術師名家の世間知らずなお嬢様が寝取られる話   作:三流木青二斎

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第8話

 

 

後日。

早朝寝惚けた八峡義弥は欠伸をしながら支度をすると階段を降りて食堂へと向かった。

 

「あ、おはよーございますっ」

「八峡さんっ!」

 

笑顔を浮かべて、背の低い割烹着を着込んだ寮母、祝子川夜々がおたまを持ちながら食堂前を覗き込んだ。

 

「うっす」

「おざまーっす」

 

欠伸をしながら八峡義弥はテーブルに座り出された朝食を口にし出す。

……あさがお寮で食事を終える八峡義弥。

 

「ご馳走様っした」

 

合掌して食事に感謝をすると祝子川夜々が食器を取りに来る。

 

「はいっ」

「お粗末様ですっ」

 

彼女は背が低い。

自らの頭よりもお盆を上げて食器を置いてもらう様にする。

八峡義弥は重ねた食器をお盆に乗せると、せかせかと彼女は食器を洗い場へと持って行く。

 

「八峡さんっ」

「食後のお茶は如何ですかっ?」

 

彼女の気遣いに八峡義弥は首を振る。

 

「いや、要らないっすわ」

「飯、美味しかったです」

 

そう言って八峡義弥が立ち上がる。

学園の出席簿に名前を記入する為に朝早くから登校するのだった。

 

「分かりましたっ!」

「それでは八峡さんっ」

「学校、頑張って下さいねっ」

 

無垢な笑みを浮かべて八峡義弥を見送る祝子川。

そんな彼女を後目に。八峡義弥は手を振ってそれに答えた。

何時もはバッグなど持ち歩かない八峡だが今日は学校指定カバンを持ち歩く。

 

中身は遠賀秀翼が置いて行った駄菓子が詰まっている。

賞味期限は昨日だったが中には一週間後、一カ月先のものもある。

八峡義弥は小腹が空いたらそれを食べようと思い、学園に持って行くのであった。

 

「(あー、気怠、出席書いたら何すっかな)」

 

修業と言う選択肢はない。

八峡義弥は既に修行から逃げた身だった。

 

贄波教師も無理に修行に出る様に言わないが、契りを結んでいる以上、贄波教師は。八峡義弥に出会えば最低一回は殺さなければならぬ。

 

だから八峡義弥は殺されぬ為に逃げている。

出来るだけ贄波教師に出会わぬ様にと、そう願いながら。

 

八峡義弥はあさがお寮から出ていく。

快晴とは言い難い濁った大空。

今にでも雨が降り出しそうで八峡義弥は少し気分が落ちる。

 

雨が嫌いらしい。

今日は何をするか考えながらあさがお寮の門から出ていくと。

 

「……ぁ」

 

「ん?」

 

門の傍で気配がした。

振り向くと、其処には九重花が立っている。

 

「おはよう、ござい、ます」

「八峡、さま……」

 

淑やかな口調で彼女が言った。

どうやら、八峡義弥を待っていたらしい。

 

 

八峡義弥は考える。

彼女が門の前に居ると言う事は八峡義弥を迎えに来たと言う事だ。

彼女に対して八峡義弥が取るべき行動は。

 

「おう久遠か」

「丁度良い所だったわ」

「駄菓子、あんだけどさ」

「お前これ食うか?」

 

バッグの中に敷き詰めた駄菓子を彼女に向けてみた。

沢山の駄菓子を見て九重花久遠は。

 

「わ、あ」

「これ、は、なんと、も、宝石、箱、で、ございま、す」

 

 

目を輝かせて彼女は言う。

彼女は和菓子は食しても、駄菓子と言った代物を口にした事は無い。

だから、彼女の目にしてみればその駄菓子の類は宝石に見えても仕方が無い。

 

「本当、に」

「いただ、いて、も?」

 

 

彼女が恐る恐ると聞くと、八峡義弥は彼女の言葉に対して頷く。

 

「あぁ」

「賞味期限近いけど」

「それでもいいならよ」

 

「でした、ら」

「どこか、落ち着け、る場所、で」

「いただき、ま、しょう」

 

こうして八峡義弥と九重花久遠は落ち着ける場所。

出席簿を記入できる教室へと向かうのだった。

到着して早々、八峡義弥は誰の席かも知らぬ机の上に駄菓子をばら撒ける。

 

「好きな物取れよ」

 

九重花久遠は椅子に座って、駄菓子を品定めしつつあった。

八峡義弥はその内に出席簿に名前を記入する。

 

「あ、これは……」

 

彼女が手に取ったのは種を取り除いた梅干だった。

 

「あー、カリ梅か」

「はい、頂い、ても」

「宜しい、で、しょう、か?」

 

梅の包装を掴む彼女に八峡義弥は頷く。

 

「あぁ」

「気にせず食えよ」

 

八峡義弥は言いながら茎わかめを口に咥える。

 

「それ、では……」

「いただき、ます」

 

包装を破いて小さく梅の果実を齧ると。

 

「ん……っ」

 

目を細めて。

口をきゅっ、と閉めた。

酸味が効いているらしい。

 

その後もちびりちびりと食べる彼女。

八峡義弥は椅子に座って適当に駄菓子を手に取った。

 

「んで」

「今日は早くから寮の前に居たけどよ」

「何か用か?」

 

八峡義弥は彼女にメールを教える約束をしていたが。

そんな事、忘れている様子だった。

九重花久遠は梅干を口に含んで飲み干すと。

約束を忘れている事に対して気にする事無く、話を始める。

 

「は、い、八峡、さま」

「私、との約束、覚えて、いらっしゃい、ますか?」

 

九重花久遠は八峡義弥に改めて聞く。

 

「約束?」

「あぁ……覚えてる」

 

流石の八峡義弥も彼女と初めて出会った時の事を九重花久遠に恋を教える事を覚えていた様子だ。

 

「八峡、さま」

「どうか、恋を」

「今、ここで」

「教えて、下さいま、せんか?」

 

急かす様に九重花久遠は言うのだった。

 

 

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