術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

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第48話

 

九重花久遠は随分と質素な服装を選んだ。

いや、選んだと言うよりかは店員のおススメを購入した。

その様な感じだろう、店員が何よりも驚いたのは、彼女は下着など装着しておらず、晒しを巻いていた事だった。

下着を購入して和服から洋服に変わる彼女は恥ずかしそうに試着室のカーテンを掴んで八峡義弥を見つめていた。

 

「なんだか、ぴっちりと」

「纏わりつく、様な」

「すこし、窮屈、だと」

「そう、思って、しまい、ます」

 

彼女は服装の感想では無く、下着の感想を口にしていた。

 

ランジェリーの類は彼女は装着するのは初めてだった。

 

「早く出て来いよ」

「服装、見れねぇじゃねぇか」

 

八峡義弥はそう言って、彼女が試着室から出て来るのを急かすが。

 

「……あの」

「恥ずかしい、です」

 

自分が自分と違う。

まったく違う服装をしている。

それが恥ずかしく感じてしまうのだ。

 

「大丈夫だって」

「顔見せて見ろよ」

 

八峡義弥は大丈夫と言った。

彼女が何処に出ても恥ずかしくない。

そう言える程に彼女の服装は似合っている。

そう強く自信を持っていえるから。

 

「で、ですが」

 

「……はぁ」

「分かった」

「じゃあ、俺が行くわ」

 

そう言って八峡義弥は彼女の元へと歩み寄って強引に試着室の中に入る。

 

そして八峡義弥は洋服姿の、顔を真っ赤に染めた。

九重花久遠を見た。

 

「…………」

 

「あ、あの、八峡、さま」

「ど、どう、で、しょう、か?」

 

彼女は目を伏せて自分の姿を、八峡義弥に見せる。

八峡義弥は答えない。

 

彼女の姿は似合っている、似合っているが、なんとなく、彼女の姿に、見惚れてしまっていた。

 

「………あの」

「八峡、さま?」

 

彼女が、顔を近づけて。

八峡義弥を見る。

彼女の瞳が近づいて、そこでようやく八峡義弥は。

 

「あ、あぁ」

「似合ってる」

「マジで似合ってる」

「なんつうかな」

「……いや、これ、言葉にすんの」

「恥ずかしいけど、まあ」

「見惚れてたよ、俺は」

 

その言葉を口に出して。

彼女は口に手を添えた。

見惚れていた、その言葉は彼女の口を、だらしなく開かせる。

嬉しくて、つい笑みが零れてしまうから、彼女は、口を手で覆い、それを悟らせぬ様にする。

それが精一杯だった。

 

「あー、あの、な」

「出るぞ」

 

八峡義弥はそう言って先に更衣室に出た。

店員の許可もあり、先に購入していればその場で着用しても良いと言われた為、衣服を着用した今、その場から出て行っても店員は無論、誰も彼らに対して文句を言う者は居なかった。

 

 

八峡義弥と九重花久遠は外へと繰り出す。

近場に公園がある為に其処に足を踏み込んでいた。

適当に散歩したりして八峡義弥は彼女の姿を見ては九重花久遠はその視線に気が付いて。

 

少し恥ずかしそうにそっぽを向く。

そうして、一通り歩いた後。

八峡義弥は、公衆電話のボックスを見つけた。

 

「悪い」

「少し、電話するわ」

 

そう言って八峡義弥は電話ボックスへと入っていくと、百円玉を電話の上に積み重ねて、ダイヤルを回していく。

そして八峡義弥はある人物へと、電話を掛けた。

 

「……よぉ、イヌ丸」

 

『……我が友か』

『今、何処に居る?』

 

永犬丸統志郎は八峡義弥にそう言った。

 

「それは」

「言えねぇ」

「悪いな」

 

八峡義弥は永犬丸統志郎に苦々しい笑みを浮かべてそう言うと。

 

『……そこに、咲姫も』

『居るのかな?』

 

探る様に永犬丸統志郎は言う。

八峡義弥は彼女の方を向いて、親友に対して。

 

「あぁ」

「居るよ」

 

そう言った。

深い溜息が聞こえて来る。

 

『……九重花家の人間が』

『あさがお寮に来た』

『我が友が居るかどうか聞いて』

『不在確認をしたらしい』

 

「そうか」

「俺たちは暫く」

「そっちには帰らない」

「……もしかすりゃ」

「もう、戻らないかも知れねぇ」

 

八峡義弥はこの電話が今生であるかも知れぬ。

そう永犬丸に告げる。

 

『……それは、少し寂しいな』

 

「俺もだ」

「つか、お前」

「体、大丈夫なのか?」

 

『あぁ』

『昨日の夜には既に』

『治療は終わっていた』

『戻って来れたのは』

『明朝だったけどね』

 

「ふぅん」

「あと」

「頼んでおいたアレ」

「どうなった?」

 

『転生者の遺品か』

『どうだろうね』

『使えるかどうか』

『聞こうと思っていたけれど』

『我が友は』

『もう戻ってこない』

『そうなのだろう?』

 

永犬丸統志郎の言葉に、 八峡峡義弥は頷く。

 

「あぁ」

「学園に戻る事は無いだろうしな」

「なんなら、アレ」

「お前にやるよ」

 

強敵と戦い、八峡義弥が得た代物。

 

『……うん』

『じゃあ、お言葉に甘えよう』

『我が友の代わりとして』

『あれを頂く』

 

百円玉を八峡義弥は公衆電話に入れて通話時間を延長する。

 

「イヌ丸」

「お前には」

「いっつも迷惑を掛けちまうな」

 

『気にする事は無い』

『ボクと我が友の仲だろう?』

『それにボクは』

『我が友に頼られるのが』

『心地良かったよ』

 

「……俺もだ」

「お前が傍に居て」

「すっげー安心してた」

「けど」

「もう会えねぇと思うと」

「寂しくなるわ」

 

その言葉を交わして二人は沈黙を行う。

再び、百円玉を入れて。

 

「……じゃあな」

「イヌ丸」

「元気でやれよ」

 

『あぁ』

『我が友よ』

『ボクらの事は気にするな』

『我が友は』

『我が友の大切なモノを守るべきだ』

『それが』

『ボクが認めた男のする事だろう?』

 

そう永犬丸統志郎は言って。

 

「あぁ」

「俺の為じゃねぇ」

「……アイツの為に」

「俺は生きる事にするわ」

 

そう八峡義弥は言葉を残して、永犬丸統志郎との電話を切るのだった。

 

 

 

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