術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

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第27話

八峡義弥の部屋に通される九重花久遠。

その部屋はカギは掛けられておらず、ドアノブを捻るだけで簡単に開く。

 

「八峡、さま」

 

部屋の中は実に八峡義弥らしい。

綺麗などと由縁は無くゴミに満ち溢れた雑多な場所。

だらしなく脱ぎ捨てられたシャツやズボンに壊れかけたブラウン管テレビ。

ビデオや一世代前のゲーム機などが置かれていて、男らしい部屋と言えばそうとも見える。

 

永犬丸統志郎は周囲を見回す。

八峡義弥の匂いに包まれた場所ですんすんと、鼻を動かして首を傾げた。

 

「我が友は何処に行ったのだろうか」

 

親友である永犬丸統志郎でさえも分からないらしい。

永犬丸統志郎はまだ出席簿に名前を記入していないらしい。

彼女を八峡義弥の部屋に残して。

 

「まあ我が友の事だ」

「すぐに戻るだろう」

「キミは此処で待っていると良い」

 

そのまま学園へと向かうのだった。

一人残された九重花久遠は散らかった八峡義弥の部屋で一人座りながら八峡義弥を待ち侘びる。

彼が来るまで、携帯電話を取り出して再び八峡義弥に向けてメールを送る作業を行う。

 

「誠に、勝手、なが、ら」

「部屋に、入らせて、頂き、ました」

「もし、ご迷惑で、無ければ」

「このまま、待たせて、貰い、ま、す」

「ご迷惑、でし、たら、」

「めぇるを、ください、八峡、さま」

 

その内容をメールで送り、そして九重花久遠は待つ。

八峡義弥の散らかる部屋を見て人間らしさを感じ取っていた。

 

「(八峡、さまは)」

「(自室、で、は)」

「(ずぼら、なの、です、ね)」

「(また、一つ、八峡さまを)」

「(知る事、が、出来ま、した)」

 

胸に手を当て、八峡義弥を思い浮かべるだけで心が弾んでしまう。

 

「(もっと、もっ、と)」

「(八峡さまを、知り、たい)」

「(この体に、染み渡、る、程に)」

「(八峡、さま、を)」

 

八峡を想い、八峡を求め、彼女はふと、八峡義弥のベッドに目を付ける。

喉を鳴らして、息を荒くさせて心臓を高鳴らし、体中が熱くなるのを感じる。

 

「(それは、いけま、せん)」

「(その行為は、はした、ない……)」

 

それでも、体が言う事を聞かず。

八峡義弥のベッドに彼女は体を沈めた。

ベッドのシーツから彼女の知る、八峡義弥の匂いに溢れている。

 

「(……あぁ)」

「(八峡さま)」

「(早く、早く)」

「(私は、八峡さまに、会いたい、です)」

 

ベッドの上で横になるだけでは足らず。

床に落ちているシャツを彼女は拾うとそれを自らの鼻に近づけて八峡義弥の匂いを堪能する。

 

「(……いけ、ないの、に)」

「(そう、分かって、いる、のに)」

「(止める事が、手が、意志に、反して)」

「(ああ……八峡、さま)」

「(八峡さま、やかいさま、やかぃさ、)」

「んぁ…」

 

心の中で彼の名前を連呼しながら火照る体をくねらせて彼女は八峡義弥の部屋で果てるのだった。

 

「(……なんと、恥ずかしい、真似、を)」

 

九重花久遠は十数分後に冷静になる、そして自らの行為を恥じるのだった。

彼女が八峡義弥の部屋に滞在してもう昼過ぎだったが彼女は空腹になりながらも、ただ八峡義弥を待ち続ける。

 

「(八峡、さま……)」

 

携帯電話を握り締めながら。

九重花久遠は来ない着信をただ待ち続ける。

すると唐突に八峡義弥の部屋の扉が開かれる。

 

「、八峡、さま?」

 

扉の方を見ると、其処に立つのは二人の女性だった。

一人は九重花久遠の付き人である。

 

花天禱が一人と、もう一人は高身長に着物を着崩し腰に二振りの刀を帯刀する眼帯の女性。

口元に銜えられる煙管からは煙が出ていた。

 

「久遠様、こんな所に居ましたか」

 

花天が九重花の元に近づく。

 

「面倒な事になる前に」

「早々と帰りましょうよ」

 

九重花久遠を迎えに来た花天。

彼女は八峡の部屋の散らかり様に眉を顰めて袖を使って鼻や口を覆っていた。

九重花は少し表情を曇らせながら、彼女は首を横に振る。

 

「私は……八峡さま、の」

「本心を、聞かねば、なり、ません」

「聞かぬ、限り、私は」

「この場、から、離れたく、無い、の、です」

 

彼女の我儘に花天禱は溜息を吐いて。

 

「その事でしたら」

「あのメールの内容は」

「私が書いたものなんす」

「すいません」

「謝りますので」

「今日の所は帰りませんか?」

 

と、あっさりと。

花天禱は自らが捏造したと白状する、それ程に彼女は切羽詰まっている様子だった。

九重花久遠は驚きながら激昂する事無く冷静に彼女に何故か問うた。

 

「何故、その、様な真似、を?」

 

「理由もお説教も」

「ご実家で説明しますから」

「ですからどうか」

「今日の所は帰りますよ」

 

花天禱は九重花久遠を八峡から遠ざけようとする。

彼女の行動は下手をすれば家系ごと潰されるかも知れない。

 

「申し、訳あり、ません」

「ご迷惑を、お掛け、します」

「けれど、もう少し、だけ」

「私の、我がまま、に」

「付き、合って、は」

 

「駄目だね」

 

彼女の会話に割って入る、煙管を銜える女性の姿。

 

「ただ一つの我儘で」

「ウチらの人生が左右されちまう」

「ウチらの上に立つ人間ならさ」

「そこん所、きっちりして貰わねぇとさぁ」

 

九重花が彼女の言葉に対して何か口にしようとしたが、くらり、と彼女の意識が混沌としていく。

 

「悪いけど」

「もうウチの術式、使ってるから」

「寝て醒めた時には」

「ご実家の地下牢にでも監禁しといてやるよ」

 

その言葉を最後に九重花久遠は、眠りに付く。

一仕事終えた様子の女は溜息を吐いた。

そして花天禱は自分よりも背の高い彼女を見上げて。

 

「なんすかさっきの言い様は」

「仮にも、久遠さまは私らの上に立つ者なんすから」

「言葉は選んで言って下さいや」

 

そう苛立つ様に言った、花天禱の言葉に彼女は眉を顰めて。

 

「けど事実だ」

「恋だなんだに現を抜かされて」

「ウチらの肩身が狭くなるのはゴメンだね」

 

そう言うと、彼女を背負い出す、そしてその場から、二人は離れるのだった。

 

 

 

 

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