃ」
花良治はそれを掴み引っ張ると木の枝は簡単に抜けていく、その種から発芽されたのは弓矢だった。
「おいちゃんの腕」
「見せてあげましょうねっと」
花良治家は種から木製の士柄武物を作り出す。
木製ではあるが、剣や弓、斧や槍と言った武器。
更には鎖鎌や三節混と言った複雑な武器まで、それらは士柄武物としての能力を宿す為に厭穢に対して有効な力を持つ。
矢を番えて八峡義弥に向け、弦を離す、空気を割る様な音がすると同時に。
「ほい」
校舎へと逃げ込もうとする八峡義弥。
綺麗な弧を描きながら左腕に突き刺さる。
「ッだぁ?!」
左腕に発する痛み。
矢の勢いに押されて倒れ込む。
後ろを振り向くと花良治が弓を構えている様を確認すると即座に八峡義弥はあの種の能力を理解する。
「(あの種)」
「(武器を作るのかッ)」
そう確信すると八峡義弥は体を起こして大急ぎで校舎に入る。
弓の射線から逃れる為に奥へと進んで、階段を発見すると登り出した。
そして二階へ駆け上がると姿を隠して左腕の矢を引き抜こうとする。
「ぎッ」
触れるだけで肉に刺激が走り痛みが伴う。
無理に引き抜こうとすれば、肉が引っ張られて更に痛みが増すだろうが。
「ガァアッ、ギッ、く、クソッ!」
無理矢理やを引き抜いた。
矢を握り締めながら悶絶する八峡、しかし声には出さず、押し殺している。
「(最悪だ、クソッ)」
「(腕、動かそうとするとスッゲェ痛ェッ)」
頭の中が燃え上がる。
腕を動かそうとすると鈍い痛みが浮き上がる。
それでも八峡義弥は歯を食い縛って痛みに耐える。
「(けど……足りねぇよな)」
「(こんぐらいの血量じゃあよ)」
八峡義弥は引き抜いた矢を口に咥える。
そして歯で強く噛み締めながら。
「(あの野郎……絶対ぶっ殺してやるッ)」
「(いや、殺すだけじゃ気がすまねぇ)」
「(犯かしてやる、あの野郎ッ)」
覚悟を決めて。刃物で自らの左腕を裂いた。
大量に噴き出る血液。
更に熱を帯びる左腕に八峡義弥は意識が剥がれそうになりながらも気張りながら立ち上がり左腕の血液を垂らしながら屋上へと目指していく。
……何処かからズルズルと引き摺る音が聞こえるその音を気にしながら、八峡は屋上へと向かった。
──―そして校舎内に入って来る花良治伏籠は。
床に垂れる血液を確認する。
「(これがあのお兄ちゃんを)」
「(見つけ出す為の道標ね)」
その手には大き目な木槌が握られている。
それで八峡義弥を仕留めるつもりなのだろう。
「(蛭の厭穢だっけ?)」
「(おいちゃんが殺すが先か)」
「(厭穢がお兄ちゃんを殺すのが先か)」
「(それとも……自殺とか)」
「(はは、ありえるかもね)」
気楽にそう思いながら静かに階段を昇るのだった。
花良治伏籠は八峡義弥を追跡。
階段を昇り二階へ到達するとその血液の量を確認した。
「(ここで矢を引き抜いた)」
「(かなり血液を出してる様子だね)」
「(最初は雫程の血液がぽつぽつと)」
「(地面を濡らす程度だけど)」
「(今じゃこの血液は)」
「(蛇口を少し緩めたくらいに)」
「(血が零れ出てる)」
「(地面には血の道が出来る程に)」
「(弱ってるね、あのお兄ちゃん)」
血の道を辿りながら。
花良治伏籠は順調に八峡義弥を追い詰める。
廊下を歩いて階段を昇る。
二階から三階へ、三階から屋上へ行くと。
あっと言う間に屋上へと到着して八峡義弥と出会う。
「やあお兄ちゃん」
老人は言った。
さも散歩をする道に。
通行人と出会った際に挨拶をする様に。
「よぅ、クソ爺」
悪童は言った。
心の底から憎しみを込めて。
侮蔑の言葉を放つ。
「悪いけど」
「お兄ちゃんの人生は」
「ここで終わりね」
木槌を構える。
八峡義弥は後退すると花良治伏籠は前進する。
「俺の人生が終わり?」
「冗談言うなよ爺さん」
「どう見たって」
「老い先短いのはアンタだろ?」
薄汚い笑みを浮かべて八峡義弥は挑発する。
八峡義弥に出来る事は精々それくらいだった。
「それが最後に言い残す言葉で良いね?」
「それじゃ、殺そうか」
花良治伏籠が士柄武物を構える。
八峡義弥は刃物を構え出す。
互いに均衡状態。
円を描く様に二人は旋回する。
そしてふと。
花良治伏籠は違和感を覚えた。
「あれ? お兄ちゃん」
「なんだいその腕は」
八峡義弥の怪我を見る。
確か矢で貫いた筈の腕は何故か荒々しく刃物で切り刻まれた傷が出来ていた。
八峡義弥はその言葉に対して。
「あぁ、そういや」
「最後に言い残す言葉はあるかって」
「そう言ったよな?」
花良治伏籠の質問に答える事無く、八峡義弥は別の質問を返す。
「最後に言い残す言葉」
「あるぜ」
「アンタに対して言う言葉が」
八峡義弥がその最後の言葉とやらを口に出そうとした瞬間。
下層に続く屋上の扉から激しく蠢く巨大な豚の腸の様な生物が扉を破壊しながら出現する。
激しく破壊する音を聞いて花良治伏籠はその音に視線を向けた。
「(蛭の厭穢ッ?!)」
「(血の匂いを辿って来たのねッ)」
「(お兄ちゃんのあの傷ッ)」
「(自傷して血液量を増やして)」
「(蛭を呼び寄せたってワケねッ)」
「(つまりお兄ちゃんは)」
「(この逃げ場所が無い屋上で)」
「(蛭の厭穢とおいちゃんを)」
「(殺し合わせる算段なのねッ!)」
だがこの状況は八峡義弥も逃げ場所が無い。
花良治伏籠が厭穢を斃しても、蛭の厭穢は花良治伏籠を斃しても、残った方が自動的に八峡義弥を殺害する。
爪が甘い、花良治伏籠はそう思った。
その瞬間、蛭の厭穢が動き出す前に八峡義弥が花良治伏籠に突っ込んだ。
「ぐぁッ?!」
左腕で花良治伏籠の首を掴み。
右腕で花良治伏籠の片足を掴む。
上手く踏み込めない花良治伏籠を八峡義弥は思い切り押し込む。
「なあ、アンタ」
「
(まさか、このお兄ちゃんッ)
押し込み、押し込み、押し込んで。
八峡義弥は。腐り切った柵を破壊して二人諸共、屋上から飛び降りたのだ。