術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話 作:三流木青二斎
八峡義弥の後ろからげっそりとした間人胤護が出て来る。
「やっと来たか」
そう言って八峡義弥が間人胤護の尻を思い切り叩くと。
「ぎゃあッ!」
そう叫んで尻を抑える間人。
酷く悶絶している様子であり立っているのもやっとの様子だった。
「はい注目ぅ!」
八峡義弥は高らかに声を荒げた。
その声に目を向ける祓ヰ師や陰陽師は八峡義弥と九重花久遠そして、間人胤護の顔を見る。
一体何が起こるのか彼らは見守っていると。
「これからぁ!」
「間人胤護さまのォ!」
「有難ァーいお言葉があるぞぉ!」
「耳かっぽじって」
「よーく聞きやがれっ!」
そう声を荒げる八峡義弥。
そして間人胤護に視線を向けると間人胤護は重苦しい口を開いて。
「全て、すべて終わりにする」
「解散だ、貴様ら……」
と、弱々しくそう言うと八峡義弥が間人胤護の尻を思い切り掴んだ。
「ひゃッ!」
「違うだろぉ?」
「間人ちゃんよぉ」
「俺が聞きたいのは」
「そんな言葉じゃねぇ訳よ」
やり直しを要求。
尻を強く掴みながら彼に耳打ちをする。
「……それとも」
「もっとやりたりねえのか?」
「ち、ちがっ!」
間人胤護は焦る。
「なら」
「言えるよなぁ?」
八峡義弥は満面の邪悪な笑みを浮かべて間人胤護に言葉を要求する。
「ほら」
「言えよ」
「言えねぇってんなら」
「公衆の面前で」
「やっても良いんだぜ」
「俺はよぉ……」
手を尻から剥がして八峡義弥は肩を組むその際に指を彼の胸に触れさせると。
「よ、良く聞けッ!」
「今から言う事は絶対だッ!」
「一つッ!九重花家との婚姻は白紙に戻すッ!」
「二つッ!この件に関して八峡義弥」
「及び、九重花家関係者には」
「一切の報復はしない事を約束するッ」
「三つッ!金輪際ッ」
「八峡義弥関係者と九重花家関係者」
「それらに対しての干渉は禁止ッ!」
「これは絶対だッ絶対だぁああ!!」
高らかに叫ぶ。
八峡義弥は面白おかしく両手で拍手を見舞っていた。
「お見事」
「良く言えました」
「そんじゃあ」
「こんくらいで」
「許してやるよ」
そう言って八峡義弥は間人胤護に対して小指を差し出す。
「な、なんだ、これは……」
今にでも泣き出しそうな間人。
「約束は」
「指切りげんまんって」
「相場が決まってんだろぉ?」
間人胤護との指切りげんまんを強制して間人胤護はそれに乗るほかなかった、八峡義弥の小指と指を絡めて。
「ゆびきりげんまん」
と歌っていくが。
「嘘ついたら」
「お前のケツに」
「何本でも打ち込むぞ」
最後の言葉だけ。
呪いの様な念押しをして間人胤護は頷いた。
それを見た八峡義弥は頷いた。
「指切った」
と間人胤護と約束する。
「この……この、」
「クズ、クズ……がッ」
煮え滾る様な表情を浮かべるが、それを八峡義弥に見せる事は無い。
俯く彼の表情は誰にも理解出来ない。
近くに居る八峡義弥は最後に間人胤護に対して。
「俺に敗けたアンタは」
「
きっぱりとそう言った。
反論された。しかし間人胤護は先程の言葉を反故にする事は出来ない。
契りは結ばれた。
今後どの様な状況になろうとも間人胤護が八峡義弥たちに危害を及ぼす事は出来ない。
それは例え間接的にであろうとも契りとはそういう縛り。
これで八峡と九重花の前に脅威は無くなった勝利であった。
間人胤護。
陰陽師の末裔。
歯向かってはならぬ相手に八峡義弥は真っ向から勝負して勝利した。
誰も文句も言えぬ完全な勝利。
誰も彼もが八峡義弥たちに手を出す事なく堂々と正門から出ていく。
「お疲れお前ら」
「ほんとありがとな」
「マジで愛してる」
「大好きだ」
八峡義弥は此処についてきてくれた。
仲間たちにそう言った。
「気味が悪いな貴様」
東院一は八峡義弥の愛を気持ちが悪いと一蹴して。
「ボクもだよ」
永犬丸統志郎は八峡義弥の友愛を受け止める。
「おれ、つかれた」
猿鳴形は働きすぎで体中の至る箇所から熱を放出していた。
そして、九重花久遠は八峡義弥に腕を絡めてもう二度と離さないと言いたげに八峡義弥に甘えていた。
「八峡、さま」
「これから、は」
「ずっと、ずっと」
「一緒、で、す」
彼女が八峡義弥の肩に頭を寝かせてその一連の出来事が夢物語であるかの様に希望を抱きながら、歩いていく。
「あぁ」
「ずっと一緒だ」
「ずっと、な」
そして、八峡義弥は正門から出ると同時に立ち止まった。
「……?」
「八峡、さま?」
九重花久遠は正門前で立ち止まる八峡義弥を不思議がって名を呼んだ。
先に進んでいた永犬丸統志郎が八峡の方を見て蒼褪める。
「まさか」
「我が友ッ!」
永犬丸統志郎が走り出す。
八峡義弥へと向かって行く。
彼はコトが切れるかの様にゆっくりと、倒れていく。
九重花久遠は倒れていく九重花久遠を抱き抱える。
「八峡、さま……」
「八峡さまッ!」
彼女は慌てた様子で八峡義弥を見つめる。
「……ハッ」
「こりゃ」
「限界か?」
儚げに笑う八峡義弥。
意識が途切れかけている。
それは……彼の奇蹟が付き欠けていた。
「まあ」
「俺にしちゃあ」
「良く頑張った方さ」
「今はもう」
「眠りてぇな……」
「そ、んな……八峡、さま」
「嫌です、私は、まだッ、八峡さま、と……」
彼女は涙を流す。
八峡義弥が死んでしまう。
そう思っている。
実際。
死んでもおかしくはない。
肉体を契りによって強制治癒させ。
その後に臨核を摘出。
そして祓ヰ師や陰陽師との戦闘。
最後には、間人胤護との行為。
肉体は限界を迎えて過労死してもおかしくない。
「あぁ……そうさ」
「まだ、死なねぇ、よ」
「お前を、幸せに、してやる」
「それまで……俺は」
「……だか、ら」
「少し、だけ」
「寝る……だけさ」
言葉が段々と途切れていく、終わりが近づいていた。
「……私は、まだ」
「八峡、さまに」
「何も、して、ません、な、のに」
「なん、で………こ、んな」
「ひど、すぎま、す……」
「あん、まりで、す……」
涙を流す九重花に八峡義弥は、涙を拭おうと彼女の頬に手を添えて親指で、涙を拭く。
「泣いてんじゃ、ねえよ」
「お前は」
「笑ってた、方が………」
「………八峡さ、ま」
「や、かい……さま………」
そして八峡義弥は彼女に抱かれてゆっくりと、眠りに付いた。