術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

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第3話

約束を交わすして早々。

明日となる、八峡義弥はあさがお寮から出ると祝子川夜々に挨拶をして待ち合わせである学園前に集合する。

 

「(あー……寝坊したわ、待ち合わせ十時だっけか?今十一時だわ)」

 

八峡義弥は一時間の遅刻をしていた。

遅刻をしたのなら、したなりに急ぐ素振りをするものなのだが。

 

八峡義弥はゆっくりと歩いている。

遅れてしまったものは仕方が無い、せめて携帯電話があればメールぐらいはするが相手は携帯電話を持ち合わせていなかった。

 

「(まぁ仕方ねぇわ、居たら言い訳でも言って……居なかったら後日謝るか)」

 

そう思いながら八峡義弥は校門前に行く。

校門前の警備員に挨拶をして通り過ぎると、九重花久遠は校門の傍で立っていた。

 

「んあ?おぉ、待ってたのか」

 

八峡は空を見上げる彼女にそう言った。

九重花の姿は下ろし立ての綺麗な着物を着飾っており、手には外出用の巾着袋を握り締めている。

彼女の表情は曇っていた、八峡義弥が遅刻した事に対して表情を曇らせている、訳ではなく、それは八峡義弥を心配しているが故に表情を曇らせていた。

 

「……、八峡、さま、息災が、無く、安心、しま、した」

 

一時間も遅れた八峡義弥に対して彼女は胸を撫で下ろして安堵の表情を浮かべる。

 

「(うっわ、純粋な心配、まだ怒ってくれた方が罪悪感も少ねぇのによ)

 

八峡義弥の数少ない良心が痛むが表情はケロっとしている。

対して九重花久遠は重苦しい息を吐いて難しい表情を作る。

 

「遅く、なったのは、何か、理由が、ある、のでしょう」

「私は、何も、聞きま、せん……八峡、さまが、ご無事であれば、それで」

「それに、今、こうして、遅れ、ながらも、来て、下さい、ましたから」

 

胸を撫で下ろし、柔和な笑みを浮かべる九重花久遠。

ズキズキと彼女の優しい言葉が釘の様に、彼の数少ない良心を傷つけていく。

堪らず、八峡義弥はハッと息を吐いて。

 

「いや実はな、寝坊したんだわ」

「悪かったな」

 

八峡義弥は言った。

自分の不注意による遅刻、説教、最悪注意はして貰い、この罪悪感を少しでも消して貰おうとするが。

 

「寝坊、ですか」

「でしたら、私も、八峡さまに、会うま、でこうして、空、を眺め」

「八峡、さまと、どの様な話を、するか」

「どこに、連れて行って、くれるか、そう、夢想、して、おりました」

「ですので、お互い様、ですね」

 

そう笑う彼女を見て八峡義弥は唸る。

 

「(出来た女だ、罪悪感が半端ねぇわ)」

「……一万円までなら好きな物、買ってやるよ」

 

八峡義弥は結局、この罪悪感を消す為に彼女にプレゼントをする事で帳消しにする事にした。

 

 

 

予定よりも一時間過ぎて。

ケータイショップで携帯電話を購入する事が出来た。

ピンクカラーのガラケーを手にする九重花は。

新品のガラケーを宝石の様に見ていた。

 

「後はそれ、俺の電話番号を登録しとくわ」

 

八峡義弥がガラケーを開き、赤外線通信機能を使う。

九重花久遠はガラケーを開くが、どの様に動かせば良いのか分からない様子だった。

 

「分からねぇか?」

 

九重花久遠が動かす様を傍目で見ながら言う。

 

「あの、……はい、申し訳、ありま、せん」

 

「謝んなって、ほら、貸してみ」

 

しょんぼりとする九重花の携帯電話を取って。

八峡は二台持ちで携帯電話を操作する。

 

「送信……受信、受信……送信、と…おらよ、これで登録完了だ」

 

手際よく電話番号登録を済ませて。

八峡が彼女の携帯電話を渡す。

彼女は携帯電話を受け取って。

 

電話帳に。

八峡義弥の名前が載っているのを確認すると。

ボタンを操作して、ガラケーを構える。

八峡の携帯電話から着信音が流れ出した。

 

「うぉ、……あ?」

「……………」

 

八峡は九重花の顔を見ながら。

通話ボタンを押してガラケーを耳に添える。

 

『もし、もし』

『八峡、さま』

『聞こえ、ますか?』

 

隣に居る九重花が言う。

八峡義弥は携帯電話を構えながら彼女を見詰めて。

 

「あー……」

「聞こえるぞ」

 

八峡義弥が彼女の隣に居ながら。

そう電話に向かって言うと。

 

『凄い、です』

『八峡、さまの声、が』

『聞こえて、来ます』

 

隣に居る彼女が嬉しそうにそう言った。

「いや近くに居るだろ」と言おうと思った八峡だが。

空気を呼んでその言葉を胸にしまい。

 

「そうだな」

 

そう相槌を打つ。

 

「用事も済んだしよ」

「なんか飯食って帰るか」

 

電話越しに八峡義弥はそう言った。

時刻は丁度一時。

食事には丁度良い時間帯だった。

 

「お食事、です、か?」

 

「あぁ、なんか喰いたいモンあるか?」

 

八峡義弥は九重花に聞く。

彼女の意見を尊重しようとしていたが。

九重花はたじろいだ。

 

「私は、この辺りの」

「地理を、知りま、せん」

「八峡、さま」

「お手数、だと思い、ますが」

「八峡さまが、お決め、下さいま、せんか?」

 

「あ?俺が決めんの?」

 

八峡義弥は話を振られて少し困惑する。

お嬢様の口に合いそうな料理などあるのか。

回らない寿司か、予約を取らなければ入れない料亭、そのくらいしか思い付かない。

 

(いや)

(逆にファーストフードくらいなら)

(物珍しいから興味があるんじゃねえか?)

 

勝手な推測をする八峡義弥はこの辺りの店を探して、ハンバーガーショップに目を向けた。

 

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