純白の鳥の羽のような姿に変わったウラシキは、切り落とされていた腕を再生し、翼に変え飛翔する。その飛行速度は忍であるナルト達が捉えきれないほどで、上空から蹴りを放つ。
ナルト達より先に動いていた自来也が彼らを抱え後ろに跳んで回避する。するとナルト達の居た場所に叩きこまれた拳が地面を穿ち、凄まじい衝撃を伝える。もしあの場に立っていれば木っ端みじんにされていたと感じるナルト達。
「まだ力の調整がうまくいかねぇか」
(あやつ、チャクラ全てを身体能力を含む攻撃力に回したか。となれば、このままでは嬲り殺される)
正面からの接近戦では、命を絶やすだけだと判断した彼は、印を組み土遁・黄泉沼を発動。地面に降り立っているウラシキの足を沼に沈め動きを阻害する。しかし、そんなものは時間稼ぎにしかならない。
「さて、そこの爺とガキは殺すとして、うずまきナルト、お前だけは嬲り殺してから九尾を引きずり出してやる」
「そんなことさせる訳ねぇだろ」
「お前なんかに殺されてやるかってばよ」
本当は怖いのだろう。だがボルトとナルトは立ち向かうと決めている。師である自来也も腹を括るしかない。
「相手は一筋縄ではいかん。儂が先導で、奴を討つ。遅れるなよ」
火遁の印を結んだ自来也。得意の火遁忍術を放ち、黄泉沼で動けないウラシキを攻撃する。だが、ウラシキは時間を戻す時空間忍術を使用しないどころか、火遁の術を口で吸いこんでしまった。そして、沼から馬鹿力で脱出したウラシキ。
「何!? こいつ、時空間忍術は使えんようだが、さっきより遥かに強くなっておる」
高速で接近したウラシキを迎え撃つべくボルトとナルトが螺旋丸で畳みかける。だが二人の螺旋丸を両手の掌で受け止め、逆に二人を吹き飛ばしたウラシキ。スピード、防御力、攻撃力の全てが、別次元に存在している。
「忍法・乱獅子髪の術」
吹き飛ばされたナルトとボルトをチャクラで伸ばした髪で受け止め、さらにウラシキの体を拘束する。
「こんなもんで俺が縛れると思ったのか、雑魚」
自分を縛る髪を力だけで引きちぎり、自来也の髪を掴んで引き寄せる。髪を引かれる痛みに顔を歪めるが、其処は歴戦の忍。引き寄せられた勢いを利用し、螺旋丸をウラシキに叩きこんだ。ナルト達よりも強力な螺旋丸を食らったウラシキだったが、片手でガードしきってしまう。
「とっととくたばれや!」
「ごふ」
「エロ仙人!!」
強烈なパンチを受け、岸壁に叩きつけられた自来也。更に追い打ちにとウラシキが追撃を仕掛け、奴の腕が自来也の胴体を貫通する。完全に致命傷を負った自来也にナルトが悲鳴のような声を上げる。
「ギャーギャーうるせぇな。お前は最後だ九尾。お前の目の前で大切なもの全部ぶっ壊してやりゃ、怒りで九尾も出てくるんだろ?」
自来也がやられた瞬間、ナルトから九尾のチャクラが溢れ出る。ウラシキの予想通りナルトの怒りは九尾のチャクラを引き出すにうってつけだ。自来也を殺したので、次はボルトでも殺してみようとした時、致命傷を負わせた自来也が腕をつかんで離さない。
「この死にぞこないがぁ!」
苛立ったウラシキはさらに強力な爪での一撃を自来也に食らわせる。体が真っ二つになった自来也だが、彼は笑っていた。その表情を捉えたウラシキは薄気味悪さを感じる。そして、彼の予感は的中。自来也の体が煙となって消えた。
ウラシキが倒した自来也は影分身だったのだ。
「あん? 何時、影分身と入れ替わってたんだ」
流石に影分身との入れ替わりのタイミングがわからないウラシキ。だが、その答えは、得意げに笑うボルトによって齎された。
「最初からだってばさ」
「あん?」
「自来也のおっちゃんは、最初から分身だったって言ってんだってばさ。俺とナルトは、それをお前に気付かせないための囮だったんだってばさ」
ボルトの言葉通りなら、まんまと踊らされていたことになるウラシキ。だが納得がいかない。
「なら、お前らはあの老いぼれに捨てられただけじゃねぇか。」
師を馬鹿にされたナルトが前に出ようとするが「待てってばさ」とボルトが止める。彼らは見捨てられてなどいない。むしろ、自分たちで志願したのだ。本来はシャナとサスケの仕事だった時間稼ぎの任を。それをやり遂げた二人は、後は待つだけなのだ。
伝説の三忍、自来也のとっておきの秘策を。
「誰が老いぼれかぁ」
突然自来也の声が周辺に響き渡る。
「まさか儂の事じゃあるまいな? 北に南に西東。斉天叶わぬ三忍の~白髪童子蝦蟇使い! 泣く子も黙る色男! 自来也様たぁ~ワシのことよ!」
口上と共に空より舞い降り、地面を大きく揺らしながら着地したのは、本体の自来也。それも通常の姿ではなく、赤い隈取が顔に現れ、瞳は蝦蟇と同じ横一文字となり、少しだけカエルのように顔が変化している。そしてその両肩には、小さな老夫婦の蝦蟇を乗せた状態。
明らかに異質で、それでいながらいつもと比べ物にならないチャクラを誇る今の自来也の状態を、仙人モードと言う。
通常のチャクラは身体エネルギーと精神エネルギーで練られるが、今の自来也はさらに自然エネルギーを取り込んだ仙術チャクラを纏っている。仙術チャクラを扱うものを仙人と言い、使う術を忍術改め仙術と言う。
その仙術をマスターしたものは、既存の忍術・幻術・体術の全てを大幅に強化することが可能。
その強化状態こそ、仙人モードであり、自来也の切り札だ。だが準備には莫大な時間がかかり、その時間をナルト達に稼いでもらったのだ。
そして、彼の肩にくっついている蝦蟇の夫婦は、妙木山の仙人蝦蟇である。自来也の仙人モードを支える存在である。
「自来也ちゃん。耳元で叫ばんといてくれや」
「自来也の小僧、今度叫んだら殴るさかいな」
どうやら耳元で口上を叫んだ自来也に苛立っている様子だが、目の前のウラシキを前にして意識を外すことはない。
正体は不明だが、自来也が呼び出すほどの相手となれば、油断はできない。
「いや、すいません。ですが、今は勘弁願います。あいつは、油断一つできませんので」
「ぶつぶつと、本体が出てこようが同じなんだよ」
ウラシキが我慢できずに飛び出してくる。最速の拳を振るう。その一撃で十分だと判断したんだろう。だが、仙人モードは危機察知能力や探知能力まで格段に向上する。速いだけの拳など軽く受け止めてしまえる。
左手でウラシキの体術を受け止めた自来也。彼が驚く暇も与えず仙人モード独自の怪力の籠った回し蹴りを叩き込む。
「何!?」
体がくの字に曲がり蹴り飛ばされたウラシキだが翼を使って体勢を立て直そうとしたが、両翼を自来也の肩に張り付く蝦蟇が伸ばした長い舌で絡め取られ、逆に引き寄せられる。
「自来也ちゃん!」
「小僧!」
「仙法・超大玉螺旋丸!!!」
半径2mはあるかという超巨大な螺旋丸を作り出した自来也。両腕を舌で縛られたウラシキに防ぐ手段はなく、自来也の必殺の一撃を受けてしまう。
「ぐぁああああ!!!」
両腕を引かれ、胴体を押し出されたウラシキの両腕は千切れ、きりもみ回転しながら吹き飛ぶ。そして、何度も地面にバウンドしながらも体勢を立て直せるのは、ウラシキの強さに他ならない。地面を踏ん張って威力を逃がし、両腕を失いながらも闘志は失っていない。
そして、失った両腕はすぐに生え始める。並外れた生命力に、蝦蟇の夫婦も驚くしかない。
「あれを受けて、無事とは、なんなんじゃアイツは」
「タコじゃあるまいし、腕が何度もポンポン生えてたまるか」
「わかりません。だが非常に厄介な相手と言うのは事実ですのォ」
腕を再生したウラシキは、生えたばかりの腕を動かしながら自来也を睨む。流石にダメージは残っている様子だが、決定打にはならなかったらしい。
「もう勘弁ならねぇ!!!」
イライラが最高潮に達したらしく、チャクラの砲弾を作り出し自来也に向かって発射し続ける。急な遠距離攻撃だったが夫婦蝦蟇が風遁と水遁を発動し相殺。仙人モードの自来也が正面からウラシキとぶつかり合う。
「すげぇ、あれが伝説の三忍」
「けどエロ仙人だけじゃ、アイツは倒せねぇ。ボルト、あれをやるぞ」
「あれって、そうかよ。あぁ」
ナルトの言いたいことはわかった。仙人モードであっても、太刀打ちするのが限界だろう。現に拮抗しているようで、死に物狂いで命を繋いでいる様子だ。もしウラシキを倒すなら、自分たちしかいない。だが普通の方法じゃだめだ。
ボルトは一度ウラシキの仲間を倒したことがある。それは父であるナルトとの合体忍術。あれを繰り出せるなら、勝機はある。
だがそれには二人のチャクラを合わせなければならない。しかし、ナルトはチャクラの使い過ぎで九尾のチャクラが漏れ出してしまっている。それを抑えようとしてナルトのチャクラの流れが滅茶苦茶になっている。
だから、ボルトは手を差し出しながら力を抑えるなと言った。
「全部俺が受け止めてやるってばさ、だから全力で来いってばさ」
「へへ、応!」
ボルトの目を見て、信じろと言う彼の意思に答えたナルト。九尾を抑えるのではなく、力を引き出し、二人で螺旋丸を作り始める。九尾のチャクラとナルトのチャクラ、そしてボルトのチャクラが重なり、相乗し、巨大な螺旋丸を作り出していく。
修行の成果とナルトに負けない根性を見せたボルトは、ナルトの膨大なチャクラをコントロールしていく。しかしそんな大技に気が付かないウラシキではない。
自来也を相手しながらも直ぐにボルトたちへ攻撃を始める。無数のチャクラ弾が彼らを襲う。
しかし、その攻撃は横から飛んできた無数の火炎弾によって迎撃される。
「今度はなんだ!?」
「やはり生きておったか」
自来也とウラシキの目線の先には、うちはサスケが居た。こちらもボロボロになりながらもナルト達の援護に駆け付けた。チャクラ温存の為か接近戦を自来也に任せ、火遁でウラシキを攻撃していくサスケ。
「お前達は自分の術に集中しろ。こいつは俺たちが止める」
「次から次にぃ」
蝦蟇夫婦と仙術の組み合わせに、写輪眼持ちのサスケの援護が加わり、決定打を出せないウラシキ。最初のようなキレもなく、超大玉螺旋丸のダメージは、予想以上に大きかったと見える。頼りになる師たちに守られながら、ナルトとボルトは互いのチャクラを共鳴させる。
二人の想いが重なり、必殺の螺旋丸が誕生する。
「天須波流星命・竜宮!!」
ウラシキが翼で突風を起こしてサスケと自来也を吹き飛ばす。
さらにボルトたちを先に仕留めようと、山のような巨大なチャクラのリュウグウノツカイが現れる。その口にはナルト達の作った螺旋丸の倍はあるチャクラ球が生成され、その威力で押しつぶそうとしていた。正真正銘ウラシキの奥の手だ。
「怖いか?」
「いんや、全然。お前こそビビってんじゃねぇか?」
「馬鹿言うな。今はなんていうかさ」
「わかるってばよ」
絶望的な状況に追い詰められながらもナルトとボルトは前に進む。
「「負ける気がしねえってばよ(てばさ)!!」」
親子による螺旋丸とウラシキの竜宮が衝突。衝撃波と暴風雨を発生させながら互いを否定しあう。しかし、火力面ではウラシキの方が上で、少しづつ押されていく。
しかし、弟子が踏ん張っていて、師匠が呆けているなどありえない。いち早く立ち上がったサスケと自来也。それぞれが出来る事をするしかない。
「自来也ちゃんが油、儂が風遁、母ちゃんは火遁じゃ」
「唐揚げじゃな、任せとき!」
「お二方、行きますぞ。仙法・五右衛門!!」
自来也は、ウラシキ本人に超高温の油を放った。通常の火遁より勢いが強く、威力のあるそれはウラシキの肌を焼く。大やけどの激痛に苦しみ始めるウラシキ。
「準備は整った。受け取れウラシキ」
自来也とサスケの双方が火遁を使用し、上昇気流で真上に雨雲を生み出していた。そこで発生した雷を雷遁で誘導する秘術・麒麟。麒麟を発動すると、空にあった雷が龍の形となり、ウラシキの呼び出した巨大なリュウグウノツカイに噛みつき、食いちぎった。
大やけどを負い、術も弱体化させられたウラシキ。ナルト達は大人の援護を受け、ウラシキの術をはねのけながら向かってくる。
(ここは逃げの一手だ。チクショウ、このオレが)
空を飛べるウラシキなら飛んで逃げればいい。この一撃さえ躱せば後はどうとでもなる。
「粒遁封印術・金剛天鎖。好き勝手、やって、逃げれると、思うなってば、ね」
自来也と共に洞窟に籠っていたシャナ。自来也が仙人モードになるまでの間の一部始終を観察し、彼から真似をしてはいけないと伝えられた。そして、洞窟から出てきてはいけないと念を押されたが、シャナは出てきた。
動かない体に鞭を打ち、木に靠れながらチャクラの鎖を精製。それらを操り、無防備なウラシキの体を拘束した。普段のウラシキなら、弱り切ったシャナの術などで縛れない。だが今はウラシキも弱り切っている。
僅かなチャクラしかなくとも、弟と甥っ子にチャンスを与える事は出来る。
(行きなさい、ボルト、ナルト)
「「これで終わりだぁ!!!」」
「ぎゅああああ」
遂にウラシキの術を突破し、ナルトとボルトの螺旋丸が直撃する。あまりの威力に強化されたとはいえ、ウラシキの体はバラバラになってしまった。あまりにもあっけない幕切れだが、自分より格下の相手に打ち取られたウラシキ。
――――――――
ナルト達が全てが終わったと力尽き、気を失い、師匠たちが弟子の成長を噛みしめているタイミング。木陰に靠れながら、刺された傷を抑えるシャナ。無理に術を使い、疲れ切っていた彼女だが、仕上げをしない訳にはいかない。
シャナは、自分の目の前に転がる物を見る。
「しぶといって、ばね」
「ぜひゅ、ぜひゅ、ふふ、オレの、やぼうは、まだ、おわって、ない」
肋骨より上だけになったウラシキが爆風で飛んできたのだ。恐ろしい事にまだ息があり、話す余裕もある。とはいえ、瀕死なことに違いはない。後は命が枯れるのを待つだけだ。九尾のチャクラを回収することはできない。
だが、大筒木には裏技がある。目の前には、優秀な器となりうる女がいる。触れる事さえできれば、後は器にしてしまえばいい。そう考えていたウラシキ。
シャナは止めを刺そうとダガーを片手に持っている。僅かなら接触も出来る。
(あと少し)
そう心で叫んだ時、ウラシキ以外の時間が止まった。表現ではなく、シャナを含め世界の全てが止まってしまった。その異常事態に気が付いているのは、ウラシキだけだった。
(なんだこれは)
世界が止まり、色を失って、明暗しかない世界が広がる中で、足音が聞こえた。唯一動けるウラシキは視線をそちらに向ける。
そこには、大筒木一族特有の衣装の上に天女の羽衣を纏う女が居た。衣によって顔が見えないが、そのチャクラはウラシキに抵抗する意思すら抱かせないものだった。
(大筒木の上の方が出てきた、何故こんな辺鄙な場所に)
真の恐怖にさいなまれたウラシキ。絶対的な力の差を感じ、このまま溶けてしまいたいくらいだった。そんなプレッシャーを放つ存在は、膝を曲げて、上半身しかないウラシキを見つめる。衣からわずかに覗く素顔を見た時、ウラシキの顔から表情が消える。
(まさか、そんな、ことが)
女性は、左手を伸ばし、シャナに楔(カーマ)を刻もうとしていたウラシキの腕に指先で触れる。すると、ウラシキの腕が砂のように消えてなくなる。これは企みについての警告だろう。さらに軽く手を振り、シャナにもチャクラを振りかけていた。
(バカバカしい。カーマを刻めば、全てを台無しにしてしまう所だ)
ウラシキはすべてを悟り、穏やかな表情になった。彼の顔から憑き物が落ちた瞬間、止めを刺そうとしていた女性の手が止まる。
(えぇそうですよ。どうせ死ぬのなら、そうしますよ)
ウラシキの魂胆を見抜いたのか、女性は立ち上がり、霧のようなものに包まれ消えていく。最後に見えたのは、女性の右手の、大筒木一族に伝わる数珠の光だった。
時が動き始め、シャナが止めを刺そうとした瞬間。
「あなたに、これを、さしあげ、ましょ、う」
突然ウラシキの体がチャクラの凝縮された小さな果実のような塊に変化する。シャナは驚くが更に、果実が意思を持ったようにシャナの数珠に吸い込まれていったのだ。そして、大怪我を負っていたシャナは、いつの間にか完治しており、非常に困惑していた。
「え、なに、え? どうなってるんだってばね!」
流石に気味が悪いシャナ。だが、トネリから貰った数珠を捨てる訳にもいかず、最後のウラシキの目にも悪意がなかったことで、何かを預けられただけだと感じていた。
ウラシキが完全に消滅したことで、今回の騒動は終了となった。
自来也の仙人モード大好きで出しました。問題はシャナが自来也の仙人モードを見ていることですね。
ミナトやクシナの術をコピーし、自来也の術もパクってきたシャナ。そんな身内の術大好きな人間が、仙術をどうするかもお楽しみに。