術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

36 / 62
第36話

この物語には三つの転機がある。

一つ目は2007年2月25日・不従万神(まつろわぬかみ)八覇守(やはのかみ)討伐戦。

 

二つ目は2006年11月7日・邪神教団討伐戦及び学園防衛戦。

そして三つ目。

 

2005年、10月17日・転生者集団「天輪冠(シャンバラ)」による八十枉津学園襲撃事件。

祓ヰ師・落狩倉奨悟率いる元学園関係者による転生者の圧制。

學園教師、駕与丁雅・鬼籠深禪・贄波阿羅による転生者討伐。

そして贄波璃々・東院一による転生者個人撃破。

これらの行為が転生者集団である転輪冠の反感を買い。

本日を以てして、八十枉津学園による強襲を掛けた。

この事件によって。

92期生の土会平 蓬・売子木入々が死亡。

93期生では猿鳴形・葦北静月・思川百合千代の死亡が確認される。

 

この爆発音は天輪冠による襲撃であった。

それに気が付かない者たちは急に響く爆発音に驚いた。

 

「誰がやった、八峡義弥はあっちだぞ!」

 

花里崎刈連はその爆破は九重花家の関係者がやったものだと勘違いした。

そして八峡義弥の方へ指差しながら。

 

「ちょっと待て、この匂いは」

 

鼻をスンスンと動かして花里崎は八峡義弥から視線を外し。

 

「……久遠さまだ」

「久遠さまの匂いがするっ!」

 

そう大声で叫び出す。

花里崎刈連は九重花久遠を愛している。

彼女の匂いは反復して楽しめる程に脳に染み付いていた。

花里崎刈連の言葉によって八峡義弥も周囲を見回す。

 

「(久遠が近くに居るのか)」

 

そして周囲を探して彼女の姿を認識した。

校舎から広場へと出て来る彼女の姿を見て。

八峡義弥は彼女と目が合う。

 

「や、やかいっさまっ!」

 

彼女が大きな声で叫んで八峡義弥の元へと向かう。

花里崎刈連も彼女を認識すると。

 

「久遠様っいやこれは違うんです!」

「俺は別にそういう意味でやった訳じゃないんですよ」

「別にこの人畜生を殺すつもりじゃなくて」

「なので嫌わないで下さいッ!」

 

「(え、なにコイツ……)」

 

八峡義弥はそう思った。

花里崎刈連はなるべく、彼女に嫌われる様な真似はしたくは無かった。

突然の豹変は周囲の九重花家関係者も狼狽せざるを得ない。

 

「何をしているバカ者っ!」

「俺が久遠様の注意を引く」

「さっさとあの人畜生を殺すのだ」

 

そう言いながら花里崎が九重花久遠の元に行き。

 

「久遠様、今日も良い天気ですねぇ!」

「そうだあちらのコテージで優雅に紅茶でも」

 

「邪魔ッ!」

 

花天禱が花里崎の前に出て彼の股間に蹴りをお見舞いする。

その場に沈む花里崎を無視して九重花久遠が八峡義弥の元に向かう。

九重花家関係者は、久遠が来るとその輪を割いて、彼女の為に道を作る。

 

「八峡さまっ!」

 

そう叫んで、彼女が八峡義弥の胸に飛び込んだ。

八峡義弥は彼女に向けて手を伸ばし彼女の体を支えた。

 

「八峡さま……やかいさまっ」

 

八峡義弥の胸に顔を沈めて涙を流しながら八峡義弥の温もりを感じる。

 

「………」

「あ、やべ、なんか目から涙が出て来る」

 

目頭を押さえて八峡義弥は彼女を抱いたままそう言った。

可愛らしい子犬を見ていると感涙してしまう様に彼女の健気な姿を見て涙せずにいられなかった。

 

八峡義弥は彼女と出会い即座に永犬丸統志郎と猿鳴形が二人を守る様に構える。

永犬丸統志郎は猿鳴形に話しかける。

 

「このまま何処かへ行ってしまうかい?」

 

その問いに猿鳴形は頷くと。

 

「ならこうもんまえまでいくとするか」

 

そう話を付け出す。

 

唖然に取られていた九重花家関係者たちが八峡義弥を狙う為に走り出すが。

 

「それいじょう」

「くることはおすすめしない」

 

猿鳴形の指先から火花が飛び出す。

指先から放たれる弾丸、それが威嚇射撃と言いたげに地面に向けて着弾する。

 

「我が友、行くのならば今の内だ」

 

永犬丸統志郎が牙を剥いてそう言った。

九重花久遠を抱き締めていた八峡義弥は永犬丸統志郎の言葉に頷く事はなかった。

反応の無い八峡義弥を不思議がった為に永犬丸統志郎は後ろを振り向いた。

 

「我が友?」

 

大親友の顔を見る。

八峡義弥は上空を向いていた。

この騒ぎの中、何故上を見る必要があるのか。

永犬丸統志郎も上を見る。

 

「……なんだ、アレは」

 

誰も彼もが手を止めて、その上空に立つ者を眺めている。

上空には、三人の白髪の幼女が浮いている。

 

いや、それらは落ちていた。

墜ちながら、互いが互いの指を握り締めて何かをしようとしていた。

それに先に気が付いたのは。

 

「ッ、あれはッ」

 

永犬丸統志郎。

急に気が付き、大声を荒げて。

 

「逃げろッ!あの術式はッ!」

 

そして、落ちて来る幼女たちはみんな、口を揃えて。

 

 

 

 

 

 

「「「地獄(じごく)(どう)孤獄(こごく)の理」」」

 

 

 

 

 

 

 

そして、三人の幼女を中心に空が黒く、確実に蝕んでいく。

それが円球状のドームの様に学園を覆われていく。

 

 

 

 

 

 

「「「無間(むげん)独獄淵境(ひとまえんきょう)」」」

 

 

 

 

 

 

 

その術式を、永犬丸統志郎は知っていた。

しかし、あり得ない。

その術式が浸蝕する範囲は知れている。

だが、学園を覆う程の巨大な術式は目の前に広がっている。

その術式を肌で感じて、永犬丸統志郎は歯ぎしりをした。

 

「なんだよイヌ丸」

「こりゃ一体……」

 

八峡義弥は永犬丸統志郎に説明を求める。

それに応じる永犬丸統志郎は。

 

「転生術式……と言うものがある」

「自分が誕生する前の記憶」

「前世を呼び起こす術式だ」

「世界には六つの理が存在する」

「六道輪廻と呼ばれるもの」

「ボク達が居る場所は人間道」

「転生者はそれ以外の世界から来た輩の事だ」

「転生者にしか扱えない特別な術式」

「そして、この術式は」

「転生術式の中でも高度とされるもの」

「自らの前世、其処に居た世界」

「その環境や事象を」

「この人間道へと転生させる術式」

「名は道理(ことわり)

「此処は、別世界の空間だ」

 

永犬丸統志郎は息を強く吐きながらそう言った。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。