術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

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第26話

八峡義弥たちを確認する結界師は携帯電話を使用して連絡を行う。

その電話相手は命苫学園長であり、八峡義弥の殺害が失敗した事を告げると。

 

「ふんふん、そうさね」

「失敗かい、ふんふん」

「存外に」

「バカに出来ないね」

「あの男は」

 

と、舌打ちをしながら八峡義弥の殺害を悔やむ。

その皺だらけの目尻は深く溝が出来て、八峡義弥の憎たらしい表情を浮かべるだけで苛立ってしまう。

 

「(大人しく死んでおけば良いものを)」

「(陰陽師に目を付けられれば)」

「(学園の経営も難しくなると言うに)」

「(そも、東院が動いていれば)」

「(簡単に終わる事だったと言うに……)」

 

東院が八峡義弥の殺害に関与しなかった為に、八峡義弥の殺害成功率が著しく低下していた。

命苫学園長は東院一に対して憤慨な気持ちを抱く。

 

「(いや、奴の性格を考えれば)」

「(虚空蔵小路家との交渉は不要だったかね)」

「(あれさえ無ければ…………)」

「(下手な刺激をしてしまった)」

「(落ち度と言う奴さね)」

 

自分自身の落ち度であると納得して、溜息を零す命苫学園長は仕方なく結界師に連絡を入れる。

 

「気を付けて帰りなさい」

「今日の所は中止」

「八峡義弥が戻るまで」

「パーキングエリアに寄ったりして」

「時間を遅らせて来なさい」

「その間に八峡義弥を殺害させる」

「準備を済ます」

「以上だ、良いかい? 切るよ?」

 

結界師が了承の言葉を挙げると命苫学園長は携帯電話を切って通話を終える。

そして後ろを振り向き其処に携わる者たちの顔を見た。

 

「さて……」

「六弁花の皆さん」

「花良治伏籠がやられましたよ」

 

学園長室に滞在する九重花家の分家代表である六弁花の後五名が部屋の中に居る。

 

花古屋(けごや)家。

花天(けてん)家。

向花(むけ)家。

花倉(けくら)家。

花里崎(けりさき)家。

 

そして先程八峡義弥に敗れた花良治家を以て六弁花となる。

 

「お次は誰が行くのですかね」

「正直」

「八峡義弥と言う存在を下に見過ぎていましたよ」

「あれは無価値と言う総称ではありますが」

「存外にやる様子です」

「さて、どうでしょう」

「此処は全員で立ち向かうのが得策では?」

 

命苫学園長の言葉に複数の代表者が頷き、もう半数が首を振る事は無かった。

確実に八峡義弥を消す為には複数人で行動して実行した方が良い。

だが、陰陽師直属の祓ヰ師である九重花家の分家。

八峡義弥一人に対して本気、ないし複数人で相手を成す事に対して何かしらの抵抗感があったらしい。

 

「ではどうするか」

「時間が余ってますので」

「作戦がてら」

「お茶でも用意しましょう」

 

重い腰を上げて命苫学園長が直々に茶を淹れに行く、そして命苫学園長が戻って来ると。

 

「…………せっかちな」

 

既に六弁花の姿は何処にも無かった。

 

八峡義弥が戻って来るまでの間、九重花久遠は八峡義弥の元に。

会う為にあさがお寮へと来ていた、彼女が玄関に入ると。

 

「よよ? どなた様ですか?」

 

そう彼女の元に現れる背の低い少女。

祝子川夜々は洗濯物を抱えながら九重花久遠と出会う。

 

「あの、私は、八峡、さまの」

 

「んー? 八峡さんですか?」

「八峡さんなら居ませんよ」

「何やら先生に連れていかれた様子ですけど」

「何処に行ったのでしょうか?」

「危ない事をしてなければ良いのですが……」

 

首を傾げながら祝子川は八峡義弥の安全を願う。

九重花久遠は八峡義弥が居ない事を知ると。

 

「分かり、ました」

「すいま、せん、また、八峡、さまが」

「戻ら、れれば」

「久遠が、来たと」

「そう、言伝を」

 

彼女がそう言うと祝子川夜々は笑顔で了承する。

 

「分かりましたっ!」

「あっ、少し待たれるのなら」

「お茶でもご用意しましょうかっ?」

 

祝子川夜々の提案に九重花久遠は少し迷ったが八峡義弥がすぐに戻るかも知れないと。

 

「は、い」

「頂き、ます」

 

居間で過ごさせて貰う事にする。

暫くして、彼女は祝子川夜々が淹れたお茶を啜ると、廊下から居間に永犬丸統志郎がやって来る。

 

「おや、これはこれは」

「九重花家のご令嬢」

 

そう呼ばれて九重花久遠が永犬丸統志郎を見るとすぐに彼女は両手で目を覆う。

 

「あ、あの」

「服、を、着て、頂け、ないで、しょうか?」

 

永犬丸統志郎は全裸だった。

彼は服を脱ぐのが好きな変態だ。

自らの生まれたままの姿を見て。

 

「おっと」

「これは失礼」

 

そう言って永犬丸統志郎は居間で服を畳む祝子川の洗濯物からバスタオルを取ってそれを腰に巻く。

 

「お借りしますね」

 

「はいっどーぞっ!」

 

祝子川夜々は笑顔で答えた。

そして改めて永犬丸統志郎は九重花久遠の元に立つ。

 

「我が友をご所望かい?」

 

「はい、です、が」

「八峡、さまは、不在、らしく」

「今、此処で、待って、居るので、す」

 

永犬丸統志郎は頷いてならば、と付け加えて。

 

「我が友の部屋で待てば良いのでは?」

 

と聡い表情を浮かべて言う。

八峡義弥の部屋は基本的に鍵をかけていない。

其処まで重要なものなど無くまた彼自身鍵をするのは面倒だと言う理由で扉は常に開きっぱなしだった。

永犬丸統志郎や猿鳴形が勝手に部屋に入る事もあるが、八峡義弥に対する手土産があれば勝手に部屋に入っても良いらしい。

 

「宜しい、の、です、か?」

 

「我が友が勝手に部屋に入る位で」

「怒る事は無いだろうし」

「我が友の待ち人だ」

「むしろ喜ばしいのでは無いのだろうか」

 

八峡義弥の部屋、九重花久遠はその部屋に入ってみたい衝動に駆られる。

 

「(八峡さま、の、部屋)」

「(八峡、さまの、安らぎ、の、場所)」

「(知りたい、です、私は、もっと、八峡、さまを)」

 

抑え切れない衝動に九重花久遠は。

 

「案内を、お願い、します」

 

そう、永犬丸統志郎に頼むのだった。

 

 

 

 

 

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