術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

54 / 62
今年中には終わります。よろしくおねがいします。


第54話

刀を振るう。

炎が舞う。

それだけで屋敷内に滞在する祓ヰ師たちは狼狽する。

 

「スゲエなコレ」

「ロクに力込めてねぇのに」

「炎がスゲェ出て来るわ」

 

八峡義弥が強く柄を握ると、それに合わせるように灰炎が蠢く。

 

「本格的な士柄武物に加工しようと」

「その刀を祓ヰ師に預けたけれど」

「その狂暴な力を」

「鞘に封じ込めるくらいしか出来なかったらしい」

「祓ヰ師曰く」

「これを扱える者は存在しないと言われたが」

「流石、我が友だ」

「その刀を自在に操るとは」

 

永犬丸統志郎は爪を剥き出しにしながら。

祓ヰ師を切り裂いてそう賞賛の言葉を口にする。

 

「あの転生者に」

「認められたからな」

「つまり」

「俺しか使えねぇって訳だッ」

 

祓ヰ師を斬り、燃やし、負傷させ前に進む。屋敷の中へと入ろうとする。

しかし、八峡義弥が屋敷に入ろうとした最中。

背後から祓ヰ師が出現する、その手には士柄武物の刃物を携えて八峡義弥を刺そうとするが。

 

「ガァッ?!」

 

その祓ヰ師の背後から鋭い一撃を受けて祓ヰ師は倒れた。

八峡義弥は後ろを向いて。

 

「ナイス」

「サルちゃんッ!」

 

正門通りから左腕を構える猿鳴形。

その左腕は機関銃の様な銃身が取り付けられていた。

 

「えんごはまかせろ」

 

そう言って。

八峡義弥に迫る祓ヰ師に弾丸を射出して四肢を攻撃する猿鳴。

 

「いけっ」

「やかいっ」

 

その言葉に八峡義弥は屋敷に侵入しようとした最中。

 

「ぐぶぉ!?」

 

玄関先から、巨大な手が出て来る。

その手に押し出されて八峡義弥と永犬丸統志郎は再び外へと出された。

 

「なんだックソッ!」

 

その手は妖だった。

式神遣いが屋敷の中から出て来る。

大入道と呼ばれる妖によって八峡義弥は行く手を阻まれる。

 

「体制を崩したぞッ!」

「今だッ、殺せェ!!」

 

斃れたままの八峡義弥猿鳴形が弾丸を射出するが祓ヰ師たちは怯まない。

 

八峡義弥を殺すべく疾走する。

立ち上がろうとする八峡義弥は肉体が完治していない為か。

片膝を突く刀からは、灰の炎が弱々しく揺らめいていた。

 

「………さて」

「そろそろ、か」

 

八峡義弥は包帯の顔を歪ませてそのまま首を垂れる。

 

祓ヰ師たちは八峡義弥が観念したと思っただろうが実は違う。

永犬丸統志郎もまた八峡義弥に覆い被さる様に体を包ませると同時。

 

天が、ぱりんと割れた。

結界圏域が崩れたのだ。

 

「減滅術式―――〈 (から)〉」

 

玄関周囲。

全ての祓ヰ師の首筋に向けて不鮮明な球体が出現すると同時。

祓ヰ師たちの首が抉れてその球体に吸収されていく。

 

空から現れて来るのは小さな背に狩衣を着込んだ。

白髪で紅色の瞳を持つ男。

 

「もう死んだか、凡人」

 

「……いいや、ギリセーフだ」

 

東院(とい)(ながらく)が出現する。

 

「めっちゃいい感じの登場で悪いけどよ」

「祓ヰ師、殺すんじゃねぇぞ」

 

八峡義弥は加減を知らぬ男にそう言う。

 

「知るか」

「俺はお前の手を貸してる訳ではない」

「俺は俺の理由を以て」

「陰陽師に喧嘩を売ってるのだからな」

 

祓ヰ師たちは驚愕する。

その男。東院の存在は誰もが知っている。

減滅術式。それを扱う東院は。

如何なるエネルギーを滅し、零にする。

マイナスのエネルギーを作り出す存在。

 

同時に、その性格に難があり。

決して何処にも属さない男であるとそう聞いていた。

だが、明らかにこの登場の仕方は八峡義弥に加勢しているとしか思えない。

 

「まさかッ」

「東院一も八峡義弥に付くのかッ!」

 

一人の祓ヰ師が叫ぶ、その口が一瞬で消えて、顎が吹き飛んだ。

 

「違うと言ってるだろうが」

 

八峡義弥は立ち上がり笑みを浮かべながら。

 

「そうだぞお前ら」

「勘違いすんじゃねぇよ」

「助っ人は、東院だけじゃねえ」

 

そう笑い。

それに合わせるかの様に屋敷の裏門が、破壊された。

 

「最悪だ」

 

裏門に集う祓ヰ師たち。

其処に立つ三人の姿。

 

「全員」

「下手な真似はしない方が良い」

 

学園内最強と謳われる男。

飫肥(おび)(はじめ)教師。

術符遣いである彼は空間全体に術符を展開して攻撃態勢を取っている。

 

正直に言えば飫肥壱が出て来る事は予想出来る事だった。

 

どの様な権力にも屈しず。

全ては未来ある子供たちの為にその身を費やす男が出向かわない筈が無い。

しかし意外だったのはもう一人の男。

 

「最近は激務だな」

「これが終わったら」

「今度こそ京都旅行に行こう」

 

スキットルを煽る黒コートの男。

対人戦最強の男、贄波阿羅教師が其処に居る。

 

「咒界の掃除屋が」

「八峡義弥に一枚噛んでいるのかッ」

 

「取引だからな」

 

酒を飲んで深い息を漏らす。

 

「飫肥は元陰陽師だッ」

「陰陽師の神胤操作は通用しないッ!」

 

「既存の陰陽師は」

「贄波阿羅の神胤操作で対応だッ」

 

祓ヰ師や陰陽師が飫肥壱と贄波阿羅を相手取るが。

 

「警告はした」

 

術符が光輝き。

光熱線を発射する。

祓ヰ師がその一撃を受けて腹に穴が開いて、血が溢れ出す。

 

「が、あぁああ!!」

 

「クソッ」

「贄波阿羅を止めろォ!」

 

そう叫ぶと同時。

贄波阿羅はその場から消え失せて叫んだ祓ヰ師の背後に立つ。

背中を士柄武物で貫く。

祓ヰ師の脊髄には臨核がありそれを傷つけると神胤が発動出来なくなる。

 

「なんでだッ」

「贄波阿羅の神胤が操れないッ!」

 

陰陽師が贄波阿羅を指す。

しかし、贄波阿羅は操作される事無く。

悠々とした表情で、祓ヰ師を斃して行く。

 

「どっちもヤバイッ!」

「なんでこいつらが」

「八峡義弥に付くんだァ!?」

 

疑問でしかない。

しかし贄波阿羅はその質問に対して。

 

「そういう契約だからだ」

 

その言葉と同時にナイフを祓ヰ師の腹に突き立てる。

 

「二人もヤバイがッ」

「あのッ、なんか、あれッ」

「なんだ、あいつ、誰か知らんがッ」

「あのオッサンもヤバイぞッ!」

 

そして。

最後の男を指差す。

甚平を着込み白髪交じりの黒髪をオールバック。

そしてサングラスに金のネックレスを付けたオッサン。

飫肥壱と贄波阿羅はそのオッサンを見て。

 

「……え?誰?」

 

「おい誰だ」

「怖いんですけど」

 

何故か二人も知らないオッサンが其処に居た。

祓ヰ師を背負い投げするオッサンは。

 

「どうも、都曇答臓(たんたど)高眞流(たかまる)です」

「純愛を破る不届き者が居そうな気配がしたんで」

「ついお邪魔したデカチンなオッサンです」

 

都曇答臓と言う言葉を聞いて。

 

「都曇答臓……死神と呼ばれた転生者か」

 

贄波阿羅は。その男を知っていた。

都曇答臓と呼ばれた男は指を鳴らして贄波阿羅を指差すと。

 

「ご名答」

「さてはあんた、デカチンだな?」

 

そう下ネタを交えた。

そんな感じで裏門は色々と混沌としていた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。